『馬鹿な』『すれ違う電車に飛び移るなんて…』『バケモノが』
「さっきから何をゴチャゴチャ言ってるの?」
道中にいた高志の傭兵を速攻で片付けつつ、一行は総管塔の頂上へ向かっていた。
その方法とは、何故か塔内に敷かれているレールである。マネモブを除いた一行は、ピュロイスの体に格納されていた。
『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』『いやちょっと待てよ』
「ほぼ真後ろからついてきてるじゃん! 待つ必要ないじゃん! 止まったら止まったでぶつかるって」
『たしかに―――っ』
マネモブはピュロイスの後ろを走っていた。それはピュロイスへのほのかな対抗心からであったが、いかんせん現在のレールは一列なため、スピード対決のために並走することはできない。
やがて二者は行き止まりでレールを降りる。目の前には扉……しかし、マネモブが勢いよくピュロイスに突っ込んだので、ピュロイスはマネモブをぶん殴った。
『まあそうだろうな』
「分かってるならやめなよ」
『私もね』『この性癖を直したいのです』『でもその方法は二つしかない』『死ぬか…《飽きる》までやり続けるか』
三枚目なのはマネモブの
しかしながら一行の前には扉。紛れもなく目的地へのルートである。リンドヴェルヌが、皆の前に出た。
「ここまで協力してくれてありがとう……ふふ、今日はずっとお礼を言ってる気がする」
『なんやねんその“幻魔突き”って?』『ワシは知らんで』
「マネモブが合流する前だったからね、だから茶化さないの」
「いいのよ、彼だって傭兵からブーアストラムを守ってくれてたんだから。皆、本当にありがとう」
『いやっ』
やや謙遜するマネモブ。
久しぶりに真っ当にお礼を言われた気がするという事実に、考えさせられたのだろうか。
「でも、この先は……」
リンドヴェルヌは一人で決着をつけに行くつもりだろう。
「それじゃ、皆でもうひと踏ん張りだね!」
「えっ」
「『えっ』って……なに?」
『何って』『見ての通りレイプしてるんやん』
「え、今からレイプしに行く……の?」
『えっ』『そうなんですか?』
「治安官として、どう?」
「言い訳は聞きたくない。この上級監察官セヴェリアン・ローウェルがゴミ処理してやる」
『ほう』『風使いか…』
「何やってんの喧嘩はやめてよ」
マネモブが反応してしまった上に、まさかのセヴェリアンまで乗ってきたので場は混沌へ陥る。
その光景に、リンドヴェルヌは笑っていた。
「あはははは! 何だか深く考えてたのがバカみたいね」
『そうですけど何か?』『怒らないでくださいね』『バカみたいじゃないですか』
『殺す…』
『死ね』(ニィ~
『龍星ッ』『言葉が過ぎるぞッ』
『う あ あ あ あ』
「……まあ、そういうことだからさ!!! 水臭いこと言わずに行こうよ」
リンドヴェルヌへ暴言を吐いた分身が四人霞で殺害されているのを尻目に、リンが声を上げた。
チャメシ・インシデントと化した仲間割れを無視することに決めたリンは強い。
「彼女の言う通りだな。特に、このエーテリアスを野放しにするのは看過し難い。万が一何かあっても、私と彼女がいれば止められるだろう」
「え? もしかして、私も勘定に入って……る? 帰って、いい?」
「さあ、共に行こうじゃないか、黒枝の裁決官殿」
「あぁ~……」
クッソ情けない声を上げ、フィオニーは引きずられていった。
扉の先には恐らくYoukaiか、トリヴィアがいる。最終決戦の始りだ。
一行は頂上の部屋に足を踏み入れる。
巨大な時計が彼らを見守るかのように針を動かすその部屋の中心には、倒れ伏したアキラとシーシィア。
その他に誰の気配も……ない。
「お兄ちゃん!」
セヴェリアンがアキラを、リンドヴェルヌがシーシィアをそれぞれ介抱した。
性別による分担か、シーシィアがセヴェリアンを恐れていることに対してのささやかな気遣いか。
マネモブも二人に走り寄り、具合を診ている。
「お兄ちゃーん!」
「リン……」
『美しい兄弟愛に感動しております』
「そこまで感動する要素はなかったけど、めでたし、めでた――ッ!?」
フィオニーの胸から、剣が生える。フィオニー自身の剣だ。
その背後には、裂け目と怪しげな笑みを浮かべたトリヴィア。彼女を確認した時点で、セヴェリアンとリンドヴェルヌは走り出し、マネモブは構えていた。
『焦るなよ今殺してやっから』
この距離なら、詰めるのは一瞬だ。
その後は認識もできない速度でぶちのめす……だが、マネモブが脚を踏み込んだ時には、すでに地面は存在しなかった。
『えっ』『う あ あ あ あ』
リン以外は、トリヴィアが操る裂け目へと呑み込まれていった……
Now Loading......
『なんじゃあ、この汚い処理は』
「シンギュラ・リークか……それにしてもめちゃくちゃだな」
リン以外が落とされた空間は、めちゃくちゃな様相であった。
しばらく歩き回っても、まともな場所に出られない。かろうじて落ちてきた場所に戻ってきただけである。
「すまない、僕もプロキシとしても役立てそうにない。ただ、今はじっとしておいた方がいいと思う」
「アキラ、無理しないで。お前は怪我人なんだから」
凄腕のプロキシであるアキラでさえ、この空間をナビゲートすることは不可能に近い。本調子でない今ならなおさらだ。
「マネモブはどうだ? 君だけでも出られるんじゃないか?」
『いいや』『お前が死ぬことになっている』
「えっ」
マネモブがバチィン、と勢いよく自分の頭部を平手で叩いた。
そして、全身から力を抜いたかと思うとこう言った。
『灘神影流“空眼の目付け”』
「マネモブがゾーンに入ったあっ」
マネモブの精神体が宙に浮き、そして消えていく……
Now Loading......
「正々堂々あなたに勝って……“ヘーリオス”という欺瞞を葬ってみせる!」
「トリヴィア……私怒ってるから!!」
裂け目の外では、リンとトリヴィアが激突していた。
もはや対話での理解は不可能。残された納得への道は、殴り合いしかなかったのだ。
リンの顔が、かつての焦天残火の如く黒く染まり、ピュロイスが飛び出た。
「あんたのやったこと……ちゃんと向き合ってもらうよ!」
剣の切っ先は真っ直ぐにトリヴィアへ向かう。
並の相手なら、これで終わっていただろう。しかし、トリヴィアは当然の如く並ではなかった。
何者かによってピュロイスの剣は防がれ、はじき返される。
それは槍だった。
銀色の光沢を放つ槍の主、それは――
「エーテル特異体!?」
ピュロイスにも似た、女性型のエーテル特異体だった。
この力こそ、彼女にシンギュラ・リークを操る術を与えたものだろう。
「わたし、言ったでしょ? 正々堂々、あなたに勝つって……」
タイイチ、エーテル特異体……条件は同じだ。
トリヴィアは特異体へと包まれるように消え、一体化した。
「そしてあなたを……あの世に送るんだから!」
不遜なる者が、槍を構えた時だった。
『ほいだらおどれはあの世へ送ったろかあ――ん?』
「なにっ」
強烈な打撃が槍を打ち据える。
トリヴィアはそれを押し返す。その勢いのまま宙で回転し、リンの隣に着地したのはマネモブだ。
「マネモブ!」
「どうやってあそこから……」
『灘神影流“空眼の目付け”』
「! 精神体なんだね!」
マネモブは今や精神体である。
しかし、特異体との戦いならワンチャンダメージが通る可能性が高い。
これはもはやスタンドバトル。精神のぶつかり合いである。
『おどれら手ェ出すな』『
「多勢に無勢だいっけぇ」
「
マネモブとピュロイスが、同時に襲いかかった。
今、死闘が幕を開ける。
ワシもエーテル特異体欲しいのう
ワシ自身がエーテリアスになるのでもいいですよ
なんならサイボーグとかでもいいですよ
ボンプでもいいですよ