ZZZ × 555   作:びぎなぁ

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例えばこンナハプニング①

 

 

 

 

 

 

朝。スマホのアラームが部屋に鳴り響く。

 

タクミは二度寝を決め込むべく、アラームを止めようとスマホに手を伸ばす。

 

 

「……?」

 

 

まだ自分は夢の中にいるのだろうか。どれだけ頑張って手がスマホに届かない。

 

仕方なく上体を起こし、未だアラームが鳴り響くスマホを探そうとする。

 

その時、ふと自分の腕が視界に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

短い。

 

短く、黒く、それでいてふにふにとした柔らかい腕がそこにはあった。

 

 

 

「……??」

 

 

タクミは自分の足を見る。

 

短い。

 

短く、黒く、それでいてふにふにとした柔らかい脚がそこにはあった。

 

というか、視界に映る自分が寝ていたはずのベッドがやけに広く感じる。

 

寝起きで脳が覚醒しない最中、タクミはある最悪の可能性が頭をよぎり、自分の頭を触ろうとする。

 

 

「…………!?」

 

 

届かない。

 

あまりに腕が短すぎて、頭を触ることが出来ない。

 

タクミは青ざめながらベッドから飛び降り、部屋にある鏡の前に行く。

 

そこでタクミは目にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ンナ……?」

 

 

短い手足。黒色の愛らしいまんまるボディ。うさぎのような長い耳。

 

鏡に映っていたのは、ボンプだった。

 

 

「やっほ〜タクミ! 遊びに来たぞ──って、ん?」

 

 

その時ちょうど猫又がタクミの部屋に遊びに来た。

 

そして鏡の前にいる一匹のボンプが目に入る。

 

 

「……ボンプ? なんでタクミの部屋に……」

 

「ねっ……猫又……」

 

「……え? その声、タクミ?」

 

 

ボンプと化したタクミは、猫又を見上げながら固まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「タクミがボンプに……!?」

 

「そうみたいだンナ」

 

 

兄と姉、そして邪兎屋の四人といういつもの面子がビデオ屋に集まる。

 

ビリーはタクミボンプをじっと見つめる。

 

 

「うーん……どっからどう見てもボンプそのものだな」

 

「ンナナ?(大丈夫?)」

 

「イアス……」

 

 

イアスがタクミボンプを心配そうに見つめる。まさかイアスと同じ身長になるなどとは思いもしなかった。

 

イアスはタクミボンプの頭をよしよしと撫でる。

 

 

「……ありがとンナ」

 

「……なんかほっこりするねぇ。別にこのままでもいいんじゃない?」

 

「冗談じゃないンナ! 元人間からしたらこの体は色々不便すぎるンナ!」

 

「ていうかアンタ、その語尾どうしたの? もしかしてボンプに精神引っ張られてるんじゃないの?」

 

「……なんか自然とこンナ口調になっちまうんだよ……」

 

 

自身がボンプになってしまったショックから未だ立ち直れないタクミをアンビーが抱きかかえる。

 

 

「……前に私と貴方が入れ替わった時は、エーテリアスの仕業だったけど……ここ最近、なにか思い当たる事はある? ホロウに入ったとか」

 

「……アンビー?」

 

「いや、ホロウには入らなかったンナ……昨日はずっと家でゴロゴロしてたンナ」

 

「ちょっとアンビー?」

 

「それなら、一度カスタムショップで見せて貰った方が──」

 

「アンビー!」

 

 

猫又が会話を遮る。

 

 

「……どうしたの、猫又」

 

「どうしたもこうしたもないでしょ! 何さりげなくタクミを抱っこしてるんだ!」

 

「この方が話しやすいと思っただけよ」

 

「ぜーったい違うでしょ!」

 

「はいはい、そこまでだ。確かにアンビーの言う通り、一度エンゾウおじさんの所で見てもらった方がいいな。それじゃあ行こうかタクミ」

 

「ンナ」

 

 

ボンプ関連ならカスタムショップが最適だろう。タクミボンプはアキラ達と一緒にエンゾウの元へ行くことにした。

 

 

「アンビー! 今度はあたしが持つぞ!」

 

「いや猫又、別に俺は一人で歩けるから──ンナナナナナ!! 引っ張るな引っ張るンナ!!

 

 

 

 

 

 

そしてカスタムショップ TURBOにて。

 

エンゾウはタクミボンプを検査する。

 

 

「ふむ……どこもおかしな所は無いな。どこにでもいる、普通のボンプだ。タクミの意識が入ってるって事以外はな」

 

「マジでボンプになっちまったンナか……」

 

「わざわざ来てもらったのにすまんが……人間がボンプになるなんて聞いたことが無い。力にはなれそうにないな」

 

「大丈夫だよ。ありがとうエンゾウおじさん」

 

 

アキラと一緒に店を出る。外では邪兎屋の四人とリンが待っていた。

 

 

「店長、どうだった?」

 

「……リンがいつもしている感覚同期とかじゃない。やはりタクミは、本当にボンプになってしまったみたいだ」

 

「お兄ちゃん、どうする? これはこれで可愛いけど、さすがにボンプのままじゃ色々と不便だよね……」

 

「ひとまず色々と調べてみるしかない。タクミ、原因が見つかるまでは、家でじっとしてるんだよ」

 

「ンナ……」

 

「ようし、タクミ! それまでは部屋で一緒にゲームでもしようぜ!」

 

「この体でどうやってコントローラーを持つん──」

 

 

そこまで言いかけたところで、タクミボンプはハッとした表情を浮かべる。

 

 

「……兄ちゃん、今日って誰か来る予定あったンナ?」

 

「今日かい? 今日は確かグレースさんがうちにビデオを借りに────!?」

 

「……!!」

 

 

アキラもハッとした顔をする。

 

なんという事だろう。一番会ってはいけない人物が今日、ビデオ屋に来る予定だった。

 

 

「だ、大丈夫だよタクミ。部屋にいればグレースさんだって気づかないはずさ……多分」

 

「…………ンナ」

 

 

見つかってしまえばどうなるか、もはや想像に難くない。

 

グレースが来る前に、その短い足でトテトテと自分の部屋へ駆け戻るタクミボンプだった。

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