ぴっちりスーツなボイロ(筋肉娘)でスペオペ風ロボ物 作:その辺の残骸
ステーション
神聖アルヴィス公国が解体され自由民主主義を標榜する暫定政権が興ると、
ゆかりとマキに支払われた報酬はガーベラ号とそこに詰め込まれた物資一式。
Gen4MFを筆頭に傭兵としては破格の装備を持って旅のスタートを切った。
暫定政権は公正な選挙を約束しているが、民主的な選挙の結果として圧政からの解放者である解放同盟の幹部が議会の多くを占めることは間違いないだろう。
彼らが以前の貴族を称した支配者と同じ轍を踏むのか否かは解らない。
ゆかりとマキは美貌と暴力で武装した宇宙の蛮族である。しかし、国家の健やかな発展と人々の安寧を願わないでもない。
新政府が堕落したらその時はその時。アルヴィス公国ver2.0相手に稼がせてもらうおうと考えている。
とにかく、ガーベラ号は超光速航行で新たな目的地の近辺宙域に出た。
二人のコールド・スリープポッドの謎のうち、解けていないのが誰が何の目的でガーベラ号に積み込んだか。それがはっきりしないとどうにも気持ち良くない。
傭兵稼業をしながら何者の仕業だったのか突き止める、それがゆかりとマキが相談して決めた当面の目的だ。
主要な星間航路に入り、真新しい船から老朽船までが行き交う流れにガーベラ号も身を置いている。軍艦も混じっているのでガーベラ号は悪目立ちしていない。
運送業者などの民間企業でも自衛能力がある戦闘艦が採用されることは多く、艦と緊密な連携が可能なMFも併せて導入するのが一般的。
軍需産業も需要に応じ、軍だけでなく民間向けの販路を広げている。一方で審査と購入手続きの甘さからテロリストや犯罪組織に兵器が渡ることも多く、星間航行には危険が伴うのは昔から変わっていない。
マキは暇つぶしに周囲の船を観察していた。
十年も経つと知らないタイプの航宙船が多く、新たな理論で構築されたフォルムがマキの目を惹きつけていた。しかし、長時間眺めていると流石に飽きてくる。
艦橋のオペレーター席でうーんと伸びをしつつ脚を伸ばすマキに
「あと一時間ほどで着きますよ」
とゆかりが声をかけたのは、相棒の退屈を察したからだろうか。常に無表情で氷点下の美貌を自負する結月ゆかりは操舵席に着いている。
二人とも旧神聖アルヴィス公国星系からナノスキンスーツを着用し続けている。内外の衛生状態が常に維持されるため、脱ぐ必要がない。簡易的なパワードスーツでもあるので猶更だ。理論上一度着れば脱ぐ必要はない。
トイレは股間部分からお尻部分にかけて形成された信じられないほど高性能な排泄物パックにするか、それが嫌ならばパックを装甲板ごとスライドさせて船内のトイレで済ませればよいという徹底具合。
なんと着たまま入浴することさえできるのだが、流石にゆかりもマキもその時はスーツを脱いでいる。
ガーベラ号が向かっているのは流通の一大拠点になっている宇宙ステーション。ある星系のラグランジュ点に静止している。発着する艦船が放つ無数の光が遠くからでも見え、賑わっているのが分かる。
「着いたらパーッと遊びましょう。お金ありますし。せっかくですから服もレプリ製ではない上等な物を一着くらい仕立てたいですね」
ここで遊んで食べて、面白そうな仕事があれば請け負う。そのような単純明快なプランを描いている。
ついでに信頼できる乗員も欲しいと思っている。専門の操舵手、整備員、オペレーターなど傭兵稼業にはやはり必要だ。
「その前に戦利品の換金をしないとね」
アルヴィス軍の戦闘艦は流石お貴族様が乗るだけあり、贅沢品を貯め込んでおり、降伏させた艦から略奪してあった。
MFのパーツも含めて売り捌いて今後の資金に充てるつもりのゆかマキである。
「交渉はお任せしますよマキさん」
「まっかせておいて!」
人見知りの気がある、と自称するゆかりは交渉事はマキに投げることが多い。
「入港審査の手間が減ってればいいんだけどね~」
ステーションへの入港というものは、長い待ち時間とそれに伴う混雑に苦しめられるものなのだ。
「十年の進歩に期待しましょう」
割と真剣に言っているゆかりだった。
紫髪と金髪の美少女二人のささやかな期待は完膚なきまでに打ち砕かれた。二時間。既に二時間列に並んでいるが受け付けはいまだ遠い。
「ナノスキンスーツを着てくるべきだったかも」
視線を落とし、豊満なバストの谷間を露わにする露出度の高い軽装を纏った身体を見るマキ。後ろに立つゆかりも似たデザインの軽装。胸と腰だけ覆ったようなチューブトップ+ホットパンツのファッションだ。
二人が着ているのはレプリケーターで生成した服で、安物と見做される類だが見事に着こなしている。
サランラップを身体に張り付けたようなナノスキンスーツは裸よりもエロいかもしれない見た目であり、それを着て胸やお尻の形を露わにすることに恥じらいはないのだが、極めて過激だという理解はしている。
なのでTPOに合わせ、今の服装を選んだ。
「本当に暑いですね」
思わず額の汗を拭うゆかり。十分に涼しい恰好をしているが、密集した人々の熱気に汗を掻いていた。
後ろから可愛らしい声がした。
「この行列だけは慣れんわ。ウチが大人になる頃には技術が進んでパパっと終わるようになって欲しいで。気分とか大丈夫か葵? 悪くなったらすぐお姉ちゃんに言うんやで」
「大丈夫だよお姉ちゃん」
ゆかりは仲睦まじい姉妹の会話に思わず振り返った。
(八洲の方でしょうか?)
外見と言葉のイントネーションから推測する。ガーベラ号――――カタナ級の建造元でもある
姉はピンク色の髪。葵と呼ばれた妹は水色の髪。八洲風の意匠の雅やかなワンピースでお揃い。
自分達のレプリケーター製の安物と違い、精巧な装飾が施された恐らくオーダーメイドの高級品。上品な雰囲気で育ちの良さが感じられる。
食品や日用品、資材を生成する万能合成機レプリケーターが普及して一世紀が経っている現在でも、技術的な問題からくる品質の限界があった。
それゆえレプリケーターで造られた物品は紛い物という認識がある。
ピンクと水色の姉妹は肩越しに振り向いたゆかりに怯えるように固まっている。
感情が読めない無表情な美貌の眼差しは鋭く、背が高い。おまけに引き締まった肢体は筋肉質な上、荒事慣れしたオーラが出ている。
極めつけは服装。
チューブトップとホットパンツ、ヒールの高いブーツ。艶かな黒。
アウトロー感バリバリである。
今の結月ゆかりは百点満点の怖いお姉さんだった。
「なっ何か」
姉の方が妹を庇うようにして、ゆかりの目を見た。
「失礼しました。あまりにも可愛い声がしたので思わず振り向いてしまいました」
ゆかりはストレートな物言いを好む。姉妹も可愛いと言われて満更でもない様子。
「入港審査っていつも待たされますよね」
不満を分かち合うと親近感が湧いている。
「ウチは琴葉茜って言います」
黒ワンピースの姉が名乗り、
「妹の葵です」
白ワンピースの妹も丁寧な口調で挨拶。
やはり八洲の良家の生まれであった。
琴葉姉妹は最近また物騒になりつつある宇宙を旅している真っ最中だという。
「詳しくはお話できないんですけど、家のしきたりで宇宙を回って修行してるんです」
葵が説明する。
「なんと二人きりで修行の旅とは」
「へー古風だねぇ」
楽し気な気配を察したマキが会話に加わる。それから一時間ほど待たされた手続きの時間は琴葉姉妹のおかげで苦でもなくなった。
姉妹と別れ、ゆかりとマキは略奪品を売り捌くべく、故売屋を探しに出向いた。
二人が向かった先が一般人が寄り付かない治安の悪い区画だとすぐに琴葉姉妹は気付き、やっぱりアウトローのお姉さん達だったんだ……と察するのであった。