新エリー都から郊外に戻って数日後。
遂に、『ツール・ド・インフェルノ』本番当日を迎えた。
その日の朝、タクミは準備を進めているシーザー達に挨拶に向かった。
「おはよう」
「おっ、タクミか! おはよう!」
今回の『ツール・ド・インフェルノ』は、現覇者陣営であるトライアンフのポンペイ、ルシウス、モルスが出場する。
対するカリュドーンの子陣営は、シーザー、ルーシー、ライトが出場。
そしてリンはイアスと感覚同期をし、ホロウに入った際のシーザー達のガイド役になる。
当然だが、部外者であるタクミは『ツール・ド・インフェルノ』には出場できない。
なのでシーザー達の活躍を会場の観客席から見る事にする。
「タクミは会場の方に行くの?」
「ああ。そっちの方が迫力を味わえると思ってな」
「そんならオレ様たちと一緒に会場に行くか? そっちの方が早いだろ?」
「ありがとな。そうさせてもらうぜ」
「シーザー、そろそろ出発の時間ですわ。早いとこ会場へ向かいますわよ」
「おう、んじゃ行くか! タクミ、後ろに乗っとけ!」
「ああ」
シーザーの後ろに乗り、三台のバイクがツール・ド・インフェルノの会場へと出発した。
「……なあ、タクミ」
「ん?」
「オレ様たちの勇姿、しっかりと目に焼き付けておけよ?」
「……言われなくても、そうするつもりだ」
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ツール・ド・インフェルノの会場へと到着した一行。
シーザー、ルーシー、ライトの三人はスタート地点に、タクミは観客席の方にいた。
スタート地点にいるシーザーとリン(inイアス)が、タクミに向けて手を振る。
タクミの方も二人に向けて手を振り返した。
その様子を近くで見ていたポンペイがシーザーに何か話しかけている。
「……小娘、貴様まさか色恋にかまけて腕を鈍らせてはいないだろうな?」
「いろこっ!?そっそそ、そんな訳ねーだろ!? アイツとオレ様はそんなんじゃねぇよ!」
タクミは周りの観客の喧騒により、二人の会話の内容は聞き取れなかった。
しかしシーザーの事だ。きっとポンペイに威勢よく宣戦布告をかましているのだろうとタクミは考えた。
『さあ、両者位置について────ツール・ド・インフェルノ、レーススタート!!』
戦いの火蓋が切られる。
発進した六台のバイクはすぐに最高速へと到達し、目にも止まらない速度でホロウへと突っ走って行った。
そしてレースがスタートして数分。
モニターには両陣営一歩も譲らない白熱した戦いが繰り広げられている様子が映し出されている。
バイクを巧みに操り、立ちはだかるエーテル結晶などの障害物を華麗に避けていく。
郊外の走り屋にしか成せない業だ。タクミはすっかりモニターに見入っていた。
そんな時、スマホが振動する。リンから着信が来たようだ。
タクミは比較的静かな場所に移動し、電話に出る。
「……もしもし? 姉ちゃん?」
『もしもし、タクミ? 今そっちどうなってる?』
「は?」
謎の質問に困惑するタクミ。リンの声はなにか切羽詰っているような様子だった。
タクミはとりあえずリンの質問に答える。
「どうって……絶賛レース中だろ。歓声がめちゃくちゃうるさいぞ」
『やっぱり……ありがとう、タクミ! また後でね!』
「……? おい待て。今そっちで何が起こってる」
『……っ。ううん、なんでもないの! ごめんね邪魔して! それじゃ楽しんで!』
「あ、おい!」
タクミの返事を待たず、リンは通話を一方的に切ってしまった。
モニターに映っている通り、レースは順調に進んでいるはずだ。
では何故リンは電話をかけてきたのだろうか。先程の質問はどういう意味なのか。
「…………」
何やら、酷く胸騒ぎがする。このまま放っておいても良いのだろうか。
仮に、万が一向こうで何かしらのアクシデントが起きているとしたら。
それがリン達の命を脅かすものだとしたら。
このまま大人しくしている訳にはいかない。
タクミは人目のつかない場所に移動し、ファイズドライバーを装着する。
[5・5・5][Standing by…]
「変身!」
[Complete]
フォンをバックルにセットし、ファイズへと変身する。
そしてシーザー達が入ったホロウへと向かうため、フォンを開いてコードを入力し始めた。
[3・8・2・1][Jet Sliger, Come closer]