そんな事より学生服の猫又実装まだですか?
バイクに乗るシーザーを見て、ルーシーとライトは血相を変える。
「シーザー……!? 何をする気だ!」
「……! こんの大バカ!!」
シーザーを呼び止めるも、彼女はそれを無視してバイクを走らせる。
「死にますわよ!? 正気ですの!?」
「シーザー、待て!!」
二人は急いでシーザーを追いかけるが、彼女は速度を落とす気配がない。
シーザーはこのまま自分ごと火の湖まで火打石を届けるつもりだった。
「待ちなさいシーザー! 居場所なんていくらでも替えが利きますわ!!」
(……そうだよな、ルーシー。石油がなくても、オレたちは別の場所で生きていける)
ルーシー達の声はシーザーにはしっかりと届いている。
それでもなお、バイクのスピードを緩めることはしない。
(……でも、守らなくちゃいけない気がするんだ)
パイプラインの上を走行するバイクはやがて、火の湖の真上へと飛び出した。
シーザーはそのまま、火の湖へ真っ逆さまに落ちていく。
(…………っ)
迫り来る死を目の前に、彼女はルーシー達への申し訳なさと、炎に包まれる恐怖を感じながら、ゆっくりと目を閉じる。
その時だった。
ゴオォォオオオオオオオ!!!!
耳をつんざくようなジェット音が鳴り響く。
シーザーがその音に気づくよりも先に、空を飛ぶ大型バイクが落ちる彼女の元へ超高速で近づいていく。
そしてその大型バイクは────ジェットスライガーに乗ったファイズは、まさに火の湖へ落ちる寸前だったシーザーをキャッチした。
「……っ、ファイズ!? なんで──」
「上にあがるぞシーザー! 捕まっとけ!!」
火打石が火の湖に落ちた事により、大きな火柱が現れ、広がっていたエーテル結晶を次々と破壊していく。
ファイズは吹き上がる火柱から逃げるように、操縦桿を力強く握り、機首を上げて上昇する。
やがてジェットスライガーは崖の上へと上がり、ルーシー達の元へ着陸した。
「シーザー……! 貴方……!」
「ルーシー、ライト、プロキシ……」
「無事で何よりだ大将──全く、ビビらせるんじゃない……」
「シーザーが無事で何よりだよ……!」
「……悪ぃな、皆」
シーザーはバツが悪そうに頭をかいた。彼女らのやり取りを見ていたファイズがフォンを開く。
「? ファイズ、何してんだ?」
「……」
[5・8・2・1][Auto Vajin, Come Closer]
コードを入力するや否や、火の湖の方から勢いよく何かが飛び出す。
そこにはシーザーのバイクを持ち上げながら飛行する、人型のオートバジンの姿があった。
「あ……! オレ様のバイク……!」
「……これで、一件落着だな……こんどこそ、やすませて────」
「え? ちょ、ファイズ!!」
ジェットスライガーから降りたファイズは、電源が切れたかのように意識を失った。
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それから数日後。
ポンペイとの闘いで怪我を負ったタクミは、入院のために一足先に新エリー都へ帰ることとなった。
そして入院中、アキラとリンを始めたくさんの知り合いがタクミの見舞いへと訪れた。
邪兎屋、白祇重工、ヴィクトリア家政……彼らには長い付き合いという事もありタクミの容態について酷く心配され、説教をされた。
猫又に至ってはニコ達が帰ったあとも数時間は帰らなかった。
そして翌日の朝──新たな見舞い客が病室に来た。
「よっ」
「お、シーザーか」
シーザーは病室へ入り、椅子に座る。
「タクミ。もう怪我は平気なのか?」
「ああ、もう大丈夫だぜ。あと数日もしない内に退院できるってさ」
「そうか……ソイツは良かった」
「お前の方こそ、今は忙しくないのか?」
ポンペイに代わり、新たなる覇者となったシーザー。その後は旧油田エリアにて走り屋達をまとめるべく奔走をしている。
「確かにここ数日は大忙しだったけどよ、ルーシー達のお陰で、見舞いに行く暇ぐらいは取れたぜ。今日ここに来たのは……見舞いってのもあるけど、どうしてもお前にお礼を言いたくてな」
シーザーはタクミへ感謝の気持ちを伝える。
「改めて、ありがとなタクミ。お前がいなかったら、オレ様はバイクと一緒に火の湖の灰になっちまってた。今まで世話になったヤツらを……悲しませちまうところだった」
「……まあ、そうだな。俺が言えたことじゃねぇけど、あんまり無茶はすんなよ? シーザーには覇者としてカリュドーンの子を、走り屋連盟を引っ張って行くって使命があるからな」
「……覇者じゃねぇよ、あくまで代理だ。レースに勝ったのはポンペイのオッサンであって、オレ様じゃねぇからな」
「でも命を懸けて火の湖を守ったのはお前だろ? それだけでも、少なくとも俺にとっては立派な覇者である資格はあると思うぜ」
「……っ、そうかな」
シーザーは照れくさそうに笑う。
「……なあ、タクミ」
「ん?」
「お前が良ければ……またいつでもオレ様に会──郊外に来てもいいからな。待ってるぜ」
「ああ。また遊びに行くよ」
「よし、約束だからな? んじゃ、オレ様は郊外に戻るぜ。邪魔したな! 」
そしてシーザーはお土産を置いたあと、病室のドアを開けて出ていった。
彼女をベッドから見送るタクミだったが、直後に机の上にシーザーの私物らしきものが置かれているのに気がついた。
小さい袋に入っているのはビデオのパッケージ。
タイトルは『コーヒー・ラバーズ』。喫茶店を舞台にしたラブストーリーものだ。
「これ、シーザーのやつか……? アイツ、こういうのも見るんだなぁ」
彼女の意外性を発見したタクミ。
なお、数秒後に顔を真っ赤にしたシーザーが病室へ戻ってくる事は知る由もなかった。
次回からまたまた番外編を挟んで五章に突入します!