な…なんだグッドバイを言われたぞ いや意外とグッドバイはそんなに効いてない 危ないのはロング・グッドバイだった時だ
ロスカリファの地、シンギュラ・リークにマネモブ現る。
その知らせは緘口令を敷く前に人々の間を駆け巡った。今やロスカリファは、この人に近いエーテリアスの噂で持ち切りだ。
そんなマネモブを密輸した張本人、巻き込まれたにしてはノリノリだが、共犯者と言うには消極的なツイッギーは呑気にも“CUPPA MOMENT”での、島外からの客をもてなす茶会に参加していた。
「ケーキからボンプのビックリ箱なんて、粋な演出ね」
「う……うむ……」
「?」
歯切れの悪そうな馬のシリオンの女性……シグリッドを横目にケーキを頬張るツイッギー。
彼女はマネモブを密輸した密入者であるのだが、現状マネモブを確実に止められる人材として監視の元で自由を謳歌していた。
しばらくして、茶会が進んだところでシグリッドがツイッギーへ話しかけた。
「かねてより気になっていたのだが、ツイッギー。そなたとマネモブ殿の関係は一体?」
「私とマネモブの関係? 知りたいの?」
「ああ。かの武人の名はロスカリファにも轟く程……是非ともその人となりを知りたいのだ」
「あわよくば手合わせをしたいって顔ね。まあいいわ、別に隠してることでもないし。でもどこから話したものかしら――」
ツイッギーはこれまでを思い浮かべる。
新たなシルバー小隊を復活させようとしたこと、庭師に殺されかけたこと、邪兎屋経由で灘・真・神影流道場に引き取られたこと、道場のクソ不味い飯をボンプと一緒に改革したこと、道場のイカれた経営をボンプと一緒に見直したこと、暴走する姉妹達と止めないマネモブをまとめてしばきあげたこと、狂気的な修練に参加したこと、驚異的な在庫を誇るジャワティーに潰されかけたこと、元反乱軍の人と共に最新鋭の兵器を研究したこと、今もなお搬入されているメカ・ロームルに絶望したこと――
「……」
「どうした?」
ツイッギーは思う。
これロクな思い出がないんじゃないか? マネモブと姉妹達のトラブルを解決する何でも屋なんじゃ? もはや一人邪兎屋なんじゃないか?
「……いえ、そうね」
だが、それらは確かに良い思い出だった。
まるで大家族のよう。無機質なフラスコから生まれ、冷たい実験施設で育ったた彼女は純粋にそう思ったのだ。
「家族、かしらね」
「家族?」
「言うなれば運命共同体ね。互いに頼り、互いに庇い合い、互いに助け合う。一人が皆のために、皆が一人のために。だからこそ生きて居られる。私達は姉妹、私達は家族――これは、あの暮らしは決して嘘じゃないわ」
気づけば彼女は、自然とそう口にしていた。
いつだって助け合ってきた。これまでも、そしてこれからも。
ツイッギーは、だからこそマネモブに協力を惜しまなかった。
「なるほどな……礼を言う。それを聞いて、なおさら顔を合わせたくなった」
「顔を合わせても待ってるのはマネキン・フェイスよ」
そう言いながら、ツイッギーは一緒にロスカリファへ来たボンプからの通信に耳を傾けた。
Now Loading......
『なんかいっぱいボンプいるんスけど、どこなんスかここ』
ロスカリファでは顔が割れている(と本人は思っている)ロックスプリングの代わりに、モンキー・ボンプはロスカリファを散策していた。
偶然にも、下層に入り込めそうな隙間があったので潜り込んでみたところ、その先はボンプ達が暮らす倉庫街のような場所だった。
『一応姐御にも連絡しとくっス』
今どこにいるのか一報入れたモンキー・ボンプは、このアジトとでも言うべきアンダーグラウンドを散策する。まるで工場か何かをそのまま使って創り上げられたような場所だった。
そんな時だった。何体ものボンプが集まっている。聞こえる会話からして揉め事のようだった。
マネモブに似て、面倒ごとに首を突っ込まずにはいられないモンキー・ボンプは、すぐにその集団へと近づいて行った。
『ンナグワンナナ(楽しそうだね~)』
『ンナ! ンナナ! グワ!(何やってんだよオイ、コラ、オイ)』
『グワ?(ちょっと熱いんじゃないこんなところで?)』
明らかにヨタモノの類と思われる、ガラの悪い三匹のボンプ達。
今のモンキー・ボンプは知る由もないが、彼らは“ンナ・ギャング”のメンバーである。つまり……ギャングだ。
『ンナグワ!(兄ちゃん俺らも混ぜてくれや!)』
『ンナー(わーい)』
そのボンプ達は、明らかに気の弱そうなボンプに絡んでいる。
モンキー・ボンプはそれを見過ごすことができなかった。
『おら~お前ら何やってんだお~』
『グワンナ!?(なんだお前)』
モンキー・ボンプが割って入ると、すぐさま剣呑な雰囲気になった。
そう、モンキー・ボンプが只者ではないことが嫌でも分かってしまったのだ。
『ンナグワ、ンナナ?(おい、ちょっとあれどうする?)』
『ンナ! グワワ!(おう、やっちまおうぜあれ!)』
『ンナグワ?(やっちまうか?)』
『ンナナグワ?(やっちゃいますか?)』
『ンーナナグワワ!(やっちゃいましょうよ!)』
『ンナナナナグワワ? ンナンナナナナグワワ?(そのための右手? あとそのための拳?)』
『ンナ! ンーナナ! ンッナナ! ンナンーナナンッナナ、グワワ……(金! 暴力! SEX! 金暴力SEXって感じで……)』
一触即発、あるいは鎧袖一触のもと勝負がつくのか。
周囲が心配する中、新たに乱入者が現れた。
『ンナグワ!?(これは一体なんの騒ぎだ!?)』
『ンナナ!?(ボス!?)』
そこに現れたのは、帽子とスカーフがオシャレなボンプ……名をグリフ。ンナ・ギャングのボスである。
『ンナグワ、ナナナ? ンナーッ!(お前らまたやってるな? もういから散れーっ!)』
『ン、ンナナ!』
グリフが一喝すると、ギャラリーと揉めていたボンプ達は散って行った。
そして、周囲が静かになるとモンキー・ボンプに向き直った。
『ンナグワ、ワタンナ(あいつらに割って入るとはやるなお前)』
『それほどでもないっス。ところで、アレは大丈夫だったんスか? また揉めないんスか?』
『ンナナ、グワンナ(あれはビデオ撮影だ……ったく、ボンプ目があるところじゃやめろと言ったんだがな)』
『そうだったんスね』
いじめとかではないことに一安心したモンキー・ボンプ。
しかし、彼が安心してもグリフには疑問がある。
『ンナ、ンナグワ(俺はグリフ。この“ンナ・ギャング”のボスだ)』
『ギャングだったんスね、通りでガラが悪いと思ったっス。ジブンはモンキー・ボンプっス』
『ンナナ、グワ、ンナ?(モンキーと呼ばせてもらおうか。モンキー、お前はンナ・ギャングのメンバーじゃないな、どこから入ってきた?)』
グリフの目に剣呑な光が走る。
しかし、モンキー・ボンプは怯むことなく言った。
『あの……誰にも言わないで欲しいんすけど、いいスか?』
『……ンナナ(いいだろう)』
『あざーす。実はジブン、新エリー都から来たんスよ』
『ナッ、グワッ、ナッンナンナアッ(えっ、なにっ、なっなんだあっ)』
グリフは驚いた。まさか地上からやってきたボンプだなんて、信じられなかったのである。
だが、モンキー・ボンプはロスカリファでも見たことがない型式であり、それが信頼に足る証拠であるとグリフは感じ取った。
『……ンナナ、ンナ。ンナグワ(俺では判断がつかない。だからお前には予言者様と会ってもらう。ついてこい)』
『予言者……?』
右も左も分からないモンキー・ボンプは、預言者に会うことになる……
深夜に書いたんで変な表現あればゴメンなぁ