ブレイズウッドを出て数時間後。二人はビデオ屋『Random Play』に到着した。
タクミはリンに新エリー都に行くついでに、オフラインデータのコピーを頼まれたので、ひとまず家に帰ることにした。
「へぇ……お前ん家本当ににビデオ屋やってたんだな」
「んだよ、疑ってたのか?」
「あーいや、そういう訳じゃねぇんだけどな。ただ新エリー都でもビデオ屋の数ってそこまで多くなかっただろ?」
「それはそうだけどな────んじゃシーザー、データのコピーが終わるまでどっか行こうぜ。俺が案内するよ」
「お、ホントか? でも何処に行くんだ? 新エリー都には時たま出入りするけどよ、どういう場所があんのかはよく分かんねぇんだよな……」
「……んー」
タクミは休日普段何をしているのかを思い出す。家でゲームをする事が多い気がする。
後はルミナスクエアでご飯を食べたり、グラビティ・シアターで映画を見たりしている。
ついこの間も、ビリーと一緒にスターライトナイトの劇場版最新作を見に連れて行かれていた。
となれば、行き先はやはり……
「なあシーザー、ルミナスクエアに映画館があんのは知ってるか?」
「勿論だぜ。ルーシーがよく行ってるらしいからな。オレ様は行ったことないけど……」
「なら丁度良い。今から一緒に映画見に行こうぜ。見たい映画決めとけよ」
「お! じゃあ早速行こうぜ!」
二人はルミナスクエアのグラビティ・シアターへ向けて出発した。
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そして映画館前に到着した二人。
タクミは入り口に貼られたポスターを見て……絶句した。
ポスターには『特集上映』の文字。そしてテーマはなんとホラー映画。
ちゃんと下調べをすれば良かったかもしれない。だがシーザーに見る映画を任せている以上、今更断る事も出来ない。
「なるほど、ホラー映画か……なあタクミ、この映画なんかどうだ?」
そう言ってシーザーはポスターを指差す。
彼女が見たいと言ったのは、よりにもよってビックリ系のホラー映画だった。
インターノットでも度々話題となっているこの映画。タクミは一層血の気が引く。
「……ん? どうしたタクミ、顔色悪いぞ?」
「なんでもないですよ」
「いやめちゃくちゃ苦い顔してんじゃねぇか……一体どうしたん──」
そこまで言いかけたところでシーザーはハッとした顔を浮かべる。
そして、ニヤニヤとした顔を向け始めた。
「……お前まさか、ホラー映画が怖えのか〜?」
「ぐ……!」
「やっぱりそうか……んじゃ、ホラー映画は諦めるしかねぇな。苦手なのに無理やり見せるってのもあれだしなぁ」
「ま、待てシーザー、俺は観ないなんて一言も言ってないぜ」
「お? じゃあ一緒に観るか?」
「観る!」
というわけで、観ることにした。
その映画はインターノットで話題なだけあり、あらゆる角度から観客を驚かせようと様々なジャンプスケアが襲ってくる。
そして約二時間後、上映終了。
映画館から出てきたタクミは、今にも死にそうな顔をしていた。
「いやぁ、スリル満点だったなあの映画! 手に汗握るってのはこの事だな!」
「あークソ、心臓に悪すぎる……」
「ハハハッ、まあでも恥ずかしがる事なんかねぇぜ。ここだけの話、ライトも実はスプラッタものはかなり苦手だからな」
「そうなのか……」
タクミはスプラッタ映画を見て怖がるライトの様子を思い浮かべながら、スクリーンに出てきた世にも恐ろしいあの顔を記憶から消そうと試みる。
無理だった。
「あー……なんか腹減ってきたな。タクミ、なんかオススメの店とかあるか?」
「店か。それなら近くにラーメン屋が──あぶねぇ!」
「へ?──うおっ!?」
タクミは突然、シーザーをグイッと自分の方へと引き寄せる。
その瞬間、シーザーがいた場所に水しぶきがバシャリと降り注いだ。
水しぶきの正体は、水溜まりを通過した車のタイヤがはね上げたものだった。
「……あの車、ちょっとは減速しろよな……シーザー、水はかからなかったか?」
「…………」
「……シーザー?」
「へっ!? あ、ああ! オレ様は大丈夫だぜ!」
「そうか? んじゃ話戻すけどよ、ルミナスクエアにラーメン屋があるんだ。そこに行こうぜ」
「そ、そうだな……うん」
二人はすぐ近くにあるチョップJr.が経営しているラーメン屋へと向かった。
「…………」