ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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Fairy

 

 

 

 

 

「ははっ、あはははは!!やっと……やっと……」

 

 

ニコが両手を広げこちらに歩いてくる。アンビーとビリーも手を出し、ハイタッチの準備をする──

 

 

「みーつけた!」

 

「……」

 

 

──しかしニコの眼中には最初から金庫しか無かったようだ。二人を完全スルーし金庫に飛びつく。

 

 

「勝利を喜ぶのはまだ早いよ、ニコ。私たちにはまだ厄介な問題がひとつ残ってる」

 

 

どうやら例のハッカーにより、脱出経路を計画するためのデータが削除され、本来のルートが使えなくなってしまったらしい。

 

その事実を聞かされたニコは膝から崩れ落ちる。

 

 

「こ、ここから出られないって……はは……あんなに苦労して、やっと元に戻ったと思ったら、まさかこれで終わりだなんて……」

 

「くっそ……モニカ様とデートした事もねぇってのに、悔しいぜ……けど、なかなか悪くない人生だった」

 

 

ニコとビリーは完全に諦めムードに入っていた。

 

 

「プロキシ、まだ手はあるんだろ?」

 

「うん。私に一つ考えがあるの。でもそれには、ニコの同意が必要なん──」

 

「同意する!」

 

「──まずは話を聞いて」

 

 

ノータイムで同意したニコに呆れつつ、プロキシは金庫の中身について説明をする。

 

 

「システムに侵入したハッカー曰く、金庫にはあの『ロゼッタデータ』に匹敵するものが入ってるの」

 

 

それがあればホロウを自由に出入りできる……らしい。もしそれが本当ならば、プロキシやホロウレイダーにとっては夢のような代物になるだろう。

 

 

「それを使えば、ホロウから脱出できるはず。ニコがこれを開けることに同意してくれればね」

 

「同意する!さっきから言ってるじゃん!」

 

「……依頼人からの任務なんでしょ?少しくらい躊躇しないの?」

 

「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ!第一あたしがここから出られなかったら、誰が金庫を渡すって言うの?開けちゃっていいわ!」

 

「……分かった。それじゃあ開けるね」

 

 

プロキシは暗証番号を入力し、金庫を開ける。中には、データチップが入っていた。それを手に取る。

 

 

「でも、先に言っとくけど、これは『賭け』だよ。強制的にデータを読み取った結果、どうなるかは分からない……」

 

「……!」

 

 

ファイズの仮面の奥の表情が、僅かに歪む。

 

 

「もちろん失敗した時の代替案も用意してある。H.D.Dシステムがインターノットに、救援依頼を出してくれることになってるの。その時は──」

 

「大丈夫だプロキシ。何があっても店へ助けに行く」

 

「──ふふっ。ありがとね、ファイズ」

 

 

そう言ってプロキシは同期しているイアスの額部分にチップを挿入した。

 

すると。

 

 

「ンナナ──!!」

 

 

ボンプの体が激しく光り始めた。

 

 

「ッ!!プロキシ先生!」

 

「プロキシ?プロキシ!返事をしなさい!」

 

 

光でボンプの光を視認することすらままならない。

 

 

「く……うっ……あ…………」

 

「店長!大丈夫か!?」

 

 

ボンプはそのまま地面へ倒れた。

 

 

「プロキシ!おいプロキシ!!」

 

 

ファイズが呼びかけるも反応はない。

 

 

「もしかして、失敗しちまったのか……?」

 

「…………っ」

 

 

すると突然、ボンプが急に起き、歩き出した。

 

 

「プロキシ……?」

 

「プロキシ!もう大丈夫なの?」

 

「……」

 

 

またしても何の反応も見せないボンプ。ひたすら歩き続ける。

 

 

「まさか、また乗っ取られたんじゃないでしょうね……!」

 

「……分かんねーが、ひとまずボンプに着いていくぞ。ホロウから出られるかもしれねぇ」

 

 

その後。ボンプの誘導により、ホロウから脱出することに成功。しかしホロウを出てすぐ、ボンプは再び倒れてしまった。

 

タクミは変身を解除し、すぐさまボンプへ駆け寄る。

 

 

「おい!しっかりしろ!」

 

「リン?リン!しっかりするんだ!──っ駄目だ、感覚同期を解除できない!」

 

 

ボンプの方からアキラの声がする。先程のようにハッキングされたという訳ではないようだ。

 

 

「みんな!車に乗って!急いでプロキシの所へ向かうわよ!」

 

 

四人はボンプを連れ、車に乗った。

 

 

車の中。

 

 

「店長、やったぞ……俺たち……出てきたんだ……!」

 

 

ビリーはボンプに語りかけるが、一向に反応を見せない。

 

 

「りよ……きや…… なんの……こと……」

 

 

ボンプは何がうわ言を言っていた。

 

 

「……!姉ちゃん!」

 

「ボンプが痙攣してる……店に戻って、本体を確認した方が良い」

 

「どう……い……?な……んの……」

 

「…………」

 

「……タクミ」

 

「!」

 

「プロキシ先生はきっと助かるわ。今は無事を祈りましょう」

 

「……ああ、そうだな……」

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

六分街ビデオ屋、Random Play。

 

 

「……う……」

 

「!! 兄ちゃん、姉ちゃんが!」

 

「リン!やっと目を覚ましたんだね」

 

「……お兄ちゃん……タクミ……」

 

 

店内の工房にて。リンはソファの上で目を覚ました。

 

 

「もう大丈夫だ。君は今、家の中にいる」

 

「……ねぇ、あのデータチップは?ニコ達は?それと、私は一体どうやって帰ってきたの?」

 

「姉ちゃん落ち着け。回復したばっかなんだから安静にしてろ」

 

「ちゃんと状況は説明するから、まずはデータチップを読み取った後、リンの身に何が起きたのかを聞かせてもらえるかい?」

 

「うん……」

 

 

リンによれば、あのデータチップを読み取った後、意識を失った。その時に謎の女性の声が聞こえ、利用規約に同意するか否かの選択を迫られたらしい。

 

 

「……うん、何だか夢のような話に聞こえるけど……とにかく、何があったのかは把握できたよ。それじゃあ次は僕が話す番だね」

 

 

アキラはニコ達はどう脱出したのか、そしてボンプに何があったのかを話した。

 

 

「何それ……怖……」

 

「それはこっちの台詞だよ……どうなるか気が気でなかったんだぞ……」

 

 

その後、ニコ達が知り合いの闇医者を連れ、何とかリンをH.D.Dから引っ張り出したという。

 

 

「今ニコ達がこの件を調査しに行ってくれている。良い知らせは、借金を返済するっていう約束を守って貰えたことかな」

 

 

「ほとんどは医療費とボンプの修理代に消えたけどね」とアキラは苦笑混じりにそう話した。

 

 

「でも本当の『悪い知らせ』はこれじゃない。パソコンを見てみてくれ」

 

「……?」

 

 

リンはソファから立ち上がり、パソコンへ向かう。

 

 

「驚かないでくれよ──コホン……Fairy、いるかい?」

 

 

すると、部屋の中に異変が生じる。照明は忙しなくチカチカと点滅し、テレビにはノイズが生じる。

 

リンはパソコンをじっと見つめる。

 

 

「──何これ!!」

 

 

パソコンから女性の声が聞こえる。

 

 

「システムを起動──Ⅲ型総順式集成汎用人工知能……Fairyです」

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

「──姉ちゃんが気を失った後、H.D.Dが再起動したんだ。それで、アイツが現れた。」

 

「この声……聴いたことがある……私が気を失った間に脳内に喋りかけてきた人だよ!」

 

「肯定。私はⅢ型総順式集成汎用人工知能。Fairyとお呼びください。」

 

 

自身をFairyと名乗る人工知能は続ける。

 

 

「マスターがサインした利用規約に則り、あらゆる面でマスターをサポートし、貴方様がご自分の作業を完了出来るよう協力いたします。『その時』が来るまで」

 

「待った、規約ってなんだい?それに、『その時』って……?」

 

「利用規約に則り、私はその質問に答える権限を有しておりません。回答は適切な時期に、適切な場所でお知らせいたします」

 

(適切な時期……?適切な場所……?)

 

 

タクミの疑問をよそに、Fairyは続ける。

 

 

「マスターのデータが第三者によって削除、および伝送された直近の痕跡を検知いたしました。これにより、マスターのプロキシとしての個人事業が損害を受けております」

 

「……!」

 

「私はその損害を補填し、マスターのプロキシ事業を再建することができます」

 

「待ってくれ、削除されたデータを復元出来るってことかい?」

 

「否定。削除命令は撤回できません……しかし、データベースを再構築することができます」

 

 

Fairyが三人に説明をする。

 

 

「私は全都市80%以上の知能設備に対し、無制限のアクセス権限を有しています。私の協力があれば、累積式でホロウデータを獲得する必要がなくなり、毎回リアルタイムでホロウ脱出ルートを分析する事が可能になります」

 

「そ……そんなの出来るわけないだろう?」

 

 

アキラの言うことはもっともだ。『自由にホロウを出入りできるようになる』など、プロキシやホロウレイダーからしたらチート能力も良いところである。

 

 

「否定、これは私のコア機能です。証明のためにホロウ調査活動を補佐いたします」

 

「補佐?」

 

「はい。既にホロウ調査事務の個人情報統合センター、通称『インターノット』の匿名フォーラムより、マスターの現状に相応しい依頼を選別しました」

 

 

Fairyは感情のない、平坦な声で続ける。

 

 

「どうぞ、スケジュールやご希望に合わせて、実行時間をお選びください。これからよろしくお願いいたします、マスター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ちなみにタクミ様が本店に入られる前の『今にも泣きそうな状態の顔』をボンプの視覚記録から画像データとして抽出しております。ご覧になりますか?」

 

「「えっ」」

 

「消せ!今すぐ消しやがれ馬鹿野郎!!!」





次回から第一章です
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