新・中年探偵幸田の日記   作:クライングフリーマン

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倉持は、あらゆる面で優等生やった。ついこないだまでは。
まあええ。帰ったら、澄子に愚痴ろう。



104.思いやり

 

○月〇日。

門田警視と倉持の結婚が決まったのはいいが、倉持はふわふわすることが多くなった。

俺は仕方無く、ハンドルを握ることが多くなった。

こういう時、片方しか運転出来ないようだと、融通が利かない。

だから、南部興信所の入社条件は運転免許証を持っていて無事故・無違反が一番の条件だ。

二番目は社交性。倉持の前に入社してきたヤツは、妙に暗かった。

ある日、連絡が途絶えたからアパートに行ったら、夜逃げだった。

所長は、同情して大家に「ツケ」を払った。

 

倉持は、あらゆる面で優等生やった。ついこないだまでは。

まあええ。帰ったら、澄子に愚痴ろう。

 

クルマの前に人が倒れた。

はねた訳ではない。俺は、救急車を呼ぼうとスマホを持ったが、倉持が119番して、俺に合図を送った。

何となく、腫れた顔をしているので額に触ったら、少し熱い。

倉持は我に返ったのか、119番の後、すぐに所長に電話をした。

救急隊員に事情を話していると、倉持が「所長が、幸田さんに任せて僕に帰ってこいって言ってました。」と報告してきた。

「じゃ、クルマ頼む。安全運転でな。」

俺は救急隊員に向き直って、「家族が到着するまで付き添いますわ。」と言い、救急車に乗った。

救急病院に着いて、俺が検査待ちしていると、娘さんらしき人が来た。

「今、検査待ちですわ。熱中症ちゃうか、って話です。」

俺が事情を話すと、「そやからエアコンつけなアカンて言うてるのに。」とボヤキだした。

「あのー。持病は?娘さん。」

「腰と膝に持病があって、整形外科に通院しています。」

 

点滴が始まった。倒れた大田原さんは唸っていて、娘の葉月さんは、オロオロしている。

点滴が終るまで時間がかかりそうなので、俺は鍼灸院を開院している、高校の先輩にロビーからスマホで電話した。

「腰と膝に持病があるんやな。幸田。本人が話せるようになったら、確認しい。『エアコンキツすぎるんか?』って。」

「エアコン、キツすぎ?」「そうや。高齢者はな。若いもんと使い方変える必要があんねん。テレビとかで。高齢者が亡くなって、エアコンつけへんからやって、死んだ人をアホにするけどな。同居してるか、時々来る親族の責任問題やねん。年齢サーチ出来るエアコンあるか?病気によってモード変えられるエアコンあるか?需要がないと思って付けてへんだけや。メーカーは。メーカーにクレーム入れるより、自衛手段考えた方がええ。通院している診療所聞き出して、診療所から説得して貰い。こういう時はな、素人の他人より、玄人の他人や。診療所の先生がうんと言わへんかったら、十津川先生に間に入って貰い。分かったな。」

「ありがとうございました。先輩、助かります。」

俺は、話せるようになった大田原さんに、「先生に冷房の使い方を教えて貰いましょう」と説諭した。

そして、「冷房がキツすぎると、途中で切ることがあるそうです。電気代の問題やない。今の冷房は『冷暖房の切り替え』と『温度調節』『風量調節』はあっても、工夫が必要なんです。」と弁護した。

翌日。事務所に大田原さんから。お礼の電話があった。

主治医のアドバイスで、リモコン付きの扇風機と、薄すぎない夏布団を購入、娘さんはガミガミ言わなくなった、と言う。

 

今は、何でも「テレビという神様」に柏手打って、お賽銭上げれば御利益が得られるという信仰が流行っている、と十津川先生は笑っていた。

 

―完―

 

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