一度ヤった後の物語   作:すっごい性癖

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ハッピーエンドで終わると思っている方と、バッドエンドで終わると思っている方
何方が現在多いんでしょう

今回短めです


演劇の王子様

 

「おー……」

 

パチ、パチ、パチ、とゆっくりなリズムで拍手しながら感嘆の声を零す咲良。その目はキラキラと輝いていて、まるで幼子が宝石を見つめているかのよう。

 

実際、彼女にとっては宝石のように価値あるものとして映っているようで、しきりに、うんうん、と頷いている。まさに、『これだよこれ』、とでも言いたげな、後方理解者面という感じであった。

 

 

「思った以上に気に入ってくれたようだね?」

 

 

文化祭の出し物の演劇、その役割を余りものでイイ、と。そうくゆりに伝えたのが2週間前の話。

 

そう言っておけば村人Bとか、山の木Cとか辺りに勝手に配役されると思っていたのだが、現実はそう上手くもいかず、結構な人数からの推薦の元、劇中の王子役を承ることとなった。

 

 

なんでも曰く、イチバンその役にぴったりだったから、とのこと。

 

 

実際私は自身の顔立ちがそういう方面で整っていることを自覚しているので、言われれば「あぁ……」と納得はした。

 

去年までは髪を伸ばし、そう言った方面での打診などなかったからうっかりしていた。こんなこと、小学校ぶりだと思う。

 

 

正直、面倒なことこの上ないが、そうやって面倒くさがった結果がこれなので、甘んじて受け入れている。事実、自身のミスが原因なのだからしょうがないのだ。

 

 

と、そんな理由で予想に反しなかなかの大役を承ったのだ。

 

 

で、現在は……。

 

 

「動きづらいよ、これ」

 

 

完成した衣装の試着中。せっかくだから、と、製作陣の女子達に許可をもらい、こうして咲良の前でファッションショーを開催している。

 

ちなみに、後輩の子に見せに行きたいと言ったとき、最初は『本番まではダメ』、『壊れたらヤバい』と至極真っ当な反応を返された私だったが、耳元で『……ダメ、かな?』、と囁いたら一発でOKをいただけた。

 

ここ一月、咲良好みに改造している顔には自信があったのだが、それにプラスして、完成した王子風の衣装を身に纏った私は彼女たちの心の鉄壁を突き破るほどの破壊力を得たという訳だ。自分たちで作った衣装でノックアウトされている訳なので、一種の自爆である。

 

 

「まぁ、動き回る役柄じゃないから別に良いけどさ……」

 

 

着用者を華美に彩るための、まさに貴族の服は動きよりも飾りを優先しており、大体普段に比べ3割ほど関節の動きに支障が出ている。バンザイ、とかが難しいくらいのそんな阻害だ。

 

 

私の役は作中度々出ては、ヒロインに対する甘い言葉を紡ぐだけなので、見栄え重視、のほうが理にかなっているという訳だ。

 

 

「で、どうかな?君的に何点?」

 

 

「え、満点……」

 

 

彼女が相当気に入ってくれているようなので、点数を聞いてみた。すると、すぐさま帰ってきた100点という回答。

 

それは心からの言葉だったのか、ころり、とまるで口から転げ落ちるかのようにあっさりと出てきた。普段の彼女なら、もうちょっと言い渋りそうな回答だというのに。

 

 

本人もそんな自身の解答に驚いたのか、『?????』と、顔をハテナで染め上げて驚いている。

 

そんな彼女の様子がおかしくて、思わず笑ってしまう。

 

 

「っふ……、んふふふッ――」

 

 

「ちょっと、笑わないでくださいよ!今のはうっかり……」

 

 

「いやっ、ごめんごめんっ……。でも、いきなりだったから……、っふふ」

 

 

「もうっ!!」

 

 

 

結局、笑い止むのに5分経過してしまった。

 

 

「いや、ごめんね?ちょっと、珍しい反応だったからさ」

 

 

「もういいです……。私も変だったんで」

 

 

 

 

 

「でも先輩、王子様の衣装っていうのは分かりましたけどなんで黒基調なんです?普通そこは白でしょう?」

 

 

「なんかこっちの方が似合うって製作グループの子たちの意向らしい」

 

 

「えぇ?イイんです、それ?」

 

 

言ってしまえば、この衣装は彼女たちの趣味の結晶だ。作中の役回りよりも、自分たちの見たさ重視で製作されたわけだし。演劇の一員としてはどうかとも思う行動だけど。

 

まぁ、そのおかげで彼女たちをKOしてここに来ることができたわけだし、感謝しなければいけないかな?重ね重ねいうが、酷い自爆だと思うけど。

 

 

「まぁ、良いんじゃない?別に興行として行う訳じゃないし。文化祭の演し物なんて、一生に数回しかないんだ。むしろ趣味に全力投球しているほうが記憶に残っていいと思う。学校行事なんて所詮、そんなもんだし」

 

 

「身もふたもないこと言いますねぇ……。まぁ、私も学校行事ガチ勢じゃないんで、先輩の意見に賛成ですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、私はもう戻るよ。またね、バイバイ」

 

あくまで衣装のお披露目がメインだったので、用は終わったと、部屋を出る。

 

本番当日はこうしてゆっくりと衣装を見せることなんてできないだろうし、こうしてお披露目できてよかったよかった。彼女、かなり喜んでくれたみたいだし。

 

 

脳裏に浮かぶのは、先ほどの彼女の様相。にっこりと、楽しげに笑っていたあの姿。

 

 

…………。

 

 

(結構変わってきたな、彼女も)

 

 

彼女との奇妙な関わりが始まってそろそろ2か月。

 

最初の頃は抵抗感があったハグやキスも、今では抵抗なく受け入れるようになった。

 

 

私を歪めて、自身も歪めて。

 

 

彼女は少しずつ変わってきている。私という異物に適応して、それが普通であると、バランスを取れるように少しずつ、少しずつ。

 

 

揺れは小さく収まり、酷く安定した低準位。

 

 

最近は自身の性に悩むような発言も少ない。少なくとも私の前で言うことはなくなった。

 

 

良い傾向だ、と思う。

 

 

彼女にとって、私という存在が安定をもたらしていて、そして前ほど悩まなくて済むようになった。それは人間として完成に近づいているということ。個人として、きちんとした芯を持つようになっていっているということだから。

 

 

でも、

 

 

(……)

 

 

 

彼女は悩まなくなった。私を求めるようになった。行動の先が読めるようになった。何を言うか分かるようになった。

 

 

意外性はもう、どこにもない。

 

 

「………………」

 

 

きゅっ、と口の端をきつく結ぶ。

 

その言葉を零したら、もう元には戻れないから。

 

 




予定では文化祭、修学旅行、○○、完結、となっていますのでそれまでしばらくの間、お付き合いよろしくお願いします
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