キヴォトス D.U.近郊 シラトリ区立図書館へようこそ! 作:ぱる@鏡崎琴春夜
はい、皆さんこんにちは、司書のヒジリです。
ギリギリ過ごしやすい気温になってきたかと騙されそうになる日々が続きますね。
でも、ようやく朝涼しい時間がちょっと実感できるようになりました。九月後半ですけど。
秋というものはいいですよね。読書の秋、旅行の秋……行楽シーズンというやつです。
もちろん食欲の秋、というのもありますね。
「ドーナツの本、あるぅ?」
「作り方ですか?」
今日カウンターを訪れたのは、フブキさん。ヴァルキューレ警察学校の生徒さんですね。
お話したのは、おはなし会の時以来でしょうか。
本というのは様々ありますから、キーワードだけだと絞り切れない場合もあります。
「いや、作り方じゃなくてー」
「お店についてであれば、旅行雑誌のある地誌の方にご案内しますが」
「そういうお店なら、私の方が詳しいよ」
これも違う、あれも違うと言う、こんな風に、キーワード一つだけだと色々なものが候補に挙がって、たどり着けないもの……。
ですからこうやって、何を求めているのかを紐解くのも司書のお仕事です。
「そういうのじゃなくて、絵本でドーナツの奴を探してるの」
さすがに絵本は、あまり思いつきませんでしたね。
お話を聞いてみると、フブキさんはまた、読み聞かせのイベントに参加してみようかと思ったらしく、それで絵本を選びに来たんだとか。
そういえば、前回は『バムとケロのにちようび』を選んでましたね。あれもドーナツが出てくる絵本でした。
つまり、そういう縛りってことですね。
「そうですね、子供たちはお菓子が大好きですし、きっとウケると思いますよ」
というわけで、ドーナツの絵本を館内から集めてみました。
「今回は、どんな年齢の子に向けて読むんですか?」
「うーんとね───そう、3か4歳くらいの子たちに向けてかな~」
絵本というのは子供向けのものですが、子供にも層があります。発達段階というものです。
乳児期や幼児前期、後期に児童期など、発達の段階によって読む本の内容は変わります。
例えば、乳児期───赤ちゃんですね。───に絵本を読んであげるとして、ストーリー性が強いおはなしを読んでもちんぷんかんぷんですよね?
乳児期であれば、印象的な音を繰り返したり、カラフルなものだったりと、感覚を刺激するものが選ばれます。
そして、この場合3や4歳は幼児後期、自発性が発達してくる時期です。幼稚園や保育園で親と離れて友達と集団行動をする時期で、言葉も豊かになります。
この頃は、ストーリーがありながらも、そこまで難しくないものが無難ですね。
そんな風に選んでいき、最終的に選ばれたのは……。
「じゃあ、これにしよっかな。『ドーナツだいこうしん』」
海外の絵本『ドーナツだいこうしん』です。
タイトルから、色々なドーナツが出てくるものかと思えば、そうではありません。最初にある男の子がドーナツを紐で垂らして歩き始め、それに次々と人がついて行って、最後には町中で大行進となるお話です。
文字は少なめ……うーん、一行二行程度というところですかね。
絵は優しいタッチをしていて、例えるならクリームシチューのパッケージにあるおばさん?みたいなタッチです。
ストーリー性が少し少な目で、音の繰り返しをしているので、幼児前期でも大丈夫かなというのが私の個人的感想です。
少しボリュームが足らないと感じるところもありますから、アドリブを挟んでもいいかもしれませんね。
フブキさんなら、そこもそつなくこなすでしょう。
「ところで、一つ聞いていいですか?」
「いいよ~」
「選んだ決め手って、なんですか?」
私がそう聞くと、ニヤッと笑ってフブキさんは言いました。
「最後のドーナツが、とってもおいしそうだったから、かな?」
最初は『バムとケロ』の別の絵本にしようと思ってました。
けど、図書館行ってみたら貸し出し中だったので……