キヴォトス D.U.近郊 シラトリ区立図書館へようこそ! 作:ぱる@鏡崎琴春夜
「少し、いいかしら」
「はい、何かお探しですか?」
ふわふわとした長い白髪と強そうな角を生やし、軍服チックな制服の生徒さんがカウンターにやってきました。
「その……『恋愛小説』を探してて、『大人の男性と少女の恋愛もの』とかがいいのだけれど……それと『依存気味』なのが」
「はい、分かりました。現在当館にあるか検索いたしますね」
白い頬に朱が差す。そして最後の条件はとっても小さい声でしたけど、ライブラリアン・イヤーは地獄耳! 小さいお喋りも聞き逃さない耳なのです。
さて、早速ですが、おすすめの一冊にご案内しましょう。
目指す先はYA書架、大人と子供の間にいる人たちに向けた本を集めた本棚です。ライトノベルはコッチに置いていることが多いですね。他だと進路や職業について書かれた本も置いてあります。それ以外だと、思春期ぐらいの人をメインターゲットにした本を置いてたりもします。
「これが、そうなの? ……随分物騒なタイトルね」
「そうですね、私もそう思います。でも多分これが一番綺麗な言い方だと、個人的には思いますよ」
お渡ししたのは、斜線堂有紀 著 『私が大好きな小説家を殺すまで』 当館では913.6の近代以降の小説に貼る分類を背表紙に持つ一冊です。
確かに物騒ですね。でも、実際に手にかけるわけじゃないので安心してください……いやまぁ、これも確かに手にかけると言えばそうなのですが。
「他にもありますが、どうしましょうか?」
「いえ、一番最初に思いついたのがこれなら、私の条件に一番合う本だったんでしょ? この本の貸出手続きしたいのだけれど、良いかしら?」
「はい、喜んで」
正直、『斜陽』なんかもいいかなとは思ったんですけど、もう読んでいそうだなと思ったので、こちらを勧めてみました。
あぁ、あらすじですよね、分かってます。
この本は、虐待家庭の少女と小説家の男性の共依存関係を描いた作品です。最初は順風かなと思いきや、小説家の男性が小説が書けなくなってしまった為に、その関係は変化していきます。
少女はゴーストライターとなって、彼を救おうとするのですが、しだいに……と言った具合で、尊敬と執着とは何か、愛って、信仰って、何なんだろうかって読んだ後に思う作品です。
同じ作者で、似た雰囲気の作品は多くあるので、皆様もよろしければ一冊、図書館でも本屋でも見かけたら手に取ってみて下さいね。
例えば、『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』とか、おススメですよ。死が近い大人の女性に振り回されながら、将来や家庭に不安を抱え今日を生きている男の子とか好きな人は好きなんじゃないでしょうか?
自分にできること、自分にして欲しいこと、理想と現実の結果に苦しむけれど、最後には自分のしたいことにたどり着けるかもしれないですね。