神々は互いの領地を奪い合うため、支配下に置いた人間たちに戦争を起こさせ殺し合わせていた。
そして人間たちは神々に反旗を翻し、神と人間の間で地上の支配者をめぐる戦争が勃発。
強大な神々を前に窮地に立たされた人間たちであったが、5人の術法師が結界陣『タルタロス』を施し、天界と人間界が分離。神々は人間界にはいられず神界に追いやられ、人間の勝利で終了する。
そして5年が流れ、世界は神々のかかしであった王たちが強大な権力を持つ地上の支配者になるために、自身の欲望のための政治を行い、権力の力になる『オボロス』を求め、民衆はより大きな苦痛を被っていた。
同属同士で殺し合い、異種族を奴隷として扱い、権力者には向かう者には命で購わされる。 一方、エリアデン王国のデリオ領、国境の小さな町では、オボロスを利用して神界に行くか、またはオボロスを集めなければならないなど、様々な理由を持った人物たちが遠征隊を結成しオボロスを探すための旅に出る。
「…?」
失われた要塞を旅立ち、グリンデル村へ向かう道中、イリシアはふと、違和感のようなものを感じて足を止める。
「イリシアさん?」
そんなイリシアの様子を気になったシュバルマンが声をかける。
「オボロスの気配がこっちの方からするわ…」
そう言ってイリシアが指さしたのはグリンデル村へのルートから外れた獣道である。
伸びきった草木の下には僅かに石畳のようなものが見えていた。
「この辺も昔の遺跡が点在するらしいですからね…もしかするとそこオボロスがあるのかもしれませんね…」
顎に手を当ててアエルロトが呟く。
かくして一同は目的地をグリンデル村から遺跡へと切り替え、歩を進めるのであった。
2 シュバルマンがそれに気づいたのは遺跡を目指して十数分が経過したころであった。
断続的に聞こえる剣戟の音…。
自分達の行く先で戦闘が行われているのである。
「シュバルマンさん…」
アエルロトもまた剣戟の音に気づいたのかシュバルマンに声をかける。
「もしかするとランドス一味もオボロスの事を察知したでは…」
アエルロトが危惧するようにランドス達も遺跡に向かっていてモンスターと戦闘を繰り広げている可能性があった。
だがしかし、シュバルマンの勘が何かを告げていた。
故に…
「このままのルートを進もう、もしランドス達じゃなかった場合はどうする?」
獣道に一般人が迷い込んでしまいそこを野党やサロマン族に襲われて戦闘を行っている可能性も十分にあるのだ。
「確かにそうかもしれませんね…行きましょう」
一同は足を早めて道を進む…。
「はっ!!」
振り回される斧を避けると同時にカウンター気味に突き出した槍の石突きがサロマン族の喉元に叩き込まれる。
白目をむいて倒れるサロマン族。
サロマン族と相対するのは騎士甲冑に身を包んだ少女であった。
サロマン族の数は合計六体…内、一体は先ほど少女が倒したので残りは五体と言う事になる。
しかし少女の方もかなり疲弊しているようで直撃こそしないがサロマン族の攻撃が掠っていく。
「くっ…」
苦虫を噛んだような表情を浮かべながら少女は次第に追い込まれていく。
振り下ろされる斧をバックステップを踏みながら避けると同時に背中に甲冑越しに木の感触が返ってくる。
完全に追い込まれた形になった。
再び斧を振り下ろそうとするサロマン族、少女は少しでもダメージを軽減させるように槍を手放すと籠手に覆われた腕を交差させ防御の体勢を取り目を瞑る。
だがしかし、襲って来るはずの衝撃は無く、少女は目を開ける。
その時彼女が見たのは…
「ブヒン」
っと見た目通りの声を上げながらソーマの電撃を帯びた拳を喰らい倒れるサロマン族の姿であった。
「大丈夫ですか?」
そう言いながらナギが少女の元へと駆け寄り治癒をかける。
「ああ…すまない…助かった」
そう良いながらナギの肩を借りながら立ち上がると戦闘に加わろうとする。
…だがその時には既にサロマン族は敗走を始めている所であった。
「遅くなったが…先ほどは危ない所を助けてもらい感触する。」
焚き火を囲む一同にセイバーと名乗った少女が深々と頭を下げる。
サロマン族との戦闘が終わった頃、日が傾きかけていた為に一同はその場で野営をする事になり。
「いや、礼には及ばない…」
さも当日の事のように答えるシュバルマン。
「それでは私の気が済まない、あなたたちの旅に同行させて欲しい。
これでも武芸には自信があるほうだ」
「でもサロマン族に手間取っているようじゃね…」
ぼそりとピンコが呟く。
騎士や冒険者のように武芸を身につけている者であればやサロン族を倒す事は難しくは無い。
「あっ、あれは初めて見る生き物相手に戸惑っただけだ…」
しどろもどろしながらもセイバーが弁明する。
「えっ…でもサロマン族ってこの辺りは結構いるけど…?」
「ああ…実は私…記憶が無くてな…」
記憶を無くして森の中をさ迷っている所をサロン族に襲われたのだとセイバーは語る。
「だから私の記憶が戻るまでで良いんだ…君達の旅に同行させて欲しい」
そう言いながら再び頭を下げるセイバー。
「セイバー…」
そんなセイバーにシュバルマンは手を差し出す。
「少しの間かもしれないが宜しく」
「ああ…宜しく、シュバルマン」
そう言うとセイバーはシュバルマンの手を強く握り返した。
日の出と同時にに野営地を出発した一行は1時間後には遺跡の内部にいた。
Lの字を描くような形状の遺跡の外壁は所々が崩れており、蔦や木々に覆われている。
また、後方は断崖絶壁が控えている。
「ふむ…」
特にモンスターに出会う事も無く遺跡の中腹、広らけた場所に出た所でアエルロトが何かを考え込むように顎に手を当てる。
床に散らばる紙片や倒れた本棚、割れたフラスコの破片がその場所が何かの研究施設だった事を物語っている。
「くぅぅ…イリシアさんと一緒に探索したかった…」
「はいはい、文句言わないのー」
拳を強く握りしめながら文句を言うシュバルマンをピンコが慰める。
そんな二人の様子を柔らかな笑みでナギが見つめている。
現在、セイバー達のいる部屋は広さこそ先ほどの研究部屋より狭めのものの本棚等が無い分、広く感じる。
「しっかし…ものの見事に何も無いわねー、この部屋…」
壁に寄りかかりながら退屈そうにピンコが口を開く。
その時である、ピンコが寄りかかっていた壁の一部が大きくへこみ、シュバルマンが立っていた床が抜けたのは…。
「どわー!」
声を上げながらシュバルマンの体は重力に従い落下する。
「バルマン!」
「シュバルマンさん!」
「シュバルマン!」
三人が血相を変えてシュバルマンが落ちた穴を覗き込む。
「何とか無事だー」
大剣を壁刺し、シュバルマンはそこにぶら下がっていた。
「シュバルマンさん!血が!」
無事にピンコロボによって穴から救出されたシュバルマン。
そんなシュバルマンにナギが声を上げる。
シュバルマンの腕から鮮血が溢れていたからである。
「穴から這い上がる時には木で切ったか?
でも見た目より深く無いので大丈夫ですよ」
心配そうな表情を浮かべるナギにシュバルマンが笑顔で返す。
「ドジ…」
「うるさせーよ」
からかうピンコに対してはデコピンを返しシュバルマンはセイバーが床に耳をつけている事に気づく。
「セイバー?」
怪訝な表情を浮かべながらセイバーに声をかけるシュバルマン。
「何かくるぞ!!」
床から顔をはがし声を荒げるセイバー。
それと同時に抜け落ちた筈の床が迫り上がってくる、大型のゴーレムを載せて…。
岩で作られた三メートルを超える漆黒のゴーレム…。
岩が寄せ集まったような外見は失われた要塞近隣で見かけられるロックゴーレムと一見すると同じようなタイプである。
だが、異なる部位があった。
全身うっすらと溝のようなものが掘られていおり、その溝の起点となる体の中央に淡く光る石‐オボロス‐が存在していたのである。
床の上で黙する巨兵の姿はその漆黒き外見も合間って不気味な印象を抱かせる。
床が完全に元の位置に合致するとオボロスが脈動を開始、溝に紅い光がゆっくりと灯り始める。
それはさながら全身に血液を送り出す心臓のようであった。
薄気味が悪いゴーレムの姿と効果不明のオボロスに一同は言い知れぬ不安を覚える。
数秒と関わらずに全身溝に光が灯りゴーレムが動き出す。
「一旦引くぞ!」
直感的にゴーレムから何かを感じたシュバルマンは全員にそう命じた。
研究室へと戻って来たシュバルマン達は奥の広間で発見し、この部屋へと向かってきているゴーレムの事をソーマ達に話した。
「元々、この研究施設では軍事目的でオボロスを作り出そうとしていたようですね…。
色々と造られていたのですが結局、開発に成功したのは防御の石一つだけと言うことです」
アエルロトがレポートらしき紙束を見ながらシュバルマン達に説明する。
「あのゴーレムはその防御の石が搭載されてるわけ?」
ピンコの質問にアエルロトは頷く。
「ですが、オボロスは不完全な状態で一定量のダメージしか無効化できないようで…っと来たようですね…」
そう言いながらアエルロトは通路の方を見るとゴーレムがゆっくりとこちらに向かって歩いて来るところであった。
ゴーレムが研究施設へと足を踏み入れると同時に動いたのはセイバーであった。
「ハァァァァァァァァァァ!!」
ゴーレムとの距離を積めると同時に長槍で高速の突きを放つ。
体重の軽い自分がいくら渾身の突きを放とうとしても大してダメージが与えられない事は彼女自身も理解している。
故に放つ刺突は一撃、二撃で終わらない。
動きを最小限に抑えた上で放たれるは百を超える、連続の突き。
無駄を削ぎ、繰り出されるは高速を超えた神速。
刺突の余波で地面が削れ衝撃で土埃が舞い散る。
だがそれでも彼女は攻撃の手を緩めない。
体が軋みを上げるがセイバーは尚も攻撃を続ける。
「つっ!!」
刺突の数が千に達するか達しないか所でセイバーは後方に飛ぶ。
数秒後、セイバーのいた場所にゴーレムの拳が突き刺さる。
「セイバーに続くぞ!」
シュバルマンが皆を鼓舞し他の者達も戦列に加わるとそれぞれが現在、己の出し得る最強の技でゴーレムに攻撃を仕掛ける。
ソーマはライトニングジェイルを、シュバルマンはビーストロアーを、ピンコはファイアブラストを、イリシアはダンシングダガーを、アエルロトはフォームレスブレードをを、ナギはバイオレンスゴートを間髪入れずにに繰り出す。
全ての攻撃がゴーレムに直撃し、爆発がゴーレムを包み込む。
しかし…
「くそっ…」
シュバルマンが悪態を突く。
それだけの攻撃を浴びて尚、ゴーレムの体にはほとんど傷が着いていなかったからである。
そして再びゴーレムの反撃が開始される。
「くっ!」
シュバルマンがゴーレムの拳を大剣で受けながら呻き声を漏らす。
ゴーレムの反撃が開始されてから数分。
一同は一気に防戦に追い込まれていた。
先ほどの攻撃で気力を消費してしまったのとそれだけの攻撃を繰り出したにも関わらず、ゴーレムがほとんど無傷だった事が精神的なダメージを与えたのであった。
「くっ…」
再び叩き込まれる拳にシュバルマンが吹き飛ばされる。
「くそっ…何で俺ばかりに集中攻撃して来るんだよ!!」
シュバルマンが半ばヤケクソになって叫ぶ。
『そう言えば …』
シュバルマンの叫びにソーマはゴーレムの攻撃に一定の規則性のような物を見いだす。
先ほどからシュバルマンが集中攻撃をされているのだ。
『でも何で…』
考えながら部屋を見渡すソーマは部屋を見渡しそれに気づく。
通路の入り口に血痕が残っているのだ。
現在、メンバーに血を流す程の怪我やダメージを負っているのはシュバルマンしかいない。
ゴーレムは出血によるダメージがあるシュバルマンを中心に攻撃をしているのであった。
「なら…」
ソーマの頭の中でゴーレム攻略の作戦は直ぐ様に思いついた。
「ピンコ!!合図をしたらロボでゴーレムにタックルを!!」
「OK!」
ソーマの考えた策はかなり危険を伴うものです下手をするとシュバルマンを失う可能性さえあった。
だが、ここで躊躇していては全滅する可能性もある。
苦渋の選択であった。
だからこそソーマは次の指示を飛ばす。
「シュバルマンさん!ゴーレムを壁際に引き付けて下さい!!」
「やってみる!!」
シュバルマンが返事を返すと共に壁際へと移動する。
そしてゴーレムもソーマの予想通りにシュバルマンにを追って壁際へと向かう。
「今だ!!」
ソーマの合図と共にピンコがロボでゴーレムへとタックルを喰らわせる。
そのまま壁ごとゴーレムを崖下まで突き落とせば確実に止めを刺せる筈である。
無論、ロボがゴーレムにタックルを仕掛けると同時にシュバルマンが離脱する事も織り込み済みである。
だがしかし、ここでソーマにも想定外の事が起こる。
ロボのタックルがゴーレムに当たる寸前、ゴーレムが拳を繰り出したのだ。
それを反射的に大剣で受けるシュバルマン。
そして、ゴーレムにロボのタックルが当たり、壁が破壊される。
そのままシュバルマンはゴーレムと共に谷底へと落ちていく。
「そんな…僕のせいでシュバルマンさんが…」
「嘘…そんな…バルマン」
絶望したようにへたり込むソーマ。
瞳に涙を浮かべるピンコ、他のメンバーも悲しげな表情を浮かべる。
「勝手に殺すな!!」
シュバルマンの声が崩れた壁側から聞こえ、走り出す一同。
そこには岩に刺した大剣に掴まるシュバルマンの姿があった…
「バルマン!」
ロボによって再び助けられたシュバルマンに抱き付くピンコ。
「おっ、おい…ピンコ…」
「私…バルマンが…バルマンが…本当に死んじゃったと…」
戸惑うシュバルマンに涙を浮かべ嗚咽を漏らすピンコ、そしてそれを囲み彼の無事を喜ぶ仲間達…。
「つっ…!」
その姿にふとセイバーの記憶の一部が蘇る。
戦に勝利し喜び合う兵士達…。
それを遠巻きから見ている誰かの視線…。
『これは…私の視線か…』
セイバーはその記憶の糸を辿ろうと試みる。
しかし、その記憶遡行も直後に襲って来た振動に中断する事となる。
「まだ生きてやがる…!!」
忌々しげに呟きながらシュバルマンは崩れた壁から崖下を覗き込む…。
ゴーレムが崖を登って来ているのであった。
ゴーレムが這い上がって来るまでに何とか呼吸を整える事は出来たものの一同の体力は限界に近いものだった。
「…来る!」
イリシアが呟くと同時にゴーレムは地面に腕を思い切り叩きつける。
それと同時に発生した衝撃波が皆を吹き飛ばす。
「くっ…」
「つっ…」
「ぐっ…」
「きゃあっ…!」
その一撃でソーマ、イリシア、アエルロト、ナギの四人は壁に叩きつけられて意識を失う。
シュバルマン、ピンコ、セイバーも意識こそ失ってはいないががかなりのダメージを負っている。
だが、ゴーレムの方も先ほど突き落とされた時と、先ほどの攻撃を無理をして繰り出したのかボロボロの状態であり、もう一度崖から突き落とせば力尽きる可能性があった。
「もう一回…突き落とすか…」
シュバルマンは足に力を込めるとヨロヨロと立ち上がる。
「…バルマン…駄目だよ…死んじゃうよ…」
そんなシュバルマンをピンコは悲しげに目に涙を浮かべながら見つめる。
「バーカ、強い使命や目的を持ってる人間ってのはそう簡単にはくたばったりしないんだよ」
シュバルマンはそう言うとピンコの頭を撫でると大剣を握り直し、ゴーレムへ走り出す。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「つっ!」
その姿に再びセイバーの脳裏を再びデジャヴがよぎる。
自分を守るために散った命。
不甲斐ない王に付き従って命を失った多くの兵の姿がシュバルマンにだぶる。
気がつけばセイバーは走り出していた。
全身を襲っていた痛みは嘘のように消え、身体には力が漲る。
(そうだ…私はもう二度と失わないと誓ったのだ…)
石畳を蹴る足に力を込め、セイバーはシュバルマンよりも早くゴーレムと距離を詰めていた。
ゴーレムがセイバーを迎撃すべく腕を振り下ろす。
それとほぼ同時にセイバーはその名を口ずさむ。
「エクス…」
両腕に戻ってくる力強い感覚、それと同時に凄まじい程の暴風が吹き荒れゴーレムが僅かにバランスを崩す。
そしてそれが姿を顕す。
それは眩いばかりの光りを纏った一振りの剣であった。
「…カリバー!!」
エクスカリバー…それはかつて小国の騎士王が泉の乙女より授けられたる聖剣。
その聖剣はかの王に多くの勝利と栄光を与えてきた。
今、その聖剣に相対するは傷つきながらもその身に宿りし防御の力は未だに健在の石の巨兵。
たが、如何に堅固たる防御の力を持とうとも真なる力を取り戻した騎士王と聖剣の前には紙も等しい。
その身に傷を負っていて、更に防御の力が不完全ならば尚更、騎士王の一撃に耐えられる事など出来ず聖剣の放つ輝きに呑み込まれ防御の石ごとその身を消滅させたのであった…。
セイバーの繰り出した一撃はゴーレムを消し去るだけでは飽きたらず、その背後にあった壁や森の一部すら消し飛ばす程であった。
その余りにも強すぎる威力に唖然とする一同。
だがしかし、直ぐに正気に戻ることになる。
何故ならば、三度目の激しい揺れが一同を襲ったからである。
遺跡事態がボロボロだった所にセイバーの一撃がとどめとなって遺跡が崩壊を始めたのである。
「ヤバい!崩れるぞ!」
シュバルマンの号令と共に出口に向けて一同は走り出した。
遺跡から脱出して十数分…一同はセイバーがサロマン族と交戦していた場所にいた。
セイバーはふと皆驚いたような顔で自分を見ている事に気づく。
その理由は簡単に見つかった…。
セイバーの体が淡い光を纏いながらゆっくりと消えているのだ。
「みんな…私は…本来の居場所に戻ろうと思う…」
「記憶を取り戻したんですね…?」
ソーマの問いに頷くセイバー。
「短い間だったが見ず知らずの私を仲間に加えてくれてありがとう…」
「お礼を言うのはこっちの方ですよ。
セイバーさんがいなかったらこうしてみんな無事に遺跡を脱出できなかったと思いますし…
だからセイバーさん、ありがとうございました」
それを聞いたセイバーは満足そうに微笑むと消えていった…。
「セイバー…セイバー」
誰かが自分の名を呼ぶ声にセイバーは目を開ける。
「アイリス…フィール…?」
未だに寝ぼけた目でアイリスフィールの姿を捉える。
「冬木市に着いたわよ」
その言葉に自分の現状をセイバーは思い出す。
現在、彼女達がいるのは冬木市へと向かう旅客機の中だ。
初めて乗る飛行機に興奮気味だったまでは良いが気づいたら眠ってしまっていたらしい。
「あんなにはしゃいじゃって
セイバーったら子供みたいだったわ」
アイリスフィールの言葉にセイバーは羞恥に顔を紅く染める。
ふと、セイバーは自分の目の前にアイリスフィールが手を出しているのが気づく。
「行きましょう、セイバー」
「ああ…」
そう言いアイリスフィールの手を掴む。
かくしてセイバーは冬木へと足を踏み出したのであった。
ずいぶん前に、オンラインゲームの企画にとうこうしたものー。