高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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オ リ ジ ナ ル 野 蛮 人 注 意

多重クロスでやれ? ククク……読み飛ばしても問題ない話だから見逃してくれよ



はっはあ――っ英雄は過去に死せずと言うじゃないか 未来で生きてる奴は過去でも生きてるものよ 6

 「ったく、マネモブも音動機もどこに行ったんだよえーっ」

 

 一行は、倒したロームルを引きずって帰還していた。

 ロームルはマネモブによって仮死状態にされており、適切な処置をしない限り目を覚ますことは無い。

 

 「羽があったってことは、マネモブも止まっちゃった……?」

 「いや、それはない。あそこにはマネモブの“残気”が見えた。何かを追うような残気がな」

 

 エーテリアスを完全停止させる羽が現場にあったことから、マネモブも同じ末路を辿ったのではないかと危惧するリンだが、ライトによって否定される。

 マネモブの残気が残されていることに気づいたからだ。

 

 「恐らく羽の主を追ったと考えられますわ、音動機を取り返すために。あー、犯人がムカつきますわ、ブッ飛ばしてやりたいですわ」

 「痕跡が追えない以上、ひとまず帰るしかない」

 

 一行は再びあの野蛮人共の群れを通るのは嫌だったが、すでにロームルの打倒はキャプマスに伝えてある。 

 これで万が一ロームルが逃げたり、野蛮人に襲われても5000万ディニーがもらえるのだ。

 

 「この先か」

 「うん、土竜さんからもらった5000万ディニーをバラまいた所だね」

 

 目の前の裂け目。これを通るとホロウの出口は近い。

 しかし、目に浮かぶのは数多の野蛮人達。今、彼らは5000万ディニーをめぐって何をしているのか……

 

 「行こう」

 「おう」

 

 一行は裂け目に足を踏み入れる。

 その先に待っていたのは、金の魔力に理性を失い、獣と化した野蛮人達――ではなく。

 

 「えっ」

 「なにっ」

 「な……なんだあっ」

 

 血の海に沈んだ野蛮人、切断された武器、機械……生きてこそいるものの、もはや獣性など見る影もない敗北者達。

 そして、どこからか聞こえる重低音と剣戟音。

 

 「誰か戦ってる!」

 「あそこだ……ボロボロの野郎だ!」

 

 野生化したテューポーン・チャレンジャーであるボロボロが、倒れた野蛮人達を背にして何者かと戦っている。

 しかし、ほどなくして太い腕が切断され、バランスを崩す。何者かが振るう刃の先には、ボロボロの頭部。

 

 「ビリー!」

 「それはダメだろ!」

 

 BLAM!

 正確無比なビリーの拳銃が、刃へ迫る。

 頭部を狙う軌道を描いていた刃は方向を変え、迫りくる銃弾を切断した。

 

 「良い射撃だ、だが斬った」

 「あ、アンビー……じゃねぇな。姉妹でもねぇ。誰だ?」

 

 アンビーや、その姉妹達と瓜二つの少女。その両手には血に濡れた二振りの刀。後ろに引き連れた、目すら存在しない真っ白なボンプ。

 刃物のような眼光が、ビリーを見据える。特に感情のこもっていない、冷たい目だ。

 

 「枝を選定する……“庭師”と言っておこう」

 『き、君達、気をつけろ……奴の剣技の前には私達は歯が立たなかった……何とか死者は出さずに済んだが、ここで撃退できなければ全員死ぬ……』

 「順序をつけることも斬ることの一つだ。そこの機械人を斬れば、他も斬る」

 

 “庭師”……シルバー小隊クローン58946号、個体名“ヨーム”が二振りの刀を向けた。

 狙いを定めたのは、ビリー。ライトやルーシーも構えるが、ビリーはあえて皆を下がらせた。

 

 「いや、奴は俺をご所望のようだぜ。せっかくだから遊んでやる」

 「本当に大丈夫スか、パイセン。さっき銃弾斬られてましたけど」

 「任せとけって! それよりお前らは怪我人の救助にあたってくれ。ボヤボヤしてると後ろからバッサリだ」

 

 BLAM!

 またもやビリーの銃が炸裂する。

 その先には、二人の人型と一台の車。紛れもなく、死神医療チームである。

 

 『TESSYUU DA TESSYU SHIRO』

 『ISOGEッ』

 

 死神達は奪命車を盾に離脱する。

 しかし、奴らは近くで虎視眈々と心臓を奪う機会を伺っているかもしれない。

 

 「き、気づかなかったよ……」

 「ったく、油断も隙もあったもんじゃねぇな」

 

 ビリーは、庭師に向き直った。

 刀身のような殺気が、ビリーを貫く。

 

 「……さて、庭師ちゃん。遊ぼうか」

 「機械、斬るべし」

 

 銃VS刀

 強い方が勝つ、それがこの戦いの真理だ。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 「二丁拳銃とは珍しい。ゆえに斬る」

 

 フルオート射撃と比較しても破格の連射性を持つビリーの弾幕を、庭師が斬りながら進む。

 常人ならハチの巣、酷ければ肉片になっているだろう銃撃の嵐を、庭師は突破した。

 

 「やっぱそんくらいはやるか!」

 

 常にポジションを変え、移動し、狙いを一点に集中させないビリー。

 実力者相手に、ともすれば一瞬で肉薄されてもおかしくない距離を維持しつつ、冷静に相手を狙い続けている。

 

 「ふっ」

 

 高速で迫りくる銃弾を斬ることができるのは、刀の強度もさることながら庭師本人の動体視力、的確な判断、肉体の反応、そして技……様々な要因がある。

 かつて彼女が防衛軍から逃走した際には、兵士から無数の銃口、そして数多の弾丸によって狙われた。彼らも、刀の錆にすらならず斬殺されたが。

 もっともスタンダードで使いやすく、手に入りやすい銃器は、庭師にとって対処しやすかった……相手がビリーでなければ。

 

 「!」

 「おっと、これも対処するか……ま、されたから何だって話だがな!」

 

 庭師が斬った弾丸の後ろ、つまり死角から新たな銃弾が迫る。

 ビリーは二丁の拳銃を利用し、全く同一の場所に、タイミングをずらして弾丸を撃ちこむことで、消える魔球ならぬ現れる魔弾を作り出したのだ。

 しかもいやらしいことに、刀の間合いからギリギリ外れたタイミングを狙っている。

 

 庭師はビリーの攻撃パターンを学習しているが、同時にビリーも庭師の間合いを把握しつつあるのだ。

 

 「なら近づいて斬る」

 「そう来るよな!」

 

 ビリー相手に接近する。それの何と難しいことか。

 しかし庭師はやり遂げた。低空姿勢からの跳躍、瞬歩、刀の投擲……ビリーの予想を上回る手を使い、接近したのだ。

 

 「無茶苦茶やりやがる!」

 

 目前の庭師、剣の切っ先がビリーを狙う。

 しかし、ビリーは発砲の反動で後退し、斬撃を避ける。

 

 「斬る」

 「ウッソだろお前!?」

 

 ――だが、背後からもう一人の庭師が刀を振るう。

 庭師の連れるボンプ、『ハンレイ』が実体を持ったホログラム体でもう一人の庭師、つまり分身と化したのだ。

 前は避けた。しかし後ろは命中コース……だがビリーは即座に銃を別方向へ向け、再び反動での離脱を狙う。成功するかは五分五分の賭けだったが……

 

 ガァン!

 

 「なにっ」

 「……斬り足りなかったか」

 

 銃声。

 それもビリーのような拳銃ではなく、ショットガンのもの。

 倒れ伏したテューポーン・ボロボロの陰から、少女が姿を現した。

 

 『しかし卑怯な不意打ちだったな内海』

 「二対一の方が卑怯なんですけど」

 

 別に内海と呼ばれても名乗ってもいない少女が、ハンレイを撃ち抜いた。

 分身は即座にガードしたが、そのおかげでビリーは安全に離脱することができた。

 

 『しかし5000万ディニーじゃ割に合わないな内海』

 「一ディニーも手に入ってないどころか弾代で大赤字なんですけど」

 『来るべきじゃなかったな内海』

 「まだ諦められないんですけど」

 『コンコルド効果だ、損切も大事だぞ内海』

 「これからロームルを失神KOすればチャラなんですけど」

 

 ブツブツと一人で呟く異様な少女。

 しかし、ハンレイの狙いはこの少女に代わった。

 手所はハンレイを銃撃で牽制する。

 

 『言い忘れてたがロームルはもう倒されたぞ内海』

 「えっ、そうなんですか?」

 

 だが、引き金を引く手が止まった。

 その隙を逃さずハンレイが少女に接近し、刀を振るう。

 寸でのところで避ける少女だったが、もう一振りの刀が彼女の左脇腹へ食い込む。

 

 「ぐ あ あ あ あ」

 『内海!』

 『……』

 

 普通なら両断されている一撃。

 しかし、少女は脇腹に刀が食い込んだ時、左手に持ったレンチで刀がそれ以上食い込むのを防いでいた。

 薄皮一枚どころではないほど斬られていたが、生命を繋いでいた。

 

 『すまない、今する話じゃなかったな内海』

 「だ、誰にだって失敗はあるんですけど……! それに……モンキーレンチで助かったんですけど」

 「ハンレイッ」

 「よそ見とは余裕あんな!」

 「まずは斬る」

 

 モンキーレンチが、刀をガッチリと固定する。

 刀を離さなければ逃れられない。その状況で、ハンレイはあえてもう一振りの刀を振るった。

 

 『しかし酷い隙だな内海』

 「はい、悪手なんですけど」

 

 ガァン!

 

 ショットガンが刀をパリィする。

 

 ガァン!

 

 続けてハンレイに弾丸が撃ちこまれる。

 

 ガァン!

 

 怯んだところにもう一発。

 

 ガァン!

 

 さらにもう一発。

 

 ガァン!

 

 そしてもう一発。

 

 ガァン!

 

 もう一発――

 

 『弾切れだぞ内海』

 「はい。でも本体のボンプに全然当たってないんですけど」

 

 ホログラムが消滅する。

 中から現れたのはハンレイの本体。しかし、傷はあまり見られない。

 どうやらほとんどは外れてしまったようである。ハンレイは急いで離脱し、庭師の元へ戻って行った。

 

 『しかし酷い傷だな内海』

 「はい、でも私こう見えてタフなんですけど」

 『結局5000万ディニーは手に入らなかったな内海』

 「またキャプマスのメールを待つだけなんですけど」

 

 少女は血の流れる脇腹を押さえ、去って行った。

 

 「ハンレイがやられたか……」

 「お前もなっ!」

 「くっ……」

 

 一瞬、ハンレイに気を取られたせいで弾丸が庭師を掠める。

 庭師はこの戦いで分析した。今はビリーを斬る時ではない、まだこの機械人は本気を出していないと。

 恐らくは因縁あるシルバー小隊隊長0号アンビーの縁者、再び相まみえることはあるだろう……庭師は勝負を捨てることにした。全ては斬るために。

 

 「精進が足りない……ハンレイ」

 

 側にやってきたハンレイから、ホログラムの煙幕が放たれる。

 辺り一面を白い煙が包み、やがてそれが晴れると、庭師はいなくなっていた。

 戦いの終わりを感じたリン達がやってくる。

 

 「終わったの?」

 「ああ……目ぇつけられた気もするけどな!」

 「あいつカリュドーン・ラッシュの時もいましたわね……」

 

 こうして、ついにブラックウルフ・ラッシュは閉幕した。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 邪兎屋事務所にて。

 

 「びっびびびびびびびビリー!!!!!!!!!! この1000万ディニーは何!?!?!?!?!?」

 「ブラックウルフ・ラッシュの賞金だ! キャプマスからもらったのを皆で山分けしたんだぜ」

 

 ニコは巨額のディニーを前に小躍りでもしそうな雰囲気だ。

 アンビーは庭師の話を聞いて思案しており、猫又も目を輝かせている。

 

 ちなみに報酬をもらった際、『ロームルのみならず庭師も撃退するなんてお前達には敬服するよ。せめてこれを危険手当と思ってくれよ』と、キャプマスのポケットマネーで追加の報酬を貰っている。

 リン、ビリー、ライト、ルーシー、シーシィア、そしてマネモブの六人で分けるとなると約830万ディニーになるが、キャプマスの追加報酬によって一人頭1000万ディニーくらいになって斬りが良くなっていた。

 

 「ほ、本当に事務所で使ってもいいのね!?」

 「おう!」

 「じゃあ、ありがたくいただくわ……」

 

 多額のディニーをそっと金庫に入れるニコ。

 しかし、その直前で何を思ったのか、金を分ける。

 分けた金は、ビリーに手渡された。

 

 「親分?」

 「いい? ビリー、そのキャプマスからもらった170万ディニーはあなたが庭師っていうヤバい奴と戦って手に入れた、いわばファイト・マネーなの。まだ事務所の経営には余裕があるし、それはビリーが持つべきだわ」

 「お、親分……!」

 

 社員の危険を加味してとはいえ、多額の金をくれてやるという、ニコらしからぬ行動にビリーは感動し――

 

 「こいつ偽物じゃね?」

 「偽物って変装してるってこと? 変装……ま、まさか……“S”?」

 「言い訳は聞きたくない。ニコを騙る奴は“電撃少女アンビー・デマラ”がゴミ処理してやる」

 「何言ってんのよ、あーっ」

 

 騒がしくも楽しい邪兎屋。しかし、この賞金のおかげで事務所の経営は上に傾くことだろう。

 新エリー都は今日も平和である。

 

 

 

 そして邪兎屋の資産は絶命した。




 【内海】
 ・普段は鉄道会社で働いている整備士。
 あまりの業務のブラックさに発狂し、脳内に強固な自我を持つイマジナリーフレンドを作り出した。戦闘時のみならず、日常生活などでも彼にアドバイスを貰っている。脳内の声はもちろん内海以外の誰にも聞こえない。
 アンドーの兄弟と会話が成立する稀有な人間。



 【庭師】
 ・腕の断面が綺麗だったので自力でくっつけることができた。
 ハンレイがやられて声を上げたのはハンレイが心配なのではなく、いつか斬り合うため今死んでもらっては困るから。



 【原始人】
 ・階段を使えない。
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