ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物   作:その辺の残骸

25 / 28
宙に猛る

 

 マキはゆかりと二手に別れ、敵部隊を追い込むように動いた。

 

『今度はわたしがかき乱すね!』

『心得ました』

 

 トルヴァクスの艦載機は最新鋭の第三世代機。以前、琴葉姉妹との訓練中に交戦した宇宙海賊に供与されていた虎兵などの地球製機種だ。

 

 ゆかりとマキは慣性制御機構に大きな性能差がある第二世代機で、第三世代MFと戦闘艦二隻に圧勝できる。そして、今二人が搭乗しているのはGen4MF(第四世代マニューバフレーム)

 束でかかって来ようが相手にならない。入れ食いとはこのことであった。

 

「撃滅!!――――なんてね♪」

 

 黒と赤に塗装されたマキのフューネラルが撃ち込んだビームの閃光に続き、複数の爆発が起こる。

 

「逃すつもりはありません」

 

 双眸を赤く光らせる魔王めいたMFの攻撃から逃れようとする敵に、ゆかりが突っ込む。

 白と青のヒロイックなカラーリングのイクリプスは、Gen4MFの特徴である空間歪曲機構によって桁違いのスピードを叩き出している。

 

 後退しながら射撃する敵機にそれ以上に高速で迫る。

 引き撃ちなどという甘えた真似は許さない紫髪ショートヘアの無表情蛮族である。

 

 空間機雷と銃撃による迎撃に真っ向から飛び込む。鋭い航跡を刻むジグザグ機動で銃撃を回避しながら、アサルトレールガンを発砲。

 

 まずは機雷を破壊する。空間機雷の眩しいプラズマ爆発で視界が塞がれる。ゆかりはそんなこと御構い無しにレールガンを連射して、命中させていた。

 

「指揮官機は――――そこですか」

 

 シールドと装甲で防御を固め、キャノンを背負った指揮官機はアンダーバレルのビームランチャーで一撃必殺。限られた弾薬を的確に振り分けていた。

 

「どうも、美少女撃墜王の結月ゆかりです」

 

 中隊規模のMFを殲滅すると謎のカメラ目線でピースしてふざける余裕ぶり。

 

「やーやりますなー今日のゆかりんは」

 

 自身も超高速での切り返しを行いながら砲撃しつつ、マキは相棒の戦いぶりに感心していた。

 フューネラルが攻撃しているのは、ガーベラ号を囲んでいるMF部隊とトルヴァクスだ。

 

 艦載機の数を減らし、その母艦となる大型戦艦の砲塔やミサイルセルも壊していた。

 遥か遠方から狙撃してきたマキに反撃するため、ガーベラ号への攻撃が弱まる。師として弟子のフォローを欠かさなかった。

 

『茜ちゃん、葵ちゃん! 悪いけど援護はこれが精一杯!』

 

 上下反転した視界でガーベラ号を仰ぎ見るマキ。ダメコンが効く範疇とはいえ、刀の切っ先のような高速駆逐艦には目に見える損傷があちこちにあった。

 

『十分です、援護感謝します!』

『アティアさんとイヴさんのこと、お願いします!』

 

 勇ましい返事が二人から返ってくる。

 

『まっかせて♪』

 

 アティアとイヴが駆るマニューバフレームが接近している。狙いは自分とゆかりだけだ。疑う余地のないまっすぐな飛び方をしていた。

 

 マキはフューネラルをそちらに向け直す。背中の大型ブースターで急加速する。ほぼ同時に、ゆかりは急速に迫ってくる敵機の方向にイクリプスを旋回させた。

 

 思考リンクシステムが警告。敵機はこちらと同じく空間歪曲機構を有するGen4MFとのこと。

 

 編隊を組んでいた二機が散開し、イクリプスとフューネラルに襲い掛かってきた。決闘がお望みですか、よろしい。ゆかりは真っ向から受けて立つ。

 

『対戦よろしくお願いします、アティアさん』

 

 ゆかりはあえて余裕たっぷりの態度で言った。空間歪曲作用による超加速で、イクリプスを飛翔させている。

 

『いつまで余裕ぶってられるかな!?』

 

 金髪赤メッシュのアティアの声は明るいが、敵意に満ちている。飢えた獣の貪欲があった。

 

「大きいですね。あえてのことなのか、それとも地球の技術的な限界なのでしょうか?」

 

 アティアの地球製第四世代MFは標準的な18mのマニューバフレームより一回り大きい。

 頭部にはセンサーを保護するために牙を思わせる装甲が取り付けられている。機体色は深紅。

 

 頭部装甲と深紅のカラーリングは人狼(ルー・ガルゥ)の少女が操る機体に共通する特徴だった。

 

 長砲身のビームキャノンから強力な荷電粒子ビームが吐き出される。

 高出力のビーム兵器は空間歪曲装甲でも防げない。イクリプスは回避運動に専念してまずは様子見。

 

 被弾して機能が低下すれば、一気に押し込まれる危険性があった。流石に自分達を超えるために造られた強化人間だ。下手な動きをしてはやられる。

 

『アタシのクラスナヤであんたを喰らうよ、結月ゆかり!』

 

 クラスナヤ、赤を意味する砲撃戦型のマニューバフレームがアティアの乗機だった。

 

 そのコンセプトはマキのフューネラルに酷似している。より大型であるため、火力と装甲は勝り、機動性ではやや劣る。

 アティアの攻撃はビームキャノンだけではない。

 背中のサブアームに把持したレールガンや内蔵式のミサイルで、巧みにゆかりのイクリプスを牽制してきた。

 

「やられるものならやってみてください――――っと、邪魔ですよ」

 

 イクリプスは宙返り。ついでに逃げた先にいたトルヴァクスのMFを蹴り飛ばして軌道変更する。

 

 爆発で飛んできた細かい破片がイクリプスの空間歪曲装甲に触れて圧壊した。

 アティアの攻撃は容赦なく味方機を巻き込んでいた。もはや高機動するイクリプスしか見えていない。

 

「逃がさないよ、ゆかり!」

 

 金髪の生意気な少女の瞳には、凶悪な光が宿っていた。

 

 

「突撃あるのみってカンジ。やっぱりキミは本当に昔のゆかりんに似ているね♪」

 

 空間歪曲装甲で防がれているとはいえ、互いに被弾して身を削り合うような戦いだった。

 相手は銀髪の少女イヴだ。マキはアンドロイドを連想させるほどの無機質さを持つ美少女にそんな感想を抱いていた。

 

『クルィークの顎からは逃れられません。我が血肉となりなさい、ヴォルテクス』

 

『そう簡単にやられないし、それじゃつまらないでしょ!?』

 

 氷のようなイヴだが、その戦闘スタイルは恐ろしく攻撃的だ。

 中距離から遠距離での戦闘を主眼としたフューネラルに対して、クルィークは接近戦に特化している。

 

 シールドを翳しながら被弾も恐れずフューネラルに突っ込んでくる。腰部スカートアーマーと一体の大型ブースターによって物凄い速度を叩き出していた。

 

 あっという間に接近戦の距離まで詰められる。

 

「うわっ!」

 

 来ると分かっていたが、速い!

 右手に装着された三本爪――ストライククローが漆黒の魔王めいたMFを掠めた。

 空間歪曲装甲(ディストーション・アーマー)で受け止めていたら、そのまま捻り潰されてたかもしれない。

 

 続く左腕のシールドによる打撃を蹴りで跳ね上げて捌く。後退しながらマキは装甲下のミサイルポッドを開き、誘導弾を浴びせた。

 瞬間的な連続爆発がクルィークの深紅の機体を包み込む。空間歪曲装甲(ディストーション・アーマー)で殆ど防がれていた。

 

『無駄なことを』

『それはどうかな!?』

 

 稼いだ僅かな時間でフューネラルは中距離戦の距離まで下がり、ウェポンコンテナを兼ねた背部大型ブースターに内蔵された実弾兵器を撃ちまくってクルィークを牽制した。

 

 

 ヴォルテクスを超える。

 それを使命として条件漬けされ、育成されてきたのがアティアとイヴ――人狼(ルー・ガルゥ)だ。十年前の二人の活躍も教育の過程で叩き込まれている。それはお仕着せの憎悪だけでなく、憧れも育んでいた。

 

 傭兵として己の意志と力だけを自由に戦う。

 檻に入れられた狼でしかない自分達には、決して選べない生き方をするゆかりとマキが眩しかった。

 

「アタシとイヴが一番なんだ! あんた達には消えてもらう!」

 

「他のことはどうでもいい……! ただヴォルテクスより強ければ!」

 

 アティアとイヴの悲痛な叫びがコクピットに木霊する。

 

「――――!? 小細工を!」

 

 突如としてデブリ帯からビームやミサイルが降り注ぎ、その射程内にいたクラスナヤとクルィークは苛立ちながら回避機動。

 

 ゆかりとマキが零桜を借りて仕掛けておいた罠を琴葉姉妹が作動させた。

 デブリ帯を形成する十年前の戦闘で残った残骸、艦砲やミサイルランチャーが火を噴いた。

 

 十年前の残骸とはいえ、砲身が融解する超過出力での砲撃には充分な威力がある。

 

 数発のビームがエネルギーシールドを破り、トルヴァクスを大きく損傷させる。

 一撃離脱戦法で戦っていたガーベラ号はデブリ帯からの砲撃の射程外におり、トルヴァクスの被弾に合わせて猛加速を開始した。

 

「今や! オーバーブースト!」

 

 主推進器と慣性制御機構のリミッターを外したガーベラ号は、瞬く間に黒い巨体戦艦に肉薄する。

 

「体当たりするつもりか!? 迎撃しろ!」

「ダメです! ミサイルの80%以上が迎撃され、有効打なし! 敵高速駆逐艦は主砲に生じた死角より接近しています!」

 

 度重なる損傷で本来なら駆逐艦如き一撃で撃沈できる主砲は使えず、ランチャーの数が減じたため、ミサイルの効果も薄い。

 

「ならば回避だ、急げ!」

 

 アレクセイ大佐は叫んだ。トルヴァクスの巨大な船体が重々しく下降しつつ回頭する。

 

「使用可能な主砲の射線に入り次第、ただちに撃て!」

 

 ガーベラ号の刀の切っ先のような艦首がトルヴァクスを貫くことはなく、ギリギリで掠めた。

 たった一隻の駆逐艦とGen4とはいえ、二機のマニューバフレーム如きに甚大な損害を被った。プライドを著しくしく傷つけられたアレクセイの命令には憎悪が籠もっている。

 

 遠ざかっていく白い高速駆逐艦に主砲が向けられる。直進するだけの敵艦を背中から撃つなど造作もない。

 

「敵機直上!」

「何だと!?」

 

 白灰色の宇宙戦闘機否、マニューバフレームがトルヴァクスの頭上に現れていた。

 オペレーターから詳細な報告を聞く前に白灰色のマニューバフレームは、長砲身のビームキャノンから閃光を放った。

 

 琴葉姉妹の乗る零桜は使い捨てのステルスユニットを装備して、ガーベラ号の突撃に併せて発艦していた。

 

 変形に伴う慣性制御の偏向を利用した強引な戦闘機動は、優秀な第三世代機である零桜にとっても過酷なモノ。

 当然、パイロットである姉妹も責め苦に晒されている。

 最初から覚悟していた。突撃は見せ札でしかなく、零桜がトルヴァクスに肉薄できればそれで良かった。

 

「ぬぉぉぉぉッ!!」

「くぅぅぅぅッ!!」

 

 茜と葵は裸身に張り付くナノスキンスーツの助けを借りながら、凄まじいGに耐えている。

 

 葵はスマートキャノンの一射で艦橋を真上から撃ち抜き、茜は艦尾から腹側に回り込むように零桜を操る。

 その間にもキャパシタのエネルギーが続く限り、葵は砲撃を続けていた。エネルギーシールドを喪っていては、最新鋭の戦艦とて対艦クラスのビーム兵器を喰らってはひとたまりもない。

 

 トルヴァクスは爆発こそしていないが、戦闘力を喪失し航行不能に。勲しを挙げた零桜は再び変形して飛び去った。

 

『茜ちゃんたち、やるぅ! 終わったらたくさん褒めてあげないと!』

 

 人狼(ルー・ガルゥ)との激しい戦闘の最中であっても、マキは茜と葵の勇姿を見届けていた。

 

 トルヴァクスが動けなくなった今、アティアとイヴには還る場所がない。寝蔵を失った二頭の狼だが、その殺意に衰えはない。

 

『試合に敗けても勝負に勝てればそれでよし、ということですね』

 

『潔い心意気は嫌いじゃないけど、勝負も譲る気はないよ!』

 

 戦いを終わらせるべく、イクリプスとフューネラルは最後の加速をかけた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。