新・中年探偵幸田の日記   作:クライングフリーマン

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興信所に帰ると、花ヤンと横ヤンが新聞を読みながら、眉間に皺を寄せていた。


94.誰でもええんか?

○月〇日。

俺は、嫌な予感がした。

興信所に帰ると、花ヤンと横ヤンが新聞を読みながら、眉間に皺を寄せていた。

「世間では、秋葉原の事件ばかり言うてたけど、大阪でも『模倣犯』がミナミでトラック乗って暴走、殺人しようとした。」と、横ヤンが言い出した。

「西成の事件ですか。奈良の事件以降、簡単には小学校に侵入出来ないようになったけど、通学路も危ない。日本の『道路事情』知らんテレビのコメンテーターが『歩道をしっかり作って車道と区別して』なんてアホなこと言うけど、整備出来る歩道は、とっくに出来ている。車道優先やから、白線引いた外しか『歩道エリア』でしかないし、道路端から1メートルにも満たない箇所も多い。それに、歩道エリアであろうと無かろうと、子供に突っ込んで行く馬鹿もんは、増えても減らん。」と、俺は憤慨した。

「幸田さんは、正しい。被疑者は『全てが嫌になり、数人の小学生をひき殺そうとした』とか『苦労せずに生きている人が嫌だった』とか供述しているらしい。『苦労せずに生きている人』やと。倉持くん、こういうの何て言うんやったかな?」

花ヤンは、珍しく話題を倉持に振った。

「おまいう、ですか?」

「そう。おまいう、や。全てが嫌になってる人間は多い。何が精神鑑定や。刑事責任能力や。捜査員は先天的資質、後天的脂質も聞き込みで見抜いてるんや。」

俺は思い出した。花ヤンも横ヤンも人の親、人の親の親や。

ランドセル買いに行った時の『捕り物』。必死やったもんな。

「西成と言えば、雑貨店に突っ込んだ男は、『商品探す為やった』と、ほざいているらしい。トラブルがあったんやから、怨恨や、カスハラや。」と、所長は言った。

「カスハラと言えば所長。ウチの澄子がスーパーに買いだしに行ったら、レジ係の名札が『スタッフ』に変わってて、面食らったらしいですわ。もう名札要りませんやん。店のユニフォームあるんやし。詰まり、カスハラがあって、レジ係が怯えるから、店長がそうさせたらしいんです。」

「恐い世の中やなあ。道歩いてたら車に突っ込まれる、商売してたら客に逆恨み募らせて包丁で刺さそうとする、那珂国は日本の会社を乗っ取りしようとする。EITOは幾らあっても足りんな。」

「所長。カスハラはEITOの対象外でしょ。」

「それもそやな。素麺の出前頼んだからな。たまにはええやろ。経費で『おやつ』や。ほな、明日の割り当てや。」

所長は資料を配った。

わあ、また和歌山か。遠出はいつも俺と倉持の担当や。

資料を見ている内、素麺の出前が来た。

東京やったら、やっぱり蕎麦かな?

俺達は舌鼓を打った。

帰宅すると、夕食も素麺やった。

こういう「ダブり」は、ようある話や。

「澄子。明日、和歌山な。はよ出るサカイな。」

澄子は不服そうな顔をしたが、女房らしく、「5時起きやな。4時半がええか。」と言った。

明日が早い時は、「夜の営み」は御法度や。その分、次の日に「お代わり付き」や。

「営み」の度にワコの事を思い出す。辻先輩も院長も、本気で不倫させようとする。

困ったもんや。

「何が困ったんや?」しまった。口に出してしまった。

咄嗟に花ヤン横ヤンとの話をした。

「恐い世の中やなあ。」

澄子は所長と同じことを言った。

俺がホンマに恐いのは・・・。

―完―

 




東京やったら、やっぱり蕎麦かな?
俺達は舌鼓を打った。
帰宅すると、夕食も素麺やった。
こういう「ダブり」は、ようある話や。
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