ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物 作:その辺の残骸
フューネラルは黄昏の陽光に照らされていた。背部の大型ブースターとそれに付随する主翼を広げた、黒と赤の威容は魔王さながら。
ゆかりの援護を受けながら有象無象を薙ぎ払い、大気圏へエントリー。海面スレスレで慣性制御ドライブを全開にしてブレーキをかける。
衝撃波が海面を割り、巨大な水柱が左右に起こる。そのまま沿岸部にある首都へ直進していた。
「あれが公王庁かぁ。庁舎っていうか要塞だよねえ」
防壁に囲まれ、守備隊を配備した公王庁の物々しさにマキは感想を述べた。どう頑張っても市民に親しまれる外観じゃない。だがしかし、ありがたいことに一帯まるごと軍事拠点なので、民間人の被害を気にせずぶっ壊せる。
マキはただ今攻撃の応酬の真っただ中。
進行方向は水上艦隊、十時方向からは迎撃機の大編隊がたった一機の侵入者めがけて殺到している。
装甲を開き、内蔵したミサイルを次々に発射。さらにレーザーバルカンを装備したUAVをブースターの主翼下パイロンから切り離し、対空戦闘を命じる。両手持ちのビームキャノンは拡散モードでぶっ放し、水上艦隊の前衛を撃滅。あまりに脆い。いや、フューネラルの火力が異常なのだ。
爆発。爆発。爆発。撃沈に次ぐ撃沈。撃墜スコアがみるみるうちに蓄積していく。自分の戦果を眺めて悦にいる暇はない。猛烈なGがあらゆる方向から金髪ロングヘア少女の肉感的なボディを締め上げる。マキは瞬発力だけで機体を操り、4GenMFの破壊力を余さず絞り出していた。
轟沈していく空母の甲板を足場に跳躍。衝撃で真っ二つになった空母を後目に高度を取るとDBによる猛烈な加速で矢のように翔ける。
フューネラルは長大な距離を瞬く間に飛んで、対空砲火を掻い潜って庁舎とは名ばかりの要塞にタッチダウン。
「わわわわ! 不味いところに下りちゃった!」
直後に殺到してきた銃火にマキは慌てて機体を動かす。
DB直後で空間歪曲装甲が薄れているため、レーザーや砲弾が黒と赤に彩られた装甲を叩いたが、恐るべき鎧を纏った魔神の如きマシンはその防御力を持って攻撃を弾き返していた。
「これは流石にヤバそうだね!」
道路の幅一杯に陣取った大型戦車がビーム砲をこちらに向けてくる。大出力の加粒子ビームはMFはおろか戦闘艦によっても致命的な必殺の武器であり、弾速も非常に速い。
地表を滑走しながら、自重を移動させてのスライドでビームを避ける。
そして、背部スラスターで急加速をかけて、思い切り車体を蹴る。横転した大型戦車の被弾箇所は大きく凹んでいる。
フューネラルは蹴ってからすぐに慣性制御をかけて運動エネルギーを後退に集中させていた。ビームキャノンは右手で保持し、空いた左腕の内蔵レールガンで戦車の底部装甲をぶち破る。
「やっりぃ!」
少しばかり手強かった大型戦車は爆散し、マキは自分の鮮やかな手際に指を鳴らした。
「だいぶ減量したね。そろそろレーザーでいこうか」
フューネラルが搭載していたミサイルは七割近く消耗している。
おかげで機体は軽くなっており、それをダイエットにたとえたのだ。碧眼に映る武装選択画面でホーミングレーザーを選ぶ。全周の敵性反応にロックオンマーカーが割り振られる。
空中にてフェイントを交えて動き、ビームキャノンは地表に向けてアンダーバレルの実弾ガンランチャーを発射している。
「こんな立派なお城なら逃げずにバンカーにでも籠るのを選ぶよね、この国の一番偉い人は!」
弾種は
無数の青白い閃光が放たれ、曲がり、ターゲットした敵機に着弾した。温存していたホーミングレーザーだ。
不意にマキは空を仰ぎ見た。遥か高みで無双している親友に向けて陽気に笑う。
「ゆかりんの方もそろそろ終わるかな?」
――――神聖アルヴィス公国本星、静止軌道。
白と青のGen4MFが迎撃弾を非力と嘲るかの如く弾き返す。無傷であり、空間歪曲装甲が攻撃を受け止め切っていた。
一方、イクリプスが通り抜ければMFは次々に爆発。刀とレーザーブレードの二刀流の構え。絶対必中の誘導弾、あるいは無限肉挽機と化して雑魚を瞬く間に葬っていく。
「張り子の虎とはまさにこのこと。なんと他愛ない」
氷点下の眼差しを右往左往する機動兵器部隊に向ける。ステーションを守護する艦隊も容易いもの。ゆかりさんの玩具です。
バレルロールで砲火をいなしながら、獲物と定めた敵艦に猛迫。とても有人機とは思えない超絶の高機動で軌跡を刻みつつ、イクリプスは敵艦を掠め飛ぶ。実体の刀でスラスターを全損させていた。
「細工は流々」
ゆかりは呟きながら急上昇。追い縋ってくるアルヴィス軍MFの攻撃を螺旋を描くマニューバーで振り切って、反転。
追いかけるだけで疲労困憊した敵機を引力で増速した急降下で唐竹割り。しかる後に鋭角急上昇。決して止まることはなく、敵機を攻撃していない時間も殆どない。
敵艦の群れを抜けると、ゆかりは青く輝く惑星を見下ろした。
「後は仕掛けを御覧じろ」
数隻の戦闘艦が、ゆかりの目標であるジャミング・ユニット本体が設置された静止軌道ステーションに向かって流れていく。
トドメにアンダーバレルのビームによる狙撃でエンジンを撃たれて航行不能にされ、質量弾となった軌道ステーションの護衛艦である。
小細工と呼ぶにはあんまりな力業で望まぬ運動エネルギーを与えられ、本来守るべき対象に吸い込まれるよう動いていた。
ステーションそのものも既に損傷しており、イクリプスに蹴り飛ばされたMFや砲塔がめり込み、防衛用の武装を破損させている。つまり、突っ込んでくる大質量への迎撃の術を奪われているわけだ。
「邪魔しないでくださいね」
通信はアルヴィス軍の兵士の怒鳴り声や悲鳴で沸騰している。手間暇かけた細工をご破算にされてはたまらないとゆかりは肩部ハンガーに架けていたアサルトレールガンを右手に持ち、生き残ったMFを爆散させていく。
せっかくなので、ゆかりはカウントダウンした。
「三、二、一、今」
激突。細長いフォルムの戦闘艦が何隻も突き刺さり、ステーションは奇妙なオブジェと化した。
機能は完全に失われており、その証拠にジャミングノイズが綺麗さっぱり消滅している。
こうなれば宙域に留まる意味は何もない。残骸だけが漂う静止軌道からイクリプスは惑星への降下を開始。
「降下角度問題なし、機体損傷許容範囲内、全系統異常なし。戦闘降下でなければどうということありませんね」
しかし降下プロセスはきっちりこなすゆかりであった。DAのおかげでいざとなれば無茶な角度で突入できるのがイクリプスの良いところだ。いずれはやってみたい。
左前腕に装備されたシールドで機体そのものを庇う態勢で降りていく。白と青の流麗なMFが厚い大気に出迎えられたのは三十分後のことだった。
既に解放同盟の部隊の第一陣、本星に潜伏していた小規模な機動部隊が首都に展開しており、戦意を喪った公国軍を武装解除させている。
「要塞もマキさんにかかれば形無しですね」
公王庁なる建物は殆どが瓦礫同然。その上空でフューネラルは静止し、深紅のツインアイを輝かせている。
要塞の一角は駆け付けたMFが中心になり消火作業が行われた後で、降伏した兵士や高官などが集められていた。
『今回も派手にやりましたねマキさん』
『ゆかりんの方だって凄いよ。ステーションの映像もう中継されて、お祭り騒ぎだもん。凝り性は変わらないねえ』
『ゆかりさんは戦闘芸術家なので』
謎の職業を名乗り、薄い胸を張るゆかり。
『出た、ゆかりんの謎の職業』
『謎などではありませんよ。とにかく、こちらに向かっている同盟の旗艦を待ちましょう。グレンさんと直にお話したいですしね』
『それまではここで警戒態勢だね』
『そうなりますね。悪足掻きがないとは限りません。気を抜かないでいきましょう』
『りょうかーい♪』
こうして、十年後の世界でのゆかりとマキの最初の戦いは終わりを迎えた。