ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物   作:その辺の残骸

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人狼の宣誓

 ゆかり達はビーチから近辺にあるカフェに場所を移そうとしていた。

 四人はそろそろお昼にしようかというところで、アティアとイヴも空腹だったので好都合であった。

 着替えずにそのまま直行する。水着のまま入店OKなカフェなのだ。

 

「水着でお店に入るのは、ちょっと恥ずかしいなぁ」

 

 紺色の未来風旧スクール水着に包まれた肢体を抱き締めるようなポーズで呟く茜である。

 

「いらっしゃいま……」

 

 紫髪と金髪の長身なお姉さんが率いる一行を出迎えたウェイトレスは目を丸くして固まった。

 派手な髪色の美少女(しかも、そのうち四人は物凄い腹筋の持ち主だ)が集団でやってきたのだ。

 

「六人でお願いできますか?」

「……っ! 失礼しました! テラス席が空いているので、そちらでよければ!」

 

 こうして、席に案内されることになったが、店の中でも注目を集めまくりだった。

 

 ゆかりとマキは肉体美を扇情的に引き立てるド派手な水着のまま。腰にパレオを巻くなどして隠してもいない。

 派手な水着で着飾った客そのものは珍しくないが、ここまでセクシーさを押し出した水着を格好よく着こなす美人は本当に稀。

 連れの少女たちの容姿や佇まいも可憐であったり、堂々としていたり、個性豊かさで目の保養になる。

 

 店内にいる人々は、ちょっとした宝くじに当たったような気分だった。

 

 ちなみに茜と葵は少しばかり緊張して背筋を正していた。

 アティアは頭の後ろに両手をやり自然体で店内を眺め、イヴはアンドロイドのように整然と歩んだ。

 

 ハイレグの競泳水着を着た金髪赤メッシュのアティアと銀髪赤メッシュのイヴ。

 二人は黒い布地が吸い付いたお尻を降ろして並んだ。

 

 テーブルを挟んで向かい合う席にマキとゆかりが座った。

 年長者である二人の大人っぽく成熟した豊かなお尻は、完全に丸出しで座面に押し付けられている。

 

 未来風旧スクの琴葉姉妹は両者に挟まれる席でテーブルを囲んだ。

 

 持ち合わせが少ないとのことで、アティアとイヴの分までゆかり達が奢ることにした。

 

「ご馳走になります」

「悪いね、奢ってもらっちゃって」

 

 イヴがまず頭を下げ、それに促されるようにアティアも挑発的に笑いながらも、しっかりお礼を述べた。

 

「意外と素直なんだね~」

「可愛くて素直な娘には優しくするのがゆかりさん流です。遠慮せず、どんどん奢られちゃってください」

 

 高級ビーチの客向けのカフェだけあり、手が込んでいた。

 人類の版図が銀河に広がって久しく、高分子合成機(レプリケーター)で出来合いの食事を食器ごと生成可能な時代だが、この店で提供される料理は上質な天然食品を一から調理しており、コーヒーや紅茶も昔ながらのやり方で丁寧に淹れられている。

 

 余談だが琴葉姉妹も料理が得意である。ガーベラ号では食事当番も率先して引き受けており、手の込んだ料理で紫髪と金髪の胃袋をがっちり掴んでいる。

 

 金髪赤メッシュのアティア、銀髪赤メッシユのイヴ。

 狼を思わせる険呑な気配を漂わせている二人組だが、今この場で殺り合う気はないと思える。

 二人の茜と葵に対する態度は、ゆかりとマキを安心させた。

 

「どうかしたのアオイ?」

「いっいえ、なんでも」

「そう。ならいいけど」

 

 慎重に様子を窺っていた葵にアティアが笑いかけた。

 先ほどチャラ男にナンパされた時は、すぐさま殺気立っていた。だが、今は同年代である琴葉姉妹に明るく接している。

 名前の響きが気に入ったのか、アカネ、アオイと姉妹の名を口にする時は楽しそうだ。

 

「二人とも流石は上流階級」

「あはは、照れるなぁ。それゆかりさん達にも言われたよ」

 

 イヴは姉妹の食事の所作に素直に感心していた。

 同時に、こっちはお前達のことを詳しく知ってるんだぞ、とアピールしてもいたが。

 

「やっぱ女の子と一緒は気楽でいいわ。降りてくる時、むっさいおっさんだらけの降下艇使ったから」

 

 アティアは心底嬉しそうな物言いだった。

 金髪ということもあり、陽気さと凶暴さを併せ持つこの少女から、昔のマキに近いものを感じて、懐かしい気持ちになるゆかり。

 そんな紫髪の女蛮族は赤メッシユの二人組に質問した。

 

「それで、アティアさんとイヴさんはどういうつもりでこちらに? まさか、あんな大きな(フネ)で来て、皆で揃ってのんびり観光というワケでもないでしょう」

 

 狼狽えることなく、アティアは「なんだ、やっぱトルヴァクスに気付いてたんだ」と得心している。

 

「偵察という建前で降りました。本音はただ遊ぶためです」

 

「そっかぁ」

 

 続けて、イヴがビーチに来た理由を説明してくれた。はっきりした物言いである。

 他者を寄せ付けない絶対零度の眼差し。銀髪のイヴもまた、マキにとっては昔のゆかりのように感じられた。

 

「ウチのボスはケチでさー。小遣いはちょっとしかくれないし、水着だってこんなだっさいの」

 

 アティアは支給された競泳水着がお気に召さないようだ。吸着した胸元の布地を引っ張って、わざとらしく嫌そうな顔をする。

 

「そうですか? 良く似合っていますよ、その水着。二人の体の線や筋肉がくっきり出ていて、素敵です」

 

 不満そうな金髪赤メッシュの狂暴少女を、ゆかりは真顔で褒めた。

 

「ありがと、ゆかり。あんたもマキも研究所で教えられたよりずっと良い人達だね。気に入っちゃった」

 

 無邪気に喜ぶアティア。隣のイヴも同様。

 

「わたし達のこと、地球ではどう伝えられるのか、気になるな~」

 

 ちなみに詳しく聞くと、ゆかりとマキは地球では残忍卑劣、お金さえ貰えれば誰にでも味方する凶悪な傭兵と伝えられているそうだ。

 

 そして、いよいよ本題に入った。

 

「私たちは人狼(ルー・ガルゥ)。ヴォルテクスを殺すためだけに造られた」

「ヴォルテクスってのは地球での二人の呼び名ねー」

 

 語り出したのは、意外にも物静かな印象のイヴだった。補足するアティアと揃って、噛み殺すような眼差し。

 急激に張り詰めた空気に、茜と葵は息を呑む。

 

 自分とアティアは、地球の研究機関が生み出した最新の強化人間、人狼(ルー・ガルゥ)であると誇らしげに名乗った。

 

 その目的はただ一つ。

 独立戦争で植民惑星連合に勝利をもたらしたと地球側が考えている傭兵ヴォルテクスを超えることだ。

 十年前も銀河のあちこちで大暴れしていたので、ゆかりとマキは様々な異名で呼ばれていた。全部把握しているわけではないが、確か渦巻き(ヴォルテクス)という名もその中にあった気がする。

 

「今日は本当に楽しかった。次はMFで殺り合おう」

「私達が喰らう前に死なないでくださいね」

 

 本当にその日は遊ぶだけで終わった。別れ際、アティアとイヴはそう言い残した。

 

 相手が同じ年頃ということもあり、僅かな時間で友人と呼べるほど親しくなることができたアティアとイヴの背中を見送る琴葉姉妹は、複雑な心境である。

 

「どうにか戦いを避ける方法は無いですかね?」

「無理だね。向こうがやりたがってるんだから」

 

 茜は、はっきりとゆかりとマキに自分の気持ちを伝える。

 しかしマキは陽気に断言した。能天気だが本質的にはシビアな傭兵なのである。

 

「やっぱり、そうですよね」

 

 葵と一緒に俯く茜。なら、覚悟を固めるしかない。

 師が戦うというのなら弟子には手助けする義務があるのだ。

 

「ですが、敗者の生死は勝者が選べるものですよ」

 

 まるで琴葉姉妹の心を読んだかのようだった。ゆかりは振り返ると無表情ながら優しく告げた。

 

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