ルミナスクエアの滝湯谷・錦鯉にてラーメンを食べた二人。
その後はHIAセンターのVR機器でエーテリアスを蹴散らしたり、カラオケに行ってシーザーの熱唱っぷりを堪能したり……
色々な場所を回って行った。
「なぁ、次はどこに行くんだ?」
「まだ決めてねぇんだよな。どこに行くか──」
タクミが悩んでいると、スマホから着信音が鳴り響く。相手はアキラだった。
「もしもし、兄ちゃん?」
『あ、タクミ。今どこにいるんだい?』
「今はシーザーとルミナスクエアにいるよ」
『そうなんだね……えっとタクミ、楽しんでる所悪いんだけど、少しおつかいを頼まれてくれないかい?』
「おつかい?」
『ああ。丁度買わないといけないものがあったのを思い出してね。今日が確かセールの日だったんだ。後で買い物のメモをDMで送るね』
通話を終了した後すぐに、DMで買い物リストのメモが送られてきた。
「今のアキラか?」
「ああ。おつかいに行って欲しいんだと。メモのものなら近くのスーパーで買えるな」
「なら、次の行き先はそこで決まりだな!」
「良いのか? 遊ぶってよりかはタダの買い物だぞ」
「構わねぇぜ。んじゃ、出発だ!」
「あ、ちょ、押すなよ!」
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そしてルミナスクエアのスーパーにて。タクミは買い物カゴを片手に、メモを見ながら商品をカゴに入れていた。
「んー、これで全部かなぁ。シーザーはなんか欲しいものはあるか?」
「……え? あー、特にはない……な」
シーザーは何やら考え事をしている様子だった。
この時だけでは無い。ルミナスクエアへ向かう際も、思い詰めるような表情をしていた。
タクミは何を悩んでいるのかをさりげなく聞く、なんて器用な事はできない。
お節介な奴だと思われるかもしれないが、タクミは意を決して彼女に単刀直入に聞くことにした。
「……シーザー、もし余計なお世話なら言ってくれて良い」
「え?」
「ルーシーから聞いたよ。お前がここ最近悩みに悩んでるってな。俺で良ければ、何で悩んでるのか聞かせてくれねぇか? 一人で悩むよりかはさ、そっちの方がいいだろ?」
「…………!」
シーザーは目を見開く。そのまま少しの間、無言の時間が続く。
「……あーその、話したくないってんなら良いんだ。俺以外の誰かにでも──」
「いや、話すよ」
「え?」
「お前に言われてハッとした。確かにこのまま一人で抱え込むぐらいなら、お前に話した方がずっとマシだな。いつまでもウジウジしても仕方ねぇ」
そしてシーザーは自身の悩みの種を明かす。
幼い頃から『ツール・ド・インフェルノ』の伝説を聞いて育ってきた彼女は、覇者に必要なのは『最強であること』だと思っていた。
「……でも、この間のポンペイのオッサンとルーシーのやり取りを見て、間違いだって気づいた」
「……」
「オレ様はルーシーみてぇに頭が回るわけじゃねぇ。そんなオレ様は、本当に覇者としての資格があるのか……なんて事を考えてたんだ」
「資格、か」
「ああ。アイツらと比べたら、オレ様は覇者に相応しくないんじゃねぇかなってな」
「……確かに他の人間に出来て、シーザーには出来ない事ってのはあるかもしれない。けどな、シーザーにしか出来ない事ってのもあるだろ?」
「……」
「……覇者になるためにどうすれば良いのかは俺にも分からない。ただ、シーザーにはやると言ったらやるその意志の強さがある。それがある限り、覇者への道が閉ざされる事は決してないはずだ」
「……オレ様の強み」
「……まあ、なんだ。誰にでも出来ることと出来ない事ってのがあるんだ。シーザーには仲間がいる……だから、その……えっと、俺が言いたいのはだな」
講釈を垂れているような感じがして恥ずかしくなったのか、タクミの声がだんだんと小さくなっていく。
それを見たシーザーはクスリと笑い、タクミの頭にポンと手を置いた。
「ありがとなタクミ。お前のおかげですげー気が楽になったぜ」
「そ、そうか?」
「ああ。確かにオレ様には、一度決めた事は決して曲げねぇ意志の強さがある! それと、めちゃくちゃ頼れる仲間たちもな!」
シーザーの表情にいつもの豪快さが戻る。どうやら、悩みは消えたようだ。
「今は『ツール・ド・インフェルノ』の事に集中するぜ。オッサンに勝つために! 覇者になるために! 努力は惜しまねぇ!」
スーパーを出たシーザーは高らかにそう宣言する。その顔を見てタクミは安心した。
「よーし、そうと決めたら早速郊外に戻ろうぜ、タクミ!」
「うわっ!? ちょ、頭ガシガシすんなって!」
危うく買い物袋の中身を落としそうになるタクミだった。