ありふれた猫舌は世界最強   作:絡繰ふでばこ

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別れ

巧がベヒモスを止めにいっていると

 

「はぁ〜い、救世主さ〜んピンチのようですね〜」

この阿鼻叫喚とした迷宮内には不釣り合いな女性が現れた。

 

「なッ!」

ここにいる全員が驚くのも無理はない。

なぜならかの有名な大企業『スマートブレイン』の看板娘であるスマートレディが突然現れたからだ。

 

「ここは危ない!早く逃げるんだ!」

光輝がそういうも、スマートレディは全く気にしていない様子で話を続けた。(ベヒモスはどうにか障壁で押し返されている)

 

「ここに、だ〜いピンチな救世主さんがいると聞いたんですけど〜何処にいるんでしょうか〜せっかくつよ〜い武器を持ってきてあげたんですが〜」

「救世主?それなら光輝じゃあねぇのか?」

龍太郎がそう言い全員が頷く。

それならばと光輝がスマートレディの元に向かって行った。

 

「俺が救世主だが強い武器とはなんだ?」

「う〜ん、貴方は救世主さんじゃなさそうですね〜」

しかし、一蹴されてしまい、動揺が走る。

 

「な、俺が救世主だろ!?」

「う〜ん、あ、来たみたいですよ〜」

スマートレディが指差した方向にはベヒモスに吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がってきた巧がいた。

 

雑魚で無能なあいつが?

クラスの殆どの生徒がそう思ったが、スマートレディはどんどん巧の方へ行く。

 

「は〜い、救世主さ〜んあなたの為にとぉ〜ってもつよ〜い武器を持って来ちゃいました〜」

「な、なんでお前がここに…!それに…強い武器ってまさか…」

「そう!そのまさかで〜す!」

そう言うとスマートレディは()()()()()()()()()()を取り出した。

 

巧が受けとろうとすると…

 

「乾!これは君の持つべきものじゃ無い!」

光輝が突然駆け出して巧の方に向かってきた。

 

「な!おい!やめろ!」

巧が抵抗すると、光輝と巧によるアタッシュケースの取り合いになった。

 

「乾!君は救世主の器じゃ無い!これは俺がもらうべきものだ!」

「はぁ!?何意味わかんねぇ事言ってんだよ!」

そうしているとアタッシュケースが開き、中にあった()()()()()()()()()()()()()などのものがバラバラと出てきた。

 

「あっ!」

巧がそう言うと、ギリギリガラケーとライトにカメラはキャッチできたが、銀のベルトは奈落の底へ落ちていってしまった…

 

「あらあら〜落ちていっちゃいましたね〜」

スマートレディが少し呆れたようにそう言う。

 

「乾!なんて事をしてくれたんだ!」

どう考えても悪いのは光輝なのだが、何故か巧が悪いことにして巧を責め立てる光輝。

 

「はぁ!?どう考えてもお前が悪いだろ!」

巧が反論し、また揉み合いが始まるかと思ったが突然

 

「逃げてぇぇぇ!」

香織たちの声が聞こえ、ギリギリで抑えられていたベヒモスが巧達のもとへ突進してくる。

 

咄嗟に避けた巧と光輝だが、また突進してきたベヒモスを避けることしかできない。

 

巧が埒が開かないと思ったのか、ガラケーを弄り出す。

クラスの全員が『こんな時に何やってんだ!』と思ったが、次の瞬間の光景に驚いた。

 

『burst mode』

そうガラケーから聞こえた瞬間ガラケーが変形し、三つの光弾がガラケーから飛び出してきた。

 

「グォォォォ⁉︎」

突然の攻撃に驚くベヒモス。

続けて巧が攻撃すると、今まで傷一つついてなかったベヒモスの体に傷がつき始めた。

 

ようやく傷がついたことに今度こそ希望を見出す生徒達。

しかし巧は焦っていた。

 

(くそ!さっさっとここを片付けねぇとハジメが危ねぇ!)

せめてベルトがあればと思う巧だが、無いものねだりをしても仕方がないと思い、どのようにこの現状を打破するか考えていた時、スマートレディが声を出した。

 

「おや?社長さんこんな物も出しちゃうんですね〜」

その時階段の方から、この世界に来てから全く聞いていなかったエンジン音が聞こえてきた。

 

どんどん音が近づいてくる。

巧にベヒモスの突進が向かってきた瞬間、それ、『オートバジン』は巧とベヒモスの間に割って入り、ベヒモスをはね飛ばした。

 

「おせぇんだよ!」

巧がそう言いバイクを蹴る。

するとバイクが

『battle mode』

と言う音声と共に人型に変形した。

生徒や騎士団たちは初めて見る光景に呆けている。

 

「お前ら!ぼさっとしてんじゃねぇ!ハジメが死ぬぞ!」

巧がそう言うと香織やメルドが動き出した。

 

「おい、お前もちろんやれるよな?」

香織やメルドが動き出した事を見て、巧がオートバジンにそう言う。

オートバジンは頷くと、先程まで前輪だったはずのタイヤを握り、ベヒモスに向けた。

次の瞬間前輪…バスターホイールから凄まじいほどの弾幕が出てきた。

ベヒモスは初めて喰らう攻撃に驚いているようだった。

そうこうしている間にどんどんベヒモスの体が削れていっている。

 

その瞬間を見逃さず、メルドや光輝が動き出した。

「ここまで弱っているならいける!

神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!--『神威』!」

光輝の必殺の一撃をくらい、ベヒモスは奈落の底に落ちていった。

 

ワァァァァ!

と歓声が上がる。

しかし忘れてはいけない。もう一体ベヒモスがいる事を。

 

「おい!動け!」

巧がガンガンとオートバジンを蹴っているも、一向に動かないオートバジン。

どうやら燃料切れらしい。

 

「こんな大事な時に…」

しかしそうしているうちにもハジメはどんどん死に一歩一歩近づいてきている。

巧は覚悟を決めると、先程使っていたガラケー…『ファイズフォン』についている。『ミッションメモリー』を外すと、先程のオートバジンの左ハンドルを取り外し、ミッションメモリーを嵌めた。

生徒はまた何か起こるのだろうかと言う期待で、戦場だというのにワクワクしていた。(快く思わないものもいたが)

 

すると…

『ready』

と言う音声と共に紅い刀身が出現した。

 

刀身が出た事を確認する前にもう巧はベヒモスの元に走り出していた。

 

(このままだとどうにもならない…!まだ来ないのか⁉︎)

ハジメがなんとか一人でベヒモスを抑えているようだったが、そろそろ限界が近づいてきている。

 

(もう…だめだ…)

ハジメが諦めかけたその時紅い刀身がベヒモスの体を抉った。

 

「ハジメ!大丈夫か?」

巧がベヒモスを退け、ハジメに手を伸ばす。

 

「うん、大丈夫だよ巧。ていうかその武器は?」

「話は後だ!さっさとここから逃げるぞ!」

巧がそう言うと、ハジメと巧は皆の元に駆け出した。

ベヒモスも巧達を追いかけようとする。

 

「よし!今だ!お前ら攻撃しろ!」

メルドの声で生徒や騎士団から色とりどりの属性魔法が放たれる。

 

(よし!いける!)

とハジメと巧はそう思いながら万が一にも当たらないように頭を下げながら進む。

 

ようやく皆の元に近づいて思わず気を抜く巧。

しかし次の瞬間凍りついた。

ハジメの元に一つの火球が軌道を変え、ハジメを襲ったのだ。

 

(なんでだよ!)

巧とハジメは火球を避けたはいいものの、衝撃波でゴロゴロと転がった。

しかしそこにベヒモスが突進を仕掛けてきた。

巧はどうにか動けるものの、ハジメはもうフラフラしており、限界が近づいてきている。

 

遂に突進が巧とハジメを襲った。

巧とハジメはどうにか避けたがその衝撃で、橋はガラガラと音を立てて崩れ始めた。

 

「ハジメ!」

崩落の影響でハジメは吹き飛ばされたが、巧が手を伸ばし、ハジメの腕を掴んだ。

 

しかしギリギリで捕まえている状態であり、手を掴むのを辞めればハジメは奈落の底へ真っ逆さまだ。

 

「巧…危ない…!」

ハジメがそう言うと巧達に向かって最後の抵抗か、ベヒモスが突進してきた。

 

ベヒモスが突進してきているが手を離すわけにはいかない巧は、そのまま突進が巧を襲う瞬間を待っていたが、急に手の軽さが無くなって思わずハジメの方を向く。

 

「巧…僕の事はもういいから…生きてよ…」

「ハジメ!ハジメェェェェェ!」

ハジメはそう言いながら奈落の奥底へ落ちていってしまった。

メルドや生徒達も悔しそうな表情をしながらハジメが落ちて行くのを見ていた。

 

巧は襲ってくるベヒモスを軽々よけ、悔しそうな顔で皆の元に戻るのであった。

 

巧が皆の元に帰ってくると香織が暴れていた。

 

「離して!南雲君を助けに行かなきゃ!だから!」

「やめろ!香織!君まで死ぬ気か!南雲はもう無理だ!落ち着くんだ!」

「ねぇ!無理って何よ!南雲君はまだ生きてる!」

誰がどう見てもハジメは死んでいる。

あの奈落の底へと落ちてしまったのだから。

 

生徒達は錯乱している香織を見てオロオロしていた。

 

そのとき香織が戻ってきた巧を見て、巧の方に駆け出した。

「ねぇ!なんで南雲君を助けてくれなかったの!?あなたが手を離さなかったら南雲君は…!」

「そうだぞ…!乾!お前が…お前が手を引き上げていたら…!」

「そうだ!お前が悪いんだよ!」

 

どうやら香織達には巧が手を離したことでハジメが落ちて行ったと思っているらしい。

冷静に考えれば分かるはずだが、今は錯乱しており冷静な思考ができないらしい。

さらには自分が魔法の操作を誤らせてハジメを狙ってしまったかもしれないという不安からか、罪を擦り疲れそうな巧を非難しているようだった。

 

「あぁ…俺が殺したようなもんだ…恨むなら好きに恨め。それでお前達の気が晴れるならな…」

巧は生徒達のの悲痛な叫びを聞き、生徒達にそう言った。

 

「ねぇ!南雲君を…南雲君を返してよ!」

尚もそう言う香織をツカツカと歩いてきたメルドが手刀を香織におとし、気絶させた。

 

光輝がメルドを睨むが、雫がそれを制し礼を言った。

 

「すみません。ありがとうございます」

「礼など…言わないでくれ…これ以上人を死なせるわけには行かんからな…全力でここを脱出する。彼女を頼む…」

「わかりました」

 

尚も納得のいかない表情をしている光輝に香織を受け取った雫が光輝にに告げる。

「私達が止められないから団長が止めてくれたのよ。わかるでしょ? 今は時間がないの。それに乾君を責めてばっかりいるけど私達の弱さも原因の一つなのよ?…ほら、あんたが道を切り開くのよ。全員が脱出するまで。…南雲君も言っていたでしょう?」

 

雫の言葉に頷く光輝

 

「そうだな。早く行こう」

 

そして目の前でクラスメイトの一人が死んで茫然自失としている生徒達に呼びかける。

 

「みんな!ここから早く出よう!今は生き残ることだけ考えるんだ!」

光輝がそう言うと生徒達はノロノロと動き出した。

 

しかしまだトラウムソルジャーの魔法陣はまだ残っており、現在進行形で湧き出ている。

しかしこの精神状態で戦うのは無謀すぎるし、戦う必要もないため、光輝が脱出を促し、全員が脱出できた。

 

上階に続く階段は長く、体感三十階は登っているのではと感じられた。

魔法による身体強化をしていてもやはり疲労は溜まってくる。

 

そろそろ少し休憩すべきかとメルドが考えていると、上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた。

 

生徒達の顔に生気が宿り始める。

メルドが駆け寄り、壁を調べ始める。勿論トラップの可能性がないかも確認するのを忘れない。

 

結果としてトラップでは無いことがわかった。

どうやら壁を動かすための魔法陣らしい。

 

メルドは一言詠唱すると、魔法陣に魔力を流し始めた。

すると、扉がくるりと回転した。

その扉を潜ると、そこは元の二十階層だった。

 

安堵の声を上げへたり込む生徒達。

だかここは迷宮内。

メルドは一刻も早く脱出させるために心を鬼にして生徒達に声をかけた。

 

「お前達!座り込むな!脱出できなくなるぞ!魔物との戦闘を避け、最短距離で行く!」

生徒達の「少しは休ませてくれよ」と言いたげな目線を黙らせ、出口に向かうメルド達。

 

光輝が率先して動いてくれたこともあり、ようやく脱出できた。

今度こそ安堵の表情を浮かべる生徒達。

中には広場に座り込む生徒もいた。

皆生還できたことの喜びを感じているようだった。

 

だが、暗い顔をしている生徒もいるーー未だ目を覚さない香織を背負った雫や光輝達などだ。

 

そんな生徒達の様子を気にしつつ受付に報告しに行くメルド。

新しく発見されたトラップの報告。

それにハジメの死亡報告もしなければならない。

憂鬱な気持ちを顔に出さないメルドだったが、ため息をつかずには居られなかった。

 

♦︎

ホルアドの街に戻った一行は何をする気力も沸かず、ベッドに倒れ込んでいた。

 

巧も例に漏れずベッドに倒れ込みながら今日起きた出来事を思い返し、自分の不甲斐なさに落ち込んでいた。

 

(くそっ!もう誰も失いたく無かった…!あの時()()になっとけばよかったのか?ああ、くそっ!)

だが、このまま考えても埒が開かないと考えたのか、巧は半ば強引に考えを切り替えた。

 

(あの時あいつがなぜ来たのか…なんであれを持って来れたのか…それにこの世界にもスマートブレインがあるのか?それにいつの間にか消えていた…それにあいつ(オートバジン)もいつの間にか消えていた。ああ!こんな難しい事考えるガラじゃねぇんだ!俺は!)

思考に疲れたのか巧は目を閉じてそのまま眠ってしまった。

 

この時火球を打った犯人(檜山)ととんでもない本性を隠していたクラスメイトのやりとりに気づかずに…




はい。いかがでしたでしょうか。
まだ555には変身させません。
楽しみにしてくださっていた皆様本当に申し訳ございません。
その代わりできるだけカッコよく変身させますので!
スマートレディの口調が分からなくてノリで書いたんですけどこれでいいのか?

指摘や誤字脱字等ありましたらぜひコメントに書いてくださると嬉しいです。
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