ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物 作:その辺の残骸
茜は高速艇をガーベラ号に着艦させた。
現在はカタパルトからオートで格納庫に運ばれているところだ。パイロットを務めた茜を含め、ハッチ前に集合。超極薄のナノスキンスーツでボディラインが過剰なほど強調された肢体を寄せ合っていた。
戦闘中は常に時間との勝負になるので、タイムロスは極力削るように動いている。
ナノスキンスーツの機能は無駄な時間を減らすにも役立っている。
着用者を保護するだけでなく、身体能力をアシストしてくれるので、迅速に動き回ることができる。
肉体を酷使して汗を掻いても、少し我慢すればさっぱりする。
それに、避け難いタイムロスである排泄への備えは完璧だった。催したらパックに出すだけで良い。
ブロテクター内側でゲル状に変化しているナノマシン塊は即座に反応する。排泄物を受け止め、高速で分解処理してくれるのだ。
排便量が多くても、外からは分からないし、一分もすれば跡形もなくなる。
ナノスキンスーツの着用者は口から栄養を摂取するだけで、活動し続けられるということだ。
(今、ウチらは戦うためだけの体にされてるんや)
ゆかりとマキに弟子入りしてから日常的にナノスキンスーツを着ている茜は、このぴっちりスーツが戦闘に特化して設計されたモノだと推測するようになった。
まず運動アシストの補助AIが明らかに一般用ではない。
戦闘中の動きに対応した学習データがプリセットされており、そのアルゴリズムは着用者に合わせて戦闘時の挙動を学習、分析、効率化されるようになっている。
それに通信機能なども軍用レベルに充実している。単なる汎用スーツなら必要のない機能だ。
被膜が薄く、体の凹凸が浮き出る過激なデザインも軍用であれば、説明がつく。
羞恥心を麻痺させるためだ。女性美をセクシーにアピールする形状は副産物に過ぎないのだろう。
排泄物の徹底的な処理機能に限れば極限環境向けだが、ここにも違和感があった。
マキが抵抗を示したように、排泄時に変な感じがするよう仕組まれていた。
(あれはびっくりしたなぁ……)
茜はそれを身をもって実感することになった。
はじめてナノスキンスーツのパックに排泄した際に、言葉にし難い未知の感覚があり、茜は悲鳴が出そうになった。
リラックスし過ぎて不意打ちを受けないよう、意図的に与えられている刺激のようであった。
総評すればナノスキンスーツはヒトの身体機能を戦闘用に調整する装備、と言い表せた。
メカに詳しくない茜でも、ここまで推測できるのだ。
葵は技術的な観点から、ナノスキンスーツの設計に込められた意図を考察していることだろう。
「後半戦も締まってこ〜♪」
「「はいっ!」」
いよいよ格納庫が近くなってくると、マキがゆるゆるな掛け声で拳を振り上げて号令をかけた。
それぞれ物思いに耽っていた琴葉姉妹は戦闘に関係ない思考を中断。気を引き締め直し、真剣な表情で返事する。
マキとゆかりに返事する時の声はいつも元気がよく、やる気に満ちている。それに息ぴったりだ。おまけに美少女なので、マキとしては見ていて心地良かった。
(目に入れても痛くないってこういうコトかな?)
そんな事を考える金髪蛮族お姉さんである。
ゆかりは、茜と葵のコンディションを密かにチェック。菫色の瞳で上から下まで、隈なく改めている。
注目しているのは顔色、表情、呼吸。それに姿勢や力み具合だ。
裸にサランサップを貼った程度の薄さしかないナノスキンスーツは、必然的に肉体の無意識の反応まで周囲に曝け出す。
ゆかりほどの達人なら筋肉の動き一つで心と体の状態を図ることができる。
弟子の体調を一目で確かめることができるのは便利だった。
それにスーツで身も心も引き締めた琴葉姉妹は、凛々しいという言葉がぴったりで魅力に満ちている。
(今更ですけど、年下の娘にとんでもない格好させてますね私達)
しかしながら、淑やかに育った十代の少女である姉妹にさせるには、このスーツは少々酷な格好だとも思っていた……当人たちは受け入れてくれていたが。
とにかく、ナノスキンスーツに浮き出た清楚な肉体を観察して結論を出す。
(緊張しているようですが、過剰なストレスを感じている様子はなし。良好ですね、素晴らしい)
むしろ、過酷な戦闘の渦中にいるにしては、驚くほど落ち着き払っている。
高速艇が格納庫に着いた。そこにはガーベラ号の艦載機であるマニューバフレームが並んでいる。
「それでは行きましょう」
ゆかりは持ち前の怪力で重たいハッチを開くと、格納庫に降り立つ。
普通に降りただけでも、大きなお尻は誘惑するように揺れた。ナノスキンは肌に張り付いているだけなので、肉体の動きは丸分かりだ。
背中や脚の筋肉が目に見えて逞しく発達しているが、ゆかりの丸いお尻は女性らしさ満点だ。三桁に届く寸前の超ボリュームだが、鍛えまくった筋肉で持ち上がっている。
「おード迫力」
「何ですか? 私のお尻のことですか?」
クールな表情で振り返ったゆかりが目にしたのは、何やら勢いをつけるべくしゃがんだマキの姿だった。
「そーだよ。見ててね、とお!」
セクハラ混じりの戯けた会話をしながらマキが飛び降りる。
大袈裟に弾みをつけていたので、黒い被膜にコーティングされた大きなバストが派手に揺れ弾んだ。
双丘をたっぷりと上下に揺らしたかと思えば、マキは180度ターンしてみせる。
それに動きに従ってロングヘアの金髪が華麗になびいた。同時に巨大なロケット型の双丘に横の慣性がかかり、横向きに揺れる。
浮き出た巨乳の先端は、鋭く空を薙ぎ払うかのようだ。
「どう!?」
「ナイス乳揺れでしたよマキさん」
ゆかりは相棒の大きなおっぱいが好きなので、乳揺れを無表情で見届けた。
(もう、マキさんったら)
だが、清純な琴葉姉妹には刺激が強すぎる光景だ。師匠であるお姉さん二人の親密な関係には時折、ドキドキさせられる。
赤くなりながら茜は目を逸らし――ちょうど、葵と目があった。
(絶対に負けられない、よね)
はにかみ合った後、アイコンタクトで決意を確かめ合う。それは姉妹の絆を感じさせる、健気で尊い光景だった。
これを目にしたマキとゆかりは思わず視線を合わせ、
(頼もしい戦友とは得難いものですね)
(だね。こんなに強い娘たちと出会えたのは本当にラッキーだよ)
胸に込み上げる熱い気持ちを共有するのだった。健気な弟子の前で、尻や胸を使ってふざけていた自分たちを恥じてもいる。
許されるなら、今この場で茜と葵をぎゅーと抱き締め、褒めそやしたい。
ヴィラでの生身の戦闘を通じて、琴葉姉妹への評価はさらに高まっていた。
結月ゆかりと弦巻マキは傭兵として活躍してきた。
傭兵仕事ではコンビで戦うだけでなく、軍隊や同業者と一緒に行動することも多い。宇宙各地の戦場で有能から無能まで、様々な人物を見てきたのである。
過酷極まる戦場で極限状態に追い込まれた人間の姿(それを本性とはあえて言わないし、そう考えてもいない)を良く知っている。
茜たちの倍以上の年齢でエリートやベテランの肩書きを持つ軍人であっても、絶体絶命の状況でパニックに陥ることは珍しくなかった。
琴葉姉妹は弱音を吐くこともせず、強靭な精神力で過酷な戦闘に耐えている。
その精神力は武家の娘としての修練の賜物というだけではないだろう。
とにかく、ゆかりとマキから見ても驚異的な心の強さだった。
肉体を徹底的に鍛え抜き、今もナノスキンからシックスパックの腹筋を魅せている紫髪と金髪の蛮族。
肉体そのものが戦闘兵器レベルに達しているが、その力を絶対視してはいない。
むしろ、物理的な力など、いくらでも補えると考えている。
スパルタという言葉さえ生温い鍛錬で筋肉を鍛え込み、手に入れた超人的な力。
それだけで無敵になったと思い上がるほど、おめでたい頭はしていないし、そうであったのならとっくに宇宙の藻屑になっている。
ゆかりとマキにとって、精神面の強さこそ何より重要。他者を測る基準の一つでもある。
琴葉姉妹の精神力には目を見張るものがある。前途有望な少女たちだ。
二人の秘めた力を引き出し、望む道を選べるようにしたい。
それが、師匠としての結月ゆかりと弦巻マキの想いである。
「ここからは別行動になります。ガーベラ号はお二人に託しますので巧く使ってください」
試練になるかもしれないが、姉妹には一人前の戦士として戦ってもらう。
「お二人に負けないくらい戦ってみせます!」
「必ず勝ってみせます!」
まっすぐに見つめ返し、琴葉姉妹は強気に誓う。白灰色の可変マニューバフレーム、零桜はバックにした勇ましい姿だった。
「うん、いい表情♪ これなら大丈夫だ♪」
両手を腰に当て、その言葉を受け止めたマキは満足気。
ゆかりも微動だにせず弟子を見つめ、無言のエールを送っていた。