最強治療師が零細ファミリアにコンバージョンするのは間違っているだろうか? 作:やってられないんだぜい
Happy New Year
「…………美味いか?それ。いくら祭り限定とはいえ『抹茶ストロベリー生チョコクリームキウイの唐辛子添え』なんて酒の勢いで考えたメニュー頼んでるのお前だけだったぞ?」
「うん美味しい……食べる?」
「遠慮します」
全く想像出来ない味のジャガ丸くんを美味しそうに頬張るアイズにコイツの味覚は大丈夫なのかとドン引きしながら通常のプレーン味をかじるヘル。
なし崩し的にアイズと回る事になったヘルだったが、最初以外は
それは、彼女もなんだかんだ普通の女の子だと言う事だ。今までヘルはダンジョンでのアイズしか知らなかった。モンスター達を無表情で葬り、返り血を浴びても平然な姿。剣に生き、剣に死ぬ、それ以外は全て戯言、そんな印象すら受けた。彼女の『剣姫』という二つ名もピッタリと思った。
でも違った。自分の知らなかったアイズがそこにいた。もしかしたら変わっただけかもしれないが、少なくとも今のアイズにそんな印象は待てない。人より表情は硬いが楽しければ笑うし、苦しければ苦い表情を浮かべる。今日もジャガ丸くんを見て目を輝かせて、アマゾネスの客寄せ用の際どい服に顔を赤くする。そんな普通の女の子。
しかし……
「ん?揺れてねぇか?地震か」
「……違う、これは」
地面から伝わる揺れ。地震かと思ったヘルだが、一級冒険者であるアイズは感じ取っていた。人ならざるモノの気配を。
ドォォォォン!!
突如聞こえる轟音。何かのアクシデントが起きたのは明白だった。
「──ッ」
アイズはすぐさま建物の上にジャンプし、周囲の異変を探す。するとここからやや離れた所に巨大な砂煙が立ち込めていた。聞こえてきた方向と照らし合わせるに、先程の音の正体はあそこで間違いない。
「ヘル、これ借りる。ここで待ってて」
「オイッ!ちょっと待てアイズ!」
アイズは一度地上に降り、ヘルの仕込み剣入りの杖を強引に奪い取ると祭りでごった返しの地上を避け、障害物の無い建物から建物へ飛び移り目標地点を目指し駆ける。取り残されたヘルはアイズの背中を追い駆ける。
「もうっ!折角の祭りだってのに台無しにしてくれて!」
「本当ね、気分最悪ったらありゃしないわ。【ガネーシャ・ファミリア】には後で報酬請求してやる」
「……何気にガメツイですね、ティオネさんって」
「レフィーヤ、今夜ロキによる胸成マッサージの刑だから」
「ごめんなさい!!それだけはヤメて下さい!!」
祭り用に捕らえられていたモンスター達の脱走、その駆除をしていたティオネ、ティオナ、レフィーヤの3人。愚痴を溢しながらも迅速に対処する姿は流石の一言だ。
「………?何これ?」
「ティオナ?どうし………揺れ?」
「地震……じゃありませんよね」
ドォォォォン!!
揺れを感知した直後、襲いかかる轟音と地鳴りに3人は足を止める。
「何…今の!?」
「分かんないわよ……ッ!?見てアレ!」
「新種!?」
「あんなモンスター【ガネーシャ・ファミリア】は一体どこから!?」
3人が目撃したのは地面から生える巨大な触手みたいなモンスターであった。しかも周りには沢山の人がおり、このままだと大勢の人が犠牲になる。
「私とティオナはモンスターを叩く!レフィーヤは逃げ遅れた人を避難させて!戻ってもまだ私達が戦ってたら様子を見て魔法の準備をお願い!」
「了解!」
「はいっ!」
指示を出したのはティオネ。すぐさま状況を判断し、指示を出すところは伊達にフィンを尊敬していない。
突如発生したモンスターに人々は立ち尽くす。身を隠すなり、逃げ出すなり出来ないのは足がすくんでしまっているからである。当然モンスターはそんな人々を逃しはしなかった。
『──!』
「ひっ!?うわぁぁ!!」
モンスターが標的に襲いかかる。冒険者でなかった彼らはただ悲鳴を出す事しか出来ない。しかしモンスターの攻撃が彼らを襲う前に2人のアマゾネスが阻止する。
「そーれっ!」
「祭り台無しにすんじゃないわよっ!」
技とは言えない力任せの自慢に叩きつける拳。しかしレベル5まで己を鍛えたその拳は地面を砕く威力を誇る。
「……」
「……」
「「かったぁー!?」」
しかしモンスターの打撃耐性は尋常じゃなく、殴った方の2人の方がダメージを受けていた。しかもモンスターはピンピンしている。
「打撃じゃ埒が明かないじゃない!」
「武器持って来れば良かったぁ!」
『──‼︎』
「来るわよ!」
「分かってる!」
「ここまで来れば大丈夫です」
「あ、ありがとう」
レフィーヤはティオネの指示に従い避難誘導を行っていた。そして全ての避難誘導が終わり、2人の元へ駆けつけようとしていた。
「私は戻りますが、念の為ギルドに避難を」
「私の…私の子がいない!?」
「え?」
「私の娘が……多分まだあそこに!」
「ッ!?」
レフィーヤは女性の旦那に彼女を任せて走る。本来楽しい日の筈である祭り、そんな日を悲劇になんかさせない。
戻ってきたレフィーヤが見たのはモンスター相手に防戦一方な2人の姿だった。子供を探す前にこのモンスターをどうにかしなければ。しなしこの2人を相手に互角以上に戦うなんてと驚いているレフィーヤだったが、少し見てる内にモンスターの特徴が見えて来る。
(あのモンスター、ティオネさん達の攻撃受けても平然としている?もしかして……)
【解き放つ一条の光 聖木の弓幹 汝 弓の名手なり】
(あのモンスター、物理攻撃に強いのかも。なら私の魔法で….)
【狙撃せよ妖精の射手 穿て 必中の矢】
速度重視の魔法で効果を試す。もし効果があったら今度はもっと大きな魔法で。自分も2人の、アイズの力になれる様にと気合を入れるレフィーヤ。だが魔法を発動しようと思ったその時だった。ティオナを攻撃しようとしていたモンスターが突如レフィーヤに反応する。驚いた時にはもう遅かった。突如地面から似た様モンスターがレフィーヤの横っ腹を襲う。反応すら出来なかったレフィーヤは空高く打ち上げられ地面に叩きつけられた。
「レフィーヤ!?」
レフィーヤを助けようと駆け出す2人だったが、モンスターの動向に変化が起きる。先程まで2人が相手にしていた職種の様なモンスターが一瞬震えたかと思うと、先端が裂かれ中から口を生やした花型モンスターに姿を変えた。
『ジャァァァァァァ!!!』
「咲いた!?」
「それじゃさっきの蕾だったの!?」
花型姿を変えたモンスターはところかしこにツルを生やし、ティオネ達は身動きが取れずレフィーヤの救出が出来ずにいた。
「レフィーヤ起きなさいッ!」
「あーもうっ!邪魔コレぇ!」
(…………あれ?………私……ッ!?)
数秒気を失っていたレフィーヤが起きた直後に感じたのは痛み、耐え難い苦痛。痛みでまともに呼吸が出来ない。
「あぁ、あぁぁ…!?」
痛みで気付くのに遅れた、既にモンスターは自分を食べようと捕食態勢に入っている事を。大きく口を開け、涎をダラダラと垂らし、強烈な異臭が鼻を刺激する。
(嫌だ………嫌だ!)
這いずり回るレフィーヤ。そんなレフィーヤを嘲笑うかの様にゆっくりと距離を縮める。『ほら、醜く逃げろ、諦めたその時が貴様の最期だ』とでも言う様に焦らすモンスター。少しでも生き残ろうと立ちあがろうと声を張り上げ叫ぶレフィーヤにとうとう我慢の限界がきたモンスターは更に口を大きく開け捕食しにかかる。
「…ぁ」
レフィーヤが見たのは自分を食そうとした花が後ろにのけぞる姿。そして自分が最も助けられたく無い人物だった。
「間に合った」
隣に立ちたいと願うアイズに再び助けられたレフィーヤ。自らの情けなさに涙が出て来る。
『ジャァァァァァァ!!』
しかし花型モンスターはピンピンしていた。しかも新たに3体姿を現す。アイズは驚愕していた。自分の剣撃が効いていない。
「だから待てって言ったろアイズ!」
「ヘル?」
「あっ!ヘルだー!久しぶりー!」
「どうしてアンタがここに!?」
「そんなんどうでもいいだろ!アイズ!そいつは俺専用らしくてな!俺以外が使っても切れ味ゼロなんだ!」
『ジャァァァァァァ!!』
己を攻撃してきたアイズに標的を定め、4体の花型モンスターが襲いかかる。剣だけでは歯が立たないと思います【
アイズにモンスターを任せる一方でヘルはレフィーヤの対応をしていた。
「……ヘル…………さん」
「喋るな。今治してやるから」
「ちが………」
レフィーヤが何を言おうとしてるかは分からないが、先ずは傷の手当てが先だ。
【
「そうか!アイズ魔法よ!コイツら魔法に反応してるわ!」
「ッ!?」
ドスッ
「ヘル……さん?」
「………ゴフッ」
レフィーヤが見たのは自分を助けようとしていたヘルが、腹部を貫かれ口から血を吐く姿だった。
※胸成マッサージは誤字ではありません