最強治療師が零細ファミリアにコンバージョンするのは間違っているだろうか?   作:やってられないんだぜい

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 Merry Christmas


もうゴールしてもいいかな?

 

 皆んなで回る事になった3人。しかし、ヘスティアがベルにグイグイとアタックし、彼女の勢いに戸惑うベル、それを後ろから楽しそうに微笑むヘルと、結局2人+ヘルといういようがいまいがあまり変わらない形が出来上がってしまった。

 

 「はい!ベルくん、あーんっ!」

 「恥ずかしいですよ!神様!」

 「おいおいベルくん、相手はこの僕だぜ。こう見えても天界じゃそれなりにモテテたんだ。恥ずかしがる事なんて何処にもないじゃないか」

 

 天界でのモテ自慢をするヘスティア。しかしモテると言った彼女だが、それは彼女にとっては黒歴史に近いものだった。もしこの場に天界からの友神がいたら、とても口にできない言葉。

 

 確かにヘスティアはモテた。その小じんまりとした可愛らしい容姿に、アンバランスな程己の存在を主張するたわわな胸を好む男神は一定数おり、ヘスティアは天界で度々交際を申し込まれていた。しかし、彼女が首を縦に振った事は一度もない。それはヘスティアに惚れる奴は、どいつもこいつもろくでもない連中だったからだ。変わり物好きな奴、小さい子が好きなロリコン変態、そんな奴等の集まりだったのだ。そんな連中を片っ端からフッた結果、誰にも身体を許さない者として『処女神』という異名が彼女に付けられたと言う過去がある。

 

 とまぁ相手がアレではあったが決して嘘ではない、が無闇矢鱈に吹聴する気はない。ベルを射止める為の手段の一つだ。

 

 そんな恋に生きる彼女の地雷を、ヘルは軽々しくで土足で踏み抜いてしまう。

 

 「そうだぞベル。そんなんじゃいつまで経ってもアイズをデートに誘えないぞ!」

 「えぇ!?アイズさんとデートォ!?」

 「………ヘ〜ル〜く〜ん〜、それは一体どう言う意味だ〜い??」

 「あっ…やべぇ」

 

 気付いた時にはすでに時遅し。ベルにいち早くアイズとくっついて欲しい(1番アイズと結ばれそうだから)と思うヘルの心が口を滑らせてしまった。それはベルを愛し、そのベルが恋するアイズを目の敵にするヘスティアの前では一番の禁句。ゆらりと振り返る彼女の口元は不気味に笑っており、それが余計に怖さを引き立てる。ゆっくりとヘルとの距離を詰めた彼女は自身とベル以上に身長差があるヘルに顔を近づける為、背伸びをしてヘルの顔を覗き込む。美少女の背伸びした上目遣いにここまでドキドキ……ある意味ドキドキするが、期待に胸を膨らませないのは何故だろう。

 

 「ヘルく〜ん、僕はヴァレン某の練習台って言いたいのかい?」

 「いえ、決してそう言う意味じゃ──」

 「そう言ってるも同然じゃないか!ヴァレン某とのデートの予行練習を僕でしろって事だろーっ!そんなの僕に対する冒涜だよっ!」

 「ちょっと、落ち着いてくださいヘスティア様!ちょっと!…ちょっと耳を貸して下さい!」

 「なんだいっ!僕は神様だよっ!神様に向かってヘッドロックかますなんて君にはバチが当たるよ!」

 「乱暴なのは後で改めて謝りますから聞いて下さい!ヘスティア様!」

 

 ヘスティア様を押さえつけると、彼女だけに聞こえる様に耳元で囁く。

 

 「いいですか、確かに俺はベルの恋心を知ってますし、だから結ばれて欲しいと思っています」

 「なんだい?君は僕と喧嘩がしたいのかい?」

 「そうじゃありません。いいですか、これはベルの為でもありますが、同時にヘスティア様に取ってもチャンスなんですよ」

 「………どう言う事だい?」

 「こういう建前を設ければベルは恥ずかしく思いながらも付き合ってくれるでしょう。つまりこの建前を使えばヘスティア様はいつでもベルとデート出来るって事ですよ」

 「……ほう?」

 「確かに最初は練習かも知れません。でもデートを重ねる内にヘスティア様に気持ちが傾くかも知れません。勿論、ヘスティア様がベルが楽しいと思える様なデートをする事が出来ればですが」

 「…ふむふむ」

 「手の届かない高嶺の花から、身近な存在に目移りするなんてよくある話です。人の心は秋の空より変わりやすいんですよ」

 「成程、確かに一理あるね」

 

 ヘルの言い分に納得するヘスティア。確かに物語だとよくある展開だ。最初好きだが顔を合わせる回数が限られてるヒロインと、嫌いだけど常に隣にいるヒロイン。いがみ合っていた筈の2人が次第に惹かれあい、遂には最初好きだったヒロインを差し置いてゴールインする物語。今の現状こそ正しくソレ。しかも自分は既に恋人一歩手前の仲(ヘスティアの感想)、もう少しで結ばれるのは自分になる。そうと分かれば今の状況を最大限に利用しようとヘスティアは考えた。さっきのモテ自慢と同じ、要は使い方である。

 

 「そう言う事なら仕方ないなぁ〜、まだ経験の浅い君を僕がエスコートしてあげよう!いつかまた来た時は今度はベルくんがエスコートしてくれよぉ〜!」

 「か、神様ッ!?」

 

 上機嫌になったヘスティアはベルの腕を取り自分の腕と絡ませてカップルの様な振る舞いをする。対するベルはヘスティアが腕を組む際に自分の腕に当たるヘスティアの柔らかい胸が歩く度に当たり、顔を真っ赤にさせている。

 

 (積極的だなヘスティア様〜)

 

 その光景を呑気に後ろから眺めていたヘル。だがそんな呑気な祭りの終わりはすぐに訪れた。

 

 「アレ?ヘルやないか!おーい、元気してるかぁーっ!!」

 

 そんなヘルに声をかける者がいた。とても聞き覚えのある声。つい最近まで身近だったその声の主は、顔を見なくてもすぐに分かった。ヘルは冷や汗をかきながらゆっくりと振り返る。彼女の横に1番居て欲しくない人がいない事を望みながら。しかしそんな望みはあっさり打ち砕かれた。

 

 「なんか数日見ないだけで久々に感じるな!どや?元気にしとるか?」

 「はい……まぁまぁです……」

 「なんか壁感じんな、改宗の時もそうやったけど別に他派閥になったからって敬語じゃなくてええんやで。ウチとヘルの仲やんか!アイズもアレからさb──」

 「ロキ、余計な事言わなくていいから」

 「お、おう…すまんかったな……」

 

 ヘルがファミリアを去った後のアイズの近況を話そうとしたロキだったが、彼女が余計な発言をする前に喉に鋭く尖らせた指先を押し当てるアイズ。レベル5である彼女がその気になれば人の肉体を断つのに武器は必要ない。相変わらず厳しいツッコミに恐怖するロキとドン引きするヘル。

 

 アイズはヘルが自身の行動にドン引きしている事に気づく事も無く、ロキを押し退けてヘルの前に歩み寄る。久々な再会だと言うのに何を言えばいいのか分からない。こんな時、自分の親友であるティオナなら持ち前の明るさで楽しくお話し出来るのだろうなと羨ましがる。

 

 何も言わないアイズに痺れを切らしたヘルは、自ら会話を切り出す。

 

 「久しぶりだなアイズ」

 「うん…」

 「元気にしてたか?」

 「……うん」

 「………」

 「………」

 

 (会話が続かねぇ!!)

 

 アイズとヘル、2人の間に気不味い空気が流れる。アイズあったせいでどうやって会話すればいいか分からない。昔みたいにと言っても簡単な話じゃない。意識しようとしてなくても意識してしまう。昔から見慣れた姿の筈の彼女が、見た事ない服を着ているだけでこうも印象が変わって見えてしまう。

 

 「そ、そや!ヘルは今日1人で来たんか?」

 

 2人の気まずい空気を察してくれたのか、ロキが助け舟を出してくれた。救いの手を差し伸べてくれたロキを見ると小さくサムズアップしている。やっぱり貴方は人間(子ども)想いの良い神だよ。

 

 「いや、実はヘスティア様とベルと一緒に来てるんだ。それじゃ2人待たせてるから俺はこれで──」

 「どチビなんてどこにいるんや?」

 「え?」

 

 ロキに言われてやっと気付く、話してる間に2人と逸れてしまった事を。ロキの声を聞き取り立ち止まった自分だけが取り残されてしまった事を。

 

 「マジかよ……」

 

 そしてベルは大事な事を忘れていた。ロキのお気に入りは誰だったかを。

 

 「あいたたた!スマン、アイズたん。ちょっと腹の調子が悪ぅなってしもうたからトイレ行ってくるわ!」

 「え?」

 「ヘル、悪いんやけどウチが戻ってくるまでアイズたんと祭り回っててくれへんか?目ぇ離すとすぐダンジョン潜ろうとするからしっかり手ぇ繋いで逃がさないよう頼むな!それじゃ!」

 「はぁ!?ちょ、ちょっと待てぇぇぇええ!!!!」

 

 ヘルの叫びも虚しくロキは人混みに紛れて姿をくらました。そうだった、アイズはロキの大のお気に入り。先程のサムズアップも俺への助け舟では無く、1人で歩く俺とアイズを2人っきりにさせるアイズへのアシスト。

 

 「……」

 「……」

 

 取り残されたヘルは呆然と立ち尽くす。隣にいるアイズをチラっと見るが相変わらず反応が薄い。相変わらずだった。相変わらず彼女は人形の様に無口で、無表情で、綺麗な髪と顔をして──

 

 「フンッ!」

 

 己の両頬を気付けに思いっきり叩く。いかんいかん、また馬鹿な事を考えてしまった。今すぐこの場を離れなくては。

 

 「アイズ、またな。ロキが戻るまでここで待っててくれ」

 「あ……」

 「俺はヘスティア様やベルを探さなきゃいけないからここで──」

 

 いち早くこの場を離れようとしたヘルだったが、服が何かに引っ張られ前に進めない。嫌な予感がし振り返ると案の定アイズが裾を遠慮気味に指先だけ掴んでいた。アイズさん。そんな可愛らしく掴んでるけど、多分それだけで全力の俺より力は上です。

 

 いや、そんな事はどうでもいい。それよりも彼女が何か言う前に離れなければいけない。そうじゃないと俺のよく知っている彼女とのギャップで気の迷いが生じる。

 

 「アイズ、悪いけど早くしないと見つけられなくなるから」

 「…一緒に」

 「なに?」

 「一緒に探してあげる、神様達。それまでは…」

 

 ほら来たギャップ攻撃。誰だよ、いつの間にアイズにこんな技を教えた奴は。リヴェリアか、リヴェリアなのか。しかし、その手には食わん。

 

 「ロキはどうすんだ?」

 「…大丈夫」

 「大丈夫ってなにが?」

 「約束通りだから……」

 「…約束?」

 「そう、タイミングを見て2人にしてくれる約束」

 「………」

 「聞いた、一昨年ロキと怪物祭回ったって話」

 「………」

 「私も、一緒に回りたい…………ダメ?」

 

 

 

 

 ごめんベル。俺、もうダメかもしれない。

 





 本命の相手が変わるアニメ、今夜ABEMAで放送してたね
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