「あった! あそこだ!」
猫又が遠くに落ちているアタッシュケースを指差す。
今日邪兎屋は依頼人から、ホロウ災害に巻き込まれた際に置いてきてしまった荷物を回収して欲しいとの依頼を受けた。
依頼人から説明して貰った荷物の特徴を照らし合わせ、このアタッシュケースが目的のものだと断定した。
「よし、今回は何事もなく無事に完了したわね!」
「さっさと帰ろうぜ! 早くスターライトナイトの続きを見ねぇと!」
ニコはアタッシュケースを拾いに行く。
しかし、ニコが拾うよりも先に、突如現れた謎の青年がそのアタッシュケースを拾い上げた。
「え?」
「……? ちょっとアンタ、何してんのよ」
「悪いね。この荷物は、僕が預かる事になったんだ」
「はあ??」
突拍子もなく青年はそんな事を言う。アンビーは青年に質問をする。
「……貴方も依頼人から依頼を受けたの?」
「いや? 僕はただこのアタッシュケースの中にある『お宝』が欲しかったまでさ」
「あのね、意味分かんないこと言わないでくれる? その荷物はね、あたし達が回収して来いって言われたものなのよ」
「残念だけど……僕としても、折角見つけたこれを譲る訳にはいかなくてね。見逃してくれるかい?」
「それは無理ね。返す気がないんだったら、力ずくで奪い返すまでよ!」
邪兎屋の四人は戦闘態勢に入る。青年はため息を吐きながら──銃のような何かを取り出す。
「……仕方ないな。見逃してくれないなら……こっちも強行手段に出よう」
「……!? なんだあの銃……!?」
青年は右手に銃を持ちながら、一枚のカードを取り出す。
そしてそのカードを銃に装填した後に、フォアエンドをスライドする。
[Kamen Ride]
青年はその銃を高く掲げ──引き金を引いた。
「変身!」
《DIEND》
銃口からエネルギーの様なものが射出され、やがて青年の体に鎧のように纏われていく。
そして青年は姿を変え────ディエンドへと変身した。
「……その姿……!」
「アンタ、何者……!?」
「僕かい? 僕は通りすがりの……ホロウレイダー、ってやつさ」
ディエンドは一枚のカードを取り出し、再びディエンドライバーに装填する。
[Kamen Ride]
「ここで会ったのも何かの縁だ。折角だし、君達にピッタリな遊び相手を呼んであげるよ」
《FAIZ》
ディエンドライバーの引き金が引かれ、銃口から何かが飛び出す。
忙しなく動き回る複数のエネルギー。それらはやがて、とある一つの姿を形作った。
その姿は、邪兎屋の面々にとっては非常に見慣れている姿だった。
「……嘘」
「マ……マジかよ……!?」
ディエンドが召喚したのは、彼らがよく知る友人であるタクミが変身するファイズそのものだった。
四人の目の前に立ちはだかったファイズ。ファイズエッジを構え、仮面越しにこちらを睨む。
「それじゃあ、楽しんでくれたまえ」
ディエンドの背後に銀色の幕のようなものが出現し、彼はそのままどこかへと消えてしまった。
「あっ、ちょ……待ちなさ──」
「ハァッ!!」
「うわっ!?」
ディエンドを追おうとしたニコに、横からファイズが襲いかかる。
「ちょ……ちょっと! あんたタクミよね!? あたしの顔忘れたの!?」
「……ていうかこのファイズ、そもそも本物なのか……!?」
「その可能性は限りなく低いわ。本物のタクミなら、私達に刃を向けるような真似はしない」
ファイズはファイズエッジを構えて、アンビーへと斬りかかる。
アンビーも電磁ナタを引き抜き、迎撃の姿勢に入る。
(ファイズと戦うなんて、考えた事は無かったけど……)
アンビーはファイズからの猛攻をかわし、ナタで反撃をする。
電磁ナタとファイズエッジ、二つの剣が火花を散らし交差する。そしてアンビーはついにファイズへ斬撃を叩き込む事に成功する。しかし──
「……!」
胸部の装甲ではなく、腹部の黒地の部分に刃を当てたにも関わらず、ダメージを与える事が出来ない。
ファイズは刃を右手で弾き、そのままアンビーへ横蹴りを入れた。
「タァッ!!」
「ぐっ……!」
「アンビー!」
吹き飛ばされたアンビーをビリーが受け止める。蹴られる直前に、後ろに飛び退いておいたおかけでダメージは最低限で済んだ。
「アンビー、大丈夫か!?」
「問題ないわ。けど、やっぱりファイズに対して生半可な攻撃は通らないみたい」
「ニコ、どうする?」
「……!」
ファイズはフォンを開いてENTERキーを押す。
[Exceed Charge]
「……っ、来る……!」
フォトンブラッドがチャージされたファイズエッジを構え、ファイズは地面を蹴ってニコたちに向かって走り出した。
「アミリオン!」
「ンナナ!!」
ニコが叫ぶと同時にアミリオンは持っていた煙幕弾を地面に投げつける。
あっという間に煙が立ち込め、『スパークルカット』を繰り出す直前だったファイズの視界は真っ白になってしまう。
煙が晴れた時にはもう、邪兎屋の四人の姿は無かった。
「…………」
対象を見失ったファイズは、そのまま虚空へと消え去っていった。
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「ファイズの偽物?」
「そう」
ファイズを撒いてホロウから出た四人。真っ先にタクミの所へ行き、事情を説明していた。
ちなみにタクミはこの日、家でずっとゲームをしていたという。
青いホロウレイダーによって召喚されたファイズはやはりタクミ本人ではなかった。
「姿、形、強さまでぜーんぶ本物そっくりだったんだぞ。アンビーだってボロ負けしてたし」
「……してないわ。あれはニコの指示で余儀なく撤退しただけ」
そのホロウレイダーはファイズ同様、ベルトを巻いていたらしい。
しかも謎のワープ能力や召喚能力まで兼ね備えていると来た。
「んー……デルタの事と言い、調べなきゃいけない事が増えたなぁ……」
「まぁそう気負うなよタクミ。なんか困った事がありゃあ、いつでも頼っていいからな」
「そんな事よりあのホロウレイダー、思い出しただけでもムカッ腹が立つわ! アイツのせいで結局依頼は失敗しちゃったし……今度会ったらボッコボコにしてやるんだから!」
ビデオ屋にうがーっ!とニコの悔しそうな声が響き渡った。