「あんた、ホンマにウチで良かったん?」
「また、言うてる。10年経って子供出来へんかったら、里子貰おう。本庄先生なら、『ツテ』があるやろ。」
亭主孝行
○月〇日。
澄子は、先日の、俺の冒険譚をはらはらしながら聞いていた。
「映画みたいな展開でスリリングやったわ。ホンマに、アメリカの探偵みたいに認知されてへんから、不便やな。」
「まあ、ウチは浮気調査が主やからな。」
「あんた、ホンマにウチで良かったん?」
「また、言うてる。10年経って子供出来へんかったら、里子貰おう。本庄先生なら、『ツテ』があるやろ。」
電話が鳴った。所長の南部からだった。
興信所の死後の休みは、あって無いようなもんや。
「殺し?ナイフガンナイフですか?すぐ行きます。」
背広を用意しながら、澄子は尋ねた。
「ナイフガンナイフ言うたら、あの特殊なナイフ?」
「うん。実物見た数少ない人間やからな。確認に行くだけや。阿倍野署に。」
「確認かあ。そんなんも仕事なんや。」
「俺ら興信所と警察は、持ちつ持たれつや。日本では、探偵は認められてへん。でも、調査員はOKや。信用は、小さなことからコツコツとや。」
「気ぃつけて。」
お決まりの文句で送り出された俺は、阿倍野署に到着した。
玄関受付で申し出て、担当の刑事を呼んで貰う。
「間違いないですわ、。よう分からんけど、この柄のとこが特殊で、EITOでもなかなか再現出来へんらしいです。」
「成程ね。どうもご苦労様でした。」と刑事に丁寧に送り出されて、帰った。
帰ったら、熱燗とおでんが待っていた。
いや、熱燗とおでんを用意した澄子が待っていた。
こういう時は、事件の事を思って、なかなか寝付かない俺のことをよく知っているからや。
「やっぱり、もっと早く『養子縁組』した方がええかな?」
心の中で呟いた積もりが、声に出してしまった。
「ほな、本庄先生に頼んどいて。でも、ウチの体をカビだらけにせんといてな。今日は、ええけど。」
「ふん。」
やはり、倉持と門田さんのことで『進展』を見て、子供がが欲しくなったかな?
もう「高齢出産」は死語になりつつある。でも、澄子には多分無理や。セックスが強いことと、子供が出来ることは別」やねん。悔しいけれど。
もっと、早く出逢ってればナア。そんなん言うてもなあ。
藤島先生や辻先輩は、ワコに不倫せえ、と唆すけどなあ。
「蓼食う虫も好き好き」やな。いや、「あばたもえくぼ」かな?
明日は、遠出がないだけマシやな。
口コミで、『浮気相談』には向いている、という評判があるらしい。
最近は、泉南も和歌山も案件が増えてきた。
他府県は、ちょっと辛いな。
考え込んでいるウチ、うたた寝になった。
澄子は、力が強い。
布団敷いて、俺をお姫様抱っこして寝かすのも上手い。
許せよ、ワコ。俺には、恋女房がいるんや。
―完―