ソードアート・オンライン〜Sonic Blader〜   作:タケノコさん

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第一部 始まりの第一層
第01話 剣の世界〜ソードアート・オンライン〜


 目の前に現れた画面にログインIDとパスワードを入力し、OKボタンを押す。エラーが表示されているが、原因は判明してるしどうしようもないのでOKボタンを押す。

 

Welcome to Sword Art Online

 

と歓迎の言葉が目の前に現れた。そして俺は光のトンネルに吸い込まれ、視界がホワイトアウトした。

 

 ゆっくりと目を開けると、そこには西洋風の街並みが広がっていた。ついに、ついに俺はソードアート・オンラインのセカイに飛び込んだのだ。他のプレイヤーもどんどんダイブしてきていて、街中まるでお祭り騒ぎだ。

 目に映るものはただのポリゴンなのに、現実の街に本当に人がいるかのようだ。

 

「すげぇー…」

 

 あまりの綺麗さに感嘆してしまった。某遊びの駅5の比じゃないくらいに高度なグラフィックだ。

 

 右手をグー、パーと開いたり閉じたりしてみる。一応、身体は思った通りに反応する。今度は一歩足を踏み出してみる。それを繰り返しているうちに、ふと気づくと俺は歩いていた。歩ける。このセカイにおいても当たり前のことなんだろうけど、堪らなく嬉しかった。

 

 ソードアート・オンラインは全100層から成り立つ、天空の巨城「アインクラッド」が舞台になっている。「ラ○ュタ」ではない。今いるのはアインクラッド第一層にある「始まりの街」というところのようだ。

 

 歩くことのできた俺は、今度は走ってこの街の中を駆けまわる。風を切る感覚が非常に心地良い。

 辺りには露店が立ち並び、品定めをするプレイヤーや、パーティーに誘うプレイヤーで賑わっていた。俺は薬屋でポーションを購入し、人混みをくぐり抜けて、街の外へと走った。

 

 街の外に出ると、そこには広大な草原が広がっていた。風が吹いて草をなびかせる。RPGの最初のマップといえばやっぱり森か草原だよなと、どうでもいいことを考えながら遠くを眺めた。その目線の先、地平線に見えた緩やかな丘のふもとに、一匹のモンスターを発見した。俺の初めての獲物はこいつにしよう。

 

「よし!」

と気合を入れて、俺は標的へと駆けていった。

 

 始めてのターゲットは≪フレイジーボア≫という名前のイノシシだった。俺は敵に気づかれないようにそっと近づき、後ろから斬りかかった。不意打ちは見事に成功した。いきなりの奇襲に驚いたのか、イノシシは「ブモォォォーー」と情けない鳴き声をあげ、俺から離れていった。

 ある程度距離をとったイノシシはこちらに振り返り、再び「ブヒィィィィーーー!」と鳴く。威嚇しているのだろうか?さすがはVR(仮想現実)、テレビ画面で見るだけのモンスターと違い、結構怖い。だが所詮は序盤のザコモンスター。スライム相当だろう。落ち着いて対処すれば大丈夫だ、問題ない。…これは死亡フラグか?いや、こんなところで死んでたまるか。

 

 そういえばスライムといえば、某竜探究ゲームのせいで弱いものの代表例になっているが、他のRPGでは結構強かったりする。某マモレナカッタRPGのスライムは凶悪だ。

 

 ふと気づくと、イノシシがこちらに突進してきていた。俺は咄嗟に短剣で防御する。戦闘中に考え事はすべきではないな。

 

「せいっ!」

 

 気合いの掛け声に合わせ、つばぜり合い(相手は角だが)の状態から押し返す。そしてその時に見えたがら空きのお腹にとどめの一撃をお見舞いした。クリティカルヒットを表す赤い光が弾けた。そしてイノシシは再び情けない声で鳴くと青いポリゴン片となり、砕け散った。

 

「よっしゃー!」

と、俺は初勝利に歓喜した。自分の身体を自由に動かして戦うことが、そして勝利をつかむことが、こんなにも快感だとは思わなかった。

 

 さて、次の獲物はどいつかな?あたりを見渡し、次のターゲットを探す。そんな俺の目に面白い光景が飛び込んできた。

 

「どわーっっっ!!」

 

 この声は近場で戦闘をしていた赤髪のプレイヤーの悲鳴だ。イノシシにやられたそいつは、痛そうに股を抑えている。

 

「うわー、ダセぇ。」

ついポツリとつぶやいてしまった。聞かれて無いか不安になったが、どうやら俺の存在にすら気づいていないようだ。

 

「痛みは感じないだろ」

 

 そいつと一緒にいる黒髪のプレイヤーも呆れている。

ここらで他のプレイヤーがどうやって戦うのか、拝見させていただくことにしよう。それにこの後もっと面白い光景が見れるかもしれない。

 

「言ったろ?重要なのは初動のモーションだって。」

「んなこと言ったってよー、あいつ動きやがるしな…。」

 

 黒髪剣士は赤髪剣士にレクチャーしているようだ。黒髪はもしかしてβテスト経験者か?

 黒髪剣士は地面に置いてある石を拾って構える。すると、石を持っている右手が青色の光に包まれた。

 

「ちゃんとモーションを起こして、ソードスキルを発動させれば、後はシステムが技を命中させてくれるよ。」

 

 そして黒髪剣士は石を投げる。その石は弾丸のスピードで≪フレイジーボア≫に炸裂する。喋りながら石を命中させるとは、あの黒髪剣士は相当の手練れのようだ。俺はスポーツが苦手なので、できそうもない。キャッチボールをしてもあらぬ方向にボールが飛んでいって、まともに投げ合った試しがない。

 

「どう言えばいいのかな…?ほんの少しタメを入れて、スキルが立ち上がるのを感じたら、ズパーンと打ち込む感じ。」

 

 なるほど…。つまり、ある特定の動き(モーション)をすると、システムがそれを検知し、スキルが溜められる。それが一定以上溜まったところでタメを解放すると、ソードスキルが発動し、身体が勝手に動いて敵を攻撃してくれる。ということだろうか?

 しかしあの黒髪剣士、喋りながら≪フレイジーボア≫の攻撃をやすやすと躱すとは…。多分、きっと、いや間違いなくβテスト経験者だろう。初心者とは思えない。

 

 黒髪剣士の言うことから何かを感じ取ったのか、今度は赤髪剣士が構えをとる。赤い光が剣を包みこむ。そして溜められた光はやがて解放され、斬撃の軌道となって、突進してきていた≪フレイジーボア≫を斬り裂く。この一撃を受けた敵はポリゴン片となり消え去った。勝利を手にした赤髪剣士は歓喜の声をあげる。そして二人でハイタッチをする。

 さっきまでの赤髪剣士のイメージは一瞬にして好転した。カッコイイ!早く俺もソードスキル使ってみてぇーー!!

 

「でも、今のイノシシ、スライム相当だけどな。」

「えぇー?!マジかよ!!俺はてっきり中ボスかなんかだと…。」

 

 訂正しよう。やはり赤髪剣士はどこか抜けている。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 一通り他人の戦闘を観察したので、俺はまたイノシシ狩りに戻ることにした。まずはソードスキルを使えるように、練習しよう。

 

 SAOに入る時にスキル選択があったのだが、俺は短剣スキルと索敵スキルを選んだ。短剣スキルを選んだのは、この世界を駆け回るなら、でっかい武器は邪魔になると思ったからだ。索敵スキルの方は便利だと思ったからだ。スキルの数は一定レベルに達すると増えるらしい。スキル数に余裕ができるようになったら、音楽スキルをとりたいと思っている。現実で音楽をやっていたのだが、この世界でも楽しんでみたい。

 俺の短剣から放たれるソードスキルはどんなものか、期待が膨らむ。様々な構えを試し、ある構えをしたときに剣が緑色に光りだした。このまま溜めてーーー解き放つ!直後、俺の身体は猛スピードで前方に跳躍し、空気の壁を貫いた。

 

 短剣スキル≪アーマーピアス≫

 

 この爽快感、たまらん!!

 

 早速実戦で使ってみよう。そう思い、悪いイノシシはいないかーと辺りを見渡す。すると少し離れたところにターゲットがポップするのが見えた。運が悪かったな。今の俺はソードスキルを使いたくてウズウズしているんだ。

 俺は奴にこっそり近づき、≪アーマーピアス≫を発動する。これは見事に命中し、目の前の≪フレイジーボア≫のHPの8割ほどを削り取る。最初の戦闘での通常攻撃による奇襲は4割ほど削る威力だったから、単純計算で倍の威力がある。

 トドメもカッコ良く≪アーマーピアス≫でキメてやろうと、構える。が、一向にスキルが溜まらない。

 

「どうしt」ぐぁはっっ

 

 情けない台詞だが、それを言う前に敵の攻撃を喰らってしまった。後になって知ったことだが、ソードスキルにはクーリングタイムがあるらしい。技の連発をしないように設定されているのだろう。我ながら情けないことこの上ない。これじゃあ、あの赤髪剣士と同じじゃないか…。そんなの嫌だ。誰か見て笑って無いだろうなぁ!

 

 フレイジーボアからの一撃は痛くはなかった。だけどノックバックの感覚が気持ち悪い。自分のHPバーを見てみる。さっきまで満タンだったそれは、3割ほど削られていた。結構痛い。数値的に。

 とにもかくにも、ソードスキルは連発出来ないし、また、隙が大きいことを身をもって体験できた。高威力だからといってソードスキルの使用の乱用は命取りだ。時と場所と場合を見極めて使用しなければ殺られてしまう。いわゆるTPOというやつだ。ゲームだから復活するのだろうが、それでも死にたくはない。

 

「ブオォォォォ!」

 

 イノシシがまた突進してくる。敵のHPはイエローゾーンだ。ソードスキルなしでも十分倒せる。ここで取るべき行動は二通りある。敵の突進を剣で受けとめるか、回避するかだ。どっちだ、どっちの方がいい?受けとめることは確実に出来るが、多少なりとも自分にダメージが入る。一方で回避すればダメージは0だが、回避に失敗すれば大ダメージだ。どっちにする?

 

「考えろ、考えろ、かn」ぐぼぁっ!

 

 またダメージを受けてしまった。赤髪剣士以下だ。いるかいないか知らないが、俺を見ている誰かさん、もういっそ笑ってくれ。

 しかし、敵は落胆する時間さえ与えてくれない。次の突進が来る。最初の戦闘では防御したから、今度は回避しよう。HPにはまだ余裕がある。たとえダメージを受けても死ぬことはないだろう。

 

 落ち着いて敵の動きをよく見て…

 3,2,1,今だ!

 

 俺は身体を右にずらす。イノシシは身体があった空間をすり抜けていく。目の前を通り過ぎていくイノシシの首もとを狙って…、

 

 今!

 

 振り下ろした剣は見事に命中し、敵の命を完全に削り取る。そしてHPが0になったそいつはポリゴン片となって消え去った。

 勝った。綺麗な勝ち方ではなかったが、学ぶことが非常に多い戦いだった。俺はまだまだビギナーということか。当たり前だがな…。あの黒髪剣士に追いつくにはどのくらいの時間がかかるのだろうか?そもそも追いつくことができるのか?…ムリかもな。まぁでも、少しでも近づくためには、もっと実戦を積む必要がある。

 ここでようやくHPバーが半分を下回っていることを思い出し、ポーションを飲み干す。さて、狩りを続けよう。俺は次なる獲物を求めて駆け出した。

 

 

 

 草原を走り回り、敵を狩っているうちに、いつの間にか空は黄昏色に染まっていた。楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。だけどそれもここで一区切り、そろそろ夕飯の時間だ。名残惜しいが、また夜にログインすればいいと自分に言い聞かせる。メニューバーを開き、そこにあるログアウトボタンを……、ログアウトボタンを……。あれ?ログアウトボタンが無い。

 

 バグかもしれないが、俺としてはこれを理由にまだ遊べるので、好都合だ。しかし、本当にバグか?これ?

まぁ、いいや。とりあえず街に戻ろう。そう思ってメニューバーを閉じた時だった。

 "ゴーン"という不気味な鐘の音が草原に響き渡った。直後、俺の身体は蒼白い光に包まれた。

 

 そのとき、俺は直感してしまった。

 

 これはバグじゃない!

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