邪兎屋「ふざけんなよボケが」
ヴィクトリア家政「ふざけんなよボケが」
パールマン「ふざけんなよボケが」
マリオネット・ツインズ「ふざけんなよボケが」
バレエ・ツインズを探索したいがキャロットのないヴィクトリア家政、レインを助けたいが戦力がないパエトーン、裁判があるから帰らなくてはならない邪兎屋、死人のように生きてるクズのマネモブ。
彼らの利害が見事に一致し、パエトーンが案内役として、マネモブが戦力としてヴィクトリア家政に加勢することになった。
この変な面子は、お手製の地図を見ながらレインがいるとされるB棟のてっぺんを目指していた。
「まさかエーテリアスと肩を並べることになるとは。人生、何があるか分かりませんね」
『確かに』
道中で、マネモブはヴィクトリア家政の面々と親交を深めていた。
今話しているのは、白いオオカミのシリオン、フォン・ライカンである。
戦いを経た男達の間には、絆が芽生えていた。
「ボス、さっきまで殺し合ってたんでしょ? 何でそんな仲良くできるの?」
「私は執事である前に1人の男なのです。マネモブ様と拳を交わす中でお互いのことを理解したのです」
『絆が深まるんだ』
「でもシリオン差別はヤバいよ。ブチ殺されても文句言えないよ」
『は…はい“スマイル・ジョー”…“笑顔で人を殺す男”でありますジョー・スペンサー長官』
「男じゃないし、ジョーは苗字だし。変な奴」
この怪しげなエーテリアスと親しげに話すライカンを異様な目で見ているのは、ダウナー系怠惰サメメイドことエレン・ジョーである。
マネモブはその怠惰な性格の裏に隠された恐るべきハンターとしての実力を見抜いていた。
『人間ってどこまで愚かなんだ。なぜ
「何いきなり?」
『多分、褒めてるんだと思うよ』
「ええ、彼の言葉には悪意を感じません。勲章と同じく、エレンに対する誉め言葉でしょう」
「ほんとに? パエトーンはともかく、ボスはよくこんなトンチキな言語理解できるね」
「これも執事としての嗜みですから……カリン、いずれ貴女にも分かるようになりますよ」
「えっ!? わ、私ですかぁっ!?」
オロオロとしているのは、チェーンソーをぶん回すメイドのカリン・ウィクスである。
見た目に見合わない怪力は、大体のものをぶった斬ることができる。マネモブはその力を高く評価している。
「で、でも私が……お恥ずかしながら、マネモブ様の言葉をほとんど理解できませんし……」
『あなたは強い人です』
「あうっ、強いだなんて……か、カリンなんて臆病で弱虫なんです……」
『“弱い”ってことはもっと強くなれるって事やん』
「ま、マネモブ様……!」
「うふふ……カリンを高く評価してくださっているのですね」
マネモブがカリンを激励するのを見て優雅に笑うのは、宙に浮いたメイド、アレクサンドリナ・セバスチャンである。
マネモブはその優雅な所作に隠された実力と、メシマズの才能を見抜いていた。
『宮沢家特製スペシャルライスやっ』
「? ミヤザワケ……? おっしゃる意味は私では分かりませんが、何だかとっても素敵な響きですね」
『米の炭水化物・魚・鶏肉・卵の白身にプロテイン・パウダーを混ぜた良質のタンパク質。さらにアミノ酸を加えてドロドロになるまでミキサーにかけて…ビタミン剤とカルシウム剤でトッピングしてあんのや』
「まあ! それはとっても美味しそうですわね! よろしければ、詳しいレシピを教えていただけませんこと? 今度、ご主人様や皆にも振舞って差し上げたいのです。もちろん、お礼はいたしますわ」
『金貨を進呈するッ』
マネモブはメモ帳にレシピを書き出し、リナに渡した。
今この場は、地獄へと変貌している。
「ま、マネモブ様!? こ、こんなことが、こ…こんなことが許されていいのか」
「ふざけんなよボケが」
「こ、殺すだけでは済まされませんよ……」
『そ、そんなに言うほどなの?』
「ええ……リナの料理は……その……非常に特徴的な味でして……」
『
「これの逆です」
『ふうん、そういうことか』
『まあ見てくれは悪いけど栄養満点やでっ。食うてみいやっ』
「あんた、変なクスリでもやってんの?」
こうしてリナの料理力が荼毘に付すアクシデントはあったものの、一行は先へと進んでいく。
時々、照明が激しく点滅している。それを見たエレンは、ある一つの噂話を思い出した。
「あの噂って本当だったのか」
『噂って?』
「ああ」
「ガイド様、そのことについては私から説明いたしますわ。バレエツインズで最近、心霊現象が起こるという噂をご存じでしょうか?」
『熹一は幽霊とだって無邪気に遊ぶことができる』
「あらあら、それは微笑ましい話ですね。でも、ここの心霊現象はそんなに生易しいものではありませんことよ」
リナ曰く、バレエツインズがホロウに吞み込まれた際、ある姉妹が命を落とした。
それ以来、バレエツインズの主となった姉妹は、不届き者が足を踏み入れれば照明を点滅させて脅す。それでも出ていかなければ停電させて闇を作り出し、魂を刈り取るために姿を現すという。
「――というわけで、バレエツインズが不良債権になることを恐れたご主人様は、真相の究明をわたし達に命じられたのです」
『ふうん、そういうことか』
「プロキシ様、マネモブ様。私共はこれを与太話の類として認識しておりました。ですが、停電に関しては本当のようです。これは新たなリスクになり得ます――B棟に通じるアトリウムの入り口には、防火シャッターが設けられており、停電によって自動で閉じる仕組みになっているのです」
『なにっ』『急げっ乗り遅れるな』『急げっ』
一行は先を急ぎつつ、道中のエーテリアスを掃除していく。
アフリマンやスペクターといった、オブジェ風のエーテリアスが多い。しかし、中にはゴブリンやハティなどの中型エーテリアスが紛れ込んでいることもあった。
そして、点滅は激しさを増す。侵入者に警告するかのように。
「点滅がより頻繁に……急ぎましょう!」
『急げっ』
停電までの猶予はあとわずかしか残っていないのだろう。こうして走っている間にも、点滅は続いている。
だが、理性なきエーテリアスの妨害は遠慮というものを知らない。
「こちらへ」
『はっ、はっ、はっ、はっ!』
『急げっ』
ライカンがエーテリアスを蹴り飛ばし、パエトーンを誘導する。
その際、一礼することも忘れない。これも執事の務めなのである。
『おお……?』
「階段はお任せを」
『急げっ』
リナが2体のボンプを操り、エーテリアスを感電させる。
彼女自身は、パエトーンを抱えて階段を浮遊していた。これもメイドの務めなのである。
「カリン……頑張ります!」
『急げっ』
カリンがゴブリンとぶつかり合う。
チェーンソーでゴブリンの外殻を削りつつ、その圧倒的なパワーとも拮抗している。これもメイドの務めなのだろうか。
『バウッ、バウッ』
『急げっ』
『う あ あ あ あ』
ハティがパエトーンに襲いかかる。
あわや小さなボンプの身体が食われそうになった時、エレンのハサミがハティを貫く。それを見届けたエレンは無言で去って行った。
「ガイド様、お怪我は?」
『大丈夫! それより先を急ごう!』
『急げっ』
もう時間がない。一行は猛ダッシュでアトリウムへと向かう。
先頭は速いライカンとマネモブだ。霞払いしつつ、入り口を見つけるため。
『アトリウムはすぐそこだよ!』
しかし、すでに電力は停止した。
アトリウムの入り口を見つけた時にはすでに、シャッターは閉じつつあったのだ。
「あ、停電……!」
「しまった!」
ライカンが一気に加速し、シャッターへと迫る。力づくでシャッターを止めるために。
だが、エーテリアスは彼らの都合など考慮しない。ただ知性体を抹殺するために動くだけである。
「くっ!」
1匹のアフリマンがライカンを狙う。
素早い動きと両腕の刃でライカンを翻弄しようとするが、その程度で彼がやられるはずもなく、たった3発でKOされ、その命を散らした。
だが、その命を賭した妨害は実を結び、防火シャッターが完全に閉じる。ライカンが手を伸ばすが間に合わず――
『マネモブ! シャッターの下に
『なにっ』『幻突』
パエトーンのかけ声によって、強く踏み込んだマネモブから不可視の打撃が繰り出される。
未知のエネルギーをまとったそれは防火シャッターの下へ入り込むと、シャッターが閉じきるのを防ぎ、わずかな隙間を開けた。
「はぁっ!」
その一瞬によってライカンは、エーテリアスの妨害を受けつつもギリギリのところでシャッターに手が届いた。
ライカンはそれを力づくで持ち上げ、何とか人の通れる隙間を作った。たった一歩、間に合ったのだ。
『熹一さんあきらめないで、い…今ひきあげますから…』
「助かります……!」
ライカンとマネモブの怪力が合わされば、いかな重量と頑健さをほこる防火シャッターとてものの障害ではない。
皆が通ったことを確認すると、一旦そこらへんにあったものでつっかえを作り、隙間ができている間にライカンとマネモブが脱出した。
「感謝を、パエトーン様、マネモブ様。私だけでは恐らく、あと一歩のところで間に合わなかったでしょう」
『またまた謙遜しちゃって…』
『マネモブのゲントツは飛ぶ打撃なんでしょ? それなら閉じるのを一瞬だけでも防げるかなーって』
『この力に一番戸惑っているのは俺なんだよね、怖くない?』
マネモブ自身、まさか奥義である幻突にこのような使い方があるとは思わなかった。
戦いの技術に、新たな応用方法が見出された瞬間だ。マネモブは、まだまだ修行が足りないなと感じていた。
「ガイド様だけでも、マネモブ様だけでも成し得なかったことですわね。ご主人様もお喜びになられますわ」
『君に勲章を与えたいよ』『君に勲章を与えたいよ』『君に勲章を与えたいよ』『君に勲章を与えたいよ』『君に勲章を与えたいよ』
『どういたしまして!』
何はともあれ、一行は先へと進む。
ここはもうB棟。目的地はすぐそこにあるのだから。
階段を上った先で、パエトーンが何かを発見した。
『ん? そこに何かあるよ』
とてとてと近づいたパエトーンが、それを拾う。
それはリュックであり、大きさはボンプより小さかった。
「プロキシ様、お心当たりが?」
『これ、レインのリュックだよ! ここにいたんだ! 手がかりがあるかも……えっ』
何気なくパエトーンが手に取ったもの。それは、ピッ、ピッという電子音を鳴らしており、さらには数字が3、2、1と――
『う あ あ あ あ』
パエトーンが咄嗟に投げ捨てた。
それを見た瞬間、いや直前に、彼らは身構える。
ライカンはパエトーンをできる限り庇い、マネモブは投げられたものを背に皆の盾となった……が、危惧していたことは何も起こらない。
代わりに、その物体から音楽が鳴り響いた。まるでバレエに使われる音楽だ。
「この音楽は一体……?」
『ただの録音だね。タイマーか何かってだけで……えっ』
パエトーンが背後に気配を察知した。
ヴィクトリア家政の察知すらかいくぐったそれは、よりにもよってパエトーンの背後に現れたのだ。
「後ろに!」
『ボリスは君のすぐ後ろにいるよ』
それが、パエトーンに手を伸ばそうとした時。
「はぁっ!」
「えいっ!」
エレンとカリンその手を防いだ。
「こいつどっから出てきたの!?」
『冬の海はさぞ冷たいだろうねえ』
まるでバレリーナのような見た目。かなりシャープで洗練された見た目であり、その所作はダンサーを思わせる。
スカートにはフリルの代わりに凶悪な刃が無数に連なっており、回転して相手を切り刻むことに特化しているのだろう。
「ダンスのお誘いとお見受けしました……お相手を務めさせていただきます」
『ゴングを鳴らせっ、戦闘開始だっ』
このエーテリアスは一体……?
フォン・ライカン→ライカン
ベン・ビガー →ベン
もしかしてライカンさんのフォンって騎士の『サー・○○』みたいな称号みたいなものなんじゃないスか?
もしかして本名は隠れてて○○・フォン・ライカンみたいな感じじゃないスか?