ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物   作:その辺の残骸

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バトル・バルバロイ・バーサーカーズ
ルー・ガルゥ


 豪華客船、白姫号を救助したガーベラ号は単独での航海に戻っていた。

 乗員が四名しかいない戦闘艦の物資は余りある。最も重要な水は循環系に異常がない限り、使いたい放題だ。

 

(ありがたいことですね)

 

 熱いお湯のシャワーを浴びながら、結月ゆかりはそう思った。

 八洲製の航宙船の居住性の高さは銀河に知れ渡っている所で、それは戦闘艦でも変わらない。

 

 現在、紫髪の蛮族美少女は休憩中。

 ピンクと水色の髪の可愛い弟子――琴葉茜と琴葉葵にガーベラ号の操船を手解きして、ブリッジを任せていた。

 

(気持ちいい……)

 

 髪を掻き上げる艶やかな仕草で両腋を曝し、体を打つ水流の気持ち良さに感じ入る。そんなひととき。

 誰に魅せるわけでもないのに、紫髪の女蛮族は魅力的なポーズを取っている。

 もし誰かに突っ込まれれば、「常に格好良くキメる、それがゆかりさんのスタイルなのです」と無表情で平らな胸を張って答えるだろう。

 

 ゆかりは仮眠明けのシャワーを浴びて、さっぱりした。

 今日は黒と紫色のカラーが妖艶なナノスキンスーツの上に、ウサミミパーカーを着ていたのだが、スーツを手にすると一瞬悩む素振り。ぶかぶかサイズになったままのナノスキンスーツを着用せず、首元のフィッティングスイッチを押す。

 

 するとスーツが蠢くような音を立て、縮んでいく。数秒で圧縮され、ポケットに入れて持ち運べる大きさに。

 この機能を使う度に「おお」とゆかりは思わず感心の声を上げてしまう。

 

 装甲プロテクターまで縮んでおり、一見すると質量保存の法則を無視しているかに見える、ナノマシン工学の粋と呼べる機能であった。

 

 パーカーのポケットに縮んだナノスキンスーツをしまう。左右の横髪を結ぶ髪留めと、メタルマカロンと呼ばれる飾りを付けたゆかりは素肌にウサミミパーカーだけ羽織ってシャワールームから退出。

 

 前を閉じることさえしない。胸の先端は隠れているが、下は丸見えだ。

 身長170cmを超える長身で美麗な筋肉質の引き締まった裸体をさらけ出した格好で堂々と歩む。脚が長いので一歩の歩幅が大きい。

 

 だが、ゆかりは決して露出狂ではない。

 その証拠にクールな面持ちのまま。肌を晒したり、空気を直に感じることに快感を見出す様子はない。単純に次に取り掛かる鍛錬に衣服は必要ないので、手間を減らしているだけだ。

 

「そろそろ来る頃だと思ってたよ」

 

 金髪ロングヘアの弦巻マキはナノスキンスーツを着込んだ姿で待ち構えていた。軽いストレッチを済ませた段階で、廊下から近づくゆかりの気配を察知していたのだ。

 

「本気だね、ゆかりん」

 

 無言でパーカーを脱ぎ捨て、ゆかりは生まれたままの姿になっている。紫髪の蛮族娘はトレーニングに本気で打ち込む時は全裸になるのだ。

 

 何故、本気のトレーニングをするのかと言えば琴葉姉妹とヒュドラが原因だろう。

 自分の命だけでなく、ひたむきで可愛らしい少女たちの命を預かる立場になり、銀河には不穏な陰が蠢き始めている。

 

 弦巻マキも同じ気持ちを抱いていた。

 

「ちょっと待っていてね。わたしも準備するから」

 

 空気が抜ける音。ナノスキンスーツを脱ぎ捨て、裸になった金髪の美少女。マキは改めて無表情な紫髪と向き合う。

 雪のような白い肌。スレンダーな肢体に無駄はない。胸が平らだが、お尻はマキより大きく、形も抜群。贔屓目なしで銀河一の美尻の持ち主だと断言できる。

 

 ゆかりも金髪娘の豊満な肉体を隈なく見つめ、奔放さの中に秘めた力強さに感じ入る。金髪碧眼の蛮族娘の裸体は陽気な情熱を発散しており、太陽に美しい女のカタチを与えたかのよう。傍にいるだけで明るく照らされているような気持ちになる。

 

 親友に背を向けたマキがトレーニングマシンに向かう。

 大きな胸が大股で歩くのに合わせて、大袈裟なリズムを刻んでいた。長い金髪の下では肉感的なヒップが挑発的に揺れている。

 

 おもむろにゆかりも歩み始めた。ぺたぺた、という裸の足音が響く。

 

 

「ふんっ! ふんっ!」

 

「はぁ…はぁ…!」

 

 荒々しい息遣いだけがトレーニングルームに木霊する。

 

 元々、ゆかりとマキは身体を鍛えることが共通の趣味。汗臭くなることに抵抗がない。

 肉体を武器に生きる傭兵としての実益を兼ねた趣味だが、打ち込み度合いは常軌を逸している。

 

「「はぁっ! はぁっ!」」

 

 ウォーミングアップが終わると本格的な鍛錬に入る。生まれたままの姿でトレーニングマシンに跨り、最高負荷で筋肉を苛め抜いていく。

 数十種類の筋トレが、これ一台で行えるマルチマシンは大きな装置だ。

 そのため、無機質な機械の塊に裸の美女が取り込まれているかのような、前衛芸術めいた光景になっている。

 

 だが、広いはずのトレーニングルームに広がる熱気と汗、華やかな香りが。瑞々しい乙女の肉体が発する気迫と圧倒的な生命力が、芸術などという軟な連想を見る者に抱かせない。

 

「よし、次!」

 

 前張りの類も付けずに大股を開いてトレーニングしていたマキが弾かれるように立ち上がった。

 照明で汗にまみれた肉体を輝かせる金髪娘が大股で向かった先はボルダリングウォール。

 

「破ッ!」

 

 サンドバッグに思う存分打撃を叩き込み、お尻で遠心力を効かせた回し蹴りを食らわせる。長く伸ばした紫の横髪が靡いていた。

 髪を掻き上げると少し遅れて、ゆかりもボルダリングウォールへ。

 

 金髪と紫髪の女蛮族は同時にスタート。カラフルで不揃いなホールドを掴み、長い脚を伸ばして、バランスを取りながら登っていく。

 片脚を横に伸ばしてホールドに引っ掛けることが多い。必然的に後ろから見ると恥ずかしい姿勢になる。髪で隠れるマキはともかく、ゆかりはお尻の奥まで晒し上げる格好で壁をよじ登っていく。

 

 しかし、羞恥心は消え失せている。

 今、ゆかりとマキは筋肉の鍛え上げることを存在意義とする生き物になっており、余計な思考に心が乱れることはない。

 

「くっ!?」

 

 汗で濡れた足が滑り、マキは落下しそうになる。だが、素早く別のホールドに足を引っかけて、バランスが崩れるのを防ぐ。

 大きな乳房を壁に押し付ける態勢になってしまい、先端に壁の感触を感じていた。

 

 ボルダリングが終わると水分と栄養の補給の時間だ。壁のドリンクホルダーからどろりとした濃緑色の液体が入ったボトルを取り出す。

 

「うぐっ!」

「まっ不味いぃ!」

 

 一口目で、二人とも顔を顰め、吐き戻すのを堪える。ストローから唇を離さず、どろりとした液体を飲み干そうと励む。最低最悪の味だが、水分と栄養を完璧に補給できる特製の飲料を高分子合成機(レプリケーター)で生成したのだ。

 

 並みの精神力の持ち主ならば一口で昏倒してしまう飲み物を一気飲みすることで、精神力を鍛えているのである。

 

 腹に感じる重さと口の中に残る宇宙屈指の不味さから気を逸らすためにも、さらなる鍛錬に励む。

 

 四肢で体重を支えるブリッジで二つの裸体が並ぶ。消耗で荒い息を吐く美貌が奏でる呼吸の音。

 脚はドアに向けており、もし誰かが入室してきたらゆかりとマキの局部がまず目に飛び込むことになる。

 

 全身から汗を滴らせながら、ひたすら自重に耐え、背を反らせた苦しいポーズを続ける。微動だにしない。普段からクールなゆかりだけでなく、明るく陽気なマキも真剣なトレーニングの時は真顔だし、お喋りもしない。

 

 流石に、その日のトレーニングは流石に気合を入れ過ぎたと後で反省した。

 腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットといった基本のトレーニングが百万回に達する辺りで意識を失ってしまった。

 

「「もっと強くなるッ!!」」

 

 肉体を鍛え抜くためだけの存在となった裸の女蛮族にとって、唯一の人語はまじないのような掛け声であった。

 互いの声を支えにして限界を超えて筋肉に負荷を与え続けたが、それにも限界がきた。

 

「おぉぉっ!?」

「あぁぁっ!!」

 

 一瞬、ゆかりとマキは硬直してから声を絞り出した。それは、ケモノの雄叫びめいて響き、続いてどさりという音が二つ。

 全身の筋肉をパンプアップさせてテカらせながら、長身の美少女二人揃って床に倒れ込んだ。

 

 汗が溜まって互いの匂いが混じったモノが立ち昇る床の上で、白眼を剥き、ピクピクと痙攣し続けた。

 

 

「何、この匂い!?」

「ゆかりさん、マキさん!? 大丈夫ですか!」

 

 トレーニングルームで体を鍛えることにした琴葉姉妹はまず強烈な汗の匂いに圧倒され、それから部屋のど真ん中で抱き合って倒れている裸のゆかりとマキにも圧倒された。

 マキの豊かな胸にゆかりが顔を埋め、二人はすやすやと寝息を立てている。

 

 気絶している間に寝返りを打ち、いつの間にか抱き合っていたのである。

 

「んにゃ……ってわわ、茜ちゃんに葵ちゃん!? ごっごめんなさいトレーニングルームを汗臭くしちゃって!」

 

 ゆかりを抱えたまま、マキは起き上がる。

 

 ピンク髪のお姉ちゃんは赤面し、水色髪の妹は口元に両手を当てている。室内は凄い有り様だけど、それが目につかないくらい抱擁し合うゆかマキが衝撃的だった。

 

「これは流石に恥ずかしいですね」

 

 そっと柔らかな双丘から離れ、ゆかりは呟く。裸で大勢の前に姿を見せても、平気なゆかりだが、なんだか恥ずかしい想いだった。

 

 

 

 地球統合軍の戦艦トルヴァクスにおいて、アレクセイ大佐は絶対的な存在だった。地球復権のための特殊作戦を完遂するための忠誠心、意志力、決断力を兼ね備えた真の男(ムジーク)だからだ。

 

 表向きの軍籍は地球統合宇宙軍だが、彼はヒュドラ・グループと称される地球の巨大企業の連合体に所属している。

 彼にとって地球政府は堕落した臆病者の集団であり、経済力と武力でもって地球の復権に突き進むヒュドラ・グループこそが唯一、忠誠を捧げるに相応しい組織であった。

 

 トルヴァクスはグループによる外宇宙の秩序回復――つまり、黴臭い民主主義を掲げて独立した植民惑星再統一のための尖兵であり、アレクセイ大佐は名誉ある任務に全力で邁進していた。

 

 この最新鋭戦艦の乗員でアレクセイを尊敬しないのは目の前にいる二人だけだ。

 現地協力者に提供した虎兵が最後に送信してきたデータが切っ掛けとなり、緊急のブリーフィングが開始された。

 

「へー、もうやられちゃったの。だっさ、やっぱ負け犬のオッサンって何やらせてもダメダメなんだ」

 

 行儀悪く脚を組んだ金髪赤メッシュの少女が嘲る。

 少女は凶悪な印象を与える黒紫色のスキンスーツを着ており、引き締まった肉体は暴力的な気配を発散していた。

 凶悪なフォルムのプロテクターがその気配をより高めている。

 

 パイロットスーツとしての機能だけでなく、近接格闘戦を想定した戦闘装備でもあり、膝プロテクターに打撃用の鋭いスパイクが飛び出す機構が仕込まれていた。

 軍艦に乗っているが、年齢、外見、態度、どれを取っても間違いなく正規の軍人ではない。少女の名はアティアという。

 

「本題に入ってください、大佐」

 

 涼やかだが、凍えるような声。アティアの隣には同じスーツを着た銀髪赤メッシュの美少女が腰掛けている。こちらは、女性らしい脚を閉じた座り方。だが、その佇まいや表情のない美貌はまるでアンドロイドであるかのようだった。

 

「キャハハ、イヴったら真面目なんだぁ♪ アタシからもお願いしまーす♪」

 

 不快感を露わにして唸るアレクセイを、金髪赤メッシュの好戦的な少女が煽った。

 

「我々が獲得した現地協力者を全滅させたのは、ヴォルテクスと見て間違いない。貴様ら、人狼(ルー・ガルゥ)の出番が来たということだ」

 

 ヴォルテクス――十年前の独立戦争で惑星アンゼリスに差し向けた地球軍艦隊をたった二機のMFで全滅させ、戦況を一変させた傭兵に、地球政府が与えたコードネームだ。

 執拗な追撃にも関わらず、行方を眩ましたヴォルテクスが活動を再開したのである。

 

 現在、地球が陥っている窮状の原因となったこの名は誰にとっても忌まわしく、恐ろしいモノ。

 

 しかし、アティアとイヴにとっては違う。

 ヴォルテクスの異常な戦闘能力を人為的に再現するための強化人間、人狼(ルー・ガルゥ)として数えきれないほどの非人道的強化と訓練を施されてきた少女たちにとっては喰らい尽くすべき獲物だ。

 

「気様らの体と専用の第四世代機には高い金がかかっている。それを自覚して、全身全霊で任務を果たすように」

 

 返事はない。薄っぺらいアレクセイの言葉は届いてない。

 憎しみと飢餓感と憧れがいっしょくたになってドス黒く輝く感情だけが、ルー・ガルゥのすべてだった。

 

「ユヅキユカリにツルマキマキ――はぁ、たまんない♪ あんただって楽しみでしょ、イヴ?」

 

 共に育ち、姉妹として絆を結んだ冷たい少女の横顔を見つめるアティア。答えを聞く必要はなかった。

 

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