ありふれた猫舌は世界最強   作:絡繰ふでばこ

3 / 6
10000字超えてしまった…
相変わらず長いのにゴミみたいな文章ですが楽しんでいただけると嬉しいです。
ありがたい事にコメントも貰えて嬉しい限りです!
たっくんがいつ変身するのか、予想しながら見てください!

追記 あれ?投稿時間ミスってました?本当に申し訳ありません




迷宮攻略

巧たちがプレートを支給されてから数週間がたった。

 

今現在巧は訓練の合間の休憩時間を利用して、ハジメと共に王立図書館で読書をしている最中である。巧の手には『よく分かる!トータスの成り立ちとその神話』と言う本が開かれていた。(トータスというのは巧たちが召喚されたこの世界の事である)

 

なぜ巧がこのような本を読んでいるのか。

その理由は一刻も早く元の世界に帰りたいのと、どうにも『神』とやらが胡散臭く感じられたからである。

そして巧はその本を読み進んでいると疑問を感じた。

 

(何故神やその眷属たちが『銀色の姿』で描かれているんだ?…これじゃあまるで…)

巧は色々と考えていたのだが、やがて面倒くさくなり、机に向かって本を放り投げた。(その横では同じくハジメも本を放り投げていた)

するとちょうどタイミング悪く通りかかった司書が『お前今度やったらマジ許さなぇからな』と言いたげな顔をして巧たちを睨む。

流石の巧もやばいと思ったのかすぐに謝罪をした。

 

しばらく経つとハジメがおもむろにプレートを取り出し、ため息をつく。

 

「おい、ハジメ何辛気臭い顔してんだよ」

とあまりにも落ち込んだ様子を見て、巧が声をかける。

 

「巧…僕のステータス全然上がらないんだよ…しかもものすごく刻んでるし…」

そう言うとハジメはプレートを見せてくる。(ハジメも巧もステータスが低いもの同士で仲良くなっていた)

そこには

 

ーーーーーーーーーーーーーー

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:2

天職:錬成師

筋力:12

体力:12

耐性:12

敏捷:12

魔力:12

魔耐:12

技能:錬成、言語理解

ーーーーーーーーーーーーーー

…確かに低いし刻み過ぎている

ちなみに勇者こと光輝はと言うと

 

ーーーーーーーーーーーーーー

天之河光輝 17歳 男 レベル:10

天職:勇者

筋力:200

体力:200

耐性:200

敏捷:200

魔力:200

魔耐:200

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読

高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

ーーーーーーーーーーーーーーー

ざっとハジメの五倍の成長率である。

巧は

 

「俺のなんか何も変わってねえぞ…」

と言うとプレートをハジメに見せた。

 

「…確かに何も変わってないね…」

ハジメは憐れみの目で巧を見た。

 

そう、巧はどれだけ特訓しても何も上がらず初期値のままなのだ。

ステータスもレベルも何も上がらない。

巧は内心かなり落ち込んでいる。

 

「でも巧はステータスが低くても剣術や身体能力はすごいじゃないか!」

ハジメが巧を励ます。

そう、巧はステータスが低くても剣の腕前や身体能力はものすごく高いのである。(訓練では面倒臭がっているのでハジメ以外は知らないが)

 

「励ましてくれるだけでも嬉しいぜハジメ…でも魔法が使えないんじゃ意味がないだろ?」

そう言う巧に「ウッ」と言葉が詰まるハジメ。

確かにこの世界は殆ど魔法が使えれば凄いと言う価値観で成り立っているため、魔法が使えないハジメや巧は無能のレッテルが貼られてしまっているのだ。

ハジメでも軽い魔法くらいならようやく打つことができる。

しかし巧は何も魔法を打つことができないのだ。

これも巧を落ち込ませている一つの要因である。

 

いっそまた旅に出るのもいいかもな、と現実逃避気味に考える巧。

この世界はかなり綺麗なので中々新鮮な気持ちが味わえそうだ。

 

(でも、かなりこの世界は面倒くさそうな作りをしてるからな…結局帰るのが一番ってところか…)

この世界は奴隷制度などが残っているので馴染めなさそうだと考え、結局帰るしか無いかという考えに至ったようだ。

そんな事を考えているとハジメが

 

「もう直ぐ訓練開始の時間だよ巧!」

と言ってきたので現実に引き戻される巧

「やっべ!急ぐぞハジメ!」

そう言うと巧はハジメと共に訓練場に向かうのであった…

 

♦︎

訓練場に着くと既に幾らか人もいるようで、各々自主練などに赴いている

急いで来たので案外早く着いたようである。

ただぼうっとしているわけにもいかず、巧はハジメと共に剣術の訓練をし始め、抜き身の西洋風の剣を抜くと突然ハジメが突き飛ばされた。

巧が後ろを振り向くと予想通りの人物がニヤニヤしながら近づいてきた。

 

檜山達である。彼等は何かと因縁をつけて、小悪党四人組(ハジメ命名)

がちょっかいをかけてくるのである。

 

(…またこいつらかよ)

巧とハジメはうんざりとした様子で檜山達を見る。

 

「よぉ!乾に南雲!無能同士仲良くやってんなぁ!お前達が剣持ってても意味が無いだろぉ?」

「檜山、言いすぎだろ〜。いくら事実でもさぁ〜」

「そうそう!俺ならこんな無能だったら恥ずかしくて訓練なんか来れないなぁ」

「なぁ、大介!可哀想なコイツらに稽古つけてやろぉぜ〜」

 

何が面白いのかゲラゲラ笑い出す檜山達。

 

「おいおい、信二それは優しすぎじゃね?

まぁ?俺も優しいですし?稽古つけてやりますかぁ」

「俺たち優しすぎね?こんな無能のために時間割いてやってるのってさぁ〜。マジ感謝しやがれよ!」

 

そういうと巧たちを人気の少ない場所に連行する檜山達。

クラスメイト達は気付いているが見てみぬフリをしている。

 

「いやいや俺たちは大丈夫だって、僕達のことは放っといていいからさ」

一応断ってみるハジメ

 

「はぁ?俺たちはわざわざ無能のお前達の為に時間割いてやるわけぇ。

だからお前らは大人しく従っとけばいいだけなんだよっ!」

そう言うと檜山はハジメに向かって思いっきり殴りかかる。

これから襲ってくる衝撃に耐えようと目を閉じるハジメ。

しかし、その手はハジメに届く事は無かった。

 

「あぁ?」

檜山が不思議そうな声を出す。

いつまでも襲いかかることのない衝撃を不思議に思いつつハジメが目を開けると、そこには、巧が殴りかかってきた檜山の手をぎりぎりと掴んでいた。

 

「お前らさっきから人が黙って聞いとけばうるせぇことぐちぐち言いやがって、俺がお前らに稽古つけてやるよ」

巧は心底イライラした様子でそう言う。

 

「この雑魚が…俺達に稽古をつける?そんな事を言うのは一億年早えんだよ!やれ!お前ら!」

檜山がそう言うと周りの取り巻きたちが一斉にそれぞれ魔法を放ってくる。

 

しかし幾ら得意な魔法であり、アーティファクトで強化しようとも素人の高校生の攻撃が巧に当たるはずもなくスルスルと避けて行く巧。巧でも当たっては唯では済まない筈だが、そんな事を気にせずどんどん檜山達に近づいていく。

 

「くそっ!なんで当たらなぇんだよ!もっとちゃんと狙え!お前ら!」

自分のことを棚に上げてそう言う檜山

 

そして埒があかないと思ったのか檜山が

 

「もういい!死ね!乾!」

と言いもう一段強い魔法を打とうとした檜山に、巧が剣を振ろうとするがその時突然女子の声が聞こえた。

 

「ちょっと何やってるの!」

檜山達はその声に「やべっ!」と言った顔をする

何故なら、その声の主が惚れている相手のものだったのだから当然だろう。香織だけでなく光輝、雫、龍太郎もいる。

 

「いや…これは…こいつらが稽古に付き合っていただけで…」

「南雲君!」

そんな檜山の弁明を無視して真っ先にハジメの所に駆けつける香織

 

「特訓ね…本当に言ってたの?」

「いや…これは…」

「言い訳は要らない。幾ら南雲達が戦闘に向かないからといって、同じクラスの仲間だ。もう二度とこんなことをするな。」

「くっだらねぇ事をするならさっさっと自分の鍛錬でもしとけ」

三者三様に言い募られ、檜山達はハジメと巧に憎悪の念を向けながらそそくさと退散していった。

 

「ありがとう、巧、それに白崎さんも助かったよ…」

 

苦笑いをするハジメに泣きそうな顔で首を横に振る香織。

 

「いつもあんな事されてたの?それなら私が…」

凄まじい形相で檜山達が逃げていった方向を見る香織。

どうやら巧の事は眼中に無いらしい。

必死に否定をするハジメを見ている巧に雫が声をかけて来た。

 

「乾君、さっきの動きどこで覚えたの?訓練の時はしてなかったようだけど…それにあの剣の持ち方一見乱暴そうに見えるけど、経験が積まれたような持ち方をしてるわ?」

「あー…それは…」

巧が言い淀んでいると光輝が水をさしてきた。

巧はこの話題を避けられると内心感謝したが、その次の言葉でその感謝の思いは消え失せた。

 

「南雲、お前ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしてるといつまでも強くなれないぞ?それに南雲に乾、聞けば休憩中に読書に耽っているそうじゃないか。俺だったらその時間を鍛錬にあててるよ。それに乾、お前はもう少し真面目に訓練を受けたほうがいい。檜山もお前達の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないぞ?」

 

何をどう解釈すればそのようなことに行き着くのだろうか。巧とハジメは呆然とした様子になっていた。ああ、そういえばこいつは基本的に人はそう悪いことはしない。そう見えるなら何か理由があるはず。もしかしたら相手の方に原因があるのかもしれない!と言う思考回路をしてるんだったなと巧は思い出した。

 

それに光輝の言葉には本気で悪意がない。

真剣に巧たちを心配しているのだ。こういう奴には何を言っても無駄だなと思った巧は反論しようという気も失せた。

 

「そろそろ訓練が始まるよ、行こう?」

と言うハジメの言葉で一行は訓練場に戻る。

その道中で巧とハジメはまた深いため息をつくのであった…

 

♦︎

訓練が終わった後メルドから明日は『オルクス大迷宮』に行くという旨を伝えられ、解散となった。

 

その夜、巧とハジメの二人部屋で二人ともウトウトとしていると扉をノックする音が聞こえてきた。

 

「南雲君起きてる?白崎です。ちょっといいかな?」

何?と巧と目を合わせるハジメ。

ドアを開けるとそこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。

 

巧はここにいては不味いと思ったのかこっそりと部屋を抜け出そうとしていた。(ハジメから一人にしないでくれ!と言いたげな視線を感じたが、無視した)

 

部屋を出て、行く当てもなくなった巧がふらふらと廊下を進んでいると、雫がベンチのような所に座っていた。

引き返そうと巧が踵を返すと目ざとく雫が声をかけてきた。

 

「こんばんわ乾君、明日は大変そうだね」

「…そうだな」

流石に無言は不味いと思ったのか返事を返す巧

しかしその後に会話が続くわけでもなく気まずい沈黙が流れる。

巧がそろそろ帰ろうかと考えていると雫が今一番面倒な事を聞いてきた。

 

「そういえば、あの動きと剣の持ち方何処で覚えたの?」

「あー…習ったんだよ昔」

流石に真実を話すわけには行かないので即興で誤魔化す巧

しかしそんな嘘が聞くはずもなく

 

「嘘でしょ?だって習ってる人の持ち方じゃ無かったわよ?」

「…昔習ってから結構年月が立ってるから仕方ないだろ」

「…嘘でしょ?」

「…じゃあな、また明日」

尚も信じなそうな雫に埒が開かないと思った巧は強引に話を切り上げて猛ダッシュで自分の部屋へと走った。(途中で待って!と聞こえた気がするが無視した)

 

部屋に帰るともう既に香織はいなくなっていたようで、ハジメは寝ていた。

巧も疲れていたので、ベッドに体を投げ出して眠るのであった。

 

♦︎

翌日クラスメイトや騎士団の皆は迷宮の中に入っていた。

初めて見る迷宮に何処か興奮冷めやらぬ生徒達だが、メルドの声で一気に緊張が走った。

 

「あれはラットマンだ!あまり強いわけじゃ無いから冷静に対処しろ!光輝達は前衛、それ以外は後ろにいろ!」

迷宮の壁から出てくるラットマンに光輝達が対処する。

流石のチートなのか瞬殺してしまった。

 

そのままどんどん下に降って行く一行たち。

遂に一流の冒険者が否かをわける二十階層までやってきた。

普通なら苦戦するはずだが、さすがチート集団スルスルとここまで来てしまった。

因みに、一番警戒すべきはトラップである。

致死性が高いものが多いため注意が必要なのである。

トラップを感知する魔法を使ってはいるのだが、やはり危険らしい。

 

ちなみに巧とハジメはここまで何もしていない。

することと言えばたまに後ろにくる弱ったモンスターを狩ることぐらいだが、ハジメも巧も手際よく倒しているため、騎士団から少し感心されているのだが、本人たちは知らない。

 

何やらハジメと香織が見つめ合っている。

青春だなと思っていると何処からか粘っこい視線を感じた。

 

(またかよ…いい加減にしてほしいぜ…)

これが初めてというわけでなく、何度もこの視線を向けられているため、面倒と思った巧はそろそろ犯人探しをするべきか?と悩んでいた。

 

そうこうしているうちにそろそろ訓練も終わりに近づいてきたようだった。

先頭をいくメルドや光輝が立ち止まり、臨戦体制に入る。

 

「壁に擬態しているぞ!周りをよ〜く見とけ!」

メルドが忠告をする

その言葉と同時に壁がせり出してきた。

 

「ロックマウントだ!剛腕に気をつけろ!」

その言葉と共に戦闘が開始された。

 

善戦をしていた光輝達だったが、ロックマウントの固有魔法『威圧』で一瞬怯んでしまう光輝達。

その隙を見逃さず、ロックマウントが香織たち後衛に岩を投げてきた。

すかさず防御をしようとすると香織たちだが、その岩を見た瞬間硬直してしまう。

投げられた岩もロックマウントだったのだ。

思いっきり両手を広げて飛び込んでくる姿に本能的な恐怖を感じたのか、思わず魔法を中断してしまった香織たち。飛び込んできたロックマウントはメルド達が倒してくれたが、よほど気持ち悪かったのか香織たちは顔を青ざめている。

 

「貴様、よくも香織達を…許さない!」

そこに怒れる者が一人

光輝である。どうやら死の恐怖を与えられたと勘違いしたらしい。

彼の聖剣が輝き出す

 

「万翔羽ばたき、天へと至れーー『天翔閃』!」

「おい、待て!」

メルドの静止も聞かず大業をぶっ放す光輝。

その剣が炸裂した瞬間一気に敵が消し飛んだ。

 

「ふぅ〜」

といいイケメンスマイルを見せつつ振り返るとメルドから拳骨が落ちた。

 

「馬鹿者!こんな狭いところでそんな技を打つな!」

その指摘に声を詰まらせる光輝。

そこに香織達が苦笑いしながら近づいてきた。

 

「あれ?あそこキラキラしてる…綺麗…」

そのとき何か見つけたのか崩落した壁を指さす香織

 

つられて皆がそちらを見ると確かに綺麗な鉱石がキラキラと輝いていた。

 

「ほぉ〜、あれはグランツ鉱石だな、大きさもなかなかだ、珍しい。」

グランツ鉱石とは特に特殊な効果などは無いのだが、とても綺麗なので、貴族のご婦人、ご令嬢たちに人気なのだ。

因みに求婚される時に送られると嬉しい宝石ランキングTOP3に入っているらしい。

 

メルドからの簡単な説明に、香織が顔を赤らめながら誰にも気づかれない程度にチラチラとハジメの方を見ていた。雫と巧、それにもう一人は気づいていたようだが…

 

「だったら俺たちで回収しようぜ!」

そういうと勝手に動き出したのは檜山だった。

ひょいひょいと崩れた壁を伝ってグランツ鉱石に向かう。

 

「おい!勝手な行動をするな!」

慌てたようにそう言うのはメルド団長だ。

 

しかし、聞こえないふりをして、進むとついに鉱石に辿り着いてしまった。

メルドが止めようと駆け出すと、フェアスコープ(トラップを感知できる物)で確認していた騎士団員が焦ったように声を出す。

 

「団長!罠です!」

しかし、その忠告も一歩遅く、檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間部屋全体に魔法陣が広がり、だんだん輝きを増していく。

まるであの日の再現のようだ。

 

「くっ!撤退だ!早く逃げろ!」

メルドの声に生徒達が急いで逃げようとするが、間に合わずに魔法が起動してしまった…

眩い光に包まれた巧たち。

 

次に目を開けた時にはそこは先程までいた場所ではなく、巨大な石橋だった。

どうやら転移の魔法で連れてこられたらしい。

こんな大人数を転移できるとは流石神代の魔法と言ったところか。

 

橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりなどはなく、落ちたら奈落の底へ真っ逆さまだ。

橋の両端ではそれぞれ奥に続く道と、上へと上がる階段がある。

それを確認したメルドが焦った様子で生徒たちに声を飛ばす。

 

「お前達!早くあの階段の場所まで急げ!」

慌てた生徒達が階段の方へ向かうが、迷宮のトラップがその程度で済むはずもなく。

階段の橋の入り口に魔法陣が展開され、そこから魔物がぞろぞろと出てくる。

さらに通路側からは一際大きな魔法陣が起動され、そこから出てきた巨大な魔物にメルド団長が呆然と呟いた。

 

「まさか…ベヒモス…なのか…」

その声は決して大きくは無かったが、迷宮内によく響いた。

 

 

 

橋の両サイドに現れた赤黒く禍々しい魔法陣。

片方は十メートルもあろうかという巨大なサイズもう片方は、一メートルくらいだが、その数が夥しいほどある。

 

その小さい魔法陣からは、骸骨戦士の『トラウムソルジャー』が赤黒い目をギョロギョロとさせながらしながら現れてくる。

その数はすでに百を超えており、今もどんどんその数を増やしている。

 

しかし、その骸骨よりも巨大な魔法陣から現れた『ベヒモス』と呼ばれる魔物ほうがやばいと巧は感じていた。

トリケラトプスに似ているが、瞳は赤黒く輝き、兜を被り、角から炎を放っている。

 

「グルァァァァァァァァァ!」

「ッ!」

呆けていたメルド達だがその声を聞き、正気に戻ったのか、矢継ぎ早に指示を出す。

 

「アラン! 生徒達を率いてトラウムソルジャーを突破しろ! カイル、イヴァンにベイル! 全力で障壁を張れ! ヤツを食い止めるぞ! それに光輝!お前達は早く階段へ向かえ!」

「待ってください!俺達も戦います!」

「馬鹿言うな!あれがベヒモスなんだったら当時『最強』と謳われた冒険者でも歯が立たなかったバケモノなんだぞ!お前達を預かる身として危険に晒すわけにはいかん!」

 

メルドの鬼気迫る顔に一瞬怯むも、「見捨ててはおけない!」といい踏み止まる光輝。

 

その様なやり取りをみつつ階段の方へと向かう巧やハジメ達生徒だが、ベヒモスの咆哮やトラウムソルジャーなどに邪魔され隊列などを無視して我先にと階段へ向かう生徒達。

どうにか隊列を整えようと騎士団のアランが奮闘するも、意味もなくパニックに陥っている生徒達は止まらない。

 

そうこうしていると一人の女子生徒が突き飛ばされ転けてしまった。

「うぅ…」と言いながら顔を上げると目の前には剣を振り翳すトラウムソルジャーがいた。

 

「あ」

 

彼女が死を覚悟した瞬間、目の前のトラウムソルジヤーの足元が隆起した。

バランスを崩したトラウムソルジャーの剣はカンッという音と共に外れる。さらにその地面は他のトラウムソルジヤー達をも巻き込んでいった。

その隙を見逃さず横から一人の生徒が出てきて素早く剣を叩きつけ倒すことに成功する。

 

そう、ハジメと巧である。

ハジメが地面を錬成させて、地面を隆起させて、バランスを崩したところを巧が切り付けたのである。

地面の錬成なんて初めてのハジメは内心焦りまくっていたが、成功した安心からかため息をついている。

 

魔力回復薬を飲みながら近づいてくるハジメとトラウムソルジャーを仕留め終えた巧が近づいてくる。

 

「早く前へ、大丈夫冷静になればあんな骨どうってことないよ。うちのクラスは僕を除いて全員チートなんだから!」

 

そうハジメが言うと女子生徒はお礼を言いながら駆け出して行った。

 

巧とハジメは周りのトラウムソルジャーを倒しながら周囲を見渡していた。

 

「くそっ…連携が取れてねぇ…」

巧の言葉通り生徒達はパニック状態に陥っており、騎士団の言葉も聞こえていない。

 

「なんとかしないと…必要なのは…強力なリーダー…道を切り開く火力……天之河くん!」

ハジメがそう言うと巧とハジメは今もベヒモスと戦っている光輝の元に駆け出した。

 

ベヒモスは依然障壁に向かって突進を繰り返していた。

 

「光輝!早く俺たちを置いて先に行け!」

「嫌です!俺たちもまだ戦えます!」

メルドがその返答に苦い顔をする。

 

正直言って光輝達は邪魔だ。

しかし、自分なら倒せるとまだ思っているのかその瞳はまだ攻撃色を放っている。

 

(褒めて伸ばす方式が失敗したか…)

メルドがそう思っていると状況を理解しているのか雫が光輝達に撤退を促した。

 

「光輝! 団長さんの言う通りにして撤退しましょう!」

「へっ、光輝の無茶は今に始まったことじゃねぇだろ? 付き合うぜ、光輝!」

「龍太郎……ありがとな」

しかし龍太郎の言葉にさらにやる気を見せる光輝。

その様子に雫が舌打ちをする。

 

「この馬鹿ども!状況に酔ってんじゃ無いわよ!」

「雫ちゃん…」

苛立つ雫に心配そうな香織

 

その時二人の生徒が飛び出してきた。

 

「天之河(君)!!」

「なっ!乾に南雲、いきなりなんだ?それにここはお前らのいる場所じゃ無い!さっさとみんなの元に戻れ!」

「「そんなこと言ってる場合か!」」

 

巧ならまだしもハジメまで語気を荒げた様子にびっくりする光輝達。

 

「君が!いないと!みんなが危ないんだ!早く撤退を!」

そう言いパニックに陥っている生徒を指差すハジメ。

 

「あれが見えないの!?みんなパニックになってる!リーダーがいないからだ!」

光輝の胸ぐらを掴み捲し立てるハジメ

 

「よく聞け!あれは上手くまとめられるリーダーがいないからああなってるんだ!リーダーなら後ろも見やがれ!」

巧がそう言うとようやく引く決心が着いたのかぶんぶんと首を縦に振る光輝

 

「ああ、わかった。直ぐに行く! メルド団長! すいませ―」

「下がれぇぇぇー!」

『すいません』と言おうとして後ろを振り返った瞬間、障壁が砕け散った。

 

荒れ狂う暴風が巧達を襲う。

ハジメは石壁を錬成したが、耐えられず吹き飛ばされてしまう。

 

埃が晴れた後そこに居たのは倒れ伏したメルド達だった。

 

「ぐっ……龍太郎、雫、時間を稼げるか?」

 

 光輝が雫達に聞く。それに苦しそうではあるが確かな足取りで前へ出る二人。団長たちが倒れている以上自分達がなんとかする他ないようだ。

 

「やるしかねぇだろ!」

「…なんとかしてみるわ!」

 

 二人がベヒモスに突撃する。

 

「香織はメルドさん達の治癒を!」

「うん!」

 

巧とハジメが戦いの余波を避けさせるためにメルド達を遠くに運んでいた。しないよりはマシであろう。

 

そして光輝は、今の自分が出せる最大の技を放つための詠唱を開始した。

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!----『神威』!」

 

すると光輝の聖剣から巨大な光が出てくる。

 

先ほどの天翔閃と同系統だが威力が段違いである。橋を震動させ床を抉り飛ばしながらベヒモスへと直進する。

 

その光がベヒモスに直撃し、真っ白い光が空間を埋め尽くす。

 

「これなら……はぁ…はぁ」

「はぁはぁ…流石にやったよな?」

「だといいけど……」

 

龍太郎と雫が光輝の傍に戻ってくる。光輝は莫大な魔力を使用し、肩で息をしている。

 

先ほどの攻撃は文字通り光輝の切り札だ。残存魔力のほとんどが持っていかれた。背後では治療が終わったのか、メルド団長が起き上がろうとしている。

 

そんな中徐々に光が収まり、空気中に舞う埃が吹き払われる。

 

…そこには、無傷のベヒモスがいた……

 

低い唸り声を上げ光輝を射殺さんばかりに睨んでいる。と、思ったら直後、スッと頭を掲げた。頭の角がキィィィィという甲高い音を立てながら赤熱化していく。そして、遂に頭の兜全体がマグマのように燃えたぎった。

 

「ボケっとするな!逃げろ!」

 

メルドの叫びに漸く無傷のショックから抜け出した光輝達が身構えた瞬間ベヒモスが突進をすると、高く飛び上がり隕石のように落下してきた。

 

巧達は横跳びで避けるも、衝撃波を全身に受け、ゴロゴロと地面を転がる。ようやく止まった時にはもう満身創痍だった。

 

どうにか動けるようになったメルドが駆け寄ってくる。

他の騎士団は香織によって治療されている最中である。

ベヒモスは頭を抜こうと踏ん張っている。

 

「お前ら、動けるか!」

メルドが騎士団にそう聞くも帰ってくるのは呻き声だけである。

どうやらかなり傷を負っているらしい。

 

メルドが香織を呼ぼうと振り返る。その視界に駆け込んでくる巧とハジメの姿を捉えた。

 

「おい!坊主たち!香織を連れて、光輝を担いで下がれ!」

 

巧にそう指示するメルド

この指示が意味することはもうあと一人くらいしか帰還できないという事だ。

 

メルドはここを死地と定め、命を賭け止めるつもりのようだ。

 

そこに巧とハジメが近づいてきて、とある提案をする。

それはこの場の全員が助かるかもしれない作戦。

しかし、あまりにも馬鹿馬鹿しく成功する可能性なんて皆無だ。

 

メルドは逡巡したが、ベヒモスがもう既に戦闘態勢に入っており、再び兜が赤熱化をしている。どうやら時間がないようである。

 

「…やれるんだな?」

「やれます」

「やってやるよ」

 

覚悟を決めた様子の巧とハジメにメルドは笑みを浮かべる。

 

「まさか、お前達に命を預ける日が来るとはな、しっかり守ってやるから安心しろ!」

「はい!」

 

メルドはそう言うとベヒモスの前に出た。

そして、小さい魔法で挑発する。

ベヒモスの標的がメルドにうつったようでメルドに向かって突進してくる。

 

そして、ベヒモスは赤熱化した兜を再び掲げ、跳躍する。

まだメルドは動かない。どうやらギリギリまで引きつけるようだ。

そして、小さく詠唱をする。

 

「吹き散らせー-『風壁』」

そう言うと素早くバックステップで後退したメルド。

先程までメルドがいた場所にはベヒモスが着弾していた。

 

再び、兜を赤熱化させたベヒモスにハジメが、温度も気にせず近づく。

そしてハジメが一言詠唱する。

 

「ーーー『錬成』!」

そこからハジメとベヒモスの攻防が始まった。

 

その頃、巧は光輝達を担いで後ろへと下がっていた。

 

「まって!南雲君が!」

「黙ってろ!これはハジメの作戦だ!あいつの想いを無駄にする気か!」

巧達の中で最高の攻撃力を持っているのは、恐らく光輝である。

その光輝を戦えるようにしなければ結局ハジメは死んでしまうのである。

それを理解しているのか、香織は泣きながら詠唱しはじめた。

 

「天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん-『天恵』」

 

体の傷と同時に魔力も回復させる光が光輝を包む。

そうこうしている間にもトラウムソルジャーは依然増え続けている。

 

しかし、誰も死んでいないのは騎士団員のおかげと言ってもいいだろう。

しかし、そんなサポートが長く続かないのを悟っているのか、生徒たちはやたらめったらに魔法を打っている。

 

もうダメかもしれない…

そう誰もが思った時…

 

「---『天翔閃』!」

 

純白の斬撃がトラウムソルジャー達の真ん中を切り裂き、吹き飛ばしながら炸裂した。

 

そのおかげで今まで絶望しかなかった状況に希望が見えてきた。

 

「皆!もう俺がきたから大丈夫だ!安心してくれ!」

そうカリスマオーラ全開で敵を切り裂きながら光輝が言う。

 

そして反撃の狼煙が上がろうとした時…

 

 

生徒達にいや、騎士団員にも『絶望』の二文字が浮かんだ。

 

何故なら、巨大な魔法陣が浮かんできたからだ。

先程、あのベヒモスを召喚した魔法陣と同じ大きさのものが現れ、その中から、見たくも無かった体が出てきたからだ。

 

そう、二体目のベヒモスである。

 

(くそっ!冗談じゃねぇぞ!()()があれば…いや、無いものねだりしても仕方がない…使いたくねぇが()()になるしか…)

そう巧が覚悟を決めた時、この場に不釣り合いな()()()()が聞こえてきた。

 

 




たっくんの活躍が地味だ…
次回はしっかり活躍させたいので楽しみにしててください!
指摘や誤字脱字等あればどんどんコメントしてください!
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