一度ヤった後の物語   作:すっごい性癖

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いわば表の最終回です


がめおべら

最近先輩がそっけない。

 

 

私が連絡しても返してくれないどころか、見てもくれないことも多いし、何を話しかけても返事は適当だ。

 

 

多分、修学旅行から帰ってきた当たりからどこかよそよそしい気がする。なんというか、避けていると言うよりは、こちらを気にしていない、とか。そんな感じ。

 

 

旅先で何かあったのだろうか。

 

 

そんなことを思いながら、いつもの場所、『図書室』へと足を向ける。

 

 

どこか上の空というか、心ここにあらずな先輩だけど、それでもこの場所に何時でも居てくれるから。私のそばに、居てくれるから。

 

 

 

 

先輩のことを思うだけで心が弾む、足取りが軽くなる。

 

 

彼女がこちらにあまり興味を向けてくれないのなら、どういった話をすればこちらに気を向けてくれるのか、とそう考えて一歩ずつ。

 

 

だって、言ってくれたのだ。

 

 

彼女は私を愛してくれると、そばに居てくれると、私を優先してくれると。

 

 

 

 

初めの頃は拗らせて、反発的だった私だけど。

 

 

 

最近は、自分の心が落ち着いてきているのを感じている。すごく、安定している状態。先輩という太い一本の柱に支えられている私は、今日も強く生きていれる。

 

 

 

昔から男の子以外を好きになる、なんてこと、無いと思ってたけど。

 

 

 

 

でも……。

 

 

 

 

「~~♪」

 

 

 

気分が高揚する。テンションが高まる。思考は天へと昇り出す。

 

 

 

 

 

「先輩、来ましたよ!」

 

 

 

ガララッ、と大きな音を立てて図書室の扉を開く。これからの期待を胸に、勢いを込めて。

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

しかして結果は梨の礫。

 

 

 

 

図書室には誰もいなかった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「先輩、どうしたんだろ?風邪でもひいたのかな?」

 

 

1人そんな風なことを呟きながら、帰り道を行く。

 

 

彼女との奇妙な交わりを始めて数か月。こんなことは初めてだった。

 

 

度々学校行事かなんかの関係で集まれないことはあったが、その時は前日までに連絡はあったし、こんな風に一切音沙汰なく居なかった、なんてのは初めてだ。

 

 

だから、風邪でもひいて学校自体を休んでいるのでは、と思ったわけだが。

 

 

「先輩、連絡返してくれないからなぁ……」

 

 

ただでさえ早くない連絡ペースの彼女なのに、最近の先輩はソレに輪をかけて連絡をしてくれないし、返信も遅い。

 

 

学校を出るときに『今日、図書室居ないみたいでしたけど……』と、メッセージを送っては見たが、ソレは未だに既読にならず。

 

 

なんだか心配だ。

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

そんな風に考えこみながら帰り道を歩いていると、ふっ、となんだか見慣れた人影を見かけた気がする。

 

 

 

背が高くて、ピアスをしていて、毛先も染めていて……。

 

 

 

私のタイプドンピシャな、そんな人。

 

 

 

 

「先輩……?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

(……どこ、ココ?)

 

 

 

街中で先輩らしき人影を見付け、そのまま追い続けて30分。

 

 

その時間の間に、らしきは消え失せ、先輩だという確信が生じた。

 

 

ならばなんで声をかけないのか。

 

 

それは……

 

 

(なんか、様子が変……)

 

 

 

やけにテンションが高いというか、楽し気というか。

 

先ほどちらりと見えた顔は確かに、先輩のもの。だけどその表情は見たこともない、別のモノ。

 

あんな口角が上がった満面の笑みなんて、私は見たことが無い。

 

 

 

だから、気になったのだ。なんで先輩はあんなに上機嫌なのか。もし分かれば、最近そっけない先輩の気が引けるかもしれない。そう思って。

 

 

 

だからつかず離れずの距離で後ろから追いかけている訳だが……。

 

 

 

(歩きにくい……)

 

 

 

街中から山方へ。道はアスファルトで整備されたモノから、土と石がランダムに敷き詰められた天然の道に。道脇を飾っていた整えられた花たちは、伸びに伸び果てた脚に絡みつく雑草へ。

 

そんな風へと転じている。

 

 

街並みの喧騒は今や遠く、今は虫の鳴き声の方がうるさい。

 

 

 

本当に、彼女が今、どこを目指しているのか皆目見当がつかない道だ。

 

 

(……ま、まだなの?)

 

 

 

 

さらに歩くこと20分。

 

 

もはや山寄りというより、完璧に山、森の中である。四方見渡しても、木、木、木。上を見れば、大きな月が輝いている。

 

 

 

もうこれでかれこれ一時間弱歩いていることになる。もう、脚が棒のようだ。息も次第に速く、浅くなってきた。

 

 

もう、これ以上は……。

 

 

そんな風に考えていると、

 

 

 

(……?)

 

 

 

前を歩く先輩、さらにその前の方が何だか明るい。

 

 

赤というか、橙というか。そんな感じの、暖かな光。

 

 

もはや秋は終わり、冬が始まりつつある最近。気温は下がり続け、日が落ちるのは早いのでひと際その光は際立っている。

 

 

 

 

 

(……火?)

 

 

 

さらに歩みを進めると、次第に、パチ、パチ、と乾いた弾ける音が耳に届く。

 

 

それは何時頃だったか。精神が不安定だったころによく聞いていた、薪の燃ゆる音にそっくりだ。

 

 

 

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

その光に気をとらわれ過ぎたのか。気が付けば目の前にいた先輩はどこかへと消えてしまっていた。

 

 

 

だけど、ココで帰るわけにもいかない。

 

見失ったから帰りました、なんてコレまでの一時間が無駄になる。

 

 

 

きっと先輩は、あの光の方へ向かっていったのだろう。だって、ただでさえだだっ広い森の中を迷うことなく真っすぐ進んでいた先輩の行先の途中に、偶然火が熾されていた、なんてそんな偶然、あるはずがない。

 

 

きっと、先輩はあの光の向こうにいるはずだ。

 

 

 

そう自信を奮い立たせ、今度は先輩の先導なく真っ暗な森の中を歩き進める。

 

 

行先は、あの小さな明かり。

 

 

 

少しずつ、少しずつ。

 

 

きっと先輩が、その場所にいるのだと願って。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

「………」

 

 

 

 

 

話し声が聞こえる。

 

 

 

とても、楽しそうな話声。

 

 

 

 

何を話しているのかはわからない。聞き取れるのは言葉の端々だけで。でも、その端々の音程の高さ、速さ、弾ませ方が声の主の心情を表している。

 

 

 

 

瞬間、

 

 

(人違い?)

 

 

 

そう、心の中で疑問に思う。

 

 

先ほどまで追いかけていたのは確かに先輩、その人ではあった。

 

 

だけど、こんな楽しそうに話す人ではないのだ。

 

 

こんな、言葉の端々に歓喜を乗せるような人では、決して……。

 

 

 

 

しかし、そんな私の心とは裏腹に、一歩、一歩と近づくたびに声は明瞭となり、その主も確定していく。

 

 

あぁ、先輩の声だ。

 

 

 

話し方こそ私の知らないものだけど、あの低音気味の、ハスキーな声は先輩だ。聞き間違えるはずがない。

 

 

 

 

そして、その声にはもう一つ別の知らない声が重ねられている。

 

 

酷く甘く、そしてどこか底冷えするような不思議な声。

 

 

イメージで言ったらたっぷりのチョコでコーティングされた、研がれたナイフ。アンバランスな組み合わせだが、ソレが最適。

 

高温で溶かされたチョコが、もったりとナイフの刃の上に延々と流しかけられているような、そんな声なのだ。

 

 

 

心臓の鼓動が速くなる。

 

 

誰だ、この声の主は。なんなのだ、先輩のあの様子は。どうして、こんな山の奥で。

 

 

 

疑問に疑問を重ねられた脳はパニック寸前で、歩幅を自然と早めだす。壊れた機械のように、どんどんどんどん加速する。

 

 

やがてそんな無理な挙動がたたり、身体は前へと倒れ込んだ。

 

幸い、音を立てることにはならなかった。山の硬い地面は転落の勢いを、音よりも衝撃で返還する。

 

 

 

「いてて……」

 

 

 

顔を擦りむいたのか、ヒリヒリする。

 

 

足を打ったのか上手く立てない。

 

 

そもそも先ほどまでずっと歩いていて疲弊した体は、重力に逆らうことができやしない。

 

 

 

 

私に出来ることはたった一つ。顔を前に向けるだけ。

 

 

もしかしたら、先輩の姿が見えるのではないか。と、そう願って。

 

 

 

 

 

 

 

――誰だ、アレは……

 

 

天に昇っていた自意識が、地に堕ちた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

私の知っている先輩は、何事に受け身な態勢で……

 

        ――彼女は自身から、貪るように唇を重ねていた。

 

私の知っている先輩は、そういう欲はあまり強くなくて……

 

        ――彼女は熱に浮かされてたかのように、色に耽っていた。

 

私の知っている先輩は、ちょっと冷めたような瞳が素敵で

 

        ――彼女はじっと、恋する乙女のように相手を見つめていた。

 

 

 

 

 

私の知っている先輩は、私にやさしくて、支えてくれて、それで、それで……

 

 

 

 

 

 

私の知っている先輩は、私の知っていpになせんーπは、私のしhpんぱふぃいっふぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は先輩の何を知っていたの?

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ふぅ……」

 

 

 

真っ暗闇の中、森から街へと向かいだす。

 

 

 

すっかり彼女に惚れこんでしまった私は、こうして毎日彼女の住みかに通い続けている。

 

 

一応昨日までは咲良と別れた後向かっていたわけだけど。その時間がもったいないと思って今日はそのまま、授業が終わったら直行してきたわけだ。

 

 

そして、学校から向かうこと一時間。時間にして5時半頃に合流した私たちは、そのまま森の中、薪を横にまるでサルのように盛りあっていたわけだ。

 

 

 

正直、自分でも驚いている。

 

 

今世のこの身体は、そういった欲求は薄い、と。そう思っていた。実際、咲良と何度もそういった行為はしたわけだが、特段自身の欲が刺激されることも無ければ、こう、彼女を求めて止まない、なんてことも無かった。

 

 

 

だけど、彼女と出会ってそれは全くの間違いだと気づかされた。

 

 

彼女を思うだけで身体が火照る、彼女を見るだけで意識が飛ぶ、彼女に触られるだけで身体は弛緩する。

 

 

まさに腰砕けの状態で、彼女の前では発情期を迎えた動物のように縋ることしかできない。

 

 

 

 

もはや、彼女と会うことは、彼女に食べられることと同義と化していた。

 

 

 

当然今夜も彼女に隅々まで食べあげられ、いまだその感覚は深く残っている。

 

 

意識すれば、彼女の小さな手が触れた性感帯や、重ね合った唇、噛み傷をつけてもらった首の辺りなどがジンジンと甘い快感を送ってやまない。本当に、思い起こすだけで達してしまいそうだ。

 

 

 

 

ああ、なんて幸せ。

 

 

 

帰ったら咲良に連絡しないと。もう、放課後には会えないって。

 

 

 

 

そんな時間があるのなら、私は一秒でも早く彼女に会いたい。触れたい。愛されたいし、愛したい。

 

 

 

 

こんな気持ち、生まれて初めてだ!!

 

 

 

「……ぱい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「よくも、裏切って……」

 

 

 

 

「……あ」

 

 

 

ガン、と急に後ろから引っ張られ、後ろに堕ちていく。

 

 

浮かれていた私はその存在に一切気が付いておらず、気が付いたのは倒されてから。

 

 

 

受け身はとれない。 さきほどまでの性行為で疲弊しきった体は、もはや上手く言うことを聞かない。

 

 

何かには掴まれない。 舞台は山の中、周りにあるのは草ばかり。

 

 

 

誰も、助けてくれない。 だって捨てたのは自分自身。

 

 

 

 

加速度的に勢いよく地面へと引き寄せられていく自身の頭部。

 

 

 

乗せられた最初の加速度を加算して、もはやそれは致命的。

 

 

 

誰かが知ってるそんな感覚。私が知ってる、堕ちる感覚。

 

 

 

 

 

 

 

「い、いやッ――」

 

 

 

口から漏れ出る悲鳴の声は、思い返せば今世初めての本音だったかもしれない。

 

 

前世で身に沁みついたこの感覚、このトラウマは私の心を一瞬で凍り付かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ――」

 

 

 




実は最初、感想欄でもよく話題になった通り、刺されて終わり、にしようかとも思ったんですけど、ソレをするとこの主人公は『キミに貫かれるのはコレで何度目かな?』とか、飄々としてしまいそうだったのでこんな感じに不意に亡くなって頂きました

1人だけいい空気を吸おうとしてはいけません
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