キヴォトス D.U.近郊 シラトリ区立図書館へようこそ!   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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二十一冊目 私の連なる系譜

 こんにちは、司書のヒジリです。暑い暑いと嘆きながらも頑張って日々を生きております。

 さて、小話というわけではありませんが、小説には一人称視点と三人称視点と呼ばれるものがありますよね。これ以外にも実はあるんです、

 それが、二人称小説。一人称と三人称があるんですから二人称があるのも当然ですよね?

 

 え、二人称ってどんな小説なのか? ですって? うーん、説明は難しいですね。とりあえず、私みたいなものかもしれません。

 

 

 


 

 

 

「その、司書さんは、何か好きな動画とかあるのか?」

 

 ある夏のことでした。夏は生徒さんの利用数も増えるので、職員休憩室にサオリさんを招き、一緒に過ごしていました。

 サオリさんは勉強の手を止めて、私に話題を振ります。

 

「好きな動画、ですか」

 

 勿論私も現代っ子ですから、動画配信サイトはよく見ます。ショートコントや大喜利系のものをクスクス笑いながら見たり、ゲーム実況をハラハラ手に汗握って眺めたり、ゲームでしたら、最近はRed Dead Redemption 2にはまっていますね。

 ですが、好きなと言われれば、一つ先に思いつくものがあります。

 

「『世界の奇書をゆっくり解説』という動画シリーズですね」

 

 サオリさんは、動画シリーズ名をそのまま繰り返して呟きました。

 

「・・・・・・奇書とは?」

 

「うーん、書いて字の通り、奇抜な本、奇妙な本のことですね。これが稀の方のだったら希少な本になります」

 

「そうなのか・・・・・・で、その奇書を解説する動画なのか?」

 

 私はそれに頷きます。投稿されているのはYouTubeとニコニコ動画ですね。特に好きなのは『台湾史』『農業生物学』『偉大なるパンジャンドラム』『ベティ・クロッカーのお料理ブック』『じゃがたら文』・・・・・・多いですね。まぁそれはともかく、笑いどころをきちんと作りながら、言葉選びが素敵で───あぁ、そういえば、あの本がありました。

 

「少し、待っててください」

 

 私は、総記、つまり0から始まる資料の書架に向かいます。前に図書館についての資料は分類が総記であるとお話ししたと思いますが、アレは01~で、今回はそのお隣の02~図書・書誌学です。

 

 抜き出したのは文庫本。表紙には天使からの言葉を熱心に書き取る老人の絵画が使われています。377ページの厚さは良くある文庫本の厚さでしょう。

 

 

 


 

 

 

「これは『奇書の世界史』です。さっき言った動画シリーズが本になったものですね」

 

 私はサオリさんに取ってきた書籍を渡します。

 

「・・・・・・そんなことがあるのか?」

 

 まぁ珍しいかなとは思うのですが、たまにあります。一種のノベライズというやつかもしれません。動画とはまた別の楽しみ方が出来るのがいいところかもしれません。コメントが流れてこないのは少し寂しいですけどね。

 

 サオリさんは勉強の手を止めて、本を開き始めました。

 

 内容は、動画の内容を分かりやすく文字に起こし、加筆修正したものになります。まぁ、出たのはしばらく前ですので、動画になっている初期のものが大半ですね。書き下ろしもありますので、動画で見ればいいか~派閥の人も気になるんじゃ無いですか?

 

「この『月世界旅行』の話、面白いな」

 

 短編集の良いところは、どこからでも読み始めることができるところですね。

 サオリさんが読み始めたのは番外編のようです。こちらも動画になっているものですね。ジュール・ベルヌの『月世界旅行』は、現実的に荒唐無稽をやる話なのですが、この番外編の肝は、その月世界に惹かれた───いえ、引かれた人たちの話でしょう。

 

「いいですよね、その回。つながりと憧れを感じる回です」

 

「あぁ、一冊の本が世界を切り開いて・・・・・・」

 

 

 


 

 

 

 しばらく内容についておしゃべりを続けました。

 例えば、遠くの土地の荒唐無稽な記述を語る『台湾誌』ですが、そんな不思議な書物は一つでなく、ジョン・マンデヴィルの『東方旅行記』なんてのもあります。こちらは動画の方では出てきませんけどね。

 

 そんなことを話していると、サオリさんは一つこんなことを口にしました。

 

「その、この語り口、司書さんの口調に少し似ているな?」

 

「うーん、確かにそうかもしれません。私、きっと影響を受けているでしょうし」

 

 ペラペラとページをめくるサオリさんの疑問はその通りです。実際、私がよく本を薦めるようになったのは、この動画を見てからですし・・・・・・まぁ、口調が似ているのは、解説するように述べているからかもしれませんけど。解説文はどうやっても似通いますからね。

 

「・・・・・・まぁ、勉強の息抜きにでもどうぞ。きっと知的好奇心を刺激するものですから」

 

 一番似ているのは、面白いものを広めたいという心かもしれません。

 




ここの読者さんなら見たことある方もいるんじゃないでしょうか。
私の好きな動画シリーズの一つです。

小説内で紹介したもの以外にも色々ありますし、ぜひ足を運んでみてください。
ニコニコの方がコメントで捕捉があったり、ネタがあったりで楽しいですよ。
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