新・中年探偵幸田の日記   作:クライングフリーマン

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102.聞き上手

聞き上手

○月〇日。

「あんた。倉持君。親類は?」

「高校の時、両親は火事で亡くなった。しばらく大分の叔母さんのとこで厄介になったらしい。」

「そうか。寂しい披露宴やな。」

「そやな。でも、おれらも出席するし、EITOからも府警からも出席する。小柳さんは、えらい倉持に同情的でな。『犠牲者』って言ってるらしい。」

「犠牲者は大袈裟やろ。」

「小柳さんは、子供の頃いじめられっ子でな、大分庇って貰った恩が大きいから頭が上がらん。」

「そやけど、大前さんを更生させて警察官にしたんは小柳さんやろ?」

「うん。そやから、大前さんは小柳さんに頭が上がらん。俺は、愛妻澄子に頭が上がらん。」

「そんなオチ?」と澄子はゲラゲラ笑い出した。

「相変わらず、仲ええな。幸田さん、車検の会社紹介してくれへん?」

そう言って来たのは、近所の久礼だ。

「え?なんで?」「幸田さん、テレビ見イへんから知らんやろうけど、倒産したんや。不正ばれて。」

「そうか。澄子。ちょっと行ってくるわ。電話より、直接行こう。」

 

車中で久礼は愚痴りだした。「景気の悪い話ばっかりでなあ。」

「あ。久礼さん、ウチの倉持知ってました?」

「ああ。真面目ななあ。幸田さんと名コンビやな。」

「今度、結婚することになりましてん。11月やけど。久礼さんも出てくれます?身内少ないんですわ。」

「ええの?ほな、出るわ。顔なじみではあるし。で、どんな人?」

俺は、和ませる為に久礼に「あることないこと」しゃべった。

 

車検屋のおやじも長い付き合いや。

「そうですか。どうぞご贔屓に。ほな、都合のエエ時に連絡して下さい。」と、車検屋のオヤジは、久礼に名刺を渡した。

 

「まあ、今度の今度は、ないやろうけどな。愛車も俺同様、くたびれてんねん。」

「新車買うの?」「そんな余裕はない。」

帰り道、また、久礼の愚痴を聞くことになった。

「何十年も不景気でナア。『老後』なんてもうない。なんで、あんなに税金取りたがるんやろ。ヤクザと一緒やな。」

「ああ、忌む叡智系もな。自分らは左団扇で暮らせるのに。日本て、ノー税金でもやっていける位『クラ』に金あるらしい。」

「役人天国にスパイ天国。パンピーは地獄。ああ。外国人天国でもあるな。」

「一旦、国籍映してから、日本国籍取るか?」

「いやや。日本人のまま生きて、日本人のまま死ぬ。」

まあ、商売や。

興信所の所員は、『聞き上手』でないといかん。

その点、俺も倉持も天職や。

『聞き上手』は探偵の必須条件や。

―完―

 

 




「新車買うの?」「そんな余裕はない。」
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