最強治療師が零細ファミリアにコンバージョンするのは間違っているだろうか? 作:やってられないんだぜい
昨日なんて1日のお気に入り増加数過去最高なのなんでなのか、よく分かりませんがとても嬉しく思います。ありがとうございました
後、誤字脱字の指摘して下さった方々、ありがとうございます。とても助かります。それと申し訳ありません。今後は誤字脱字が無くなるよう様尽力を注ぎます。
前置きを長々語って申し訳ありません。それでは本編ごゆっくりお楽しみください
「「はぁぁぁぁぁああ!?」」
アイズによるあまりの衝撃的なカミングアウトに俺とロキは絶叫したまま硬直した。
数秒ほど大きく口を開けたアホ面を晒していたが、先に正気に戻ったロキが俺の胸元を掴み激しく前後の揺らす。
「………はっ!?おい!どういう事やヘル!いつからや!いつから2人はそんな関係になったんや!?」
「いや、待てロキ!俺等は別にそんな関係じゃ」
「嘘つけ!アイズたんがそんな冗談言うわけないやろ!白状しぃ嘘つきおって!いつから付き合ってたんや!」
ロキによって正気に戻った俺だが、ロキに弁明しようと一旦落ち着かせようとするが、彼女お気に入りのアイズという事もあって全然聞く耳を持ってくれない。だが彼女の気持ちは俺も分かる。恋愛に興味がないだろうとたかを括っていたお気に入りの子に、いつの間にか男が出来ていたなんて知ったらきっとその男に嫉妬の嵐を向けるだろう。
だが俺はアイズと付き合った覚えなんて微塵もない。告った覚えも、告られた覚えもないのだ。確かにアイズは顔は綺麗だし、スラッとしているスタイルだって美しいの一言だろう。しかし、その素晴らしさを帳消しにするのが彼女だ。無表情だし、戦闘狂だし、料理は出来ないし、無口だし。一緒にいて楽しいのかすら分からない。そんな本当に楽しんでるかいちいち気を遣わなきゃいけない相手と誰が付き合うか!とまぁベルくんには悪いが俺のタイプとは全然違う訳だ。
しかしそんな事考えてる内にロキは更なるヒートアップを見せる。
「いや、この際いつからなんてどうでもええ!どこまで行った!Aか?それともBか?まさかCまで済ませたんやないやろうな!?どうなんやヘル!もしそうなら認めへんぞ!純粋なアイズたんを傷物にしておいて
俺に掴みかかっていたロキが突如気を失って倒れた。近くに空き缶がカランと転がる様子から、どうやら誰かが抜群の制球でロキに空き缶を命中させ事態を収めてくれたのだろう。そんな救世主は誰かと思い当たりを見渡すと、先程帰った筈の3人が一ヶ所に集まっていた。空き缶を投げたのは腕が振り抜かれているティオネだろう。助けてくれたお礼を言おうと思って手を挙げると、3人がこちらに駆け出したのが見えた。しかもとても怖い表情で。嫌な予感がすると思い逃げようとしたがアイズが一向に離してくれない。指2本で服を摘んでいるだけなのに流石は一級冒険者、レベル1は逃げる事すら出来ないのである。
「「「どう言う事(なの)(よ)(ですか)!?」」」
俺は3人に詰められて蛇に睨まれたカエルの様に身動きが取れなくなった。
「ねぇ!どう言う事よ!アイズと付き合ってたなんて私聞いてないんだけど!」
「本当なの!?ヘルってアイズと付き合ってたの!?いつから!?いつからなの!?」
「アイズさんと付き合ってたなんて聞いてませんよ!うら……羨ましいです!」
「お、落ち着け、俺も何がなんだが分からないんだ。アイズと付き合ってた覚えなんてないし。後レフィーヤは欲望隠せてないから」
「そんな事ある訳ないでしょ!あんたたちの問題でしょ!」
「本当なんだって!俺に身に覚えはないんだよ!俺だってアイズに聞きたいよ!」
まぁ信じてくれないのも理解る。俺だって第三者なら信じる事は出来ない。でもこれが真実なんだ。4人でアイズ方を見る。するとアイズはゆっくりと語り始めた。
「………あれは2ヶ月半前」
「丁度前々回の遠征の時だね」
「話の腰を折らないでティオナ。ごめんアイズ、続けて」
コクリと首を縦に振ったアイズは再び話し始めた。
「私がモンスターの不意打ちを食らって大怪我をした時、ヘルに告白された」
「あぁ、確かのアイズあの時珍しくモンスターの攻撃モロに受けたよね〜………え?もう終わり?」
続きを期待するが、中々進まないと思ったが、まさかの終了にティオナがツッコミを入れる。だがティオナ以外の2人、特にティオネは俺を蔑む様に見下していた。
「アイズ、いきなり飛び過ぎじゃない?」
「ヘェ〜、弱ってる女の子誑かしたんだ〜。サイテー」
「ヘルさんのスケコマシ!」
「ちょっと待てぇえいッ!今の回想はどう考えてもおかしいだろ!アイズ!色々と端折り過ぎだ!疑問に思ったのはティオナだけか!まともなのティオナだけか!」
相変わらずアイズの口下手には本当に参ってしまう。これじゃ当時の状況が全く分からないじゃないか。てかこの状況に突っ込んだのがティオナだけなのも酷い。ティオネは気に入らない俺にアイズを取られたと勘違いして俺の話を聞く気ゼロだし、レフィーヤは憧れのアイズを奪われた悲しみで少々混乱しているのだろう。自分だけまともと言われたのが嬉しかったのか、照れて頭を掻くティオナ。その姿は可愛いから今はお姉さんを止めてくれません?このままだとティオネに首絞められて弁明出来ずに堕ちるんですけど。
ティオナがティオネを一旦落ち着かせた事でなんとか絶命を免れた俺はアイズに当時の事を聞く。
「なぁ、アイズ。俺はその時なんてお前に言ったんだ?申し訳ない事だが告白した覚えがないんだ」
「…………うん、」
アイズは俺の言葉に露骨にショックを受ける。罪悪感とこの場にいる他の3人の非難の視線に押しつぶされそうになるが、それでも俺はこの状況を利用してしれっとアイズの彼氏になるのは嫌だ。それは彼女にとても失礼な事だ。
「怪我した私は団員に肩を借りて医療テントで治療を受けた」
「ヘルさん!緊急です!アイズさんが敵の群れに突っ込んで脇腹に怪我を!」
「なに!?分かった!直ぐに中に運んでくれ!ほら、もう大丈夫だ。今度は気を付けろよ」
「ありがとうございます!」
「ヘル…治療お願い」
前の怪我人と入れ替わりでテントに入った私はヘルに支えられながら布団に寝転がった。ヘルは険しい表情を浮かべながらいつもの様に私の傷を治していく。
「安心しろ、数秒で完治させる」
【顕現せよ癒壊の女神、天邪鬼。今宵は宴、血の晩餐哉。啜れ、飲み干せ、血こそ汝の渇きを潤す至高の栄養哉。来たる祭事に備え、その渇きを潤い満たせ──
いつ見てもヘルの魔法は凄かった。削られたはずの皮膚がヘルの言った通り10秒もせずに元通りになって痛みもなかった。
「ありがとう。それじゃ行ってくる」
「待ってくれ」
いつもならそう言い残し、ヘルも『頑張れ』って言ってまた皆んなの元に帰るけど、その日は違った。なんだろうと思って振り返ると険しい表情を崩さないままのヘルがいた。
「アイズ……いい加減無茶はやめてくれ。ここ最近のアイズは怪我が多い。しかもここは40階層。今までのお前なら無傷で切り抜けるレベルじゃないか。疲労が溜まってる証拠だ。そこにもう一枚布団敷くから休め。今は他のみんなに任せるんだ」
「……ごめん、それは出来ない」
「やめとけ。この状態のままもっと下の階層のモンスターと相対した時この程度の怪我なんかじゃすまないぞ。テントに辿り着く前に死ぬ程を傷を負うかもしれないだろ」
あの時のヘルの言ってる事は正しかった。私は連戦続きで集中力に欠けていて、それに肉体的疲労もピークに達していた。それでも私には目標がある。その為に休んでる時間はない。焦っていた私にヘルの正論は疎ましく聞こえた。だからとても酷い事を言ってしまった。
「なら戦場に来てよ。テントなんかに篭ってないで。安全なところからの正論なんか聞きたくない」
八つ当たりにも等しい行為だった。中々成長しないステータスへの焦り、焦りで繊細さの欠けた行動を取りモンスターの攻撃を食らう。上手く行かない事が重なったストレスをなんの罪もないヘルにぶつけてしまった。
ヘルの苦労を私はよく知っている。私が【ロキ・ファミリア】に入って1年とちょっと過ぎた頃に入った3つ歳上の後輩。既にレベル2だった私はヘルの付き添いで一緒にダンジョンに潜った。ヘルは才能があった。いい太刀筋、モンスターに怯えない度胸、ダンジョンから戻ってきても剣を振るひたむきな努力。この人は絶対に強くなる、そう思った。
でもステータスの伸びが異常に遅かった。人の何倍も努力しても、その効果がステータスに反映されるのは他の人のいつも半分以下。それが冒険者にとってどれだけ致命的か一目瞭然だった。後から入った後輩にもどんどんと抜かれて行った。そんな日々が続いていつしかヘルは強さを諦め、元々持っていた回復魔法を極めて
そんなヘルの苦労を知っているのに酷い事を言った。謝りたいけどどう謝ればいいか分からず、ただその場に立ち尽くしていた。そんな私にヘルが浴びせた言葉は罵声などではなかった。
「なら連れてけ。俺を戦場に」
「え?」
ヘルはその言葉に怒るでもなく、ショックを受けて落ち込んでる訳でもなく、ただ力強くそう言った。
「お前が自分の身体を顧みる事も出来ないなら俺を連れて行け。お前が大怪我を負った時にすぐに治せる様に」
「…危ないよ」
「そんなこと知るか。冒険者にそんな脅し文句通用すると思ってんのかよ。俺はな、そんな事よりお前が消える方がよっぽど怖いんだよ」
「……!」
「だから無茶するなら俺を回復要員として連れてけ。お前が誰と戦おうが、どこで戦おうが、俺を連れてけ。たとえ階層主が相手だろうが、未知の階層だろうがお前が危険を伴う相手と対峙するなら俺を連れてけ、必ずだ。それが約束できるなら好きなだけ無茶をしろ。お前の目標の為にひたすら突っ走れ。例え傷付いても元の綺麗な身体に必ず治してやる。お前が安心して無茶出来る様にしてやる。俺から離れるな、一生俺のそばにいろ。誰も死なせない、その為に俺はこの魔法を鍛えたんだ」
「ヘル……」
「だから約束しろ。俺といる時はどんな無茶をしてもいい、代わりに俺がいない時は絶対に無茶するな。俺がいないところで死ぬなんて絶対に許さない」
「………うん、分かった」
「そうか、分かってくれたのか」
「ううん、悪いけど無茶はやめられない」
「はぁ!?」
「だから、一生そばにいてね?」
「無理な事言って止めさせたかったんだが、何言ったって無茶するのはやめないか。……好きにしろよ、アイズの人生だ。だけどなるべく傷付かない戦い方をしろよ。それと少しでも怪我したら見せに来い」
「ありがとう、ヘル」
「「「それは告白(だね)(ね)(ですね)」」」
「えぇ!?」
話を聞いた3人は揃い揃ってアイズの言い分を認め、再び俺を罵り始めた。
「あんた一生俺のそばにいろって言ってるじゃない」
「だからあれはそんな事無理だろ?だから止めるんだって意味で…」
「ヘルー、自分の言った言葉に責任持たなきゃダメだよ?」
「だからそう言う意味で言ったわけじゃなくて…」
「ヘルさん、アイズさんを悲しませるのは許しません!【解き放つ一条の光…】」
「レフィーヤ待て!俺死ぬから!レフィーヤの魔法食らったら俺死ぬから!」
それぞれ3人に色々罵倒され、最終的にはアイズに任せるとの事で3人に突き出された。背中を押され、勢いを殺して立ち止まったところはアイズのすぐ目の前だった。ちょっと手を前にすれば触れる距離。金色に靡く髪とお揃いの目。アイズから漂ってくる女子特有の甘い香り。先程のせいで普段意識していない事なのに妙に意識してしまう。
「アイズ…」
「なに?」
「あの時の言葉なんだけど、俺は全然そんな意味で言ったんじゃなくて」
「…うん、なんとなく分かってた。……でも嬉しかったから、確かめたくなかった」
「アイズ……」
「こらー!女の子を泣かせるなー!」
「責任とって付き合えー!そして結婚しろー!」
「【誇り高き戦士よ】…」
「全員うるさい!そしてレフィーヤはまじで止めてくれ!!」
3人に冷やかされたり、脅されたりしてる今の状況を振り返って、話に聞く公開告白はこんな感じなんだろうなと思っている自分がいる。大事な話なので3人にはご退場願いたいが、そんな事絶対に許してくれないので、恥ずかしいと思いながらもアイズに想いを伝える。
「アイズ、俺お前に憧れてた。それと同時に嫉妬してる」
「…そうなの?」
「あぁ、初めて会った時、俺よりも3つ歳下でこんなチビのちんちくりんだったアイズ」
俺は『こんなもんだったな』と自分の腰辺りを手で示した。アイズは頬を膨らませて『もう少しあったもん』と分かりやすく不満を露わにする。もしかしたら俺がよく彼女を見ていないだけで、よく見れば分かりやすいのかもしれないなと思った。
「そんなちびっ子の癖に俺の何倍も強いお前に対抗心を燃やした。俺は絶対この子より強くなるって。まぁ結果はよく知ってる通り、努力はしたんだけどな。フィンに戦い方を教わった。リヴァリアに色んなモンスターの攻略法を教わった。ガレスにモンスターと対峙した時の心の持ち様、攻撃を食らった時の呼吸法を教わった。朝早くに起きて、皆んなが寝静まるまで特訓した。でもいくら努力してもステータスが伸びなきゃいつまで経っても次の段階に進めない。そんな俺を嘲笑うかの様にレベルアップしてどんどんと強くなるお前。何が違うのか分からなかった。毎日嫉妬したよ」
「……」
「でもある日、お前の活躍を聞いて俺は『すげ〜』って思っちまった。嫉妬心が憧れに変わっちまったんだ。それに気付いて俺はもう強くなれないって思って諦めて
「そうだったんだ」
「知らなかったわ」
俺のこの話は誰にも話した事がなかった。ロキにだって言ったことがない。こんな情けない話する気もなかったし。
「でも、最近ある少年に会ったんだ。見るからにひ弱で、覚悟も足りてない、でも何かの為に馬鹿にされても強くなろうとする強い男の子。その子と出会って俺はもう1度強くなろうって思えたんだ。だから俺はその子と強くなろうと思う。またお前に嫉妬心バチバチに燃やして1からやり直す。だから俺はここを去る。だからごめん、あの時は一生なんて軽率な発言した。でも俺…」
「ならレベル5になって」
「え?」
「私がレベル6になったらレベル6。レベル7になったらレベル7に」
「ちょ、ちょっと……」
「強くなるんでしょ。そうすれば今度は一緒に戦える。守らなくてもよくなる」
アイズの言葉に俺の嫉妬心は激しく燃えた。
「追いつくだけじゃ気が済まない。アイズがレベル7なら俺はレベル8、レベル8ならレベル9になってやる。6年前は助けられたばっかだったけど今度は俺がアイズを守ってやる」
「うん、待ってる」
俺は今度こそ【ロキ・ファミリア】を後にする。色々思い出の詰まったこの屋敷の門に手をつき、いつの間にか復活して門の外で待っているロキの元へ。最後に4人に手を振って別れを告げる。
「じゃーな」
「今度パーティに誘うから」
「なんで?」
「そばじゃなきゃ無茶しちゃいけないんでしょ?」
「……負けねーぞ。」
「うん」
「それとその約束廃止でいいから」
「やだ」
「………じゃーな」
今度こそ【ロキ・ファミリア】を後にする。無茶をする、つまり近々レベル6になる為に偉業を成し遂げようとしているのだろう。モタモタしてるとまた置いていかれる。彼女が無茶するなら自分はそれ以上の無茶をしてやる。そうじゃなきゃ彼女より強くなるなんて夢のまた夢だから。
「これでいいのかしら?」
「何がですか?」
「ほら、告白の件なにも解決してないけど」
「あ、本当ですね」
「いいんじゃない?本人達が満足してるみたいだし」
「そうだけど……」
「それにティオネからしたらこれで助かったんじゃない?」
「?」
「ば、馬鹿なこと言わないでよ!それこそティオナはどうなのよ。あなただって内心ホッとしてるんじゃないの?」
「さぁ〜どうだかね〜」
「ティオナさん、ティオネさん。どうしたんですか?」
「「なんでもな〜い」」
「???」