高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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御日没だあっ。夜の訪れを待ち望むのは…俺なんだ! 3

 『なんだよこのクソ展開』

 

 マネモブが焦天残火・パエトーンへと果敢に突っ込む。

 内心は『ついにこうなったか』という思いで埋め尽くされている。

 

 変態兄弟パエトーン・ツインズ、戦闘の才能はないが人を導くことに関しては天才的。

 哀しき過去や爆弾を抱え、いつかは酷い目にあうんじゃないかと薄々感じてはいたが、まさかこんな化け物になるとは考えて見なかったのである。

 

 『ふざけんなよボケが』

 

 焦天残火の攻撃を軽く避け、脚部に回し蹴りを叩き込む。

 恐らく生身らしき場所を無慈悲に狙うローキックは、その巨体を揺らした。

 効いている。ならば塊貫拳は下策、中のリンまで貫通しかねない。マネモブはチマチマ外殻を削ることにした。

 

 『チマチマ……それはワシのことを言うとんのかい』『殺す…』

 「何を言っているんだ?」

 「急にキレててコワすぎ!」

 「マネモブの頭ん中では話が繋がってるからマイペンライ!」

 

 軽口を叩きながらも、一行に油断など存在しない。

 まるで示し合わせたかのような連携で的確にお互いをカバーし、焦天残火にダメージを与えているのだ。

 今まさに焦天残火の黄金に光る左手に、赤い槍のようなものが現れた。

 

 焦天残火はそれを力任せに振り回すが、シーシィアのカバーに入ったプロメイアが難なくはじき返す。

 再び焦天残火が槍を振るう。しかし、今度はプロメイアの背後から出てきたビリーが、バイクによってそれを防ぐ。

 ビリーが狙われれば、離脱したビリーの代わりにマネモブが支援に入り、神がかった回避の後、強烈な打撃を叩き込む。

 マネモブの頭部が槍の直撃コースにあるならば、即座にシーシィアの槍が伸びてくる。

 

 一流の強者同士の連携は、焦天残火という怪物にすら切り崩せない鉄壁の防御を誇っていた。

 

 『足腰だけやない』『チンチンも立たんようにしたんどっこらあっ!』

 「いやちょっと待てよ。こっちの店長は女だぜ」

 『いいえ認めています』

 「なにっ」

 「何を言ってるこのバカは?」

 「マネモブってホントに下ネタ好きすぎでしょ! ちょっとはキレーな語録喋ったら?」

 『イヤです』

 「イマドキ下ネタ擦る男子って嫌われるよ?」

 『…(愛)』

 

 マネモブの拳が、ビリーの銃が、シーシィアの槍が、プロメイアの刃が焦天残火の外殻を削り取る。

 

 『G H O O O O!!』

 「なんだあっ、風かあ」

 『ほう』『風使いか…』

 

 一向に攻撃が当たらないことに戦法を変えたようだ。

 焦天残火は一瞬だけ、光る左腕に翼を創り出した。翼はすぐに消えたが、剛腕によって振るわれたそれは、荒れ狂う竜巻を発生させた。

 

 「こいつはヤバそうだな……」

 『いや』『意外と派手に後ろに飛ぶのはそんなに効いてない』『風使いか…』

 「何だって? ……ははーん、そういうことか。奴の風の力が強すぎて自分も風化しちまってるってことだな」

 「えっ、い、今ので分かるのん?」

 「ダチだからな!」

 

 そうと決まれば一行の動きは早かった。

 プロメイアを主軸とし、サポートするような陣形。

 

 「これでも喰らいな!」

 『G H O O!?』

 

 まずはビリーがバイクを走らせ、焦天残火に激突する。

 数々の改造を受け、ピーキーすぎる性能から繰り出されるその衝撃に焦天残火はよろめいた。

 

 『“神速”…それは神業にも似た瞬間移動!!』『足首がダメなら膝だあっ』『ヒール・ホールド!!』

 『G H A A A A』

 

 その瞬間、ほとんどワープに近いタックルを繰り出したマネモブによって引きずり倒される。

 倒れた時点で生身らしき脚をがっちりとホールドした。バキバキと内部の靭帯にも似た何かが破壊される音が鳴り響く。

 

 『G H O――』

 「それはさせないんだよね」

 『!?』

 

 光る左腕に槍を生成し、マネモブを突き刺そうとした焦天残火だが、その腕はシーシィアによって絡め取られる。

 おまけに、シーシィアの槍が焦天残火をチクチクと突き刺す。

 

 「今だプロメイアッ!」

 「感謝するッ」

 

 無数の刃が煌き、焦天残火に突き刺さる。

 プロメイアは縦横無尽の動きで的確に焦天残火の外殻を破壊する。

 身動きの取れない焦天残火はみるみる内にダメージが蓄積し、その身に“乱流”現象を引き起こすに至った。

 

 「効いてる……効いてるぞ!」

 『効いてる…効いてるぞっ』

 

 あまりの効果にハモるマネモブとビリー。

 しかし、嬉しさも束の間。焦天残火の腕に再び危険な色が宿る。

 

 「な……なんだあっ」

 「皆離れて!」

 

 天から光が降ってくる。

 一向はそれを避け、焦天残火の様子を伺った。

 倒れた状態から焦天残火が左手のエネルギーを地面に叩きつけるその瞬間、マネモブが踏み込んだ。

 

 ド ン ッ

 

 「うわっ」

 「おおっ」

 「なにっ」

 

 ひと際おおきな衝撃が地面を揺らした時、マネモブの踏み込みによって三人がブアッと浮いた。

 最初の一撃が不発に終わった焦天残火は、なんとか飛び上がり槍を振るった。

 

 「さっき散々防いだからタイミングは見えてるんだよね」

 

 一振り目をシーシィアが難なく弾く。

 

 「遅い」

 

 二振り目を、プロメイアが脚で弾く。

 

 「俺が決めてやるぜ!」

 

 三振り目、横薙ぎをビリーが防いだ。

 

 『G H U O ! ?』

 

 超強力な封殺スキルによる攻撃。

 しかし、逆に全てを封殺された代償は、強力な威力がその身に返ること。

 機械の外殻が破壊され、焦天残火が膝をつく。

 

 この怪物が顔を上げた時、すでにマネモブが目の前にいた。

 

 『“虎腿蹴(タイガー・シュート)”』

 『O O O O――』

 

 強烈無比の一撃、至極の技により頭部を破壊された焦天残火は失神KO。

 その身が大地に横たわることとなった。

 

 「よっしゃあっ」

 「早くリンちゃんを探さないと!」

 「でもあの巨体だぜ、どっから探す?」

 『苦しそうだね』『心臓抜いて楽にしてあげようか?』

 「マネモブが死神医療チームになっちまったぁっ」

 「でも心臓らへんから探すのは得策じゃない?」

 「マネモブにしてはいいこと言うじゃねぇか!」

 『嫌でもこっち側に引きずり込んでやりますよクククク』

 

 マネモブが近づこうとしたその時だった。

 

 『いやちょっと待てよ』

 「まだ……終わりじゃない」

 「えっ」

 「なにっ」

 

 光る腕から、グチャリと何かが出てくる。

 それはまたもや光る腕であるが……焦天残火よりも小さい、人間並みの大きさだった。

 

 「な……なんだあっ」

 

 体格は細身だが、体色はマネモブにも似ている灰色。

 長い髪のようなものが揺れ、両腕はエネルギーによって発光している。

 うなだれた体勢で宙に浮かび上がるそれを見たプロメイアは、猛烈に嫌な予感を感じていた。

 

 「経験上……撤退して対策を練るべきだ」

 『そうですね』『その気持ち分かります』

 「だが直観が告げている。ここで制圧しなければ――」

 

 左肩が盛り上がり、刃のような翼が現れた。

 

 「リンは戻らない」

 

 怪物の目が、明確に一行を見据えた。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 『なんだよこのクソ展開』

 

 浮遊するリンの攻撃を避ける。

 リンは、浮きながらチマチマと遠距離攻撃を仕かけていた。

 ハッキリ言ってその戦法はマネモブにとってはカモネギグへへもいいところであるが、先ほどの焦天残火がカスに思えるほどのプレッシャーが気になり、回避に徹していた。

 

 「じょ、冗談じゃねぇ! なんてプレッシャーだ!」

 「キャッ!?」

 「シーシィア!」

 

 光弾、光の剣、そして分身。

 どれ一つ取っても、先ほどとは次元が違う威力の攻撃に翻弄される一行。

 たった一撃で地面を焼き、破壊する。そんな攻撃が絶え間なく続くものだから、被弾は避けられなかった。

 

 「このままじゃジリ貧……待てよ、あれはほぼ完全に人型……マネモブ、やれるか!?」

 『はい! 強くなれますよ』

 「ここで奴を制圧できるのか?」

 『はい! 強くなれますよ』

 「リンちゃんを元に戻せるの!?」

 『はい! 一所懸命トレーニングすれば私よりも強くなれますよ』

 「作戦とも言えねぇ、お前頼りの奇策に打って出たいんだができるか?」

 『いいですよ!』

 

 その作戦はただ一つ。

 人体の破壊が得意なマネモブがリンに組み付き、無力化する。

 

 「マネモブ! 俺のバイクに!」

 『あざーす』

 

 ビリーがバイクを走らせる。

 マネモブの腕には、なんとシーシィアの蛇腹槍が巻き付いていた。

 

 「行くよ!」

 『おうっ』

 

 バイクの遠心力を使い、シーシィアがジャイアントスイングのようにマネモブを上空へ投げた。

 マネモブの跳躍力も手伝い、身体はリンへ届くだろう。しかし、それを黙って見ているリンでもない。

 もちろん空中を移動し、避けつつ無数の光弾でマネモブを狙うが……

 

 「その手は読めている」

 「おっしゃあっ」

 

 プロメイアの刃が光弾と激突する。

 そして、光弾と当たらなかった余分な刃がマネモブの足場となり――

 

 『もうええから眠れや』

 

 リンの首にマネモブの太い腕が組み付いた。もう片方の腕が、リンの頭部を殴りつける。

 いかに今のリンが強大な力を発揮していると言えど、マネモブは水銀級エーテリアスに認定されている怪物を超えた怪物である。

 虚狩りならぬ人狩りとも揶揄されるその技量を解放すれば、今のリンでもひとたまりもない。

 

 「ちょっと絵面悪いな」

 「マネモブってもしかして野蛮人?」

 

 リンも光の剣などで抵抗しているが、それが当たる前に、マネモブはリンの身体中を這い回っている。

 同じような体格の相手に這い回れるその技量の高さは、はっきり言って気持ち悪かった。

 

 『一度掴んだら絶対に放さへん!』『たとえ数ミリでも指が引っかかれば活路は見出せる』

 

 脚の突起、腕の出っ張り、そして第三の腕を伝い、マネモブは反撃を許さなかった。

 

 『兜浸掌』

 

 顔面に、脳をシェイクし液状にする掌底が叩き込まれる。

 しかし、リンは戦意を失ってはいないようだ。

 

 『“塊貫拳”』

 

 塊貫拳の気が、リンの体内で荒れ狂う。

 縦横無尽に行き来する気の奔流に、リンの体勢が狂う。

 

 『破心掌!!』

 

 そしてトドメの一発と言わんばかりの破心掌。

 マネモブは第三の腕に足を引っかけ、逆さまの状態からリンの心臓を狙った。

 しかし……マネモブは失念していた。今のリンの胸部には穴が開いていることを。

 

 『えっ』

 

 破心掌が効果をなさず、マネモブは腕を掴まれた。

 即座に飛翔・猛禽固めに移ろうとするマネモブだが、それよりもリンがマネモブの腕を離すほうが速かった。

 

 『えっ』

 

 マネモブが投げ出されたのは、プルセナスホロウの深淵。つまり奈落の底だ。

 奈落と言っても、底がないわけではない。めちゃくちゃ下の方へ投げ出されたわけだが……戻ってくるのには相当な時間がかかるだろう。

 つまり、作戦は失敗したということだ。

 

 『う あ あ あ あ』『ふざけんなよボケが』『あ あ あ あ』

 

 マネモブは、プルセナスホロウの深淵へと真っ逆さまに落ちて行った。

 

 「……」

 「……」

 「……」

 

 ……

 

 「俺達は三人、店長はたった一人だ!」

 「多勢に無勢だいっけぇっ」

 

 そして一行は敗北したが、リンはレミエールによって元に戻った。

 

 

 

 

 

 次回、『ロスカリファ』

 高貴なる天上の都に、似つかわしくない野蛮なる者共がやってくる。

 





焦天残火・パエトーンからでてきた奴って名前判明したっスか?
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