ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物   作:その辺の残骸

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後編PartⅠ

 

 高速駆逐艦ガーベラ号は星系の中心部に向かって航行している。カタナ級は操船だけでなく、艦の維持管理まで人間の手が入らなくも良いように設計されており、大助かりだった。

 もちろん、重要箇所は自分達の眼で診るようにしている。保守点検不足で宇宙の藻屑になるなど、戦士を自負する者として恥だからだ。

 

 ゆかりとマキが目覚めてから一週間が経とうとしている。

 神聖アルヴィス公国軍の部隊と数回交戦し、その度に殲滅。降伏した艦の幹部級乗員から諸々の情報を引き出してあった。

 

 現在はデブリ帯を抜け、公国軍の警戒網に引っ掛からない宙域を慎重に進んでいる。一つの大きな目的に向かって歩む、心地よい緊張感があった。

 

「これくらいなら、重ね張りで処置できるね」

 

 作業艇のキャノピー越しにマキは艦の損傷を確かめていた。

 

「よし、パパっとやっちゃうぞ」

 

 右の拳を左の掌に打ち付け、小気味よい音が鳴った。そうしてマキは気合を入れてると、作業アームを操作するスティックに手を伸ばす。積み込んだ資材をコンテナから取り出す。

 

 ガーベラ号は戦闘で装甲に損傷を受けた。戦闘艦には基本的にエネルギーシールドが装備されており、ガーベラ号も例外ではない。それを貫通する強力な打撃を被ったということだ。

 

 マキの作業の手際は良い。傭兵仕事がない時は、ゆかりと一緒に宇宙空間での工事や建設作業で生活費を稼いでいたからだ。

 

「はい、お終い!」

 

 破れた装甲の補修が完了すると、ナノシェルスーツのバイザー内にある超小型の投射装置を介して、ゆかりのバストアップ映像窓が表示された。

 運動に最適な無駄のないお胸と涼し気な美貌はとても魅力的だと、マキは心から思っている。

 

『クライアントとの連絡の時間です。マキさんもブリッジに上がってください』

 

 ゆかりは艦橋におり、艦長席に座っていた。

 

「りょーかい。すぐ行くね」

 

 マキはペダルを踏んで軽くスラスターを吹かし、作業艇を発進させた。格納庫に戻れば、すぐさま駆け出す。旋風めいた速さで艦内通路を走り、艦橋へと向かっていく。

 

 神聖アルヴィス公国の大本は、アンゼリスと地球の独立戦争以前は後者に媚び諂い、戦争の旗色が読めぬと見るや中立を決め込んだ国である。

 戦争の敗者となった地球が衰退し始めると独立を宣言。軍を中心とした貴族制を敷き、御大層な国号に改めたのである。以来、貴族を称する輩は放蕩の限りを尽くしている。

 

「要するに、いい大人達が鉄砲持って貴族ごっこをしているんですよ」

 

 マキにアルヴィス公国の現状を要約して伝えた際のゆかりの言である。

 

 これに対抗するレジスタンス組織が解放同盟。政権打倒と民主化を目指す、平民階級が興した組織であり、ゆかりとマキは傭兵として同盟に雇われていた。

 

 接触の切欠はアルヴィスのパトロール部隊に追い詰められていた同盟のMFに助太刀したことだ。

 

 とりあえず、ガーベラ号が送り届けられるはずだった組織に意図を聞き出し、それが気に入らなければ張り倒す、そうでなければビジネスの話をする。それがゆかりとマキの出した結論であった。

 

 数時間後には指導者その人が接触を図り、ゆかりとマキの存在が彼らにとってもイレギュラーであることが判った。

 

 同盟は星内の資源採掘権と引き換えに、自由主義を標榜する方々の勢力から軍事支援を取り付けることに成功した。そうして送り出されたのが、ガーベラ号と船内の大量の軍事物資だった。

 

 複数の国家、企業、その他からの物資が無造作に詰め込まれ、出所も秘匿されていたので、ゆかりとマキのコールドスリップポッドが載せられた理由は不明だ。備品目録にもコールドスリープ・ポッド二基とだけあり、付記されるべき事項が記されていなかった。

 

『部外者であるお二人に危険な真似をさせてしまい、本当に申し訳ありません』

 

 暗号回線でやり取りしている解放同盟のリーダーである青年はグレンという名だ。抵抗組織のリーダーとはイメージが結び付かない朴訥な印象。ハンサムでもある。

 

 より年長で艦隊指揮を含めた高度な軍事経験のある同志もいるが、情熱と行動力、清廉さから彼は指導者に選ばれていた。

 

 グレンはゆかり達とはじめて交信した際、大いに驚いていた。報告は受けていたが、本当に若い女性二人が兵器と一緒に軍艦に放り込まれていたことに衝撃を受けたし、さらに卓越した戦闘力を持った傭兵で、民衆を救う切り札になってくれるとは思ってもみなかった。

 

『本来ならば、僕達がやらなければならないことなのに』

 

 依頼人の青年が気負い過ぎているように思えたので、ゆかりは言っておくことにした。

 

「グレンさん」

 

 まず、一歩踏み出しながら一言。ナノスキンが硬化して形成されたブーツの靴音が艦橋に響いた。

 

「私とマキさんは傭兵であり、詳細な作戦計画と報酬を提示された上で、契約を結んでいます。この件に関しては生死は自己責任ですよ」

 

 ゆかりは自己責任論が大嫌いだが自分たちの傭兵稼業に限り、適用している。

 

「なので気にしないでくださいね」

 

 ゆかりと同じ想いであったマキが口添えする。

 

 グレンは口籠る。今度はマキが動いた。

 

「作戦が終わったら直接会いましょう。生で見る私とゆかりんは映像より凄いですよ、いっぱいお話しましょうね♪」

 

 両腕を頭上で交差させ、腰を軽くくねらせたポーズで肉体美をアピールするマキ。曝け出された腋はなんとも魅惑的だった。

 ゆかり達はあえてナノスキンスーツを着た裸同然の格好の全身図を投影している。胸を薄いスキンで股間を頑丈な装甲でそれぞれ強調しているため、普通にしているだけでも扇情的だ。

 

 マキの大胆なポーズに青年は赤面して「何卒よろしくお願いします! ご武運を!」と告げてから通信を終えた。

 

「いやーイケメンさんが依頼人だとテンション上がるね!」

 

「ですね。血が滾ります」

 

 ゆかりもマキも相当な面食いであり、美しければ性別は問わない。ちなみに顔が好みでなくとも、内面が好ましければよしとする場合もある。だが、どうであれ深い関係を望んでいるわけではない。

 

 顔や身体で魅了して、その反応を楽しむのが好きなのだ。この筋肉質な戦乙女ボディの女蛮族どもは、自分達の絶世の美貌を理解した上で他人と接しているのである。

 

「勿論、イケメンは良いものですが、私の一番はマキさんです。それは覚えておいてくださいね」

 

 不意にマキの瞳を見つめてゆかりは言った。

 

「わたしだってゆかりんが最高のパートナーだよ、安心してね♪」

 

「この結月ゆかり、マキさんを疑ったことは一度もありませんよ」

 

「またまた~グレンさんとわたしが話した時ちょっとむっとしてた癖に~」

 

 マキはゆかりに顔を近づけて話している。恋人の距離である。

 

「妬いてなどいません。氷点下の戦闘美少女であるゆかりさんに嫉妬という下等な感情は無縁です」

 

 無表情で無感情に断言するゆかり。二人の距離は超接近戦へ。薄い胸がマキの豊かなお胸に触れた。コンビを組んで以来、二人はいつもこんな調子だった。

 

 

 ガーベラ号から発艦したヒロイックな白青の高機動MFと魔王然とした黒赤の重MF。イクリプスとフューネラルは空間歪曲を応用した高速モードで敵地に突進していた。

 

 ゆかりとマキは強烈な加速Gに圧されながらも、会話できる頑丈な肉体と強靱な精神力を兼ね備えていた。

 

『それじゃ、下で待ってるから』

 

『幸運を、マキさん』

 

 レーダーが捉えている夥しい数の敵性反応に怯む様子のない女蛮族ふたり。マキなどサメのように嗤っている。

 

 二人が請け負った作戦は極めて重要かつ自殺的な難易度のミッションだった。

 

 本星への強襲。目標は二つ。

 星系内外の通信を妨害しているジャミング装置の中枢ユニットと公王庁。前者は静止軌道ステーション、後者は地上の首都にある。一握りの精鋭を除けば、士気装備ともに質の低い公国の中枢を一気呵成に攻めて転覆させる決戦に挑むのだ。

 

 戦力が限られている同盟の本隊は二機が本星に接近するための陽動を担い、作戦完了後に降下して首都を制圧する段取りになっている。

 

「征くよ、フューネラル! 惑星強襲だ!」

 

 イクリプスと別れ、マキは最大戦速で降下軌道に自機を投入した。

 

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