ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物   作:その辺の残骸

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琴葉姉妹の覚悟

 これから、決戦の舞台である宇宙に向かう。

 宇宙での戦闘は機動兵器戦になる。ゆかりとマキ、茜と葵のペアに分かれ、マニューバフレームに搭乗しようとしていた。

 

 無重力ではないので、跳び上がって一気にコクピットに向かうことはできない。

 キャットウォークを駆け上がる硬質な足音が四人分響く。

 

「葵が気を利かせてくれて、ほんま助かったわ」

「操縦系が近い設計だったから簡単だったよ」

 

 緊急時に備え、零桜のコクピットからガーベラ号を操舵できるように葵が改造してくれた。

 ガーベラ号を操って戦い、機を見て零桜で出撃。マニューバフレームを操縦しつつ、オートに切り替えたガーベラ号に援護してもらう戦闘計画だった。

 

 零桜のコクピットに茜がまず飛び込んだ。

 お尻に衝撃がきそうな勢いの着地だった。

 しかし、衝撃はナノスキンが吸収したので、茜のお尻はノーダメージ。

 

 両手は操縦桿を握り、脚はフットペダルに。

 

 必然的に大きく脚を広げ、股間プロテクターを強調する姿勢になってしまう。

 

 葵も優美な所作で、コクピットに滑り込んでいた。

 後部ガンナーシートで、姉と同じ搭乗姿勢を取っている。

 

 ぴちぴちのボディスーツを着て、大股を開いた格好は乙女がするには、はしたない。

 しかし、琴葉姉妹の着座する姿は魅力的であれど、イヤらしい印象はない。むしろ勇壮で凛々しかった。

 

 それに局部を目立たせる優美な装甲は、しっかりと大切な部分を鎧っている。清純さを極限まで護持していると言えるだろう。

 

 外からの悪意より乙女を守り、内なる苦しみをひっそりと鎮める。

 ナノテクノロジーの絶対的な守護で戦乙女に寄り添い、支える、たおやかな鎧。

 

 それがナノスキンスーツなのだ。

 

 まだ人前で着るのは恥ずかしい。この気持ちはいずれ克服したい。

 

 琴葉姉妹は師匠である二人の姿を理想として、強く思い描いている。

 心身を鍛え抜き、いかなる場所でも堂々と振る舞える、綺麗で強いお姉さん。

 まずはできるだけ早く身体を仕上げ、師匠のように腹筋バキバキになりたかった。

 

 艦橋で操舵するのと寸分違わぬ映像が二人の網膜に投射されている。

 コクピットの網膜投射を利用して、葵は茜の視覚をカバーする役も務めていた。

 

 茜が操縦桿を引けば、それに従いガーベラ号は刀の切っ先のような艦首を上空に向く。

 

 完全な垂直になった戦闘艦は、スラスター噴射だけでは質量を支え切れないように思えた。

 実際には重力・慣性制御機構による不可視の作用で、危うげなく姿勢を保っている。

 

「ガーベラ号、発進!」

 

 急加速で飛び出す高速駆逐艦。一気に大気圏を突破し、宇宙に進出する。

 

 

 戦端は既に開かれていた。

 

 アクティブステルスを解除したトルヴァクスは、サン・リノル側の停止命令を無視。

 トルヴァクスは艦載機まで展開していた。

 本星に向かう戦闘態勢の戦艦を止めるべく、星系軍の艦が攻撃を開始するも、圧倒的な火力に蹴散らされている。

 

『変わってないな〜地球のこういう所』

『というか、十年前より悪化している気がしますよ』

 

 作戦の破綻をより破綻した行動で暴力的に解決しようとしている。十年経っても地球の悪癖は健在。そして、ゆかりの指摘通りは正しかった。

 

 ヒュドラ・グループの私兵は力に頼る傾向にあり、先鋭化の一途を辿っている。

 

『うひゃー、ほんまに厳つい艦やなぁ』

『やってることははっきり言ってアホですが、油断はできませんね』

 

 しかしながら、流石に最新鋭の戦艦だけある。トルヴァクスの戦闘力は恐るべきものだった。

 

 強力なビーム砲を連射している。その一発がサン・リノル軍のフリゲート艦を撃ち抜く。

 ビームを掠めたマニューバフレームなどは、跡形もなく蒸発している。

 

 交戦中のサン・リノル軍の兵器は全て無人機。動きの固さが仇になっていたが、それにしても一方的なやられぶり。

 

 トルヴァクスの性能や艦載機部隊の練度の高さを物語っていた。

 

『後退してください。地球のならず者は我々が引き受けます』

 

 そこにガーベラ号は殴り込む。

 

 代表として、葵は軍司令部や政府に通達した。

 元はと言えば自分たちが原因なので、申し訳ない気持ちである。

 

 人的被害が出ていないのは幸いだった。

 事態は概ねゆかりの事前計画通りに進んでいたし、トルヴァクスが怒り狂って直接攻撃を仕掛けてくるのも想定の範囲内。

 

 しかし、サン・リノルにまで牙を剥くとは思っていなかった。

 相手が無人なのがハードルを下げたのかもしれないが、今後の関係をさらに悪化させる悪手でしかない。

 マキでさえ、「信じられないことするなぁ!」という気持ちだった。

 

 

『まずは敵を撹拌します』

『アティアちゃん達との勝負はその後だね!』

 

 ゆかりはマニューバフレーム"イクリプス"で先陣を切っていた。

 白と青の装甲。ヒロイックなフォルムのイクリプスは高機動白兵戦型、乱戦は得意中の得意だ。

 

 やや後方にマキの機体。

 漆黒の装甲を鮮血のような赤で化粧したフューネラルが、ビームキャノンを構える。

 

 二機の第四世代マニューバフレームは、その特色である空間歪曲ドライブに増幅された凄まじいスピードで駆け抜けた。

 スラスターの軌跡を鋭く刻み、次々にトルヴァクスの艦載機を撃墜していく。

 

 一方的な優位から突如として蹂躙される側になったマニューバフレーム部隊は、目に見えて狼狽えている。

 

『邪魔です。せめて特攻するくらいの気概でなければ、ヴォルテクスには傷一つ付けられませんよ』

 

『だっさ、いつも地球のために〜とかホザいてるクセにビビって逃げ回ってさ。死んだら、オッサン達?』

 

 怯えるように後退して、消極的に射撃する味方に侮蔑を浴びせる赤メッシュの少女達。

 

 アティアとイヴはビーチから戻ると、降下艇でトルヴァクスに戻り、コクピットで戦いに備えていた。

 今、少女たちにあるのは本能と衝動のみ。

 

 ヴォルテクスの二機と同じく、空間歪曲装甲を展開した深紅のマニューバフレームが迫る。

 全身に凶悪な武装を装備した大型機。地球初の第四世代機であり、人狼(ルー・ガルゥ)の専用機だ。

 

 

「そう簡単にウチらを殺れると思わんときや!!」

 

 ガーベラ号は集中砲火を浴びていた。

 トルヴァクスからの砲撃にミサイルが迫る。

 ゆかりとマキに勝てないと見たマニューバフレームも母艦を狙ってくる。

 

「VLS6番、8番打ち尽くせ! パルスレーザーの発射間隔は1.2に変更!――――五秒後にエネルギープロジェクターのチャージが終わる、トリガーは葵に任せる!」

 

 音声入力で矢継ぎ早に艦に指示を飛ばしつつ、操艦する。

 

 茜が操るガーベラ号は、全長800mの戦闘艦とは思えない高機動で敵を翻弄した。

 

 後ろの葵はホロコンソールを稲妻のように叩き、電子戦から艦のマネジメント、主砲の砲手などマルチにこなしている。

 

「望むところやで、ほんま」

 

「ゆかりさんもマキさんも優しいから、気を使ってくれてる――――けど!」

 

 無傷とはいかない。

 だが、ガーベラ号の白い船体が損傷を被っても、琴葉姉妹の戦意は衰えるどころか、増していた。

 修羅場にあって、サムライの血が騒ぎに騒いでいる。

 

「ぬぅっ! ちょろちょろしおって!」

 

 素早くダメコンを行い、攻撃してきた地球製第三世代機を小隊ごと爆殺した。

 茜は獰猛に笑っている。

 

 八洲を脅かす地球の軍勢と戦うのは、武家の使命。

 元よりヒュドラ・グループ相手なら望む所だと伝えていたし、付け狙われる立場になってもそれは変わらない。

 

 いずれ、八洲を守護する戦乙女となる定めの琴葉姉妹だが、今はヴォルテクスの異名を持つ紫金のお姉さんを手伝う立場。

 

 だから、今は二人の勝利に全てを賭せばいい。

 

「「一所懸命!」」

 

 一意に専心し、命を懸ける――茜は葵と心を重ね、武士の心意気を叫んだ。

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