キヴォトス D.U.近郊 シラトリ区立図書館へようこそ!   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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十冊目 犬のおまわりさんと探偵さん

 おはようございます。今日はイベントデーで忙しい図書館司書のヒジリです。

 

 早速の図書館解説で申し訳ないのですが、図書館のお仕事は貸出と資料の保存だけではありません。レファレンスも大事なお仕事ですし、他にも読書の楽しさを広めるという仕事もあります。今回はその楽しさを広めるお話をしましょうか。

 

 さて、では読書の楽しさを広める活動にはどのようなものがあるのか、ですが、例えば小中高、幼稚園に保育園と子供たちの居る所へ行ってするブックトークや読み聞かせ、新しく入ってきた資料やおススメの一冊を載せるチラシなどです。これは学校図書館でもしていますので、学生の皆さんは『図書館だより』的な名前の紙を配られたり、見かけたこととかありませんか?

 今回は、当館で行われたお話し会の一幕を見ていきましょう。

 

 

 

「私が、出ても大丈夫なのか?」

 

 開館前の図書館で不安そうにパタパタと尻尾を揺らしている大人の雰囲気を持った女の子。透き通るようなブロンドの頭頂部からにょっきり生えた耳からモフモフとした白い毛が出ているのが可愛さポイントですね。

 今日はD.U.を守ってくださるヴァルキューレ警察学校との合同イベント、読み聞かせ会があります。生活安全局の方を中心に数人の生徒さんが来てくださっています。

 

「カンナさん。自信を持ってください。大丈夫ですよ、とっておきの秘密兵器がありますから」

 

 乗馬などで騎手の不安は馬に伝わるという話がありますが、人間だって同じことです。相手が不安で落ち着かない様子なのに、安心できるのは対戦ゲームぐらいじゃないですか? 少なくとも医者や運転手が今にも死にそうですって顔してたら私は逃げたくなりますよ?

 

「そ、そうだな……それで、秘密兵器とやらは?」

「ふふふ、こちらです!」

 

 取り出したるは、大きめの本! タイトルは『名探偵ホームズ』ただし、その姿はワンちゃんです。俗に言う犬ホームズという奴です。犬のおまわりさんが犬のたんていさんのお話を読むとかなったら絶対面白いはず!!!

 ぶふっ、と私の背後で思わず噴き出した他の生徒さんの声が聞こえます。ですが、肝心のカンナさんはなんだか顔が青くなってますね。うーん、まるで注射される五秒前のワンちゃんみたいです。

 

「後で覚えておけよ、フブキ」

「ちょっ、なんで!?」

 

 数冊の絵本を盾に顔を隠すフブキさん。その盾のタイトルは『バムとケロのにちようび』王道の絵本ですね。

 当館は学園都市に身を置く図書館ですから、絵本や児童書はそれなりに備えているんですが、やっぱり王道を選ぶ利用者は多いですね。特に児童書や絵本は破損が多いので、予算限られる図書館では、王道や評価の確立された絵本を複数購入して新しいものはそこまで購入しないということもあります。正直、こればかりは何とも言い難いですね。図書館ごとに利用者層は微妙に違いますし、破損や汚損が多いのも事実ですので、よく手に取られるものは多く用意するのも一つの答えです。

 

「はいはい、喧嘩しても良いことはありませんよ? 読み聞かせを練習する時間は今も減ってるんですから」

 

 手を叩いてこちらに意識を向けてもらいます。読み聞かせは音読とは違います。音読は自分が読めればいいですが、読み聞かせで本を読んでいるのは、読み上げる人ではなく、それを眺めている子どもたちですので、子どもたちの反応を確かめながらしなければなりません。

 

「ということだから、局長もがんばってねぇ~」

 

 ひらひらと手を振ってフブキさんはすごい速さで去っていく。

 

「まて、本当にこれを読むのか?!」

「一応小学校高学年の担当にしていますし、一話読むだけでいいので……本当にダメなら、他のにしますよ? 自分で探してもいいですし。高学年の子は午後からなので、まだ選び直す時間もたっぷりありますよ?」

 

 今回のイベントは、午前中に幼稚園と小学校低学年、中学年の子たちを招いて、午後からは高学年という風にしていますので、一応時間は作れます。けれど、カンナさんは絵本の棚を何度か眺めたあと、再び名探偵ホームズを手に取りました。

 

「司書の方が私にこれを選んだということは、なにか深い意味があるのでしょう?」

「……あぅ───はい、その通りです」

 

 深い意味までは無かったのですが、意味自体はあるので頷きました。たまにはお茶目してもいいじゃないですか!

 さて、そんなことは置いておいて、カンナさんは、まず軽く読んでみることにしたようです。イベントで貸し切りのため、一般利用は休館日とさせていただきましたが、音読練習は会議室でしてもらうことになっています。読み聞かせ最中に他のお話の音読が聞こえて来ても良くないですからね。

 

 

 

 さて、時を押し流して、カンナさんの時間にまで進めましょう。

 読み聞かせ会の会場では大人しく子どもたちが待っています。登壇して、とりあえずペコリと頭を下げる。

 

「あっ、あー……公安局長の尾刃カンナだ。その、よろしく頼む」

 

 ぱちぱちと上がる拍手に、少し恥ずかしそうに顔を綻ばせたカンナさん。

 

「今からするお話は……ちょっと変わった犬の探偵のお話だ」

 

 表情の硬さは、まだまだあるけれど、ちゃんとお話は始まります。

 街中を車で走るホームズ、その頭上をプテラノドンの様な飛行機が飛んでいくシーン。手際よく盗んでいく教授と、その教授から盗んでいく子どものシーン。その子どもを追って教授が追いかけて来てのカーチェイス。ワクワクとドキドキの詰まった物語をカンナさん自身が楽しそうに読んでいる。でも、自分の気持ちをちゃんと抑えて、子どもたちの反応を見ながら進めている。

 採点するならば、百点満点で完璧です。

 

「これにておしまい……しかし、まだこの犬の探偵の話は続く、良かったら自分でも読んでみてくれ」

 

 最後にそう言って、犬のおまわりさんは締めくくりました。

 晴れ晴れとした笑顔には万雷の拍手が返ってきます。うーん、大成功!




というわけで、今日はヴァルキューレとお話し会のお話しでした。
犬のおまわりさんと犬の探偵さんがしたかっただけです。はい。

でもカンナって、絶対似合うと思う。
あと合歓垣も絶対絵本の読み聞かせとか似合う。

バムとケロのにちようびは……合歓垣にピッタリだと思ったので出しました。
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