ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物   作:その辺の残骸

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 結月ゆかりと弦巻マキが繰り広げた地球政府相手の大立ち回りの代償は長きに渡るコールドスリープ。一糸纏わぬ姿の二人が目覚めたのは無人の艦内。
 植民惑星を支配してきた地球が衰退した銀河でバイオレンスな美少女たちの新たな戦いが始まる。


宇宙、凍える裸の乙女が二人、ただし野蛮
前編


 

 覚醒した結月ゆかりの第一声は「寒い」の一言であった。

 

 紫色の艶やかな髪。その長い横髪を纏める髪留めと友人にメタルマカロンなどと呼ばれている金属の髪飾り。身に着けているのはそれだけ。首から下は一糸纏わぬ姿である。

 

 ゆかりは四方を壁に囲まれた、狭い空間にいた。直立した格好で寝かされていたのだ。

 

 徐々に思い出してきた。地球政府を向こうに回しての大暴れの代償は時間だった。

 あまりにもしつこい追撃に辟易し、親友でもある相棒と一緒にほとぼりが冷めるまで冷凍睡眠することに決めたのだ。

 

 モーター音が響き、前方の壁が可動して開く。ゆかりは恐れることなく、コールドスリープポッドから出た。

 

 極めて薄い、裸の胸を片腕で覆いながら裸足で降り立ったのは白一色の部屋。

 中央に二基のコールドスリープポッドが並んでいる。もう一基のカバーも開いており、中は無人だった。

 

「ふむ」

 

 唯一のドアは内側から力づくで壊されていた。恐れることなく、ゆかりは全損したドアに近寄る。

 

「間違いなくマキさんの仕業ですね」

 

 共に戦場を駆け抜けてきた金髪の親友を思い浮かべ、頼もしい気持ちになるゆかりであった。

 

「まずは合流しないと」

 

 冷たい空気を鋭く鍛え抜かれた裸身で掻き分け、ゆかりは廊下に出た。予想していた通り、ここは航宙船の中だ。

 

 羞恥心のない様子でゆかりは探索している。

 

 時折監視カメラを睨みながら手を振ったり、ストレッチしたりなど、裸で行うには刺激が強い行動を繰り広げていた。

 自他とも認める美少女であり、恥じるべき部分など何もないと思っているクチである。

 

 しかし、ゆかりは露出狂ではない。乗員に自分たちの存在を伝えようしているだけだ。

 

 だが、宇宙時代のアテナやヴィーナスと讃えられるような魅力的な美少女が"二人"、生まれたままの姿で船内をほっつき歩いているのに何の騒ぎも起きていない。

 

 つまり、この船は有人船でありながら、無人で運用されている可能性が高い。

 

 通路の角を曲がる。やっと自分以外の動体と出会えた。警備用の浮遊ドローンが二機飛んでくる。

 

 片手を腰に当て、クールな美貌を全面に押し出しながら堂々と立つゆかり。

 裸の美女に惑わされることなくドローンは下部に装着している銃からエネルギー弾を発射してきた。

 壁や床を焦がす威力から殺傷モードの出力だと察する。

 

 徒手空拳で銃に挑むのは無謀だ。

 出てきた通路に引っ込み、全速で逃走するのが賢明である。しかし、ゆかりは違った。

 

「ちょうどいい。体を解したかったところです」

 

 無表情なまま呟き、姿勢を低くして突進。

 

「はあっ!」

 

 ドローンが捕捉できない人間離れした速さで距離を詰め、筋肉が鍛えられた豊かなお尻の遠心力を効かせた回転蹴りを放つ。

 

 高身長な美少女の長い脚が二機の浮遊物体を捉えていた。壁に叩きつけられたドローンは全損。

 

 艶やかな紫色の髪が靡く。

 

 ゆかりは手刀を作った右手を突き出し、握った左手を腰の後ろに引く、油断ない残心の姿勢を取って警戒。前方の隔壁が上がり始めた。

 

 今しがた破壊したドローンの残骸をちらりと見て、隔壁の向こうにいる推定敵に向かって蹴る作戦を練る。

 

「ゆかりんも起きたんだね! わたしだよ弦巻マキだよ!」

 

 隔壁の向こうから現れたのは流線形の白い装甲で覆われたパワードスーツ。手を振っている。陽気で人懐っこい感じの美声だ。

 

 警戒を解いたゆかりはすたすたと歩いてスーツに近寄った。

 

「会えて安心しましたよマキさん。早速良いモノを見つけたようですね」

 

「独りにしちゃってごめん。

 先に起きたからゆかりんのポッドを開けようとしたんだけど、どうしても開かなくてさ。だから、服とか武器とか探しておこうと思って外に出たんだ」

 

 マキは事情を説明しながら申し訳ないという感じで片手を頭の後ろに当てる。物々しいパワードスーツ姿でやるには奇妙なポーズだが、愛嬌がある。

 

「迅速な行動に感謝します」

 

「武器庫を確保してあるよ。ゆかりんの分のパワードスーツもあるし武器だって対人対戦車、対MF(マニューバーフレーム)用まで山盛り。

 流石、十年経ってるだけあって技術も進歩してるね。この銃だって使いやすいし威力だって凄いんだ」

 

 十年。それが植民惑星アンゼリスの独立を助け、地球政府の艦隊二百隻を纏めて撃滅した代償だった。

 

 特にショックを受けてはいない。コールドスリープに入ることを決めた時には覚悟していた。

 

「助かります。流石にそろそろ服を着たいと思っていたところでしたので」

 

 親友と話すときも無表情なゆかりだった。しかし、内心は上機嫌。

 

「あーその。服なんだけどね」

 

 アサルトライフルを構えて隣を歩いていたマキが立ち止まった。

 

「何か?」

 

 装甲ヘルムで窺えないマキの表情が神妙なものになっていると、ゆかりは察した。

 

「この船、変なんだ。倉庫に武器はたくさんあるのに服なんかの日用品は一切積まれていない。

 船内の別の場所に日用品を纏めてあるのかもしれないけど、スーツのデータリンクに認証が必要でわたしじゃできなくて」

 

「私の出番ということですね。任せてください」

 

 ゆかりはハッキングに長けており、十年のブランクなど乗り越えられると自負していた。

 

「ところで服がなかったということは今のマキさんは裸でそのパワードスーツを着ているということですか?」

「うん。最初は寒かったけど暖房が効いてきて快適だよ。胸とお尻は窮屈だけど」

 

 金髪碧眼の美少女が全裸でパワードスーツを纏っている。そこはかとなく艶っぽいシチュエーションですね、とゆかりは思った。

 

「また来た。ゆかりんは下がっていて」

 

 時折、警備ドローンと鉢合わせてしてはマキが手にしているアサルトライフルで撃ち落した。弾倉が空になると抜け目なくリロードする。滑らかな戦闘動作だ。

 

「ここだよ。ささ、入って」

 

 倉庫にゆかりを誘いつつ、マキは通路側を警戒した。

 

 確かに膨大な量の武器弾薬が詰め込まれていた。

 身に着けるものは防弾ベストくらいならあるが、裸の身体を覆うには足りないし、ぴっちりしたインナースーツを装着して入るのが前提のパワードスーツの中には持ち込めない。

 

 ゆかりはパワードスーツに近寄り、背部のハッチを開いた。しなやかな白い裸身が内部に滑り込む。

 

 全身が冷たい感覚に襲われ、少し身震いする。

 胸は平坦なので窮屈ではないが、大きなお尻に圧迫感がある。それほど搭乗スペースが狭いのだ。

 

 起動プロセスはゆかりが知っているものと変わっていない。

 

 拳を握っては開く。パワードスーツの基本動作を確かめると自分にしかできない仕事に取り掛かった。

 

 コンソールを開き、幾つかのコマンドを送り込んで強引にスーツのサイバー攻撃用のプログラムを立ち上げる。

 ゆかりは船内システムに攻撃を仕掛けた。五分ほどで攻略し、十年後の世界のセキュリティに初勝利する。

 

「やりました」

 

 サムズアップして勝ち誇るゆかりであった。

 

「おおー。さっすが!」

「部分的にですけどね。ドローンを指揮してる保安システムやオートパイロットを止めるのにはもう少し時間をください」

 

 とりあえず、必要そうな情報を自分とマキのスーツに表示する。

 

「船名はガーベラ号、800mクラス。カタナ級高速駆逐艦―――ふむふむ」

 

 ゆかり達にとって未知の艦艇だった。武装は十分に施されており、船内の管制を掌握すれば思いのままだ。

 

「船内の備品リストは――――ありました」

 

 バイザーに映るファイルを注視するだけで中身が表示される。素早く目録を眺め、美少女二人は揃って怪訝な表情に。

 

「船室まで倉庫代わりに使っている? しかも兵器置き場にするなんて」

 

 今のご時世では、ひょっとしたら常識になっているのかもしれないが、とにかく異様な感じがする。

 

「ビンゴ」

「ハッカーの人って皆そのセリフ好きだよね」

 

 ゆかりはハッキングを続け、ガーベラ号を完全掌握した。

 

 この艦は神聖アルヴィス公国なる星系国家の領内を航行中だ。航海日誌などは一切なく、完全無人で運用されている。

 

 超光速星間ネットワークに繋ぐのを試みたが、星系外部との連絡は強力なジャミングで遮断されており、内部での通信は著しく制限されていた。

 

 次に星系内ネットに繋いでみる。

 試しに開いたページから元首を讃えるプロパガンダ放送が流れ、ヘルメットに反響したので慌てて接続を切った。

 

「うわーこのアルヴィス公国って国は碌でもなさそう」

「ですね。ひと暴れするにはちょうど良いかもしれません」

 

 ガーベラが自動的に応戦、あるいは回避するよう設定したIFFは神聖アルヴィス公国の軍のものだった。

 

「恐らくこの艦は神聖アルヴィス公国と敵対する勢力を支援するために送られたものですね。目的地は秘密基地か何かでしょう」

「レジスタンスとかかな? けどなんで私達のポッドが?」

「武器扱いは心外ですね。マキさんも私も銀河史上最高クラスの美少女だというのに」

 

 宇宙規模の蛮族として、あちこちで破壊と暴力の嵐を振り撒いてきた二人組なのだが、実際容姿は生きた女神と讃えられるレベルなので始末が悪い。

 

 なぜ自分たちのポッドが推定レジスタンスを支援する艦に積まれていたのか、という大いなる謎が残ったものの状況をコントロールしつつある。

 

 それを自覚すると余裕ができて空腹を感じ始めた。

 

 幸いにも空腹と全裸状態を一挙に解決する資材が積み込まれているのをゆかりは発見した。

 

高分子合成機(レプリケーター)がありますね。予備を含めて2ユニット、原料もたっぷり用意されています」

 

 それは資源の限られる宇宙船のインフラを支える装置であり、3Dプリンターを極度に高度化させたものといえた。

 

 原料があれば精密機器や生物など極度に複雑な物でなければ生成することができる。食料や衣類の生成などお手の物だ。

 

 衣服に関してはさらに目録を捲り、戦闘用としては素晴らしい逸品が積み込まれているのも発見したが、今はショーツを穿き、服を纏いたい気分だった。

 

「やったー。何食べようかな」

 

 早速悩み始めるマキ。頭の中はハイカロリーな食べ物で一杯だ。

 

「ご苦労様~」

 

 パワードスーツを着たまま廊下に出て、ゆかり達を味方と識別するようになったドローンに手を振る。

 

 

 レプリケーターが運び込まれた部屋まであと一ブロックという所まできて警報が鳴り響いた。

 

「何何何!?」

「レーダーが敵機を捉えました」

「敵ってこの国の軍隊!?」

「そのようです。MF三機が高速接近。その後方に重巡洋艦の艦影あり」

 

 ゆかりは視線を躍らせ、バイザー内に表示された情報を読み取った。

 

「ご飯食べようとしてるときに来ないで欲しいなぁ!」

「こちらもMFで迎撃しましょう」

 

 相手は独裁者の国の軍隊だ。

 手厚く保護してくれる可能性はないし、そもそもこの手の輩をぶん殴るのがゆかりとマキの生き方だ。

 

 物凄い速さで駆け、MFが置かれた格納庫に向かう。

 

 人工重力の圏外で無重力となっている格納庫には二機のMF、宇宙時代の主力兵器であるヒト型機動兵器が鎮座していた。

 

「こっちがフレドリカ・マスターアームズ製のTYPE-11"イクリプス"ですね」

 

 白と青のカラーリングがヒロイックな機体だった。備品目録によれば、ゆかりとマキがかつて雇われた植民惑星アンゼリスのメーカーのMFである。

 

 イクリプスはMFの基本である機動戦を主体とした機体のようだった。

 

 アンダーバレルにビームランチャーを取り付けたアサルトレールガン。左腕にはシールド。背部武装はミサイルポッド。

 白兵戦装備としてマテリアルブレード――――18mの巨人に合わせた刀とレーザーブレードが腰にマウントされている。

 

 両機ともフラッグシップ機に用いられるツインアイの頭部ユニットを備えている。

 

「そして、こっちの子はTYPE-44B"フューネラル"かぁ。いいね、強面なのが気に入ったよ」

 

 マキがきらきらとした眼差しで見上げるのはイクリプスと対極的な黒と赤で塗装された、威圧的な人型マシンだった。

 

 直線的なラインの装甲は重厚であり、大型のビームキャノンを携えている。砲撃タイプだが機動力を両立する設計らしい。背部に大型ブースターと戦闘機めいた主翼が装備されていた。

 

「中にパイロットスーツがあるようです。与圧されていますし、装甲服はここで脱いでしまいましょう」

 

 言ってる傍からゆかりはパワードスーツの背部から滑り出た。ゆかりの裸の身体は汗を掻き、少女らしい甘い匂いと混じったモノを格納庫内に発散させている。

 

 傍らで長い金髪の美少女が装甲服の背中から現れ出でる。今まさにこの世に生まれ落ちたような一糸纏わぬ白い裸体。

 肉感的で奔放な肢体の腹筋は綺麗に割れており、筋肉質だった。

 

 一瞬、ゆかりはマキの碧眼と見つめ合った。

 

「ようし、やるぞ!」

 

 気合を入れたマキが無重力で遊泳する。陽気な金髪碧眼美少女のお胸が弾んだ。

 

「ゆかりんも早く!」

「すぐに行きますよ」

 

 促され、ゆかりは飛び立った。

 

 生まれたままの姿で空間を舞う少女たちの姿は神秘的だった。ゆかりはイクリプス、マキはフューネラルを乗機に選んでいる。

 

 コクピットハッチが開くと、意を決して乗り込み、真っ先に素肌を覆うことができるスーツを取り出しにかかった。

 ナノスキンスーツ。それが野蛮な戦乙女二人を守る、超極薄の鎧の名であった。

 

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