ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物   作:その辺の残骸

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ガントレット・パートⅡ

 地球製の黒いパワードスーツを着込んだ兵士の足元で爆発が起こる。

 

 爆発には一個分隊を纏めて排除するだけの威力があった。広がった爆風は爆心地の周辺の木々を薙ぎ倒すだけでなく、森全体をざわめかせた。

 

 黒煙が天高く昇っている。

 それを見上げる金髪ロングヘアと長い横髪が特徴的な紫髪の美少女。背が高く見事なスタイル、そして鍛え抜かれた腹筋の二人組である。

 結月ゆかりと弦巻マキ。地球がヴォルテクスの名で恐れ、抹殺しようとしている女傭兵だ。

 

 ヴィラがあるのは小高い丘の上なので、爆発の被害を良く窺うことができた。

 

「ちょっと爆薬の量多くし過ぎたかな?」

 

 マキは額に片手をかざしながら爆発の跡を眺めていた。

 まだ夜は明けていないが、暗闇でもよく視える目をしていた。

 隣のゆかりは無表情で腕を組んで仁王立ち。

 引き締まった身体付きの美人だが、全身の筋肉が発達しているので妙に迫力がある。

 

「こちらは四人。対して相手は中隊規模。遠慮は無用ですよ――とはいえ美しい森の平穏を乱し、自然を破壊してしまったのは心苦しいですね」

 

 悲し気なゆかりの声音。

 爆発痕とパワードスーツの残骸が散乱する森の一点を見つめていると、罪悪感が湧いてくる。

 

 ゆかり達を抹殺すべく迫っていたヒュドラ・グループの特殊部隊のうち、先行していた分隊が先ほどの爆発で丸ごと消し飛んだ。

 

 滞在先であるヴィラに着いて、すぐに迎え撃つ支度をしていたのである。

 今の爆発は四人が協働作業で森に仕掛けたトラップの一つ。対戦車地雷をベースにした爆発物のカクテルだ。

 対人地雷を踏み潰しながら進軍できる装甲服でもひとたまりもない。

 他制に無勢という状況が殆どだったので、ゆかりとマキはこういうトラップを仕掛けるのも得意だ。

 

「汗水垂らして肉体労働した甲斐がありました」

 

 再び爆発が起こると、ゆかりは呟いた。ヒュドラ・グループの兵隊はあくまでやる気のようだ。

 

 有数の観光地であるサン・リノル星系は治安に力を入れており、銃火器や爆発物は厳しく取り締まられている。

 本星となれば尚更である。武器をすんなり持ち込めたのは、琴葉姉妹のおかげだ。

 

 ピンク髪の茜、水色髪の葵。可憐でひたむきな八洲武家の姉妹の顔を思い浮かべ、守り抜く決意を固めるゆかりとマキであった。

 

 その琴葉姉妹から通信が来た。

 

『茜です。配置に着きました。敵影も視認できてます』

 

「了解しました。交戦開始の判断は任せます」

 

 茜の緊張した声。観測手(スポッター)として、妹の葵をサポートしている。

 葵はバルコニーで腹這いになり、狙撃用レールガンの射撃姿勢を取っていた。深く静かに呼吸している。

 バルコニーの位置はゆかり達の反対側だ。

 師である紫髪と金髪のお姉さんにお尻を向けているので、ちょっぴり失礼なことをしている気分だった。

 

「ほな、一発目行こうか。距離はまだ2500あるけど葵なら余裕やろ?」

「もちろん。できるだけヴィラの被害は抑えたいし」

 

 気を取り直し、茜は指示を出す。葵は自信たっぷりに返事をした。

 狙うべき目標とその距離、気温、湿度、風速といった射撃諸元を伝え、葵はそれに従ってトリガーを引く。

 

 マズルフラッシュも発砲音もない。

 無音で射出された電磁加速弾が重い分隊支援火器を抱えたパワードスーツの膝を打ち抜き、転倒させた。

 

 敵が負傷者に駆け寄るのは危険と判断して散開するのを見越して、茜は次の目標を指定する。二射撃目――やや狙いが逸れたが着弾、無力化。

 気を引き締める。それに応じて葵の水色被膜が張り付いたお尻にも力が込められた。

 

「着弾。いい調子や」

 

 姉の指示に従い、巧みにレールガンを操って狙撃する葵。

 血生臭さのある生身の戦いであっても、冷静さを欠くことはない。容赦もなかった。

 仲良し姉妹らしい息ぴったりのコンビネーションで、武骨なレールガンのバレルを旋回させ、敵を撃ち抜く。

 

 

「それじゃ、わたし達もおっぱじめようか」

「そうしましょう」

 

 屈伸してストレッチするマキは獰猛に笑んでいた。

 その傍には愛用の重機関銃が置いてある。

 マキは悠然としたゆかりの態度にチャンスを見出し、イタズラ心に目を輝かせてもいる。

 

「――――っと、隙あり! 精神注入!」

 

 マキは風が起こるほど俊敏に立ち上がったかと思うと、ゆかりの肉感的なお尻を叩いた。ぱしーん。紫色のプロテクターが食い込んだ黒いナノ被膜が張り付く尻肉が波打った。

 

「……私は右の敵集団を殲滅してきます」

 

 以前、宇宙海賊の艦を襲っている時にマキにお尻をはたかれた際は声を出してしまった。

 しかし、今回のゆかりは金髪の相棒のセクハラを華麗にスルー。紫髪の蛮族はお尻をさすることもなく、超大口径の散弾銃を手に駆け出す。

 

「お返しですよ。えい、精神注入」

「あいたっ!」

 

 かと思いきや。

 自身も走り出そうとマキの気が逸れた瞬間、思いっきりお尻を叩き返して可愛らしい悲鳴を上げさせた。

 

 戯れとはいえ、強烈な一撃である。

 ゆかりの尻叩きで強引に勢いを付けられ走り始めることになってしまったマキ。

 じんじんする痛みに大きな尻を片手で抑えながら丘を降っている。赤の他人に見られたら流石に恥ずかしい光景である。

 

 丘を降りながらぐんぐん加速していく。それぞれ得物を手に単騎で駆け、森のなかに飛び込んだ。

 

 

 予想外の罠に狼狽えながらも、相手はたった四人でしかないと前進を再開したヒュドラ・グループの特殊部隊を蛮族な筋肉娘が強襲する。

 

 ナノスキンスーツでアシストされたゆかりの超人的脚力は、パワードスーツを遥かに上回る高速で森を駆け抜けていた。

 紫髪の女蛮族は円陣を組んで警戒している敵部隊の様子を窺う。

 胸が平らでアスリートのような印象を与える細身の肉体は、樹齢を重ねた大木からはみ出ることなく隠れている。

 

 接近に気付いていませんね、ならば。

 

 呼吸を整えるとゆかりは一撃離脱を仕掛けた。

 髪留めで束ねた長い横髪を靡かせ、フルオートの散弾銃で装甲服の関節部を破壊していく。

 軍用パワードスーツ相手でも有効打になる強力な銃だ。

 威力相応の強烈な反動があるが、ゆかりは細い腕で苦も無くそれを受け止めている。

 応射を振り切り、森の中に逃げ込む。

 

 姿を消したかと思うと再攻撃を仕掛けてきた襲撃者をパワードスーツのFCSが辛うじて捕捉した。高速移動する襲撃者は裸同然のぴっちりスーツを着た女一人であり、特殊部隊の兵士達を動揺させた。

 

 ヴォルテクスが生身でも危険な傭兵だとブリーフィングで教えられていた。

 だが、相手は所詮小娘が四人。

 パワードスーツ装備の一個中隊には敵わないだろうと高を括っていた。

 だから森に仕掛けられていた警戒装置を迂回することもなく最速で侵攻したし、爆発物のトラップで仲間がやられても作戦を練り直すことはしなかった。

 

 慢心からくる完全な判断ミスだった。

 楽に手軽を立てるつもりが、地獄のような責め苦(Gantlet)に陥っている。

 

 動揺を見逃すほど紫髪の蛮族は甘くない。

 二度目の攻撃ではゆかりはあえて敵の懐に飛び込んだ。

 この散弾銃は接射ならパワードスーツの正面装甲も射抜ける。ぴったりと銃口を突き付け、引き金を引く。散弾が装甲を穿ち、火花が散った。

 

「おや、弾切れ」

 

 最後の一人というところで、散弾銃の弾が切れてしまった。

 躊躇いなく銃を放り投げるとゆかりは太股のホルスターからサイドアームの対装甲拳銃を抜こうとするが、その前に最後のパワードスーツが手持ちのアサルトライフルで殴りかかってくる。

 

 重い強打がヴァルテクスの片割れを捉える。

 手応えを感じる兵士であったが、ゆかりは両腕で打撃をブロックしていた。

 プロテクターで受けているとはいえ、極薄のスーツで戦闘用パワードスーツの打撃を受け切れるはずがない。

 

 だというのに平然と打撃の衝撃を利用して後退し、「今のは良い攻撃でした」と告げる紫髪。その姿が消える。

 

 兵士は無我夢中はライフルを掃射して追い払おうとするが、ゆかりは身を屈めてやり過ごしている。

 頭上を掠める弾丸の熱を感じながら肉薄。

 長く美しい脚が鞭の如くしなり、低い姿勢からのハイキックがパワードスーツの頭を蹴り砕く。

 

「さて、次ですね」

 

 倒れ伏した重装甲の兵士を一瞥することもなく、ショットガンを拾ってリロード。横髪を揺らしながら森の中を進むゆかりであった。

 

「腕痛ぁ~」

 

 マキのほうもヒュドラ・グループの私兵を順調に蹴散らしていた。

 金髪の女蛮族はまったくの無傷だ。

 だが、重機関銃にお手製の徹甲弾を装填して撃ち続けた反動は結構キツかった。

 

 ストラップで重機関銃を吊るし、腕を交互にさすっていたマキは気配を感じて空を見上げた。

 特殊部隊がことごとくやられ、業を煮やして飛び立った降下艇の姿がある。

 静音性を重視した降下艇で色も夜闇に紛れる黒なので分かりにくい。だが、肉眼で捕捉できている。

 

「やっば! 何とかしないと!」

 

 相手はガンシップなのだ。

 しかも、ちょうどヴィラを任せた茜と葵が脱出用の高速艇を離陸させようとしているところだ。このままでは狙い撃ちされてしまう。

 高速艇は元々ヴィラに用意されていたもので、大気圏内外兼用の高性能な機体だ。

 時には暗殺者に狙われることもある上流階級のための備えである。

 

「というわけで、コレは使わせてもらいまーす」

 

 マキは素早く目星をつけた武器に駆け寄った。

 自分が倒したパワードスーツが持っていたミサイルランチャーを拾い上げた。

 照準器を覗き込み、動作チェック。ランチャーそのものは損傷なく使えるが、ロックがかかっている。

 これでは登録者以外は使えない。

 

 だが心配ない。ナノスキンスーツの腕プロテクターから延ばしたケーブルをランチャーに接続。

 

「ゆかりんハッキングお願い」

『了解――はい、できましたよ』

「サンキュー」

 

 ナノスキンスーツ同士の通信で、ゆかりにロックを解除してしもらう。

 肩にミサイルランチャーを担ぐと、誘導を妨害されないように無誘導で発射。バックブラストの熱がマキを包み込む。

 当然、迫ってくるミサイルに気付いた降下艇はチャフを撒きながら回避しようとする。しかし、無誘導で撃っているので妨害することはできない。

 

「やりぃっ!」

 

 旋回した先にマキの見事な偏差射撃が的中。未明の暗い空に爆発の紅蓮が映えた。

 

 

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