ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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誰が為に

 

 

 

 

 

六分街の雑貨店『141』にて。

 

 

「ンナナ〜!(ありがとうございました〜!)」

 

 

時は正午。

 

タクミは数量限定の焼肉弁当を、行列の中残りあと一個という所で手に入れる事ができた。

 

インターノットで話題になっていたこの弁当。タクミはこれを一度食べてみたいと思っていた。

 

早速家に帰り、頂こうと思っていたのだが──

 

 

「え〜!? ここも売り切れなの!?」

 

「ンナ……(はい、先程のお客様の分で最後でして……)」

 

 

振り返ると二本角の鬼の少女が、ガーンという表情を浮かべているのが見えた。

 

あの様子を見るに、恐らく彼女も焼肉弁当を買おうと思っていたのだろう。

 

 

「うぅ〜……ルミナスクエアの所も売り切れてたし、もう何処にも売ってないのかなぁ……」

 

「……」

 

 

タクミは後ろ髪を引かれるような感じがしたが、彼とてこの焼肉弁当は食べたくて買った物なのだ。

 

彼女には悪いが、他の店で探してもらうしかない。

 

 

「……」

 

「……はっ」

 

 

再び振り返ると、一瞬少女が羨ましそうな目でこちらを見ていたが、こちらに気づくと慌てて目を逸らした。

 

 

(……そんな目で見てもダメだ。俺だって食いたかったんだぞ……)

 

 

タクミは心を鬼にして店を出ようとする。後ろから視線を感じながら。

 

 

「……」

 

「……」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいし〜!!」

 

「それはなにより」

 

 

数分後。いたたまれなくなったタクミは少女に結局、焼肉弁当を譲ることに決めた。

 

最初は気が進まなかったが、少女の花の咲いたような笑顔を見たらどうでも良くなった。

 

どうやら彼女、かなりの大食いなようであっという間に焼肉弁当を平らげてしまった。

 

 

「ふ〜! ご馳走様でした!」

 

「美味しかったか?」

 

「うん! すっごく美味しかったよ! どうもありがとう、お兄さん!」

 

「……」

 

 

お兄さん。悪くない響きである。

 

 

「そういやお前、名前はなんて言うんだ?」

 

「私? 私は蒼角だよ! えっと……お兄さんのお名前は──」

 

「タクミだ」

 

「それじゃ……タクミ! はい、これ!」

 

 

そう言って蒼角が差し出してきたのはディニー。恐らく弁当代なのだろう。

 

 

「……蒼角、お代は別に──」

 

「あ、もうこんな時間! 早く戻らないと! じゃあタクミ、またね!」

 

「あ、ちょ──」

 

 

蒼角はそう言ったあと、さっさと行ってしまった。

 

タクミは年端もいかない女の子相手に弁当代を貰うつもりは全くなかったのだが……

 

 

「……まあ、いっか」

 

 

ここは彼女の感謝を素直に受け取ることにし、帰路に着く。

 

焼肉弁当の代わりに何を食べようかと考えていたら──

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

 

家の前で誰かが倒れていることに気づく。その姿は、タクミにとって見覚えのあるものだった。

 

 

「青衣さん? 青衣さん!? どうしたんすか!?」

 

「……」

 

 

タクミは倒れている青衣の元へ駆け寄り、肩を叩く。すると青衣は目を開く。

 

 

「……っ、タクミ……か」

 

「青衣さん、俺の声聞こえるか……?」

 

「……タクミ、頼みがある」

 

「頼み?」

 

「至急、我を治安局へ連れて行ってはくれぬか……?」

 

「……分かった」

 

「……あいすまぬ」

 

 

そう言って青衣は再び目を閉じた。彼女の身に何が起こっているのかは分からないが、一刻の猶予も許されない状況なのは分かった。

 

目的地はルミナスクエアのルミナ分署。そこへ向かうには地下鉄かバイクで行く必要があるが……

 

この時間帯は非常に混みやすい。果たしてそれで間に合うのだろうか。

 

タクミは数秒程悩んだのち──決断する。

 

 

「背に腹は……変えられないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治安局ルミナ分署前。

 

治安官のセスは、買い出し終わりにある人物の姿を見かける。

 

 

「……タクミ? 青衣先輩!? 一体どうしたんだ!?」

 

「セス、頼みがある……青衣さんを署内まで運んでくれないか? 大至急だ!」

 

「わ、分かった!」

 

 

セスはタクミから青衣を預かり、そのまま大急ぎでビルの中へ入っていった。

 

 

……実は、タクミが青衣を発見してから分署に送り届けるまで、一分もかかっていない。

 

六分街からルミナスクエアまで、どうやって一分足らずで移動したのか。

 

その答えはただ一つ。タクミがファイズのアクセルフォームに変身したからである。

 

とはいえ、アクセルの力で道路を爆走すれば一発でアウトになるだろう。

 

なので誰の目にもつかないよう、新エリー都のビルを屋上を飛び移りながらルミナ分署へと辿り着いた。

 

ホロウの中でもないのに、ファイズに変身するリスクはタクミとて重々承知している。

 

だがいくら相手が治安官とはいえ、青衣はタクミの大事な友人だ。

 

友人を助けるためならば、迷う事は無い。タクミはそう思ったのだ。

 

上着の下にファイズのベルトを隠しながら、とりあえずは一安心と安堵の息を吐くタクミだった。

 

 

 

 

 

そして数十分後。分署の前で待っていると、青衣とセスが扉から出てきた。

 

 

「タクミ」

 

「あ、青衣さん! 体は大丈夫なのか?」

 

「心配無用、我は何事もない。先程は充電が切れかけていた故、極限低電力モードに入っておったのだ」

 

「充電切れだったのか……」

 

「然り。ただ、ぬしのおかげで充電残量が0%になる前に分署へ辿り着く事が出来た。感謝するぞ」

 

「タクミが運んで来てくれたから良かったものの……今度はちゃんと充電しといてくださいよ、青衣先輩」

 

「肝に銘じておく。心配をかけたな」

 

(……まあ、青衣さんは気絶してたから俺がファイズに変身した事もバレてない。バレてたらどうしようかと思ってたけど、結果オーライって奴か)

 

 

タクミがそんなことを思っていると、青衣がタクミに近付き、耳打ちをする。

 

 

「……タクミよ」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先程までの道中、まことに快適なる旅であったぞ」

 

「…………」

 

「タクミ? 青衣先輩? どうしたんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……バレてないよな?)

 

 

冷や汗が止まらないタクミだった。

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