キヴォトス D.U.近郊 シラトリ区立図書館へようこそ! 作:ぱる@鏡崎琴春夜
はい、いつの間にやらおなじみの司書、ヒジリです。
前回はしんみりしたので今回はちょっとほんわかする回にしたいですね。
そんなことを思っていると、カウンターにてってってーと近寄ってくる薄い青とピンクの髪を二つ結びにした女の子がやってきました。
「こんにちは! 宇沢レイサです!」
「はい、こんにちは。もう少しだけ声のボリュームを落としていただけると……」
「あっ、ごめんなさい」
少女は声を落とす。ちゃんと言うことを聞いてくれる子で助かりました。
「それでは、宇沢さん。御用はなんでしょうか?」
「その、『カッコイイヒーロー』のお話はありますか」
うーん、困りましたね。ヒーローものですか……英雄譚は物語の基礎的な形のひとつに数えられ、その分類に恥じぬほど大量にあります。ヒーローなんて全部カッコイイですからね。
こんな時には、オープンクエスチョンの出番です。オープンクエスチョンとは、はいかいいえで答えられない質問のことです。その逆に答えられるものはクローズドクエスチョンと言います。
とりあえず情報を増やしたい時はオープン、減らしたい時はクローズドクエスチョンをします。
「それでは、候補が多いので、どう言った物がカッコイイになるんでしょうか?」
「えっ……あ、アーサー王伝説とか……?」
「アーサー王伝説……では、特に好きな場面などは?」
「……えっと、仲間と冒険したり、決闘したりです」
おかしいですね。だんだん声のボリュームが下がっていっています……恥ずかしいのでしょうか?
「騎士道はカッコイイですからね。わかりました。では、『仲間がいる冒険譚』で『戦闘するシーン』がある本にしましょうか。大丈夫ですよ。面白いものを責任もって紹介します!」
「ッ! はい、お願いします!」
仲間のいる冒険譚、バトルあり涙ありはカッコイイヒーローですからね……どうしましょうか、とでも言うと思いましたか? あらゆる英雄譚の原典を出します。
さて、取り出したるは、粘土板……ではなく、分類Eの『ギルガメシュ王ものがたり』です。分類は数字じゃないのかって思った人いますよね? これは特別なのです。Eは絵本のEです。そう、これ絵本なんです。
もう絵本を見る年頃ではないと言いたくなるかもしれませんけど、やっぱり絵の迫力は文字に勝ります。だからこその絵本です。もちろん文庫の方もあるので、気に入ってくださるならそちらも案内します。
「これが、カッコイイ奴ですか?」
「仲間との冒険は二冊目の方ですが、一冊目から面白いと思いますよ。城壁の中の民のために大いなる杉を取りに行ったり、街を壊そうとする女神と戦ったり、きっとカッコイイと思うはずですよ」
絵本三冊と文庫本を一冊渡しました。ちょっと首を捻って不思議そうにしていましたが、絵本を読み終わった後は、楽しそうに文庫本のページをめくり始めたところは見ましたよ。
さて、あらすじ……といっても知ってる人も多いのではないでしょうか?
神の血を引く王様が、若さゆえに暴君となり、それを止めるために遣わされた神々の楔エンキドゥ……エルキドゥの方がいいですか? まぁ、それはともかく、殴り合って、分かりあって、友を得た王は、民を省みるようになりました。
人のために、木材を求めて自然を切り開き、自業自得の要素が強い気もしますが、襲い掛かる女神を撃退する為に戦い……それはカッコイイヒーローだと思いますけどね。
あの子も、きっと何か、強くて突っかかっていきたくなる友人でもいるんじゃないかと、直感が告げたので選んだんですよ。
そして、今回は絵本ですので、絵の方も感想を述べましょうか。
絵のタッチは、魔女の宅急便でクロネコの人形を探すときに知り合った画家の人の絵や、『かいじゅうたちのいるところ』のような感じの……そうですね、アンリ・ルソーの蛇使いの女のような絵のタッチを感じる絵です。
人によってはちょっと不気味かもしれませんね。
でも私は、こう言う絵柄は伝説を描いてる感があって好きなんですよね。