ソードアート・オンライン〜Sonic Blader〜   作:タケノコさん

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第14話 ルーレットのJoker

 

2023年1月28日土曜日

午後10時03分

 

 

 年が明けてからも攻略は順調に進み、つい先日、第8層が解放された。俺は今、その最前線……にいるわけではなく、第7層のとある場所に来ていた。SAO初の娯楽施設。そう、

 

 

 カジノだ!!!!!

 

 

 

 何だって?「お前は高校生だろ」って?分かってないな〜。それは現実世界の話だ。だがここはSAO。剣士に年齢など関係ないのさ!!

 

 …と無理やりな言い訳をしながら、賭博施設へと足を踏み入れる。そこには数々の賭博設備が待ち構えてた。入り口にある館内案内図を見ると、トランプ、スロット、ルーレットはもちろんのこと、ビリヤードやダーツのエリアもある。闘技場もあるようだが、今は『準備中』となっている。おそらく、もっと上層を解放したら出現するものなのだろう。

 

 さて、何から手を出そうか。初めてだけどルーレットをやってみようか。それとも無難にやったことのあるトランプでもやろうか。いや、左腕が動かないので、右手だけでトランプは無理か?と思考にふける。まぁ、できるかできないかは置いといて、とりあえずトランプエリアの様子を見てみよう。

 

 トランプエリアでは、ポーカー、ブラックジャック、バカラといったゲームがプレイできる。それぞれの台にはNPCのディラーがついていて、「いつでも来い」とでも言わんばかりに待ち構えている。その一角、ポーカーのエリアに奴らはいた。

 

 

「お〜い!」

 

 

 と声をかけられた。この声の主は…シヴァ!?シヴァなのか!?何故シヴァがここに!?自力で脱出を!?

 と心の中でボケツッコミをかましながら、その隣の席に座っている人物に目を向ける。そこにいたイケメンは…。

 

 

「新年限定ボスイベントの時以来だな。」

 

 

 彼はシヴァではない。(無言の腹パンはない)。セティーだ。

 

 

「お前は何故ここにいる?そしてシヴァは何故こいつといる?」

 

「私はカジノで資金稼ぎをしている。」

 

「俺はセティ〜のギルドに入ったんだ〜。」

 

 

 ………ファッ!?

 ナニヲイッテルノ?コイツラハ?

 

 

「………悪い。俺が聞き間違いしてるかもしれない。もう一度言ってくれ。」

 

「私はカジノでギルドホームを買うための資金稼ぎをしている。」

 

「俺はセティ〜とのデュエルに負けて〜、セティ〜のギルドに入って〜。今は〜金稼ぎの手伝いをしてるとこだ〜。」

 

 

 日本語でおk。いや、日本語なのだが、俺にとってはこいつらの言ってることが常識外れ過ぎて、何を言ってるのかさっぱり理解できない。

 

 

「………まず、カジノで金稼ぎってのは俺の聞き間違いなのか?」

 

「聞き間違いではない。」

 

 

 カジノで金稼ぎだとぉ!?冗談は無駄にイケてる顔だけにしてくれぇ!!

 

 カジノは金を稼ぐとこじゃないだろう。金を使って遊ぶところだ。たまに運が良くて勝つこともあるだろうが、金稼ぎするにはリスクが高すぎる。こんなとこで金稼ぎをするのは、カジノ中毒者か、お金捨てたい病の患者くらいだ。あとカ◯ジ。

 

 

「誰だよそんなイカれたことを考えたのは?」

 

「私だ。」

 

 と、セティーの返答。このイケメン、やはり頭がイカれてやがる。

 

 

「それから………、シヴァがセティーのギルドに入ったってのは本当か?」

 

「あぁ〜、そ〜だぞ〜。」

 

 

 シヴァが負けただとぉ!?この基地外野郎にぃ!?そんでこのイカれたギルドに入っただとぉ!?冗談は無駄に鍛えた筋肉とホークアイだけにしてくれぇ!!

 

 まず、カジノ中毒なんていうクレイジーな奴にシヴァが負けたってのが信じられない。あのシヴァに勝つなんて、セティーはチートでも使ったのか?しかもシヴァともあろう人が、カジノで金稼ぎなんて狂ったことに手を貸すなんて…。シヴァは凄いやつだと思ってたのは、俺の思い違いだったのか?2人とも頭のネジが何本か吹っ飛んでやがる。カジノで金を稼げるのは、チーターかTASさんくらいだ。一般プレイヤーがカジノで金を稼げるだなんて…。嘘だと言ってよ、バー◯ィ。

 

 やれやれ…。某憂鬱な主人公のように頭に手を当ててため息をつく。これ以上こいつらとは関わらない方が良さそうだ。俺は純粋にカジノを楽しみたいだけなのだ。こんなところでToRABUるに巻き込まれるのは御免だ。それにどうせ俺は左腕が動かない。片手じゃトランプなんて無理なんだ。トランプなんてやめて、ルーレットをやろう!そうしよう!

 

 

「そっか、まぁ頑張れよ。じゃあな!」

 

 

 と挨拶を済ませ、俺はルーレットへ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしそこではハルカが大活躍していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たったわ!これで1600枚よ!!」

 

「くっそー!また負けたぜ!」

 

「一度にコインをベットしすぎなんだよ。」

 

 

 勝って嬉しい花一匁(ハルカ)、負けて悔しい花一匁(クライン)。隣のキリトは呆れてる。

 

 プラスチック(っぽい質感の)コインの山がハルカの前に置かれる。どうやら、セティーと同じくこいつも金稼ぎしているようだ。しかもなんと!金稼ぎに成功しているのだ!サジかよ!本気(マジ)かよ!!バーツかよ!!!一体全体、どうやったらあんなに大量のコインをゲットできるのだろうか?やはりハルカもセティー達同様、基地外だったわけだ。

 

 

「あら?ジンじゃない。セティーにシヴァまで。」

 

 

 セティー?シヴァ?

 

 俺以外の名前が呼ばれてふと疑問に思い、振り返る。そこには……

 

 

「よ〜。」

 

「順調のようだな。」

 

 

 何故二人がここに!?まさかj(ry

 

 こいつらはストーカーか!?腹パンでも食らわせてやりたい気分だぜ。だがまぁ、許してやろう。俺は菩薩のような優しい心の持ち主だからな。……ま、嘘なんですけどね。

 

 

「みんな揃ってルーレットに参加するのかしら?」

 

「ルーレットは専門外だが、たまには悪くないなと思ってな。」

 

「トランプも飽きてきたしな〜。」

 

「それに、ジンはトランプができないらな。」

 

 

 と、ここでセティーが俺を挑発してくる。俺にそんなにトランプをやらせたいのか!?だが、残念だったな。俺はそんな挑発に乗らないぜ!というより乗れないぜ!片腕トランプは諦めたのだ。トランプは無理?それで結構コケッコー。

 

 それにしてもセティーの野郎は不可解なことを言う。俺がトランプできないからルーレットに来るって、まるで俺と遊びたいみたいじゃねーか。アレか?セティーはホ◯なのか!?◯モなんですね!?…いや、それは流石にないか。もしそうならハルカを連れ添ったりしない。…いや、もしかしてハルカはオカ◯なのか!?オ◯マなんですね!?…いや、それもないか。根拠は全くないし。…いや、でも………。

 

 

「あなた、失礼なこと考えてない?」

 

 

 とハルカから忠告がある。いや、別に、まるで全然、お前が◯カマとか微塵も思ってないからな。

 毎回会うたび思うが、こいつは読心術でもあるのではないか。

 

 

「気のせいだろ。」

 

 

 と断言してやる。ま、嘘なんですけどね。なるべくバレないよう、しっかりとガンをつけてはっきり言ってやる。人は嘘をつくとき視線が右上に行くから気をつけてやらないとな。

 

 

「どうだかな。」

 

 

 とセティーから冷たい一言。いいから、その漆黒の瞳で俺を見つめるのはやめろ。気のせいだと言っているだろう。

 

 

「ゴホン」

 

と咳をついて場を改める。

 

 

 やっぱりこいつらと関わるとロクなことにならない気がする。やっぱりトランプに戻ろう。うん、そうしよう。

 

 

「まぁ、お金稼ぎ頑張れよ。じゃあな!」

 

 

 俺はこの場から逃げようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、まわりこまれてしまった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、俺はルーレットに参加することになった。ここはクラインからの土下座によるお誘いに免じて、基地外野郎どもには借りにしておこう。もちろん、この借りは倍返ししてもらう。

 

 俺はディラーに頼み、5千コルをコイン50枚に替える。コル→コインへの両替は、1コインあたり100コルでできる。だが逆にコイン→コルへの両替は、1コインあたり95コルとなっていて、両替を繰り返すだけだと損することになる。金を稼ぐためには、コインの枚数を1.1倍くらいにしなければならない。確率論的にプレイヤーが負けやすいカジノにおいて、コインを1.1倍に増やすなんて、強運が無ければ不可能に近い。要するに、カジノでお金稼ぎなど、無理なわけだ。マリ男のパーティーで、兵歩ーを1050年地下行きにできるのはTASさんだけだ。

 

 

 

 ルーレットのルールは至ってシンプル。出ると思った数字にコインを賭ける。それだけだ。

 

 数字は「1」〜「36」、「0」、「00」で、全部で38つある。数字への賭け方にも色々と種類があって、奇数に賭けたり偶数に賭けたり、大きい数字や小さい数字、連続する2数に賭けたりと、様々なパターンがある。それぞれの賭け方には倍率が決まっていて、当たれば賭けたコインの枚数にその倍率を賭けた枚数が戻ってくる。倍率は当たりにくいほど高くなっていて、例えば偶数に賭ければ2倍だが、一つの数字に賭ければ36倍になる。

 

 ここで注意すべきことは、前述の通り、プレイヤーが確率論的に負けやすいということだ。例えば、どの数字も平等に出やすいのなら、一つの数字に賭けた場合、当たる確率は1/38だ。だが倍率は36倍である。賭けたお金に対して、返ってくると期待できるお金の割合は、36/38で1より小さい。つまり、確率的には賭けたコインの枚数に対して、リターンとして期待できるコインの枚数方が少ないのだ。これはどの数字、どの賭け方でも同じで、リターンは掛け金より小さくなる。そうなる理由は、「0」と「00」があるからだ。

 

 難しい説明をしたが、要するにルーレットというのは『賭ければ賭けるほど損をする』ゲームだ。これはルーレットに限らず、ポーカーも含めカジノのゲームのほぼ全てで通用する法則だ。セティーもハルカも、負けやすいゲームで金稼ぎとか、頭おかしい。

 

 

 

 

 カランコロンと、ベルの音がする。

 

 

「ゲームを始めます。プレイヤーの皆さんはコインをベットしてください。」

 

 

 ディーラーのNPCからベットタイムの合図がある。何処に賭けようか?まずは様子見がてら、低倍率のところに賭けよう。あと、何枚賭けようか?そういえば、

 

 

「賭けるコインの枚数に上限とか下限とかってあるのか?」

 

 

 ディーラーに質問する。

 

 

「ベットできるコインの枚数に下限はありませんが、上限はあります。 当ルーレットはコイン1枚からゲームに参加することができます。コインをベットするタイミングは玉を射出する前と後のどちらでも構いません。ベットの開始と終了のはベルで行います。終了の合図までにコインをベットしなかった者は、そのゲームを降りたと見なします。ベットできるコインの枚数の上限はプレイヤーごとに異なります。初めてゲームに参加する場合、一度ゲームを降りて再度参加する場合は、そのプレイヤーが賭けられるコインの枚数の上限は10枚となります。そこからゲームに負ける度に賭けられるコインの上限が10枚ずつ増えていきます。上限が100枚になるとそこから増えることはありません。なお、一度勝利すると上限は10枚に戻ります。」

 

 

 長文での解説ありがとう。俺はこれが初参加のゲームなので、ベットできるコインの枚数は10枚まで。だが初っ端から10枚も賭けるつもりはない。初手なのだから、まずは周りの様子を伺う。

 

 

「俺は偶数に2枚だ。」

 

「なら俺は奇数に4枚だ。今度は負けねーぞ!キリト!」

 

「あたしは6番に1枚賭けるわ。」

 

「私は真ん中の列に3枚賭けよう。」

 

「俺は〜1枚を〜、4〜,5〜,6〜の三目に賭けるぜ〜!」

 

 

 残るは俺だけ。みんなの賭け方を見ると、賭ける目の数も違えば、賭けるコインの枚数もバラバラだ。ここから決めるなんてことは難しそうだ。

 

 そうこうしているうちに機械から玉が射出される。くるくる廻るルーレット、コロコロ転がる玉。じっと見つめても、どこで止まるか分からない。もはや深く考えても無意味だ。ならばここはひとつ、クラインの義理と人情に賭けてみよう。

 

 

「俺はクラインに乗るぜ!奇数に1枚だ。」

 

「よし!一緒に勝とうぜ!」

 

「ああ!」

 

 

 これで皆が賭け終わった。「賭けはこれで終わりですか?」と聞いてくるディーラーに、「ノーモアベット」と答え、そしてベルの合図でベットタイムが終了する。

 

 玉はコロコロと音を立てて転がりながら、徐々にルーレットの内側に近づいていく。そしてボールはポケットにぶつかり、飛び跳ねる。コンコンと音を立てて数度バウンドして、一つのポケットに収まる。そこに書かれていた数字は……。

 

 

『2 Black』

 

 

 ディーラーが数字を読み上げる。カテナカッタ…。ベットテーブルの上のコインが回収される。そして偶数に賭けたキリト、真ん中の列に賭けたセティーには配当が支払われる。

 

 

「くそぅ。なんでクラインを信じたんだ俺は。信じた馬鹿が俺だったよ!」

 

 

 そんなことをぼやきながら当の本人を見てみると、キリトに連敗したせいか、相当悔しそうに頭を抱えていた。

 

 

「俺のコインがぁ〜……。つ、次だ!次!今度こそキリトに勝ってやる!!コイン50枚追加してくれ!」

 

 

 この男、クラインは相当の負けず嫌いのようだ。キリトへの対抗意識が半端じゃない。俺も負けず嫌いなところはある。現実世界で音楽をやってた頃は、世界規模のピアノコンクールにも出ていたが、そこで優勝を逃した時は相当悔しかったし、「次こそは」と誓ったものだ。結局、事故のせいで次は無かったが、当時の負けず嫌いのDNAは間違いなく今の俺にもある。

 

 だが、今回、俺はクラインのようにこれ以上コインを増やすつもりはない。それは俺が『コンコルド効果』を恐れているからだ。

 

 コンコルド効果というのは、『投資すれば損をすると分かっていながらも、投資を止められず、結果的に大損害を被ってしまう。』そんな現象を引き起こす効果のことをいう。

 

 ギャンブルで負けた時、「ここで止めてしまうのはこれまで賭けた金が無駄になってしまう」「次の賭けで成功するかもしれない」そんな心理状態がプレイヤーを襲う。これがプレイヤーをさらなる賭けに誘う『コンコルド効果』だ。これに飲み込まれれば最後。賭ければ賭けるほど損をするゲームに対して、「次は勝てる」という淡い希望を抱いて賭け続け、大敗という非情な現実をつきつけられ、ついには絶望することになるのだ。

 

 俺はただ気晴らしするためにカジノに来たのであって、セティー達(こいつら)と違って金稼ぎをするつもりは一切ないし、クラインのように誰かに勝とうというつもりもない。人のふり見て我がふり直せという言葉がある。自分はクラインのようにならないよう気をつけよう。

 

 

 カランコロンと、ベルの音がする。

 

 次のゲームが始まるようだ。

 先ほどのゲームで俺は負けた訳だから、賭けられるコインの枚数の上限は20枚になった。だけどそんなに賭ける気はない。

 

 

「今度は黒に一枚賭ける。」

 

 

 こうして次のゲームが始まった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『00 green』

 

 

 テーブル上のコインがすべてディラーによって回収される。『0』や『00』は特別な数字扱いされる。偶数でもなければ、奇数でもない。黒でもなければ、赤でもない。この面倒くさい目があるせいで俺たちプレイヤーが勝つ確率が大きく落ちてしまうのだ。忌々しい、あぁ忌々しい。忌々しい。

 

 これで5勝21敗。2目賭けなどの倍率の高い賭けに何度もチャレンジしていることもあり、なかなか思わしくない勝率である。とはいえ、勝率は賭け方によって異なるため、決して悪い訳ではないと思ってる。例えば正確に数えてはいないが、低倍率への堅実な賭けをするキリトは大体五分五分くらいだし、1目賭けをし続けているハルカは一勝もしていない。そんなこんなで、俺のコインは残すところあと12枚になってしまった。

 

 

 

 

 カランコロンと、ベルの音がする。

 

 

 さて、次はどこに賭けようか。まだ一度も出ていない数字……何があったっけ?そういや、「0」はまだ出てないな。ここは「0」に賭けてみようか。

などと考えていたら、とんでもない事態が発生していた。

 

 

「やっと来たわ!!『00』に100枚賭けるわ!!」

 

 なんと、今まで一目賭けでずっと負け続けていたハルカが突然、上限ギリギリのコインを賭けだしたのだ。しかも賭けた場所は、今出たばかりの『00』。ついに頭がイカれたか?いや、元からイカれていたか。

 

「ならば私も『00』に40枚賭けよう。」

 

 そしてイカれてる奴がもう一人。セティーだ。そっちがその気なら、こっちは!!

 

「せっかくだから俺はこの緑の『0』を選ぶぜ!!」

 

 手元にある12枚を全てベットゾーンにぶち込む。負けたらお終いだろうって?それでいいのさ!

 別に俺は、どこぞの誰かさんと違って、カジノに勝ちに来た訳じゃない。カジノという未知の世界への興味と、エンターテインメントを求めてここまでやってきたのだ。だからここではエンタメカジノを演出してやろうじゃないか!

 

「その賭け、乗った!」

「俺もだ!!」

「俺も〜!!」

 

 キリトは賭けられる上限、20枚を、クラインは手持ちのコイン42枚を全てを、『0』に乗せる。そしてシヴァは上限である30枚を『00』に乗せる。

 プレイヤー全員が大損する確率36/38。俺たち『0』組が勝つ確率1/38、『00』組が勝つ確率1/38、何ともスリリングな賭けだ!これぞカジノの醍醐味ではなかろうか?もしここで勝ったら最高のショーになるぜ!!

 

 俺たちの運命のルーレットが、今、回された。玉のたどり着く先に待つものは、勝利か、敗北か、それとも両者相打ちによる大赤字か。この先は神のみぞ知る世界だ。さぁ、勝利の女神よ!笑え!ルーレットで笑顔を!女神の力で俺たちに、俺の未来に、笑顔を!!

 

 そして時が来た。出た目は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『00 green』

 

「やったわ!!今度は3600枚よ!!」

 

 ハルカに笑顔が灯った瞬間だった。やはり女神は残酷だった。

 

 おいおい、マジかよ。ハルカの奴、見事に当てやがったよ。3600枚というのはこのルーレットにおける理論上の最高額のリターンだ。1目賭けで当たる確率は、どの目に賭けようと1/38、つまり約2.6%だ。100枚賭けて当たるということ事態は、確率・統計論的にあり得ない話ではない。だが今回は、今まで一枚賭けで外してばかりいたハルカが、どっさり100枚賭けした途端、当てやがった。

まるでTASさんだ。だがこの女、乱数調整と思われる儀式の類は一切していなかった。一体何者だ?ハルカは?

 

 

「一体全体、どうやったらそんな大当たりを引けるんだよ!!」

 

 

 クラインが縋るようにして、ギャンブルの秘訣をハルカに問う。しかしその答えは無慈悲なものだった。

 

 

「女の勘よ!!」

 

 

 どうだ真似してみろと言わんがばかりに、自信満々、皮肉たっぷりに発せられたその言葉に対して、男である俺やクラインには何も言い返せなかった。

 

 今回のルーレットは大敗してしまった。もともと負けること前提だったので、俺にとって大きな問題にはならない。とはいえ、損をしたことに変わりはない。だが、今回重要なことを学んだ。

 

 

 

 女の勘って怖ぇ〜。

 

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