キヴォトス D.U.近郊 シラトリ区立図書館へようこそ! 作:ぱる@鏡崎琴春夜
『恋愛とはいかなるものか、私はよく知らない。そのいかなるものであるかを、
こんにちは、司書のヒジリです。最近は忙しくしていてなかなかゆったり出来ていませんでしたが、やっと少し落ち着きました。
少し年を取ると夏休みの時期こそが忙しくなることを理解するんですよ・・・・・・。
いえ、夏休みの時期も宿題に追われたりで忙しくないと言えば嘘になりますが。
閑話休題。
今日はそんな夏休みの時期にあった一幕です。
「好きって何だと思う?」
「・・・・・・そうですね───心理学と哲学、もしくは占いにしますか?」
ふわふわとした白いくせっ毛のゲヘナ生徒さん。何度かご利用になられている方ですね。たしか、ゲヘナ学園の風紀委員長だったかな?
さて、図書館は知識を蓄え、それを広く一般に開く場所です。しかし、その膨大さ故に調べるお手伝いをする人。つまり司書が居るわけです。
そして、その調べるお手伝いがレファレンスサービスです。カウンターでの口頭以外にも、電話や文書で受け付けていますよ。
ですが、そのレファレンスサービスも幾つか出来ないことがあります。それは法律や医療相談のようなその分野の専門家が対応するべき質問───ただし、そういう機関と連携している場合もありますよ。図書館によって異なるので、なんとも言えませんが───
もしくは、個人のプライバシーに関わる質問もです。
宿題や課題の為の資料探しならば、お手伝いも出来ますが、答えを直接答えることは出来ません。
そして、人生相談のような、個人の判断が必要になる事柄も答えられません。
ですので、好きとは何かという質問も答えられないのです。
そのような内容が書かれた本の案内でしたら可能ですけどね。
「・・・・・・じゃあ、そういった資料をお願いするわ」
私は頷いて、資料を探しに行きました。
数冊の図書資料を持ってカウンターに戻ります。
小さくて白いお嬢さんは、それを受け取ると表紙を眺めます。内容は思春期の悩みを取り扱ったものや哲学、エッセイを選んでみました。
そして、一際目を惹いたのは、エッセイの『恋愛論』のようです。まぁ、タイトルがタイトルですからね。
「ありがとう、これ貸出手続きをお願いできるかしら?」
「はい、では、貸出カウンターへ」
さて、では説明に参りましょうか。
『恋愛論』は坂口安吾の作品です。坂口安吾は無頼派の一角であり、『堕落論』で有名な方ですね。『桜の森の満開の下』という作品も書いています。梶井基次郎の『桜の樹の下』と間違えちゃダメですよ(n敗)
とと、話がズレましたね。
エッセイというか、何かについて論ずる作品が多い坂口安吾ですが、恋愛に言及したのがこの本です。
恋愛というのは、西洋語の翻訳から生まれた言葉であり、日本の文化ではニュアンスが違うということから始まり、日本語への不安と雰囲気的すぎという批判に続きます。
次に、恋愛が一時の幻であり必ず冷めるものと主張します。けれど、この教訓は失敗すると分かっていても、してしまうタイプの教訓だと述べています。
勿論此処から論はさらに続くのですが、全部言ってしまうのも面白くなく───いえ、よく分からなくて匙を投げたわけじゃ無いですよ? ただ・・・・・・私好みではありませんでした。
しかし、考え方というのは人によって変わるものですし、時間や経験によっても変わります。
なら、誰かの考えには合致するかもしれませんし、何かのきっかけになるかもしれません。
そうですね、内容自体は好みじゃありませんでしたが・・・・・・最後のところは、気に入った言葉もあります。
いかに退屈であろうとも、この外に花はない』