キヴォトス D.U.近郊 シラトリ区立図書館へようこそ! 作:ぱる@鏡崎琴春夜
似てるかと言われるとそんなに似てない……
あっ、ここ好きとか評価とかあると嬉しいです
え~、世の中、様々な警察を扱った作品があります。休日のお昼にはよく相棒を眺めたものです。
しかし、うーん、刑事ドラマにはある欠点があるんですねぇ。
それは、大御所俳優が犯人だとわかってしまうことです。犯人を当てる楽しみが、減ってしまう。推理小説で例えるなら、登場人物一人だけ太字で名前が書かれているようなものです。
しかし、それを逆手にとって解決したドラマがあって───
「警察官が主役の小説ですか?」
今日の利用者は中務キリノさん。ヴァルキューレ警察学校の生徒さんですね。
さて、警察主役の小説もいっぱいあります。推理小説はもちろんですし、怪奇小説なんかでも出番はあります。堅い職業なので逆にギャグへ舵を切ったものもあり・・・・・・近代文学でも『夜行巡査』のように警察の人が主役の作品があります。
「はい、できれば推理小説だとうれしいのですが・・・・・・」
ポリポリと頬をかくキリノさん、これはまだ言いたいことが残ってる予感です。
「推理小説はいっぱいありますね。『相棒』とか『新宿鮫』とか・・・・・・あぁ、そうそう『十津川警部シリーズ』は代表的ですよね」
と、日本の小説ばかり紹介しましたが、海外の小説ももちろんありますよ。
ぱっと出てくるのは『ジュール・メグレ警部』や『刑事コロンボ』ですかね。
「どうします? 一巻ずつ試し読みして見ますか?」
図書館というのは、無料で本と出会える場所ですから、お酒の試飲のように、味わいをそれぞれ確かめることだって無料でできます。
いえ、気に入りましたら買ってくださると出版業界も喜んでくれますので、是非そうしてほしいですが・・・・・・。
「えっと───それでは、その『十津川警部シリーズ』と『相棒』・・・・・・それと、司書さんのおすすめが一冊が聞きたいです!」
私のおすすめ・・・・・・『十津川警部』も『相棒』も割と王道な雰囲気のものですし、同じような物を選ぶと却って飽きが来てしまうかも?
というところで、チラリとキリノさんを見ると、何かに期待しているような、眼の底にキラキラしているものがあります。
これは、試されているというところでしょうね。
口直しというか味変というか・・・・・・そういう一風変わったもので不意を突いてほしい感じと、推察します。
うーん、ならばアレを出しましょうか。
「───お待たせしました。こちら警察小説アソートパック・・・・・・もとい、私の選んだ一冊と先ほどの警察小説たちです」
と、いくらかの文庫本とともに、一冊ハードカバーを差し出します。
ほとんど黒の表紙には白黒写真の男性が浮かび、その上に作者名とタイトルがあります。
「古畑───任三郎?」
「そう任三郎です。書名は『古畑任三郎 殺人事件ファイル』が正しいですね」
皆様の中にも名前を知っている方、見たことある方はきっといらっしゃいますよね。
テレビ放送で見た方がほとんどだと思いますが、実はノベライズしてたんですよ。
「───例えば、ネタバレが怖いと思ったことありますか?」
キリノさんはコクンと頷きました。
ふふふ、そうですよね推理小説のネタバレとか特に怖いですよね。
「だったら、コレおすすめですよ」
この小説は、犯人視点で進みます。倒叙ミステリーというやつですね。
犯人がはじめからわかっている訳ですが、それを探偵役がどう追い詰めるのかが肝になっています。
次々と粗を見つけてねちっこく突っついてくる古畑の恐ろしいことウザったらしいこと・・・・・・主人公に言う言葉では無いですね。
元から個性豊かな犯人たちですから、その彼らの視点で見る事件も面白いですよ。
ドラマの方はもちろん古畑側がほとんどですから、犯人の内心は犯行シーンや自供シーンしかありません。
犯行シーンだってベラベラ喋るわけにもいきませんし、実質内心を喋れるのは自供シーンだけですが、小説版は視点が犯人!
つまり、劇中このように考えていたんだな、というのがよくわかるんです。
ですから、テレビで見たし・・・・・・という人でも、楽しめますよ。
というわけで、キリノさんはアソートパックを借りられて、退館なさいました。
私のおすすめを聞いてきたのは、多分カンナさんの時を知っていたからですかね。
きっと合うものを出してくれるという、期待に応えられたら幸いなのですが……
語り手は、古畑───いえ、花鏡ヒジリでした。