大文字伝子の冒険   作:クライングフリーマン

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「山並。アクシデントか。」
「あ、で・・・伝子様。」
高遠は吹き出した。『本音の言葉』が出たのだろう。
そこへ、店長とくるみがやってきた。



391.邂逅、山並郁夫。

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

愛宕[白藤]みちる・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。あつこと警察学校同期。警視庁丸髷署からのEITO出向。警部補。

 

愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。

 

藤井康子・・・伝子マンションの区切り隣に住む。元料理教室経営者。

大文字綾子・・・伝子の母。介護士。

山並郁夫・・・闇サイトハンターと名乗っている。EITO協力者。

高峰圭二・・・元刑事。今は警備会社警備員。EITO協力者。

高峰くるみ・・・みちるの姉。高峰の妻。スーパー繁栄に勤める。

山田店長・・・スーパー繁栄店長。

 

=================================================

==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 

午後1時。スーパー繁栄。

伝子は、高遠と久しぶりに、高峰くるみの勤めるスーパーに来ていた。

「だから、ちりめんじゃことは違うんだよ、釜揚げしらすは。無ければ別にいいんだよ。」

どこかの婆さんに手を焼いている男がいた。

どこかで聞いた声だ。

「山並。アクシデントか。」

「あ、で・・・伝子様。」

高遠は吹き出した。『本音の言葉』が出たのだろう。

そこへ、店長とくるみがやってきた。

くるみが要領よく聞き出すと、店内用電話で売り場の係に確認した。

すぐに、売り場主任がワゴンに乗せた『釜揚げしらす』を持って陳列した。

「同じじゃないの。」

「いいえ、違います。」売り場主任は簡単に説明した。

婆さんは、忌々しげに方々を睨んで、どこかへ行った。

事件は完結ではなく、発端だった。

「この際だ。少し話をしよう。立ち話もなんだな。」

「伝子、隣の、新しいファミレスにしようよ。お昼時じゃないから、空いてるよ、きっと。」と、高遠が提案し、山並が了解した。

山並が『持ち帰り用氷』を精算済みの、『釜揚げしらす』の入ったレジ袋に詰めていると、くるみと店長がやってきた。

「これ、余っているので使って下さい。」と、くるみが差し出したのは発泡スチロール製の小さなクーラーボックスだった。

山並が入れ替え作業をするのを、くるみが手伝った。

「大文字様。配達の時でも良かったんですが・・・。」と、店長は高遠に『お歳暮』のパンフレットを渡した。

「ああ。もう10月ですものね。検討します。」と、高遠は受け取った。

店長とくる見送られて、3人は、ファミレスに移動した。

ボックス席に着き、注文を終えると、伝子は山並に頭を下げた。

「いつも、ありがとう。皆も感謝している。」

「いえいえ。微力ですから、黒子ですから。」

「そこでだ。昨日の、大阪支部のことは、もう知ってるな。」

「世間的には、どこかに密かに引っ越して、違う会社のビルが建設に入ったとか。でも、内情は・・・潜った。前から用意してあったんですか?」

「私達も知らなかった。お前と知り合う前のことだが、東京本部が爆破されたことがあった。それで、引っ越した、世間的には。詰まり、そういう経緯があったから、あそこに引っ越す際に、『空間』は作ってあった。今回は、『家財道具』のみの引っ越しだ。不審な点があったから、徹底的に調査したら、時限式でない爆発物が4個見つかった。で、様子を見に来たところを一網打尽。解体工事が始まったから、慌てたんだろう。」

「その組織は、以前民泊を装っていた組織が動物園の動物を『誘拐』したことで、大阪支部が芋づる式で逮捕した。今回は、その『報復』が目的だったらしいんだが、何か情報ない?」と、高遠が尋ねた。

「今、分かっていることは、日本の企業買収、いや、乗っ取りの斡旋組織があるらしい、ってことです。関わりを持つようになったので大阪支部の事件も勉強しました。大阪では何度か、乗っ取られそうになった業界が幾つかあって、大阪支部が事件解決を通して潰したようですね。その、斡旋組織のことを知って、成程な、と思いました。大阪支部の土地、全国で買収されている土地同様、狙われていたようです。詰まり、報復だけじゃなかったんです。」

「その斡旋組織の名前は?」「分かりません。黒幕の黒幕の黒幕とかがいるのかも。その斡旋形態は、『ブラックナイト』と言っているようですが。」

2人の会話に高遠が割り込もうとした時、注文したものが届いた。

「ご注文は、以上でよろしいでしょうか?」

伝子が頷くと、ウェイトレスは去って行った。

高遠と山並はコーヒー。伝子は、紅茶と『背の高い』パフェだった。

山並は、目を剝いた。

「伝子様。カロリー高いですね。」

伝子が反論する前に、高遠が、「『ブラックナイト』って『ホワイトナイト』の逆ってことだよね。銀座や歌舞伎町の店が、どこかに乗っ取られたって話は聞いているけど、ダークレインボウとは?」と山並に尋ねた。

「無関係、と見ていいと思います。今のところは。ダークレインボウは、『兵隊』を集める組織と連携しているようですが。」

「だから、兵力がバラバラなのか、いつも。映画やアニメみたいに『一大帝国』式の組織じゃないんだ。それに、『木』が一本じゃないって言ってた『枝』もいたしなあ。」

伝子が感心すると、「すると、また『ブラックナイト』が受注して暗躍するかも知れないんだね。」と、高遠が纏めた。

 

午後4時半。スーパー繁栄。駐車場。

パトカーが数台、店の周りに駐まっている。

高峰がやってきた。

「今、捕り物がありましてね。お客さんの一人が刺されたんです。どっかのババアに。私が『確保』して、本部から警察に通報、今、捜査員に連行されました。どうやら、那珂国人のババアらしいんです。くるみの話じゃ大文字さん達と関わりがあったとか。」

伝子達は、目を合せた。

山並が、バイクに走って行った。

「良かった、無事か。」

「あんたと間違えて刺したのかもね、『ちりめんじゃこナンダヨ』って叫んでいたから。」と、愛宕がやってきて言った。

「幸い、先輩のクルマも無事でした。やっぱり民族性かナア。すぐカッとなり、間違いは認めない。」

伝子達と山並は、大きく頷いた。

 

午後5時半。伝子のマンション。

愛宕は、誘われてやってきて、一緒におでんを食べている。

「釜揚げしらすは、釜でゆでた後、水分をほとんど乾燥させずに仕上げたもの、ちりめんじゃこは、釜揚げしらすをさらに天日干しなどで乾燥させ、水分量を5割以下にしたもの。釜揚げしらすとちりめんじゃこの違いは、乾燥の度合いと水分量です。どちらもイワシの稚魚(しらす)を原料としますが、釜ゆでしただけの「釜揚げしらす」は柔らかく、その後さらに乾燥させた「ちりめんじゃこ」は固く、うま味が凝縮されています。水分量が多いと鮮度が長持ちせず、少ないと日持ちする傾向があります。」

藤井の解説に皆が納得した。

「明日、釜揚げしらすの焼き込みご飯にしましょうよ、お義母さん。」

「気が利くわね、婿殿。でも、山並さん、そういうのが好みだったのね、ハンターだから、肉食かと思ったら。」

愛宕のスマホが鳴動した。「あなた。どこで浮気してるの?」

「女房焼くほど、亭主もてもせず。『おねえさま』の所で夕飯を頂いている。今夜、当番だから、署に帰るよ。」

「おねえさまだったら、浮気してもいいけどね。了解。」

 

午後11時。伝子の寝室。

高遠に馬乗りになった伝子に高遠は、「あ。」と言った。

「何?」

「案外、あの婆さんみたいな人がブラックナイトの親分だったりして。」

「それ、お前の小説のネタ、だろ?」「ばれたか。」

 

予想通り、伝子は高遠を眠らせなかった。

高遠は、覚悟していた。

 

―完―

 

 

 

 




くるみが要領よく聞き出すと、店内用電話で売り場の係に確認した。
すぐに、売り場主任がワゴンに乗せた『釜揚げしらす』を持って陳列した。
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