一度ヤった後の物語   作:すっごい性癖

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前話が短い癖に投稿に時間がかかったのは偏にどこまでがセーフかビビッてたからです

正直、R18で書いた方が早いな、と思いました


修学旅行

修学旅行。

 

 

修学の名を冠する通り、あくまで遊びでは無く、勉学の一環として行う学校イベント。

 

 

京都へと向かえばその情緒ある歴史を学び、沖縄へと向かえば色濃く残された戦争の爪痕を識る。

 

 

他にも様々な行先がその行先へと修学しに行く意義とともに唱えられては決定されることとなる本イベント。

 

 

しかし、実際のところ修学の意義など形骸化しているところも多く、近年では学校生活3年間イチバンのイベント、青春の申し子、といった扱いを受け、特に大した理由なく観光地や都市部への旅行を決定する学校も出てきている。

 

 

それ自体にとやかく言うつもりはない。むしろ、そちらの方が好ましいとさえ思う。

 

 

だって、旅先での学習が形骸化するほど、その旅先での拘束時間も減りつつあるから。

 

言ってしまえば、自由行動時間の増加のこと。班になってお寺を調べよう、とかそんな感じの学習のために態々寺に出向く時間など、割きたくはないのだ。一学生の本音として。

 

 

学生の割ける労力としては、回った観光地や買ったお土産と歴史的な何かをなんとか結び付けてA4の紙1,2枚分くらいの文量にでっちあげる。それくらいが上限だ。

 

 

 

 

現在、私は修学旅行の真っただ中。行先は京都。歴史と伝統の町。

 

 

 

時代の移ろいで増えつつある自由時間、その最中であった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ザーっ、と強く、打ち付けるように雨が降る。

 

 

 

時刻は午後2時。夕方4時頃に合流、と班員とは別れ、1人ゆったりと京都の街を練り歩き。手にはそこらの店で購入した和傘を。

 

 

気分は一人、昔人。

 

 

他のクラスメイトにとってこの雨は、自身たちの計画の邪魔をする天敵であるかもしれないが、今の私にとっては気分を高めてくれるだけ。

 

1人ゆったりと傘をさし、町中を練り歩く。そんな自分に、ある種酔ってしまえるこの状況が、すごく心地いい。

 

 

 

 

雨粒が地を打ち、柳の葉を打ち、傘を打つ。

 

 

 

そのリズムに耳を傾けて無意識に歩みを続ければ、気が付いたころには長い距離を進んでいる。このまま、町の端まで行けるのではないか、と、土台無理な話だが、そんな風なことを考えるくらいに前へ、前へ。

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

しばらく進むと、柳の下に一つ人影を見付けた。柳の木の下、1人座り込んている。

 

 

少し近づいてみると、その人影は私と同い年、もしくはもう少し幼い少女であることに気が付いた。

 

 

毛先を真っ赤に染め、服も破けている部分が多い、いわゆるダメージ系統のモノ。俯いていて、顔は良く見えない。

 

パッと見、遊んでいそう、というか、ヤンチャそうな印象を受ける風貌で、こんな雨の中座り込んでいるなんて信じがたい光景だ。まぁ、どんな人であろうと雨の中外で座り込んでいる、なんて信じがたいが。

 

 

 

私は厄介ごとに巻き込まれたくはない、と、その場から急いで立ち去ろうとする。

 

 

が、

 

 

 

「……あ」

 

 

 

 

眼が、あった。

 

 

 

座り込み、下げられていた顔がパッと上げられ、その視界に捕まったのだ。

 

 

真っ赤な、真っ赤な、ルビーの様な瞳が2つ。真っすぐこちらをジッと見つめてくる。

 

 

 

私は、まるで蜘蛛の糸に絡まったかのようにその場から動けずにいた。

 

 

 

「……あ、あぁ」

 

 

 

ゆっくりと彼女は立ち上がる。雨で滑り、ズルリと転びかけても、再度立ち上がり。

 

 

そのままよろよろとこちらに近づいてくる。雨に濡れることなど気にも留めず、まっすぐ、只管に。

 

 

そして私は一切動けない。彼女がどんなにゆっくりな移動でも、こちらの変位は0のまま。

 

当然、長い時間を掛ければ彼女も私の前までやってくる。

 

 

それでも、動けない。動かない。

 

 

 

 

私は彼女の立ち上がったその様相に魅了されてしまったのだ。その異常な格好に。

 

 

 

染めたと思った毛先の赤は、頬や額、果てや服にまでべっとりと。傷ついた服はダメージ加工なんかでは無く、その先からは真っ赤な線がのぞき見える。右手の先には、ギラリと鈍い銀が輝く。

 

 

 

 

 

まるで、物語から取り出してきた殺人鬼の様。

 

 

 

 

「……あ、ぁあ」

 

 

 

まるで、全身を稲妻が撃ち抜いたかのような衝撃だった。脳みそは白く痺れ果て、身体は痙攣し、足先は不安定だ。

 

 

ごぽり、と身体の奥から何かが零れる。

 

 

彼女は、そんな私の変化に気が付いていないのか、初めて人の言葉を用いて話し出した。

 

 

 

「――私、その」

 

 

 

 

 

「お父さんを、殺してしまって……」

 

 

 

 

(あぁ、ダメだ。これは……)

 

 

 

ごぽり、と再度体の奥からあふれ出る。

 

 

 

 

「行く先が無いんです。助けてください……」

 

 

 

そう話す彼女は不安げに揺れている。

 

 

 

だけどその不安は通報だとか、殺人だとか、そう言ったものから来ているのではない。見ればわかる。

 

 

彼女が不安に思っていることは、シンプルに行先が無いこと。このまま雨を浴びていたら風邪をひいてしまいそうなこと。食べるものが無いから飢えてしまうこと。

 

 

そんな、生存への不安しか感じていない。

 

 

そもそも、殺人とかへの不安があるのなら、こんな風に凶器なんて見せてこないし、話し始めも『人を殺した』ではなく、『○○されたから……』から入るべきなのだ。○○はなんだっていいし、嘘でもいい。虐待されていたから、先に手を出されたから、そもそも偶然。

 

 

でも、彼女はその一切を捨てて、いや、そもそも持つことすらせず、この場にいる。

 

 

 

本当の狂人だ。

 

 

 

彼女の弁をすべて信じるのなら、彼女は自身の父を殺し、行先を失いココに一人座っていた。そして、偶然通りかかった私に声をかけ、一切隠し事せず、助けてほしいと乞うている。

 

 

普通の価値観があっては出来ない行動だ。

 

 

私の価値観では、まったくもって予想できない行動。

 

 

 

 

(こんな熱、今の私にあったなんて……)

 

 

 

ごぽり、ともはや誤魔化せないほどの量の欲が身体の奥深くから沸いて出てくる。

 

 

 

 

頭は色に染まり、下腹部は疼き、身体は熱を持ち始めた。こんな感覚、生まれ変わって初めて。いや、そんな着飾ったような言い方は適切ではない。湧き出ている物は根源的な欲、俗そのもの。ふさわしいのは、自身の心を隠すことなくいい指す言葉。

 

 

 

包み隠さずに言うのなら、興奮が抑えられない。すごく、ムラッと来てしまっているのだ。

 

 

そして、そんな彼女が行先を求めている。

 

 

 

「……行こうか」

 

 

ならば、することは決まっている。

 

 

私は彼女の右手を取って、外から重ね、傘の内に彼女を受け入れる。

 

 

近寄った瞬間、鼻に届いたのは酸っぱい血の臭い。重ねた右手は微かに緩められており、その先には確かに凶器の持ち手の存在を感じる。

 

 

そして、それらを感じ取った瞬間、私の熱はさらに渦巻いた。

 

 

 

 

 

――旅と言えば、火遊びだって付き物で。旅先にイイ女がいたから、抱いて帰る。これはたったそれだけの話だ。

 

 

 

 

 

 

4時頃の集合時刻に対し、合流したのはだいぶ後のこととなった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「……はぁ」

 

 

1人自室、ベッドの上で大きなため息を零す。

 

 

 

思い起こすのは旅先で偶然会った、異様な少女。

 

 

 

その異常性に惚れこみ、宿に連れ込んでそのまま愛し合った彼女のことが脳から離れない。

 

 

 

もっと彼女と話がしたかった。もっと彼女と触れ合いたかった。もっと彼女と愛し合いたかった。

 

 

 

だけど、ソレは出来ない。

 

 

旅先でしかなかった京の町の少女の住みかなど私にどうこうできる筈もないし、罪を犯した彼女を匿うことだって不可能。今頃きっと、警察に捕まってしまっている。

 

 

 

あぁ、逢いたい。

 

 

 

恋焦がれる乙女の感情とは、こういったものなのか。

 

 

 

捕まっていたとして、いつ再会できるだろう。

 

 

彼女は未成年だし、終身刑となる可能性は低い。出所するのは何年先か、何十年か。彼女が父親を殺害した理由を知らないから、どこら辺まで減刑されるのかわからないが、そう直ぐの話ではないだろう。そもそも、裁判だって年単位が必要だ。

 

 

 

「……はぁ」

 

 

 

そうして漏らす、再度のため息。

 

 

あの、未知の塊にもう一度会いたい。もう一度、もう一度……。

 

 

 

そんな風にしていると、

 

 

ピンポーン、と呼び鈴が鳴らされる。

 

 

現在家にいる人間は1人、私だけ。当然対応できるのも私だけ。

 

 

 

面倒だったが仕方が無いので、私は部屋を出て玄関に向かう。途中、『ブブブブッ』と、携帯が震え、何事だと目線を向ければ『咲良』と表記。彼女からの着信だ。

 

 

出ようか、とも思ったが現在進行形で呼び鈴が鳴らされている今、そうするわけにもいかない。ので、後で自分からかけなおそう。と一度拒否し、メッセージを送る。

 

 

『後で折り返し電話する』

 

 

すぐさまそのメッセージは既読となり、帰ってくるのは『絶対ですよ!』という言葉と、ウサギのスタンプ。

 

 

 

それらを確認し、再度玄関へと向かい扉を開く。

 

 

「はい……、どなた――、ッ?!」

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ、来ちゃった……」

 

 

 

その日、私が折り返し連絡することはなかった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

〈おまけ的なQ&A〉

 

 

「なっ、なんで……」

 

 

 

「学生証、盗って……それ見てきたの。学校前で張り込んでいれば、後は後ろから着けるだけで家は分かるよ?」

 

 

 

 

「いったいどうやってココまで、警察は?!」

 

 

 

「顔出さないようにして徒歩で来たんだ。山とか一杯登ったの、綺麗だったよ?警察は何も?山とか人いなかったし、バレなかったのかな?」

 

 

 

 

「そもそもどうやって生きてるの!?」

 

 

 

「今は近くの山に住んでるの。動物とかを狩ったり、木の実とかとったりして食べてる。美味しいよ?」




次回、(ほぼ)最終回
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