高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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プロメイアがグリフィス(フェムト)と被って仕方ないんだァ、この幻魔を抜いてもらおうかァ

それはそれとしてギャル口調がムズすぎルと申しますパヴェ


はっはあ――っ英雄は過去に死せずと言うじゃないか 未来で生きてる奴は過去でも生きてるものよ 4

 一方その頃、大量の野蛮人から逃げ去った一行。

 彼らの胸にあるのは戦いから逃げた情けなさなどではなく、『こんな大事な時にやってられるか』という純粋な文句である。

 

 「ロームルをぶちのめしたら、改めて全員失神KOしてくれますわ!」

 「マジィ? 血の気強すぎるくね? あーしお金貰ってもヤなんだけど」

 

 ロームルの逃げる先は恐らく郊外なので、ライトとルーシーは何としてでも阻止したい。リンはフリンツ合金製の音動機が欲しい。治安官のシーシィアは言わずもがな。

 優先順位はロームルの身柄である。しかし、その後のルーシーの矛先は野蛮人達に向いている。どの道、ロームルの懸賞金を目当てに戦うことにはなるだろうが。

 

 「で、ここはどこだよ?」

 「いくつか裂け目がありますわね……」

 「あー、なんかこっちとこっち、どっちからも匂いがする」

 「なら一旦、二手に分かれるか」

 

 裂け目の先には、さらに裂け目が。

 一行はリンとシーシィア。ビリーとライト、ルーシーで分かれることにした。

 

 「私達はこっちに進もうか」

 「ウーッス」

 

 二人は、ビリー達とは違う方向へ進む。

 道中にはエーテリアスもおらず、不気味な静寂に包まれていた。

 

 「静かだね……そう言えば、シーシィアってセヴェリアンさんから色あせたエーテリアスのことを調べるように言われてたんだよね」

 「そうなんだけどさぁ、そんなのどこにいるって感じでぇ……」

 「それってあれのこと?」

 「えっ」

 

 リンの指す方向。そこにはファールバウティ、フォッソル、ソルデドゥスなど様々なエーテリアスがエーテル活動を停止……死んでいる姿が広がっていた。

 

 「プロキシ君やっりぃ~!」

 「ちょっと調べて行こうか」

 

 ロームルを追っているとはいえ、まだ時間はある。

 少し調べるだけなら余裕があった。

 

 「え、プロキシ君これ分析できんの?」

 「やるだけやってみるよ。まっ、こんなの調べるのは初めてだから自信はないけどね」

 

 リンは手際よくエーテリアスを調べる。

 怪しい羽には触れず、停止したエーテリアスの記録を取る。

 初めてと言ってはいるが、その手つきは淀みない。

 

 「なーんか分かったァ?」

 「うーん、これは一旦セヴェリアンさんに報告するか、マネモブに聞くか……」

 

 こう言うものは専門家に聞く方が早い。

 マネモブに聞けば何か分かるかもしれないが、連絡先もないし本人が神出鬼没。

 ここはセヴェリアンに報告した方が良いと、シーシィアに声をかける。

 

 「やっぱりセヴェリアンさんにしよう。シーシィア、セヴェリアンさんに連絡を――シーシィア?」

 

 しかし、シーシィアから返事がない。

 怪訝に思ったリンが振り向く。そこには――シーシィアの前に佇む、黒枝の殺し屋・プロメイアの姿が。

 

 「なにっ」

 

 シーシィアはプロメイアを前に動けずにいる。

 圧倒的な強者を前に震えるしかないその様は、まるで蛇に睨まれた蛙だ。

 

 「あわわ、プロメイア」

 

 震えて俯くシーシィアに目もくれず、プロメイアはリンへ近づく。

 黒枝においても、対象の抹殺のためだけに投入されるという運用方法がされる彼女の目的など、考えるまでもない。

 

 「シーシィア!」

 

 無言で接近するプロメイアに、後ずさるリン。

 冷徹なプレッシャーがその身に降りかかるが、リンはなおもシーシィアを呼ぶ。

 しかし、恐怖に支配されたシーシィアは動けない――その言葉を聞くまでは。

 

 「シーシィア逃げて!!」

 「――!!」

 

 己の身を案じるリンの言葉。

 それを聞いた瞬間、シーシィアの身体は自然と動き出したのだ。

 

 「ッ!!」

 

 蛇腹槍を手に跳躍し、地面に突き刺すことで蒼いスパークを発生させる。その姿はさながらトラキアンのように勇ましい。

 攻撃よりもとにかくリンとプロメイアを離す目的で放たれた攻撃。プロメイアは表情を変えず、わずかに体勢を変えるだけで避けた。

 

 「逃げろ……?」

 

 わずかに後退したプロメイアの外套ともマントとも取れない上着の下から、無数の刃が浮かび上がる。

 まるで三日月のような形の刃が、リンとシーシィアを冷酷無情に狙う。

 

 「“助けて”って言いなよ!!」

 

 滞空していた刃が、一気に襲いかかる。

 シーシィアはそれを蛇腹槍で、尾で砕き割り、破片を逆に叩き返した。リンに届きそうなものを、ひとつ残らず迎撃したのだ。

 それをプロメイアはシーシィアを見据えたまま、首を動かしただけで避ける。隙とも呼べない動作。

 

 だが、シーシィアは止まらない。

 雷撃をまとった蛇腹槍を全力で投擲する。

 人類の武器、投げ槍という最も原始的で強力な乾坤一擲の一撃が、シリオンの力によって放たれた。

 

 高速で飛来するそれに、プロメイアは何を思ったのか。

 流石に危険と考えたのか、あるいは無情であるのか。しかし、プロメイアの取った行動は回避である。それも、今までのような最小の動きではなく、壁や鉄骨などを足場とした驚異的な跳躍からの超高速移動。

 

 はっきり言って弾丸と相違ないと思えるような神速の打撃がシーシィアを襲う。

 さらに、その合間に刃すら混ざっている始末。しかし、シーシィアはそれを反射神経と、ぬるぬるとした蛇のような動きを駆使し見事に(さば)き切った。

 圧倒的強者の猛攻を、耐えたのだ。

 

 殺人的な威力を持つだろう飛び蹴りすら防ぐ。

 しかし、プロメイアの攻勢は留まることを知らない。

 飛び蹴りを防がれたことには何の動揺も見せず、対して崩れてもいない体勢をすぐさま整え、外套から無数の刃を放った。

 

 強烈な蹴りを槍で防いだシーシィアは、迫りくる無数の刃を前に……覚悟を決めた。

 シーシィアの操作によって形を変える蛇腹槍。鞭のような刃が無数に連なるそれは、ガリアン・ソードならぬガリアン・スピア。

 雷を纏い、プロメイアを喰らわんとするその姿は大蛇が如く。

 

 「取った!」

 「……」

 

 シーシィアは、飛来する三日月のような刃を粉砕し、プロメイアの脚を絡め取ることに成功した。

 動きは封じた……かのように思われた。

 

 「……」

 「あっ」

 

 有利かと思われた状況は、プロメイアが脚を引いただけで崩された。

 圧倒的な脚力は、軽く引いただけでもシーシィアを引っ張り出したのだ。

 

 「!!」

 

 そして、シーシィアの眼前に迫りくる膝蹴り……コブラ・ソード。

 毒蛇のシリオンが、毒蛇の名を冠する技によって喰い殺されようと言う時だった。

 まるで、シーシィアの意思に呼応するかのように連なる刃が雷撃をまとい、双頭の大蛇へと変じた。少なくとも、その場にいる者達にはそう見えた。

 

 それを避けられないのか……あるいは避ける必要もないのか。しかし、プロメイアがその場から動かなかったのは事実だ。

 大蛇はプロメイアに激突し、暴れ狂う。辺りには土煙が舞う。

 

 勝利。シーシィアはそれを確信し――直後に理解不能な現実を叩きつけられた。

 

 「え……? どゆこと……?」

 

 煙が晴れる。

 そこには腕の拘束を外し、刃を素手で掴み止めるプロメイアの姿が。

 蛇腹の刃を流れる電気エネルギーは、プロメイアの腕輪に吸収されていく。やがて、電気が尽きた。

 

 唖然とした表情でそれを見るシーシィアは隙だらけ。

 だが、仮に万全だったとしてもその動きを捉えられたかは不明である。

 プロメイアはその場から掻き消え、冗談ではなく一瞬にしてシーシィアの背後に回り込んだのだ。

 

 「終わりだ」

 「はうっ」

 

 首トンにより意識を刈り取る。

 プロメイアの勝利によって、決着はついた。

 

 「確かに警告したはず。進んで巻き込まれに来たのだから、文句は言わないで」

 

 脱ぎ捨てた上着を拾い上げ、ついでに手枷をはめ直したプロメイアがリンの元へ近づく。

 冷徹に告げるその姿は、スターループでロームルと睨み合っていたあの時のものだ。

 

 「ま、待って……!」

 

 ギリギリで意識を保っていたシーシィアが、息も絶え絶えに立ち上がる。

 たった一撃、されど一撃。プロメイアの孔隙は、シーシィアを戦闘不能一歩手前まで持って行った。

 

 「あ、あーしら、どーしても手に入れなきゃなんないモンがあるの。邪魔すんなし……」

 「武器を下ろしてシーシィア! これ以上戦っちゃダメだよ!」

 

 リンの目からしても、プロメイアは驚異的な強さを誇っていた。

 これ以上やると、冗談貫きでシーシィアが潰れるのは明白だった。

 

 「た、確かにあれだけ威勢よく挑んどいて無様さらしたよね無様はね……でもプロキシ君に手ェ出すならマジで許さないんだよね……!」

 

 恐れと、それ以上の怒りを込めた瞳がプロメイアを睨む。

 だがプロメイアはどこ吹く風、涼しい表情。

 

 「出すわけがない。そういう命令だから。だが、お前の運命は、お前が手を引くか次第――」

 

 プロメイアはリンに手を出すつもりないようだが、シーシィアがどうなろうと良いようだ。

 屈辱と、わずかな光明。シーシィアの胸にそれが浮かんだ時だった。

 

 『それを決めるのは己自身よ』

 「――」

 

 反射的に、脚が伸びた。

 凄まじい威力の蹴りが激突する。

 

 「お前は……」

 『もしかして奇跡を信じるタイプ?』

 「ま、マネモブ!?」

 

 互いの頭部を狙ったハイキックが拮抗する。

 絶望的な黒枝の死神を相手にするこのエーテリアスはマネモブである。

 

 「要警戒エーテリアス“マネキン・モブ”か」

 『そうですけど何か?』

 

 ギリギリと、互いの脚は一歩も引かない。

 

 「邪魔をするか」

 『苦しそうだね』『心臓抜いて楽にしてあげようか?』

 「私をあの死神共と同じにするな」

 

 さしもの元掃除屋も、死神の名を冠するエーテリアスと同列に語られるのは論外のようだ。

 プロメイアは跳躍し、もう片方の脚で回し蹴りを放った。マネモブはそれを膝で受ける。

 

 『うがあ足が…足が…』

 「猿芝居はやめろ。効いていないことなど分かる」

 『……って』『痛くもなんともありまっせーん』『これでも軍隊で格闘術の訓練を受けてるのよ』『ローキックの防御くらい出来るのよ』

 「お前には今のがローキックに見えたのか? 武術の達人が聞いて呆れるな」

 『お前死にたいのか?』

 

 上着の下から、三日月のような刃が放たれる。

 マネモブはそれを目にもとまらぬ高速の打撃……霞打ちによって全て砕いた。

 それに対し、プロメイアは超高速の移動によって一気に距離を詰め、蹴りを放つ。

 

 『か―――っ』『羽虫に刺された程度だな!』

 

 しかし、マネモブはそれを軽く躱す。

 最近、封殺スキルを多用する連中が増えてきたせいでスピード勝負には慣れている。

 

 『回し蹴りは………』『こうやっ』

 「……」

 

 弾丸のように縦横無尽のプロメイアを、マネモブの回し蹴りが捉えた。

 示し合わせるかのようにプロメイアも蹴りを放ち、それを迎撃する。

 

 『ヒャハハハ』『こいつらの試合メチャクチャおもろいでエ』

 「……」

 

 再び拮抗状態に入る両者。

 お互いまだ本気を出していない泥仕合になりそうな予感がしたリンが、声を上げた。

 

 「プロキシストップね」

 『ハイデース』

 「なに……?」

 

 ドクターストップならぬプロキシストップに、あっさりと手を引くマネモブ。そして、これ以上ないほど怪訝な顔をするプロメイア。

 リンは、そんなことはお構いなしに勢いで押した。

 

 「プロメイア、だったよね。あんたの……いや、黒枝の狙いは何なの!? あの時、ロームルとは険悪を超えた険悪って感じだったけど、どうしてあいつを探す邪魔をするの?」

 「……? あの男など眼中にもない」

 「えっ」

 『その首相って…ま…まさか』『()()()は本気だ』

 

 どうやら、彼女達の間には行き違いがあったようだ。そして、マネモブは新たな勘違いをしている。

 プロメイアは、目的を語り出した。

 

 「この色褪せたエーテリアスを探していた」

 

 そう、黒枝の目的は色あせたエーテリアス。

 そのためにプロメイアを投入したのだ。

 

 「じゃあなんで襲ってきたの? こっちは治安官側だったのに本当に何故……?」

 「TOPSのことは黒枝が処理する。他者の介入など必要なく、許容もしない。それが治安局であれ、ましてや……市政であれ」

 『社会のルールは無視する』『ただしこの試合のルールを守らない者は確実に殺される』

 

 黒枝のプライドに賭けて、この事件を解決する。

 プロメイアの目的はそれだった。そして、他者の介入を良しとしない彼女と、再び争いが起ころうとしたが……プロメイアの通信機が鳴る。

 それに対して何やら反応した後、彼女は一行を見た。

 

 「……命令が変わった。もう邪魔はしない」

 『なにっ』

 「お前達に枝が伸びることは当面ない。今しがたの無礼は、詫びておく」

 『まあ小さな間違いは気にしないで』『申し訳ありませんでした』

 

 プロメイアが軽く謝罪すると、マネモブも頭を下げる。

 そして、彼女はどこかへ去って行った。冷徹な緊張感は消え失せ、マネモブのエーテル侵蝕による緩い雰囲気が辺りに漂う。

 

 「あの、その……さっきはマジで助かりました」

 『ククククク恥ずかしがることはないよ』『うぬぼれは若者の特権よ』

 「いやちょい待ち、お礼言っただけであーしが自惚れてることにされてんだけど?」

 「ククククク困惑することはないよ。ジョークはマネモブの特権よ」

 「う あ あ あ あ プロキシ君までマネモブに汚染されてるぅ」

 

 おふざけもほどほどに、落ち着いたところでリンが話を切り出した。

 

 「マネモブはどうしてここに? もしかしてあんたもこの色褪せたエーテリアスを調べてるの?」

 『そうですけど何か?』

 「おー、じゃあ何か分かったこと教えてくれない? 今なら治安局から謝礼があるかもよ」

 『これでも私は慎重派でね』『君を徹底的に研究・分析させてもらったよ』

 「その結果?」

 『生体力学のバイオメカニクス的観点から考察し神経系の生理的作用と脳科学の心理的要因起こりうる現象だとわかった』

 「あー、何言ってるか分かんねーし。もうちょいギャルにも分かりやすく」

 『その結果』『負ける要素が何もないことがわかった』

 「結局何も分からずじまいかぁ……まっ、マネモブは色褪せることを知らないエーテリアスだからバランスは取れてるんだけどね」

 

 この色褪せたエーテリアスのことは何も分からなかった。 

 彼女達が少し落胆していると、裂け目からビリー達が戻ってきた。

 

 「あれ? どうしたの?」

 「ああ、向こうは行き止まりだったぜ。やっぱ皆で進むしかねぇみてぇだ」

 「エーテリアスだらけでな」

 「骨折り損ですわ」

 

 ライトやルーシーも肩をすくめている。

 大量のエーテリアスを相手に無傷であるというのは、彼らが強者の証だった。

 

 「よしっ、それじゃあ予定通り皆でロームルを捕まえに行こう」

 『しばきあげたらあっ』

 

 こうして、六人はロームルの潜伏する地へと向かう。

 

 

 

 次回、死闘。

 ビリー、ライト、ルーシー、シーシィア、マネモブVSロームル

 レッドファイッ!!




ガリアンソード=蛇腹剣
機甲界ガリアンに出てきた武器なんや

ガリアンスピア=蛇腹槍
蛇腹ってだけで考えた普通に造語なんや



あんな攻撃を素手で止めたプロメイアは恐らくゴリラのシリオンと思われるが……
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