高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”   作:アースゴース

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戦闘描写が上手くいかない、それが僕です
拙くてゴメンなぁっ


カリュドーン・ラッシュ2

 『喰らえっ、我が乾坤一擲の一撃をっ!』

 

 一撃とは名ばかりの連撃が放たれる。

 その一発一発に秘められた威力は風を切り、破裂音のような轟音を上げる。

 

 「甘いなッ!」

 

 だが無敗のチャンピオン、ライトも負けてはいない。

 彼は立ち技のエキスパート。このようなラッシュの速さ比べなら望むところである。

 

 

 

       ボッ            パン

  ボッ             ボッ       パン

           パン

  パン    ボッ      パン      ボッ

 

 

 

 お互いに一歩も譲らない。

 ライトは避ける、マネモブは打ち払う。

 それぞれ違った対処だが、それゆえに戦いは拮抗していた。

 

 「チィッ! ラチが明かないな」

 『ボケ――ッ』『ペラ(私語)まわしてんじゃねえ―――ッ』

 「ずいぶんと余裕がないじゃないか!」

 

 互いの拳が激突し、それがトリガーとなり一旦どちらも後退する。

 だが、一息ついただけでまだ戦いは終わっていない。マネモブは姿勢を低くし、高速で駆け出すと――4人に増えた。

 

 「えっ」

 「なにっ」

 「な……なんだあっ」

 『“四人霞”』

 

 それは錯覚を利用して自身の残像を作り出すだけの技。

 だが、意表を突くという点と、本体が分からないという点で驚異的なアドバンテージを誇る。

 

 『躊躇することなく残酷に打ちのめしてやるぜッ』

 「おいおい何て奴だよ……俺と同じストライカーじゃなかったのか?」

 

 自分のスタイルとは明らかに違う、見たことも聞いたこともない謎の武術の使い手にライトの心は躍っていた。

 チャンピオンになってから……いや。忌々しい過去の記憶。地下闘技場ですら無敗。

 確かに強敵もいた。だが、これほどの使い手は存在しただろうか。

 

 『灘神影流』

 『喰らえっ、我が乾坤一擲の一撃をっ!』

 『この力に一番戸惑っているのは俺なんだよね、怖くない?』

 『許せなかった…熹一の本当の父親が鬼龍だったなんて…ッ!!!』

 「って何も連携も取れてないじゃないか!!!」

 

 だが、鳴り物入りで繰り出した技感とは裏腹に、マネモブ達は何の連携も取れずにただめちゃくちゃに技とも言えない技を繰り出しているだけだった。

 

 「分身技ならせめて連携取れるようにしてくれって思ったね」

 『“力愛不二”“主守従攻”“戒除殺念”というお師匠様の教えを忘れたのか』

 「俺にそんなものを教えてくれる師匠なんて――」

 『クソボケが―――っ』

 「話を――」

 『人生の悲哀を感じますね』

 「だから――」

 『人殺しかぁ…強くはなりたいがそこまで堕ちたくはねぇな』

 「話を聞けっ!!!」

 『『『『う あ あ あ あ』』』』

 

 ライトのパンチとキックにより、4人のマネモブが吹っ飛ばされる。

 その先でマネモブは融合するように1人となった。そして何事もなかったかのように構えた。

 

 『どういう負け方をしたい? 失神KOか? それともギブアップか?』

 「今の醜態晒してそれ言えんのはすげーよ。けどダサいぜアンタ」

 

 また殴り合いが始まる。

 しかし、前と違うのは、マネモブは受けに徹していること。

 

 「おいおい、今度は消極的になったな。ビビッてるのか?」

 『まだまだ修行が足りない』

 

 マネモブが急に後退する。

 嫌な予感を覚えたライトは、何だか分からないものの回避を試みる。

 だが、離れたところでマネモブの照準はライトを捉えて放さない。そして、マネモブからそれが放たれた。

 

 『覇生流風当身ッ』

 「……!?」

 

 見えない風圧の塊が、ライトを圧し潰さんと迫る。

 不可視の圧撃。しかし、ライトは驚きつつも冷静沈着に、そして大胆な策を取った。

 

 「はぁぁぁぁっ!!!」

 

 W式クラウン・インフェルノ。

 本来は地面に叩きつける必殺の一撃を、ライトは風を突っ切るために使った。

 灼熱の拳がマネモブへと迫る――

 

 『しゃあっコブラ・ソード!!』

 

 だが、マネモブにとってはそれすらも織り込み済みだ。

 相手の全力を利用した変則テン・カウ。初見殺しの遠距離技すらブラフにした、最大威力のカウンター。

 

 「はぁぁぁぁ!!!」

 『うおおおおマッセリア――――ッ』

 

 互いの技が、相手を打ち砕かんと迫る。

 これらがぶつかればどちらかが死ぬか、どちらも死ぬか。

 神聖なる決闘は血の海によって守られている。それでも勝つのは俺だと証明するために一歩も引かない。

 

 だが、(それ)をよしとしない者がいた。

 

 「なにっ」

 『な……なんだあっ』

 

 一発の銃弾が、マネモブとライトの間をかすめる。

 それを見た彼らは、強引に方向転換しつつ一瞬で身を引いた。

 

 「ちょっと……今のは流石にパイセンでも怒るっスよ?」

 『貴様ーッ先生を愚弄する気かぁっ』

 

 この場で銃を使うのはただ1人。ビリーのみである。

 片や明らかに不機嫌そうな睨みつけ、片や表情は全く変わらないものの声のみ怒声。

 2人の非難はビリーに向けられた。

 

 「はいはいもういいだろ? ……ったく血の気の多い連中だぜ」

 

 ビリーはクルクルと愛銃を手で弄ぶ。

 どちらにも当たらない距離に弾丸を通したのははっきり言って神業だが、それを誇るようなこともしない。

 

 「あのままやり合ってたらどっちか死んでたぜ」

 「死ぬのは俺じゃないっスよ。ていうかコイツエーテリアスでしょ? 何で庇うんスか。頭イカれたんスか?」

 「失礼な奴だな。そいつ……マネモブにはめっちゃ世話んなってんだよ」

 

 ビリーは、ホロウで会うことの多いマネモブと仲が良い。しかも意外と一部の仕事を手伝ってくれたりする。

 まあ一緒にいると突如として変な連中が湧いて出てきたりもするが、それでも好感度は高かった。

 

 『ありがとうございます』

 

 マネモブはビリーの気遣いに対し、シンプルに感謝していた。

 戦いの中で死ぬのは望むところだが、別に死にたいわけでもない。

 だからこそ、戦いを止めてくれたビリーに感謝しているのだ。

 

 「おいおい、ビリの字! この面白そうな奴は誰だよ!」

 「アネゴ。コイツは高濃度猿侵蝕体“マネキン・モブ”! 協会からも指定されてる高危険度エーテリアスだ」

 「やっぱりエーテリアスじゃないスか!」

 「大丈夫だ! マネモブは人も知能機械も襲わないんだ」

 「ホントかぁ?」

 『宮沢熹一の殺し方を教えてくれよ』

 「おいおい、何か知らん奴の殺し方教えて欲しそうだぜ」

 

 それを聞いたビリーは笑った。

 

 「ハハッ、これはコイツなりのジョークさ。それはそうとアネゴ、どうしてこんなところに?」

 「おう、妙な電話がかかってきてな。お前らがこのホロウに落っこちたって、若いにーちゃんの声でよ。いやぁ、あれはすげー剣幕だったぜ」

 「おっ、やっぱもう一人の店長か!」

 

 そう、リンとビリーがホロウに落ちたことを知ったアキラは、即座に“羊飼い”から渡された電話番号を元にカリュドーンの子へ電話した。

 そうして、シーザーとライトが駆け付けてきたのだ。

 

 「これが伝説のプロキシのお手並みってわけか? 全く、見識が広まったぜ!」

 「それはどうもです。とはいえ来てくれて助かったよ……アハハハハ……はうっ」

 『えっ』

 

 リンが倒れた。

 極度の緊張と疲労、そしてエーテルの負荷に耐えられなかったのだ。

 

 「店長! しっかりしろ! 急いで連れ出さねぇと! 早く!」

 『お……おい、あれを見ろ。“死神医療チーム”が待機してやがる。決着がついたらすぐに“心臓”を抜き取るために』

 「こんな時に!?」

 

 マネモブの指す方向には、白衣を着た人型エーテリアス2体と、救急車型エーテリアスが1体。

 奴らこそホロウで最も恐れられる悪名高き死の闇医者“死神医療チーム”である。リンが倒れた気配を察知し、どこからともなくやってきたのだ。心臓を抜き取るために。

 

 「ここはオレ様達が食い止めるぜ!」

 『クスリを反対から読むとリスク…過剰投薬は危険です。私はよほどのことがない限り薬は飲まない主義です』

 

 防御に長けたシーザーとマネモブが殿を務め、彼らは何とかホロウを脱出した。

 死神医療チームは心臓が取れないことを察したのか、興味がないとばかりに去って行った。

 

 

 

 Now Loading......

 

 

 

 「リンはっ!?」

 

 息を切らしたアキラ。

 ホロウに落ちたリンの安否を心配し、全速力で郊外までやってきたシスコン。

 信号は全て青、法定速度ギリギリを維持して到着した彼は、まず妹を探した。

 

 『もう荼毘に付したよ…骨はある場所に置いてある』

 「なにっ」

 

 モニターに映っているマネモブ(録画映像)から告げられたのは、残酷な真実。

 許せなかった、死亡からこんなに早く荼毘に付されるなんて……

 

 「って起きてるじゃないか。驚かせないでよ」

 『申し訳ありませんでした』

 「いや、そこまでじゃないけど……」

 

 再会した兄妹の下へやってきたのは、シーザー。

 

 「悪ぃ悪ぃ、つい興が乗りすぎた」

 

 彼女は左手の盾を回しながら、力強く言った。

 

 「灰から蘇ったな! 歓迎するぜ!」

 『アイアン木場が墓から甦る!!』

 

 彼女達は誇り高きカリュドーンの子。

 秩序とは程遠い蛮地である郊外を、誇りと掟によって平定する強き者達である。

 

 

 

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