新・中年探偵幸田の日記   作:クライングフリーマン

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子供達が、かき氷を頬張っていた。店のテーブル椅子だけでは足りないのだろう。
もう夏休みだ。
食べ終えた食器を置き、料金を払った子供達は、駈けて行った。
「倉持君は、何にする?」「え、っとレモンで。」
「はいはい。」



101.夕涼み

○月〇日。

(店に)帰宅すると、澄子は、縁台を店の前に出していた。

子供達が、かき氷を頬張っていた。店のテーブル椅子だけでは足りないのだろう。

いちごに、宇治金時、レモンにミルク。何でもありやな。

こういう文化は、外国人にはない。特に那珂国人には出来へん芸当。

もう夏休みだ。

食べ終えた食器を置き、料金を払った子供達は、駈けて行った。

「倉持君は、何にする?」「え、っとレモンで。」

「はいはい。」

俺と倉持は、子供達の食器を片づけた。

ふと見ると、軒先には、風鈴が鳴ってる。これも那珂国には「真似」だけのもの。

ガラス職人が、丁寧に焼いたビードロや。

俺は何と言っても、宇治金時や。

俺達に、かき氷を渡すと、澄子は丸椅子を持って来て、俺達に向かい合った。

「食べながら、で話して。」

倉持は、「先輩。澄子さん。あ、奥さん。仲人になってくれますか。」と言った。

「やっぱり相思相愛なんか。横ヤンも花ヤンも、所長も見守ろうって言ってたけど、な。澄子。門田さんの死んだ・・・いや、倉持が好きで、門田さんが好きなら自由恋愛や。不倫やないし、お前は警察官ちゃうから、気兼ねする職場恋愛でもない。皆で祝福する、1択や。小柳さんも立場とか考えんでええし。」

「門田さん、警察、辞めはるの?」と、澄子は言った。

「いえ。本来なら再来月に定年退職ですけど、本部長さんが、まだ府警に欲しい、って言っておられるそうです。」

「良かったな。」「良かったな。」

俺達夫婦に呼応するかのようにセミが鳴き始めた。つくつく法師かな?

あまり知られていないが、セミも暑すぎると鳴かない。

鳴くのは雄のセミで、雌のセミを求める求愛サインらしい。

鳴くのも、体力がいる。

だから、昼下がりには鳴かず、朝方夕方に鳴く。

セミの求愛も難しいが、人間の求愛も難しい。

俺も、体力が毎日「ご奉仕」で奪われる。

年増の深情け。ワコ、ゴメンやで。

 

倉持は憧れだったが、門田さんは「ビビっと」来たらしい。逆ナン、逆プロポーズや。今時ヤナア。

何で倉持か。調べたら、すぐに分かった。前の旦那の若い頃そっくりの倉持、「棚からぼた餅」・・・でもないか。

何となく一緒になった、俺らとはちょっと違う。ええやないか。

「今夜な、おでんや。倉持君も食べて行き。」

「はい。ゴチになります。」

「倉持、セミとりしたことあるか?」

「はい。子供の頃、よくやりました。」

俺達は、しばし、セミとり談義をした。

スマホも、イエ電も鳴らない、静かな夕暮れ。

おでんの煮え具合を見ながら、澄子は歌い出した。

「あーぶくたった にえたった」♫

 

「俺が鬼か?関西では、あんまり知られてない『わらべ歌』やな。俺は転校生に教えて貰った。」

「私も。」

倉持は、妄想に入ったのか、ニヤニヤしていた。

 

―完―

 

 

 




倉持は、「先輩。澄子さん。あ、奥さん。仲人になってくれますか。」と言った。
「やっぱり相思相愛なんか
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