ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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密会

 

 

 

 

 

「あれ? どしたのたっくん、元気ないね?」

 

「……バーニスか」

 

 

ブレイズウッドにあるタイヤのブランコに乗ってデルタの事について考えていると、バーニスが声をかけてきた。

 

 

「元気がないわけじゃねぇよ。ちょっと考え事をしてただけだ」

 

「そう? それなら良いけど」

 

「んで、何しに来たんだ?」

 

「えっとね、たっくんはまだ『コレ』、飲んでなかったでしょ?」

 

 

そう言って差し出してきたのは一つの小さい缶。

 

 

「……? なんだこれ」

 

「ニトロフューエルだよ! 郊外に来たからには、やっぱりこれを飲まなきゃね!」

 

 

どうやらこれは、郊外で飲まない人間はいないほどにメジャーなエナジードリンクらしい。

 

 

「ほらほら飲んで飲んで! すっごく元気が出るよ〜!」

 

「わ、分かったって。いただきます」

 

 

タクミは渡された缶のニトロフューエルを一口飲む。

 

なんと言うか、非常に刺激的な味わいをしている。そしてバーニスの言う通り、体からエネルギーが漲ってくるような感覚がしてくる。

 

確かにこれは病みつきになりそうだ。

 

 

「……ありがとうな。結構元気出たよ」

 

「うんうん! それは何より! それじゃ、また欲しかったら言ってね〜!」

 

 

バーニスはタクミの頭をポンポンと撫でたあと、ピューッと去っていった。本当にニトロフューエルを飲ませに来ただけだったらしい。

 

 

(……予想以上に美味しかったな……帰りに数本買うか)

 

 

ブランコをいつもより大きく漕ぎながら、そんな事を考えていたタクミだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(眠れない)

 

 

バーニスがくれたニトロフューエルは、確かにタクミには効果抜群だった。効果抜群過ぎた。

 

昼間飲んだはずのニトロフューエルの効能がまだ残っているタクミは、深夜になっても未だ眠れずにいた。

 

 

(……散歩でもするか)

 

 

あまり夜は出歩きたくない。かと言って暇つぶしにスマホをいじっていれば逆に目が冴えてしまうかもしれない。

 

タクミは起きて扉を開け外に出る。すると、謎の人影がどこかへ行くのが見えた。

 

タクミはその人影には見覚えがあった。

 

 

(あれは……姉ちゃんか?)

 

 

タクミが言えた事では無いが、こんな深夜に何をしているのだろうか。

 

もしかしたらリンもニトロフューエルで眠れないのかもしれない。そう考えたタクミは、こっそり後を着いて行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブレイズウッドの上層区域。

 

リンは散歩をしている……という感じではなく、尾行を警戒しているような様子だった。

 

そしてリンは辺りを警戒した後、建物の裏へと入って行ってしまった。

 

タクミは足音を立てないようその建物のところへ行く。

 

すると、リンが向かっていった建物の裏から話し声がした。

 

 

「ごめんあそばせ、プロキシさん。こんな夜分にお呼び立てして」

 

「ううん、大丈夫。それで、なんの用なの?」

 

(この声……ルーシーか?)

 

 

タクミは二人にバレないよう、もっと会話が聞こえやすい位置に移動する。

 

 

「単刀直入に言えば、追加の依頼があるんですの。くれぐれも内密にして欲しいんですわ」

 

「依頼?」

 

「ええ。データスタンドの件と言い、車両パーツの件と言い……どうやら私達カリュドーンの子にご執心な輩がいるようでして」

 

「あー……確かに、アイツらからは明確な妨害の意思を感じたね」

 

「そこで、ベルラムとプルクラの正体を調査しましたの。走り屋のリストには載っていませんでしたけど、十中八九『トライアンフ』絡みである事は間違いないですわね」

 

(トライアンフ……)

 

 

トライアンフとは確か、ツール・ド・インフェルノでカリュドーンの子と対決する走り屋チームの名前だったはずだ。

 

タクミは会話の内容を把握するべく、耳を澄ませる。すると──

 

 

「ヘルバ! アルボル! ラテレム!」

 

「は?────うおおっ!?」

 

 

突然ルーシーが大きい声を出す。何事かと思う間もなく、親衛隊である三匹の子豚にタクミは取り抑えられた。

 

ルーシーは持っていたバットを構え、こちらに歩いてくる。

 

 

「はぁ……どこのどいつですの? 私達の会話を盗み聞きしようなんて輩は────あら? 貴方でしたのね」

 

「あれ? タクミ? どうしてここに?」

 

「ね、姉ちゃん……ルーシー……」

 

 

ひとまずは解放されたタクミ。リン達にここに来た事情を話す。

 

 

「……プロキシさん? 後は着けられてなかったんじゃなくて?」

 

「だ、だってタクミが尾行してたなんて気づかなかったんだもん……」

 

「……ま、後をつけてたのがタクミで幸運でしたわね。シーザーやバーニスと違って、彼なら口外する心配は無さそうですし」

 

「悪いな、盗み聞きなんかして……」

 

「構いませんわ。どの道貴方にも協力を仰ごうと思っていたところでしたの」

 

 

ルーシーは改めて依頼について説明をする。

 

彼女の予想では、ここ最近での妨害の裏にはトライアンフのナンバーツーであるルシウスが関わっているのだろうと考えている。

 

妨害のタイミングから考えて、カリュドーンの子の情報がトライアンフに完全に筒抜けになっているかもしれない、との事だ。

 

 

「恐らく町の誰かが、情報をトライアンフにたれ込んでいるんですわ」

 

「犯人の目星は付いてるのか?」

 

「まだですわ。ブレイズウッドは町全体が私達の支持者と言っても過言ではありませんもの。まずは調査をする必要がありますわね」

 

「それで調査して欲しくて私に依頼したんだね。分かった、任せてよ!」

 

「感謝しますわ。それとお二方、この事はくれぐれも内密に願いますわね。特にバーニスとシーザーには」

 

 

とりあえずブレイズウッドから内通者を探し出そうという事に決まり、深夜の密会はお開きとなった。

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